エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

東日本震災被災地の心理的課題

2016-03-24 06:05:07 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
豊かな国土とそこに根を下ろして生活していることが国富
  昨日、東京の内村鑑三記念キリスト教講演会に参加しました。目黒区中根の今井館聖書講堂で、昨日2時からでした。淀橋町柏木(現在の新宿区北新宿、大久保駅の近く)にあ...
 

 

 東日本震災被災地の心理的課題。私もそこに入る前は、古いPTSDの枠組みしか知りませんでしたから、津波や地震の衝撃でトラウマになった人の支援が中心なんだろうと思って、被災地に入りました。

 あれから4年。今は全く別の考えですね。そういう古い枠組みのPTSDは非常に少数派で、むしろ、心理社会的な課題のある、発達トラウマで苦しんでいる人が圧倒的多数だ、ということがハッキリしました。私が今申し上げたことは、「手がら」のように聴こえましたら、それは全くの誤解です。なぜなら、普通に心理臨床していれば、どなたでも、必ず気付くことだからです。

 私も、この被災地に入りまして、いろんな地域から来ているサイコセラピストと知り合うことが出来ました。中には、その道の研究者も何人かおられます。もちろん、大学で心理臨床を研究している人もいます。それで、おしゃべりの私ですから、伺うんですね。「実際の心理臨床は、心理社会的、つまり、対人関係に心理的な課題のある、発達トラウマ、愛着障害の子どもが多いですか? それとも、いわゆるPTSDで苦しんでいる子どもが多いですか?」

 個人の心理臨床をしている人で、私が確認した何人かは、全てが「愛着障害の子どもが多いですよ」ということで意見が一致しています。

 ですから、その心理臨床の事実、現実を報告することには、意味もあるし、大事なことだろうと思います。しかし、被災地の心理臨床の大半が、旧来のPTSDだと言わんばかりの報告をするとすれば、

「私は、まともな心理臨床はできないイカサマ心理士です」

と自白するようなものだ、と私は考えますね。

 みなさんはどう考えますか?

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発達トラウマこそが、一番緊急を要する公衆衛生の課題だ

2016-03-24 03:50:39 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 

 

 
黙想の時
  恍惚としただけでは、「あんし~ん」という訳にはいきません。 Young Man Luther 『青年ルター』のp189の第2パラグラフの10行目途中から。...
 

ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の書評から。

 

 

 

 

 

 「子どもの頃のネグレクト、性的虐待や家庭内の虐待、戦争がもたらすトラウマは、私どもの身体を滅茶苦茶にします。と、ヴェッセル・ヴァン・デ・コークは、『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の中で言っています。ヴァン・デ・コークは、30年の経験に基づいて、トラウマこそ、西洋で一番の緊急を要する公衆衛生上の課題だと論じています。科学と人間のいろんな物語が一杯のこの本は、精読して…。ヴァン・デ・コークの患者たちの戦いとしなやかさは感動的そのものです。」

             シャオニー・バタチャーラ 『ニユー・サイエンス』

 

 

 

 

 

 発達トラウマ、それは、緊急の公衆衛生上の課題なのに、特に日本では、その道の「専門家」も、ほとんど知らない課題なんですよ。

 

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気持ちは至る所に現れてますからね。

2016-03-24 02:58:33 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 

 

 
不思議がり
  オットーさんも素敵な詩人ですね。 The Sense of Wonder 『不思議を感じる心』から p101の第3パラグラフ3行目途中から。 ...
 

 ペネベーカーさんの実験は、世界中で、その効果が証明されているようですね。

 ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の第14章 Languare : Miracle and Tyranny「言葉 :奇跡も残虐も(、もたらすもの)」p.243の、第2パラグラフから。

 

 

 

 

 

 ペネベーカーさんの研究のもう1つの側面にも、私は関心を持ちました。ペネベーカーさんの研究協力者達は、親しいことを話す時と、難しい課題について話した時、声の感じと話し方が変わる場合が多いことですね。その違いはハッキリしてますから、ペネベーカーさんは、この実験とは違うテープを混ぜちゃったかな、と思ったほどでした。たとえば、1人の女性は、その日の予定を子どものようなキャンキャンする声で話したかと思ったら、舌の根も乾かないうちに、レジから100ドルくすねた話をした時には、声は小さくなるは、トーンも落ちるはで、まるで別人でした。気持ちがいろいろ変われば、研究協力者たちの手書きも変わりますからね。研究協力者が話題を変えれば、丸っこい字から、角ばった字に変わるやもしれませんね。文字の傾きや筆圧まで変わるんですね。

 

 

 

 

 

 気持ちって、至る所に現れてんですね。

 この前初めて面接した子も、最初は緊張して、吃音が出てたけど、楽しい話が一緒にできたら、吃音が全くでないばかりか、こちらが訊くことに、出来るだけちゃんと応えよう、って感じになりますからね。表情や声のトーンや大きさ、立ち居振る舞い、姿勢まで変わる感じになります。

 気持ちは実に至る所に現れますよね

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発達トラウマの子どもを癒すもの

2016-03-24 01:58:44 | ブルース・ペリー教授の『犬』

 

 

 
豊かな国土とそこに根を下ろして生活していることが国富
  昨日、東京の内村鑑三記念キリスト教講演会に参加しました。目黒区中根の今井館聖書講堂で、昨日2時からでした。淀橋町柏木(現在の新宿区北新宿、大久保駅の近く)にあ...
 

 繰り返しですが、いつでも、トラウマを負わされた子どもにとって大事なのは、やり取りのある関係です

 ブルース・ペリー教授の The boy who was raised as a dog の第11章、「癒しのやり取り」に入りますp.232、始めの方から。

 

 

 

 

 

 ピーター、ジャスティン、アンバー、ローラのような子どもをいやしたものは、その子のまわりの人たちでした。彼らの家族、友達、その子どもたちに敬意を払った人たちで、子どもの弱さや脆さにも踏みとどまり、その子どもたちが時間を掛けて新しいことが出来るように、粘り強く助け続けた人たちです。それが、テッドにチームの統計を取るようにしてくれたコーチでも ヴァージニアにローラの育て方を教えた養母でも、ピーターのことをかばい守ってくれた1年生でも、あるいは、たくさんの私の患者さんたちの、驚くべき養父母さんでも、すべての人が一番大事なセラピーをこの子どもたちにしてくれたんですね。というのも、この子どもたちが一番欲しいのは、豊かな人間関係だったからでした。その豊かな人間関係こそは、子どもたちが居場所を見つけ、大事にされる場だったんですからね。

 

 

 

 

 

 私どもサイコセラピストは、発達トラウマを抱えた子どもたちを「治療」するのは、自分達だと思いがちでしょうね。ブルース・ペリー教授も児童精神科医ですから、同様だと思います。

 しかし、ブルース・ペリー教授は、発達トラウマを抱えた子どもを癒すのは自分達医者だ、とは言いませんね。さすがですね。本当の癒しは、子ども等の身近な人たち、その人たちと共に居る場が、子ども等の居場所になり、その人たちが子どもを大事にしてくれること以上に、子どもの癒しになるものはありません

 

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