アメリカの医療保険制度、・・・・・映画『シッコ』vs私の本『黄色いさくらんぼ』
『ムーア監督にの5』
マイケル・ムーア監督の映画に、一種のサブリミナル効果を持って、批判する文章が出ました。(二本前の、私の文章を、ご参照ください)それが、なぜ表に出たのかについては、わかるポイントは、映画内には、数々あります。が、<ムーア監督ご自身と、その映画はなかなかの優れものだ>と思う私の認識は変わることはありません。
<それは、買い被りでしょう>と思うほど、ムーア監督は日本を映画の中では、高く評価しています。それは、他の海外の作家みたいな漫画とか洋服のデザインなどのポップカルチュアーのポイントで評価をするのではなくて、社会システムについて、高い評価を与えるという形です。
彼はいいます。「日本には、すでに医療制度がある。それは、アメリカにはまだ無いのだ」と。その、国民皆保険制度があるために、日本人がどれほど、安心して暮らすことができているか、そのメリットを日本人は正しく知っているかなあ?
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ただし、皮肉なことに、その制度は戦後の占領軍の中に、格別理想主義の人がいて、そういう人々の理想郷実現の意欲によって、もたらされたものであります。
そして、その影に、農地解放によって、急速に貧乏になっていった地方地主や、財閥解体で、急に貧乏になった日本の富裕層や、士農工商(+華族制度)の廃止によって、同じく、急速に貧乏になっていった人たちの犠牲は、踏まえています。また、戦死してしまった、一般の軍属、BC級戦犯、そして、A級戦犯・・・・・数多い犠牲の上で、より多くの人(大衆または、庶民といってよい私たち)が一生の安寧を得るようになりました。
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アメリカとは、国家としては、第二次大戦の苦しみが、一切ない国であったがゆえに、かえって、これらの制度が確立していないのです。国の大統領を選ぶのも直接選挙ではなく、かつ、ゴア候補とブッシュ候補が争った大統領選挙では、相当な不正が行われたであろうことは、海外から見ていても推察できるぐらいでした。日本は、国会議員を、直接選ぶことはできます。その後は、やや、あいまいで、決して100%の民主主義が到達できているとは思えませんが、ともかく医療保険制度は確立しています。
アメリカという国を私は好きですよ。だけど、ニューヨークしか知らないし、それも一人暮らしだったので、できるだけ、ブロンクスやブルックリン(特にアフリカンが多く住んでいる地帯)には、近づかないようにしていたので、全部は知りません。芸術家とアパートの近隣の人々と、付き合っただけです。かれらは、アメリカないでは、数少ないらしい中流の下の人々ですが、精神的にはひどく誇りが高くて、立派な存在です。
しかし、2000年の修行時代に、ほとんど、毎日五時間は一緒に過ごした男性・版画家が、私が帰国後、たった九ヶ月で孤独死したのです。一緒に版画を作っていた時期は、健康そのもので、一日に立って10時間は働いていました。朝早く来る人で午後五時ごろには帰宅してしまう人なので、私が一緒に過ごした時間は、毎日五時間程度でしたが、あの元気なひとが、別れたあとたった九ヶ月で死ぬということが一切信じられず、それは、ほぼ、七年間にわたって、私の胸の中にある疑問だったのです。
それを一種のミステリー小説仕立てで描いたのが、私の五冊目の本『黄色いさくらんぼ』でしたが、・・・・・超・簡単に彼の死を総括すれば、・・・・・医療保険があったなら、あの突然の逝去の知らせのメールは来なかっただろうに・・・・・と、思い、切ないのです。
孤独死は栄養不足か、慢性疾患が隠されていたかのどちらかでもあり、また、その人にとって最大のよりどころであった版画工房がつぶれて閉鎖された精神的なショックも大きかったとは思いますが、ニューヨークの画廊街、および、版画界では、相当な程度に有名だっな存在が、孤独死をしなければならないのは、せつな過ぎる結果です。
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日本では、このぐらいのレベルの人(実績があるアーチスト)ですと、誰かが支援して、「生活保護を受けなさい」というのではないかなあ? となると、孤独死はしないで済むわけです。もちろん、芸術家は、気難しいから共同生活などしたくないともいえますが、毎日工房で作業ができた人ですから、ある程度以上の、共同生活精神はある人です。
生活保護費があれば、生きることができたのではないかと思えば、・・・・・余計切なくて、たまりません。自殺ではなくて、生活費が無くて、一種の餓えから来る死だと思うから。日本人の奥さんが居るという話でしたが、その人とはとっくの昔に見限られて(貧しいからですが)分かれていたのでしょう。または、たんなる見えでそういっていたのか、どちらかはわかりませんが、本当の所は、孤独で暮らしていたからこそ、61歳でなくなるという結末になりました。救われなかったわけです。
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<日本人が、日本から見ると、そう見えますが>、どうも、生活保護費はアメリカには、無い模様です。はっきりわかりませんが、医療保険も、国民皆保険制度は無い模様ですので、貧乏であると、病気からも死からも、救われません。厳しい国です。
一方日本では、最近では、若い人の餓えによる死とか、生涯未婚である人々の孤独死が、問題になっています。でも、申請すれば、生活保護は、受けられる(?)
