エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

市民が一番大事なお客様?

2016-06-01 07:22:23 | ブルース・ペリー教授の『犬』

 

 

 
対話のない教育
  高橋源一郎さんが、朝日新聞に月一度書いている「論壇時評」が一冊の本になりました。『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書514)。独特の切り口で、民主化のために...
 

 発達トラウマ障害≒愛着障害のジャスティンは、そもそも生まれそのものが苛酷でした。

 ブルース・ペリー教授の The boy who was raised as a dog の第6章、本のタイトルにもなっている「犬として育てられた少年」のp.127、第4パラグラフから。

 

 

 

 

 

 おばあちゃんが病気の間、おばあちゃんと同居している友人アーサーがジャスティンの世話をしてくれました。赤ちゃんのジャスティンの行動は厄介になり、それは、こんなに短い間に、母親と祖母の2人を失ってしまったからであることは明らかでした。アーサーは、まだ自分も喪に服している時に、泣きわめき、癇癪を起す子どもにどう対処したらいいのか分かりませんでしたし、アーサーはすでに60代後半でしたから、こんなに大変なことを担う肉体的、心理的な体力がありませんでした。アーサーは児童保護委員を呼んで、この子のためになる安定的な場を探したわけですね。ジャスティンには、親戚もいなかったからです。児童保護委員(CPS)は、この少年は安全であると感じましたから、アーサーに「次のところが見つかるまで、ジャスティンを預かっていただけますか?」と尋ねました。アーサーは「分かりました」と言いました。アーサーは、生来、嫌とは言えない男でしたし、我慢強い人でしたしね。アーサーは「児童保護委員は、ジャスティンのために新しい場を探し回ってくれるだろう」と思いましたから。でもね、児童保護委員は、申請に応えて動く、危機対応の組織でしたし、新しいところを探すように求められない限り、動かなかったのです。

 

 

 

 

 

 アメリカにも、日本のお役所仕事さながらの申請主義(聴こえは良いが、言われなければ、仕事をしない、という怠慢ぶり、気が利かない、遅いお役所仕事の典型)の組織があったんですね。

 日本はあらゆる役所がこの仕事をしない質、そのくせ長時間労働なのが、実態です。それは、市民が一番大事なお客様という、行政の目的を見失って、役所が自動運転、「目的、使命を考えない」「人類に対する犯罪」(ハンナ・アーレント)に成り下がっているからなのですね。

 ジャスティンも、アーサーというお人よしだけれども、ジャスティンをどう育てたらいいのか分からないお爺さんと一緒にいなくちゃならなくなりましたね。

 

 

 

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葬式代もない貧しさと不思議なプレゼント

2016-06-01 04:21:36 | 聖書の言葉から

 

 

 
神様がくださる優しさ
  本物は、嘲りを浴びるようなところから、生まれる場合が多い。祝福の中で生まれるものと言ったら、赤ちゃんの他は、偽物が多い。 Young Man Luther...
 

 

 今朝も矢内原忠雄先生の言葉です(岩波新書『続 余の尊敬する人物』から)。内村鑑三のことを述べている件です。内村鑑三が貧乏生活が長かった中での話ですね。

 

 

 

 

 

 日露開戦を前にして非戦論を唱へ、萬朝報社の職をなげうつた翌年先生の母が逝去しましたが、葬式を出す費用にこと缺いた矢さき、『余は如何にして基督信徒となりし乎』のドイツ語譯の印税がスツットガルトの書店から届いて、その場の用が辨ぜられたという逸話があります。

 

 

 

 

 

 

 この不思議な巡り合わせ、シンクロニシティ、のことを、昨日のブログでも取り上げたみたいに、神の摂理、すなわち、神様の贈り物・プレゼントだと感じますよね。葬式代もなくて四苦八苦していたら、思いがけず印税が入った…。不思議でしょ。

 しかし、これは内村鑑三だけのシンクロニシティ、神のプロビテンス(プレゼント)じゃぁありませんからね。

 

 

 

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発達トラウマ障害(DTD)劇場完成!

