新・本と映像の森 85 新海誠監督アニメ映画『君の名は。』107分
(アニメ3・SF21)2016年8月公開
何の変哲もない男子高校生と普通の女子高校生の青春メロドラマのように最初は見える。
出だしは、東京に住む男子高校生の立花瀧(たちばなたき)と飛騨の田舎に住も女子高校生の宮水三葉(みやみずみつは)から始まる。
設定は、瀧は兄と2人暮らしであり、三葉は祖母と妹との3人暮らし。
瀧の両親がなぜいないのかはストーリーに関係しないからか、まったく語られない。
三葉の母は妹を産んでから病気で亡くなり、父は家を出て、今は町長をやっている。祖母は代々の神主だ。
遠く離れた2人の生活に何故か同じような異変が起きる。2人は、次第に2人の心がときどき入れ替わり始めたことことに気づく。
以下、ネタバレです。
☆
物語のクライマックスは、もちろん「周期彗星の到来」と「偶然的な隕石落下」である。
最初、1回目に見たときは、この部分の時空構造とそのSF的原因が、いまいち理解できなかった。2,3度見直して、ようやくわかった。
いいアニメ映画なんだけど、ドラマのクライマックスが構造上、一点に来ずに二箇所に分散するため、わかりにくいのが難点と思う。
しかしアニメの美しさはすばらしい。宮崎駿さんのアニメより舞台がぼくたちの日常に近いからか、感情移入もしやすい。
高校生の日常風景も。都会の電車通学の光景も。
田舎の星空も。村祭りも。神社の巫女踊りも。
その一つに思春期の男女がいる。それこそ、このアニメの魅力かも知れない。少なくともボクは何度でも見返したいと思った。
☆
ラストで初めて実際に肉体で会えた三葉と瀧は、涙を流しながら、互いに同時に問いかける。
「君の名前は。」
決めセリフがタイトルと違うところがおもしろい。セリフは疑問形ではない。