本と映像の森(第3) 11 黒田日出男『龍の棲む日本』岩波新書、2003年 20201204
2003年第1刷~2012年第4刷、232ページ、定価本体780円。
黒田日出男さんは歴史学者で、これはまじめな歴史の本です。オカルトではありません。
ただし歴史上、日本に棲んでいると信じられた「龍」を信じた日本人について文献をあたったまじめな歴史的考察です。
ぼくは遠州古代史で信州諏訪湖とつながった遠州の「さなぎ池」があるという伝説から、この本に注目しました。
「Ⅳ 龍が棲む中世日本」で黒田さんは中世日本人は日本列島の地下は龍が棲む洞窟群で縦横無尽につながっていて信州諏訪湖と遠州につながった洞窟はそのほんの一部にすぎないことが明らかにされます。
似たような話は、あと2つある。1つは浜松に住んだ小説家藤枝静男さんの『田紳有楽』です。
主人公たちは、池にうち捨てられたグイ呑みや抹茶茶碗や丼鉢が人間に化け、SF的空想の行動をひろげ、地下世界を通りアジア世界にも遊ぶ。
もうひとつはマンガ家の長編SFマンガ『クラダルマ』。地球人類を大津波や大地震で滅ぼそうとする敵「シャクティ教団」と対立する主人公たの物語なのだが、その大津波や大地震を引き起こすのが教団のあやつる地下の巨龍なのだ。
SF小説家平井和正さんの『幻魔大戦』にも超巨大地震を引き起こす地下の赤龍が出てくる。
現代の小説家・マンガ家の脳裏にも中世日本人の感覚が残っていることがよくわかる。
今日はここまで。何か進展があったら報告します。
☆
アップしたところで気になって、過去ログを検索してみたら3年前に掲載したのをまったく忘れていました。
以下、掲載します。
「古代ブログ 17 古代史の本 2 黒田日出男『龍の棲む日本』岩波新書、2003年
2017年12月08日 21時32分26秒 | 遠州古代史
岩波書店、232ページ、定価本体780円
「本と映像の森」から「古代史の本」「戦争と平和の本」を分離することにした。
これはファンタジーやSFではなく、まじめな日本歴史の本です。
つまり中世的精神では、この日本の姿がどう見えていたか。考える1つは、「行基図」などの日本地図。
もう1つは中世伝説に出てくる龍。とくに龍という生き物が日本の国土の地下を自由に行き来しているという信仰がおもしろい。
とくに水のあるところや神社には「龍穴」があり、日本の地下はそのような「龍穴」で縦横無尽に結ばれているのだ。
浜松の伝説に関心の高い人なら、よく知っている「諏訪湖と遠州が洞窟で結ばれている」という「穴伝説」も、この「龍の穴伝説」の文脈でとらえられる。納得である。
おもしろいので、引き続き探索していきたい。」