新・本と映像の森 215 宮部みゆき『泣き童子(わらし) ー 三島屋変調百物語参之続 ー』角川文庫、2016年
角川書店、475ページ、定価本体760円、2011~2012年連載
江戸時代の神田三島町の袋物三島屋に働くおちかは、主人伊兵衛の姪で、川崎宿の実家・旅籠<丸千>から訳あって出てきた。
女中のおしま・お勝に混じって、奥さんのお民、番頭の八十介、小僧の新太といっしょに働いて1年になる。
伊兵衛は「変調百物語」の聞き手を心が破れているおちかにまかせるようになる。
「その不可思議な話は、おちかを魅了した。語った客も、語ったことで、あたかも見えない重荷をおろしたように、なにがしかの安らぎを得たようだった。その安らぎの温(ぬく)もりが、おちかの心にも小さな灯りをともした。」(p13)
「怪異を聞くということは、語りを通してこの世の闇に触れることだ。闇のなかには何が潜んでいるかわからない。そのわからなさまでをもまとめて聞き取って、胸に収めてゆく覚悟がなければ、この聞き手は勤まらない。
語って語り捨て、聞いて聞き捨てる。」(p15)
とても興味深くて、ボクは宮部みゆきさんの他の小説も読んでみたくなった。
これは3冊目。現在は第1期が5冊まで出て了。目次は以下の通り。
第一話 魂取(たまどり)の池
第二話 くりから御殿
第三話 泣き童子
第四話 小雪舞う日の怪談語り
第五話 まぐる笛
第六話 節気顔(せっきがん)