新・本と映像の森 337 小島信一『万葉集 運命の歌』新人物往来社、1979年
359ページ、定価1300円。
『万葉集』の「現代詩訳」というか「現代語自由律5行詩訳」とでもいおうか。『万葉集』のうち数百首を現代語訳している。
ボクはこの詩情がすごく好きです。ボクの「詩的メッセージ」がもしかしたら似ているかも知れない。
たとえば額田王の有名なうたがこうなる。
征旅
だれよ月を叩くのは
あれ月じゃないドラだよ
さよならはたっぷりいった
帆は予感にふくらみ
汐あいはいま 熟した
(p348)
あと、いくつかあげておこう。
君がゆく 道のながてを 繰りたたね 焼きほろぼさむ 天の火もがも
3724
炎 茅上娘子(ちがみのおとめ)
焼くのよ
あなたがたどる旅路を
はしからはしまで
もし神さまが あたしに
火をくださったら
(p216)
海の底 沖をふかめて あが思へる 君にはあはぬ 年はへぬとも
676
中臣女郎(なかとみのいらつめ)
私の心はしずんでいる
遠い沖 海の底に
うきは海面にただよわせ
錘(おもり)は深くおろしている
あのひとの心に
だから『現代語訳 ○○○』は『○○○』とは違う、異質のものだと思います。でも、ボクは小島信一『万葉集 運命の歌』が元の『万葉集』と同じくらいに好きなのです。