福岡県でその認定が厳しいことが問題になっていますけれど・・・・・
このように、日本人が守られているのは、几帳面な官僚機構のせいです。日常生活がきちんと運営をされていくのは、官僚機構と、それの下部組織としての地方公務員の働きのおかげがきちんとしているからです。
そういう意味では、小さな政府であるアメリカは国民保護の面で、きちんとしては居ないのです。日本の方がずっと、レベル高く、一般の人を保護しています。
しかし、民主党の手法は、「官僚をやっつけよ、陳情を、小沢に一手に集めよ」というわけで、従来の日本にあった、にほんてきなるもののよさを、失わせるものです。ムーア監督がせっかく、日本を買いかぶってくれているのに、最もよい部分を失おうとしている現在です。残念です。
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私が、今日、最も問題にしたいことは、そういうポイントでは、不思議なほど、アメリカより進んでしまっている日本なのに、そこに住んでいる人が元気が無いということなのです。
それが本当に問題なのですが・・・・・簡単にはその理由も解決案も出せないというか、いえませんね。では、今日はすっきりしない終わり方ですが・・・・・ここで、いったん閉じましょう。
2010年2月8日 雨宮 舜
『ムーア監督にの5』
マイケル・ムーア監督の映画に、一種のサブリミナル効果を持って、批判する文章が出ました。(二本前の、私の文章を、ご参照ください)それが、なぜ表に出たのかについては、わかるポイントは、映画内には、数々あります。が、<ムーア監督ご自身と、その映画はなかなかの優れものだ>と思う私の認識は変わることはありません。
<それは、買い被りでしょう>と思うほど、ムーア監督は日本を映画の中では、高く評価しています。それは、他の海外の作家みたいな漫画とか洋服のデザインなどのポップカルチュアーのポイントで評価をするのではなくて、社会システムについて、高い評価を与えるという形です。
彼はいいます。「日本には、すでに医療制度がある。それは、アメリカにはまだ無いのだ」と。その、国民皆保険制度があるために、日本人がどれほど、安心して暮らすことができているか、そのメリットを日本人は正しく知っているかなあ?
