本と映像の森(第3) 20 蘇暁康・羅時叙・陳政『廬山会議 ー 中国の運命を定めた日 ー』毎日新聞社、1992年 20210424
監修:辻誠吾、495ページ、定価2500円。中国語原題「ユートピア祭」
習近平の現代中国を「理解」しようとするなら毛沢東の過去中国を「理解」しなければならないと思う。
この本は1959年の7月から8月まで中国・江西省廬山で開かれた中国共産党中央委員会の諸会議を扱っている。時間空間で言うと局時局部の現象である。
だが、ある意味で戦後中国の歴史の転換点となった。なぜなら政策をめぐる意見の相違がついに「反党分派」とされたから。
彭徳懐・張聞天・黄克誠・周小舟らが「右傾」とされ失職した。ある意味、この事件は1950年代の路線闘争を総括し、1960年代の2000万人以上が餓死した悲惨な「大躍進」と1966年以後の悲惨な「文革」への転換点となっったと感じる。
著者たちは細かく日と時間とひとり1人の個人を追って、事実を再組み立てしていく。それがどの程度真実に近いかわからないが、現時点ではかなりの確度がありそうだ。別の可能性が出てくるまでは。
著者たちは、もちろんこの「右傾分子」たちが実際は正しい人々だったという立場に立っている。ボクも1970年代の昔から興味があっていろいろ読んできたけど、ボクもそう思うが、さらに考えていきたい。
立場は正しいが、戦略・戦術は正しかったのか?
この本を通読すると、中国共産党中央委員会の正式会議なのだが、その会議の何週間かにもわたる長さにびっくりさせられる。
さらに彭徳懐が「反党分子」とされ、さらに張聞天・黄克誠・周小舟らも「彭徳懐を頭とする反党集団」とされたのは毛沢東がまず断定しただけだということにビックリする。
3番目に驚かされるのは「廬山会議」というけれど、ボクたちの考える「会議」の形すらなしていないことです。とくに毛沢東の「判定」が出てからは「廬山つるしあげ」「廬山ハラスメント」の感がある。
のちに文革で失脚する劉少奇ら幹部も先頭に立ってこの「つるしあげ」「ハラスメント」に生き生きと(それとも、いやいや?)参加している。
おかしな話は「反党集団」で行政職を失職したのに、1人ほとりの党籍は除名もされたとは書いてない。毛沢東が指示しなかったということか。迫害する対象として残しておいたということか。
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最後に、今の中国は局部局部で同じような「つるしあげ」「ハラスメント」の感がある。とくに新疆や香港でひどいが、それが国外へも漏れ出てきたと思う。これは別稿で書くつもりです。