今日は壁のお話。
壁というと、あんまり評判が良い方ではないかもしれませんね。ベルリンの壁、イスラエルの壁、ブルガリアがトルコ国境に作っている壁…。壁と言ったら、自由を求める人たちから、自由を奪うもの、命を助けてもらいたい人から命を奪うもの、という感じがします。
また、心の壁、と言ったら、人を差別したり、イジメたりする時に、人を分け隔てする境界線になりますから、こちらでも、評判が芳しくありません。
「バカの壁」の評判は知りません。
じゃぁ、壁って、評判が悪いものしかないのかしら?
実際に自宅の壁や、お隣さんの壁は、うっかり自宅のものやお隣のものが混ざらないため、その目印になる境界線ですから、こちらは、役立つ壁ですね。
セラピーでは、とても大事な働きをするのが、この壁です。面接の枠組みが、まずこの壁になります。この壁は、セラピストも、クライアントも守ってくれる壁になります。また、この面接の枠組みは、日常世界とは異なる、非日常世界をハッキリと示す壁にもなってくれます。
しかし、それだけではありません。面接の枠組みとは違う壁が必要な場合があります。それは、日常生活の枠組みが緩い過ぎる場合、あるいは、あいまいな場合でして、そこに、いつもとは別の枠組みをハッキリと設けたい場合です。
とある小学生の面接で、いつもは許されていることを、ハッキリとダメダシして、生活の仕方を明確に示したことがあります。これは、ふつうはうまくいかないことの方が多いのですが、その子の場合は、予想以上にうまく生きましたね。緩くて、あいまいな枠組みですと、大人も子どもも楽なのですが、子どもはハッキリと守られている感じがしない場合があるんですね。この子の場合も、守りの実感が弱いケースでした。
詳しくは書けないのですが、この子の場合、日常生活よりも、面接態度が格段に良くなりましたね。今まで踏み込むことになかったところまで、私が踏み込んでも、守りの枠組みをハッキリと示したからです。
壁と言えば、評判が悪いことも少なくないのですが、あいまいだった守りの壁をハッキリ示すというリスクを取る場合に、守りの実感と共に、その子がグンと伸びる場合もありますね。