ホジキンリンパ腫に関してはABVD療法の成績が良いので、大きな変化は初発の患者さんではありません。
しかし、再発した患者さんに対して大きな選択肢が出てきました。僕が以前書いた頃は自家移植をするかどうか・・・という選択肢でしたが、ブレンツキシマブ ベドチン(抗CD30抗体にMMAEという抗がん剤を引っ付けたもの)と抗PD-1抗体のニボルマブが出てきました。再発した患者さんに関しては満足できる成績ではなかったので、大きな進歩だと思います。
ただ、ここでは初発の患者さんに対する説明ですので、前とあまり変わらないかもしれません(汗
ホジキンリンパ腫の説明(患者さん向け)(前の記事)
それでは、書いて見たいと思います。
Qさん(20代、男性)は首のリンパ節が腫れたということで、近くの病院を受診され、当院に紹介となりました。首だけでなく、鎖骨上リンパ節も腫れていました。悪性リンパ腫を疑い、リンパ節生検をしたところ、ホジキンリンパ腫の診断を得ました。
(ホジキンリンパ腫は若年者と高齢者の2峰性ですが、若年者は頚部+鎖骨上リンパ節腫脹から始まる限局期が多いことが知られています。限局期の長期生存率は90%前後です)
Qさんは他に調子の悪いところはありましたでしょうか?例えば、熱が出るとか寝汗がひどいとか、体重が減ってきたなど。
Qさん:発熱と寝汗があります。寝汗は布団が濡れて、夜中に着替えるくらいぐっしょりです(ホジキンリンパ腫はB症状が30%くらいの方に出ます)
なるほど。もしかすると病気のせいで、そのような熱が出たりしているかもしれません。治療をして熱がでなくなれば、病気が原因です。
ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の1つですが、20代と60歳前後の高齢者に多いとされています。ホジキンリンパ腫は5つのタイプに分かれますが、Qさんのタイプは古典的ホジキンリンパ腫に入る「結節性硬化型」です。これは15歳から30歳くらいまでに多いとされています(上のような特徴のホジキンリンパ腫です。ちなみに明らかにタイプが違うのは結節性リンパ球優位型というタイプで、これはCD20が陽性でCD30は陰性という特徴があります)。
今から病気の評価を行なっていきます。広がり具合を見ることと、血液検査などの評価を行なっていきます。
広がりを見る検査はPET-CTと骨髄穿刺というものを行います。PET-CTは腫瘍細胞が固まって存在している場所を見つけるのが得意な検査です(細かくは「悪性リンパ腫の説明(僕の説明の仕方)、僕の非ホジキンリンパ腫の説明の仕方(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫:DLBCLを例に)」を参照してください)。一方、骨髄の検査はPET-CTでは見つけることができない、バラバラに骨髄の中に入り込んだリンパ腫細胞を見つけるために行います。これらの検査を行い、血液検査でさらに細かく評価を行います。
(上記の検査結果が出て、結果説明と治療の説明を行います)
Qさんに先日受けていただいた検査の結果が出ました。まず、PET-CTですが、最初にあった首と鎖骨上リンパ節の2箇所だけでした。骨髄の検査でもリンパ腫の浸潤はなく、StageはII期になります(Stage IIB)。
ほかの評価も行なっていますが、発熱などのB症状があったためかアルブミンは少し減っていましたが、貧血もなく、白血球の上昇も12000/µl程度でおさまっていました。ほかのリスク因子もなく、国際予後スコアという評価方法では2点になります。
これの統計学的な意味は説明できますが、Qさんには治っていただきたいと思っていますので、一緒に治す。治るという気持ちでいていただければと思います。万一の時の治療法はいくつか考えがありますので、まずは今から説明する標準治療を理解して、受けていただければと思っています。
(ちなみに限局期ホジキンリンパ腫では血沈を治療前に見ることもあります。というかチェックする医師は確認します)
治療に関してですが、ABVD療法という治療法を行います。これはドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの4剤による抗がん剤治療で、この組み合わせを2週間ごとに2回を1サイクル(要するに4週間、1サイクル)とする治療法です。これを病気の状態に合わせて治療を行います。
標準的には限局期にはABVD療法を4コース行なった後に、腫瘍があった場所に放射線治療を行います(IFRT)。しかし、放射線治療は二次発癌の危険があります(30年後の発癌率)。私の方針としては20歳代であれば放射線治療を避け、ABVD6コースで行きます。これは巨大腫瘍(Bulky mass)がなければ標準治療として認められています。(高齢者の限局期には放射線治療を行います。ABVDは骨髄抑制が強くてやりきれない時がありますので)
Qさん:2次発癌とはどのようなものでしょうか?
放射線治療を行なった後に白血病や固形癌などの危険が普通の人より上昇します。時間がたてばたつほどリスクが上がっていきます。今の時点では30年後のリスクという論文が示されており、標準化罹患比(一般人のグループと比較した時にリスクが何倍になっているか)を調べると4.6倍になっています。
Qさん:もし、放射線治療を使わなくても治りますか?
先ほど言いました、ABVD療法を6コースで治る可能性は同等と評価されています。
(ちなみに、前の記事:ホジキンリンパ腫の説明(患者さん向け)に書いていますが、ABVD+IFRTはABVDのコース数や放射線治療の強度など様々なものが検討されています)
わかりました。頑張って治療を受けます。宜しく御願い致します。
と、こんな感じでしょうか。ホジキンリンパ腫の基本はABVD療法です。それでかなり治る可能性は高いです。
しかし、再発、もしくは最初から効きにくい患者さんがいらっしゃいます。そういう患者さんに対してはESHAP療法などプラチナ製剤を含んだ治療法から自家移植などに行く患者さん、先ほど書いたブレンツキシマブ ベドチンを使用する患者さん、ニボルマブを使用する患者さんなどに分かれると思います。
ただ、まずはABVDを完遂できるかどうかが重要です。高齢者には意外ときつい治療なので(40代でもやりきれなかった方がいました)、そういう意味でもやり遂げるというのは一つ重要なことです。ただ、無理な場合はうまく調整しながら治療するのが重要だと思います。
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