2016-06-01 02:54:25 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 

 

 
朝の挨拶
  「儀式をする関係」ritualizationは、≪私≫という感じ a sense of "I"が育つ舞台だから、大事なんですね。 Th...
 

  発達トラウマ障害≒愛着障害の子ども達は、暴力のために攻撃的になった場合、劇的な力がありそうな演劇トラウマ療法も通用しないらしい、ですね。

 The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』p.341の、第2パラグラフから。

 

 

 

 

 

 (訳注:ヴァン・デ・コーク教授が運営している、ボストンの)トラウマ・センターのチームが調査しようと決心したことは、この状況を変えていこう、それも、間を作り、感情をコントロール出来るようにする練習に集中するような、長期の集中プログラムによって、この子どもたちが実際に経験しているような暴力を直接扱った脚本を使って、やろう、という訳ですね。数か月の間、私どものスタッフたちは、ジョセフ・スピナッツォラをリーダーに、演劇集団「街の即興劇」の役者たちと、毎週の様に会って、脚本づくりをやりました。その役者たちは、私ども心理学者たちに、即興劇、ミラーリング、正確な身体の響き合いを教えてくれたので、怒り狂い、対決し、縮こまり、落ち込む様子をキッチリと描き出すことが出来ました。私どもが役者の皆さんの教えて差し上げたことと言えば、発達トラウマ障害の症状の引き金になるトリッガーのことと、発達トラウマ障害の症状がくりかえされてしまうことを、どうやったら理解し、治療できるか、ということですね。

 

 

 

 

 ”演劇集団「都市開発」”としていたのは、”演劇集団「街の即興劇」”の間違いでした。お詫びして訂正します。おいおい訂正していくつもりです。

 さて、心のことは心理学者が、身体のことは役者が、それそれ教え合う、見事ななチームプレーですね。

 

 本物の発達トラウマ障害(DTD)のセラピーは、様々な職種が民主主義的に話し合い、お互いに認め合う中で、高められていくものなんですね。

 

 

 

 

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発達トラウマ障害(DTD)のこどもは、ADHDとは別物だぁ!

2016-06-01 00:34:35 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 

 

 
対話のない教育
  高橋源一郎さんが、朝日新聞に月一度書いている「論壇時評」が一冊の本になりました。『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書514)。独特の切り口で、民主化のために...
 

 

 「発達トラウマ障害愛着障害」と診断・アセスメントすることの大事さを、改めて考えていただけたらいいですね。

 発達トラウマ障害≒愛着障害の子どもは、ADHDと一番間違います。

 今朝も、今から7年前、311(2011)を遡って2年前、ヴァン・デ・コーク教授が、2009年に出した、発達トラウマ障害(DTD : developmental trauma disorder)をDSM-にハッキリと入れてね、という提案書(http://www.traumacenter.org/announcements/DTD_papers_Oct_09.pdf) の51目。

 今朝は、妥当性と信頼性の章の22日目。ADHDとの鑑別の続きです。

 

 

 

 

 

自尊感情は、ADHDにおいても影響を受けるけれども、自分がハッキリしないこと、自分を確かにできないこと、親たちの「どうせダメでしょ」という目が、ADHDの中核的な特色になることはありません。しかし、自分がハッキリしないこと、自分を確かにできないこと、親たちの「どうせダメでしょ」という目こそが、発達トラウマ障害(DTD)の特色です。対人関係の中でトラウマを受けた子ども達が、次第に、ADHDと誤診されやすくなる(ブリスコ ‐スミス、とヒンショー; 2006、ディヴィスとギャスパー、2005; 遠藤ら、2006; ヒューザイン、アルウッドとベル、2008; モルソー等、2001; ウェインスタイン等、2000)のは、ADHDのせい、というよりも(ADHDのせい、に加えて)、感情も、行動も、関係も、自分で自分をコントロール出来ないから、と考えても良い。

 

 

 

 

 

 発達トラウマ障害(DTD)が、感情も、行動も、関係も、自分で自分をコントロール出来ない、ということです。いかに深刻な精神疾病かが、お分かりだろうと思います。 発達トラウマ障害(DTD)は、自分を失っている、と確かに言えますね。

 

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