エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

壁のお話

2016-01-25 09:22:22 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
偉人の謙虚さ
  価値には、歴史と個人を作る力があります。 p177第3パラグラフ。      現...
 

 今日は壁のお話。

 壁というと、あんまり評判が良い方ではないかもしれませんね。ベルリンの壁、イスラエルの壁、ブルガリアがトルコ国境に作っている壁…。壁と言ったら、自由を求める人たちから、自由を奪うもの、命を助けてもらいたい人から命を奪うもの、という感じがします。

 また、心の壁、と言ったら、人を差別したり、イジメたりする時に、人を分け隔てする境界線になりますから、こちらでも、評判が芳しくありません。

 「バカの壁」の評判は知りません。

 じゃぁ、壁って、評判が悪いものしかないのかしら?

 実際に自宅の壁や、お隣さんの壁は、うっかり自宅のものやお隣のものが混ざらないため、その目印になる境界線ですから、こちらは、役立つ壁ですね。

 セラピーでは、とても大事な働きをするのが、この壁です。面接の枠組みが、まずこの壁になります。この壁は、セラピストも、クライアントも守ってくれる壁になります。また、この面接の枠組みは、日常世界とは異なる、非日常世界をハッキリと示す壁にもなってくれます。

 しかし、それだけではありません。面接の枠組みとは違う壁が必要な場合があります。それは、日常生活の枠組みが緩い過ぎる場合、あるいは、あいまいな場合でして、そこに、いつもとは別の枠組みをハッキリと設けたい場合です。

 とある小学生の面接で、いつもは許されていることを、ハッキリとダメダシして、生活の仕方を明確に示したことがあります。これは、ふつうはうまくいかないことの方が多いのですが、その子の場合は、予想以上にうまく生きましたね。緩くて、あいまいな枠組みですと、大人も子どもも楽なのですが、子どもはハッキリと守られている感じがしない場合があるんですね。この子の場合も、守りの実感が弱いケースでした。

 詳しくは書けないのですが、この子の場合、日常生活よりも、面接態度が格段に良くなりましたね。今まで踏み込むことになかったところまで、私が踏み込んでも、守りの枠組みをハッキリと示したからです。

 壁と言えば、評判が悪いことも少なくないのですが、あいまいだった守りの壁をハッキリ示すというリスクを取る場合に、守りの実感と共に、その子がグンと伸びる場合もありますね。 

 

 

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世代の新陳代謝

2016-01-25 08:14:01 | アイデンティティの根源

 

 

 
病んで不毛な社会
  「病んだ脆い社会」impoverish society。 これは国際障害者年行動計画の原則の中の63節にある言葉です。それは次の文脈に出てきます。すなわち...
 

 

 私どもは、≪いまここ≫に踏みとどまることを通して、はじめて、人はイキイキとした、悦びに満ちたやり取りのある関係ができます

 今日は、Young Man Luther 『青年ルター』、第Ⅷ章 終章(エピローグ)のp.253の、ブランクの後から。

 

 

 

 

 

                2

 

 次に、いろんな世代の代謝と呼んでもいいかもしれないものについて、考えて生きましょう。

 ひとりびとりの人生は、所定の進化の段階、一定の伝統の水準で始まりますし、まわりに対して、いろんな形とエネルギーの源をもたらします。これらの源は育ち、社会化の過程に吸収されますし、社会化の過程に役立ちます。

 

 

 

 

 

 世代が新陳代謝するって、どういうことなんでしょうね。ご一緒に考えて生きましょう。

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高尚すぎると、ウソっぽくなる

2016-01-25 07:17:13 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
偉人の謙虚さ
  価値には、歴史と個人を作る力があります。 p177第3パラグラフ。      現...
 

 エリックとジョアンは、人生の巡り合わせの舞台の生きる力1つにしても、何十年にもわたって、吟味し続けた、と言いますよ。

 The lie cycle completed 『人生の巡り合わせ、完成版』の始めに戻って、「完成版の前書き」、p.5の、第4パラグラフから。

 

 

 

 

 

 「叡智」と「まとめる力」は、なかでも、擬人化され、ブロンズで象られ、石や木で形作られた、仰々しい言葉です。このような生きる力や人間力を考える時、このような言葉が意味するいろんな特色を描くために作られた印象的な彫像を思い出すものですね。たとえば、天を仰ぎ見て、手にはトーチを持つ「自由(の女神)」、手に計りを持ち、目隠しされた「正義(の女神)」、あるいは、万能の「信頼」「希望」「慈愛」です。私どもは、これらの、石、石膏、金属で作られた彫像は、静かに賞賛し、高尚な気持ちで、尊敬しますものね。

 

 

 

 

 「叡智」や「まとめる力」は、非常に仰々しく、あるいは、高尚なものになりがちです。具体性や実践力、リアルな感じを失いがちです。

 高尚すぎると、ウソっぽくなりますもんね。

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一緒にいると安心

2016-01-25 01:00:42 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 
子どもの世界はピカピカ
  子どもって、従順で切ない。 、レイチェル・カーソンの『The Sense of Wonder 不思議を感じる感じ』から p53。 &nb...
 

 不眠や悪夢があっても、40年前はPTSDとは分かりなかった、そんな時代もあったんですね。

 ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の第13章 Healing from trauma : Owing your self 「トラウマから癒されること :本当の自分を生きること」p.229のブランクの後の、第3パラグラフから。

 

 

 

 

 

 

 赤ちゃんの泣き声が、容赦のないフラッシュバックの引き金になったんですね。そのフラッシュバックでは、ビルは、ベトナムで焼かれて、身体の一部を失った子ども等が見えたし、声が聴こえたし、その匂いがしたんですね。ビルはひどく取り乱していましたから、在郷軍人局の同僚の中には、ビルを入院させて、精神病と思しきものの治療を受けさせたいと思うものもいたほどでした。しかしながら、ビルと私が一緒に治療をするようになると、ビルは私と一緒だと安心できるようになり出したんですね。それで、ビルはベトナムで見たことについて、次第に口を開くようになり、圧倒されることなく、自分のいろんな感情に耐えられるようにゆっくりとなったんですね。そのおかげで、ビルは自分の家族の世話に、もう一度気が向くことが出来ましたし、牧師になるコースを修了することにも気が向いたんです。2年後ビルは自分の教区の牧師となり、治療は完了したと、私ども2人は感じました。

 

 

 

 

 

 ここでは、ヴァン・デ・コーク教授がビルの治療をする際に、ビルは安心感があったそうですが、それはなぜか?は、言葉がありませんよね。何故だと思います?

 

 

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