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ただし、皮肉なことに、その制度は戦後の占領軍の中に、格別理想主義の人がいて、そういう人々の理想郷実現の意欲によって、もたらされたものであります。
そして、その影に、農地解放によって、急速に貧乏になっていった地方地主や、財閥解体で、急に貧乏になった日本の富裕層や、士農工商(+華族制度)の廃止によって、同じく、急速に貧乏になっていった人たちの犠牲は、踏まえています。また、戦死してしまった、一般の軍属、BC級戦犯、そして、A級戦犯・・・・・数多い犠牲の上で、より多くの人(大衆または、庶民といってよい私たち)が一生の安寧を得るようになりました。
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アメリカとは、国家としては、第二次大戦の苦しみが、一切ない国であったがゆえに、かえって、これらの制度が確立していないのです。国の大統領を選ぶのも直接選挙ではなく、かつ、ゴア候補とブッシュ候補が争った大統領選挙では、相当な不正が行われたであろうことは、海外から見ていても推察できるぐらいでした。日本は、国会議員を、直接選ぶことはできます。その後は、やや、あいまいで、決して100%の民主主義が到達できているとは思えませんが、ともかく医療保険制度は確立しています。
アメリカという国を私は好きですよ。だけど、ニューヨークしか知らないし、それも一人暮らしだったので、できるだけ、ブロンクスやブルックリン(特にアフリカンが多く住んでいる地帯)には、近づかないようにしていたので、全部は知りません。芸術家とアパートの近隣の人々と、付き合っただけです。かれらは、アメリカないでは、数少ないらしい中流の下の人々ですが、精神的にはひどく誇りが高くて、立派な存在です。
しかし、2000年の修行時代に、ほとんど、毎日五時間は一緒に過ごした男性・版画家が、私が帰国後、たった九ヶ月で孤独死したのです。一緒に版画を作っていた時期は、健康そのもので、一日に立って10時間は働いていました。朝早く来る人で午後五時ごろには帰宅してしまう人なので、私が一緒に過ごした時間は、毎日五時間程度でしたが、あの元気なひとが、別れたあとたった九ヶ月で死ぬということが一切信じられず、それは、ほぼ、七年間にわたって、私の胸の中にある疑問だったのです。
それを一種のミステリー小説仕立てで描いたのが、私の五冊目の本『黄色いさくらんぼ』でしたが、・・・・・超・簡単に彼の死を総括すれば、・・・・・医療保険があったなら、あの突然の逝去の知らせのメールは来なかっただろうに・・・・・と、思い、切ないのです。
孤独死は栄養不足か、慢性疾患が隠されていたかのどちらかでもあり、また、その人にとって最大のよりどころであった版画工房がつぶれて閉鎖された精神的なショックも大きかったとは思いますが、ニューヨークの画廊街、および、版画界では、相当な程度に有名だっな存在が、孤独死をしなければならないのは、せつな過ぎる結果です。
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日本では、このぐらいのレベルの人(実績があるアーチスト)ですと、誰かが支援して、「生活保護を受けなさい」というのではないかなあ? となると、孤独死はしないで済むわけです。もちろん、芸術家は、気難しいから共同生活などしたくないともいえますが、毎日工房で作業ができた人ですから、ある程度以上の、共同生活精神はある人です。
生活保護費があれば、生きることができたのではないかと思えば、・・・・・余計切なくて、たまりません。自殺ではなくて、生活費が無くて、一種の餓えから来る死だと思うから。日本人の奥さんが居るという話でしたが、その人とはとっくの昔に見限られて(貧しいからですが)分かれていたのでしょう。または、たんなる見えでそういっていたのか、どちらかはわかりませんが、本当の所は、孤独で暮らしていたからこそ、61歳でなくなるという結末になりました。救われなかったわけです。
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<日本人が、日本から見ると、そう見えますが>、どうも、生活保護費はアメリカには、無い模様です。はっきりわかりませんが、医療保険も、国民皆保険制度は無い模様ですので、貧乏であると、病気からも死からも、救われません。厳しい国です。
一方日本では、最近では、若い人の餓えによる死とか、生涯未婚である人々の孤独死が、問題になっています。でも、申請すれば、生活保護は、受けられる(?)
福岡県でその認定が厳しいことが問題になっていますけれど・・・・・
このように、日本人が守られているのは、几帳面な官僚機構のせいです。日常生活がきちんと運営をされていくのは、官僚機構と、それの下部組織としての地方公務員の働きのおかげがきちんとしているからです。
そういう意味では、小さな政府であるアメリカは国民保護の面で、きちんとしては居ないのです。日本の方がずっと、レベル高く、一般の人を保護しています。
しかし、民主党の手法は、「官僚をやっつけよ、陳情を、小沢に一手に集めよ」というわけで、従来の日本にあった、にほんてきなるもののよさを、失わせるものです。ムーア監督がせっかく、日本を買いかぶってくれているのに、最もよい部分を失おうとしている現在です。残念です。
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私が、今日、最も問題にしたいことは、そういうポイントでは、不思議なほど、アメリカより進んでしまっている日本なのに、そこに住んでいる人が元気が無いということなのです。
それが本当に問題なのですが・・・・・簡単にはその理由も解決案も出せないというか、いえませんね。では、今日はすっきりしない終わり方ですが・・・・・ここで、いったん閉じましょう。
2010年2月8日 雨宮 舜