新・本と映像の森 154 永田萌『てのひらの虹 ー とても私的ないわさきちひろ論 ー』大和書店、1993年
251ページ、定価1600円(本体1553円)
ちひろさんについいて語りたいことはいろいろあるが、まずこの本から。
著者は、言わずと知れた、ボクも好きなイラストレーター。ちひろさんと似た女性かも知れない。そんな永田萌さんがちろさんの生きた跡を辿る。
それぞれの実像がおもしろい。
夫の松本善明さんや、息子の松本猛さん。画家や編集者たち。それぞれ面白い。
たとえば猛さんは言う。
「おやじの両親と同居したのは、おふくろが44歳のとき。おやじが衆議院に初当選したときは48歳。おふくろの母親、つまり岩崎のおばあちゃんが脳血栓で倒れたのが50歳。後で車椅子の生活をするようになったので、やっぱりこちらもひきとったのが51歳」
「10人近い人間がひとつ屋根の下にいたわけです。」
「それに、ぼくは二浪してましたからね」(p102)
葉祥明さんは言う。
「ちひろさんの絵の最大の魅力は、あの自由自在に使えるえんぴつの線の美しさだね。」(p171)
萌さんは言う。
「ちひろさんの白は、紙の白よりも白く見えるし、バックに濃い色をつけてまっ白に抜いたものより、白い清潔な輝きと気品がある。」(p189)
萌さんは、『あかまんまとうげ』の「かくちゃん」、『ひさの星』の「ひさ」、『ゆきのひのたんじょうび』の「ちいちゃん」を「ちひろさんの描く三大美少女と呼んでいる。」(p1832)
などと書いていると延々、終わらないので、この程度でひとまず終えることにする。
ボクは思う。ちひろさんの「外側の無限の優しさ」と「内側の無限のきびしさ」は、どうやって育ったものだろうか。
ボクの家のなかに、たぶん数十冊のちひろさんの本がある。それらを辿り直す余裕があるだろうか。