AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

沢田健による寒熱の針灸治療

2013-08-24 | 経穴の意味

1.背部基準線と督脈・膀胱經走行の関係 
背部の基準線は、後正中、背部一行(後正中の外方0.5寸)、背部二行(後正中の外方1.5寸)、背部三行(後正中の外方3寸)と定められている。
ただし、この基準線に背部膀胱經の走行を当てはめた場合、筆者の鍼灸学校時代、「背部二行を背部膀胱經一行に、背部三行を背部膀胱經二行とする」と教わった。
しかし以前から気になっていたが、鍼灸治療基礎学(代田文誌著)を読むと、「沢田健は背部膀胱經二行線を後正中の外方1.5寸、背部膀胱經三行線を後正中の外方3寸とした。そして背部膀胱一行を督脈の外方0.5寸と定めた」と記載されている。なお従来の考え方では、背部膀胱一行を督脈と定めていたという。


2.沢田健の背部一行の運用

沢田健による分類の優れていたのは、背部一行の用途を熱症治療と定め、さらに同じ高さの背部兪穴の所属する臓腑に関係する熱に関係すると体系化した点にある。なお背部一行の位置を石坂宗哲「鍼灸説約」によれば、石坂は華陀夾脊として好んで用いていたようだが、五臓六腑との関連を認識していなかったので、運用に難があった。

たとえば「心」の病証の一つである舌症状では心兪を施術するが、心の熱による病証では舌の激痛と発赤が顕著になるので、心兪一行を刺激する、といった使い方をする。
同様に次のような使い方もできる。(一行に現れる反応点は、およそ2行の穴より5分ほど上にある)
 脾兪一行の圧痛:脾に熱がある時
 腎兪一行の圧痛:腎に熱がある時
  胃痙攣→胃兪または脾兪一行刺針
 胆石症→胆兪一行刺針
 腎盂炎→腎兪一行刺針
 眼痛→肝兪一行
 舌痛→心兪一行刺針 

 

3.熱府と寒府

私の手元には、<「澤田先生講演」(速記)昭和11年8月6日京都祇園中村楼に於いて(東邦医学社)>という資料のコピーがある。澤田健60才の時のもの。8000文字ほどの長編であった。鍼灸古典を基礎としつ、とくに五運六気学説を中心に語っているが、私はその方面に不案内で、理解するに困難を感じる。ただただ沢田健の博学ぶりには仰天されられた。

私の理解の外にある内容が多い中に、背部一行と熱府・寒府の使い分けについて述べた部分があった。

1)内臓の熱を去るには背部一行を使用

内臓の熱を去るには、岐伯のいうように「臓腑の熱をとるに五あり。五の兪の内の五の十を刺す」とあって、これは脊の五臓の兪穴の第一行のことをいっている。これによって内臓の熱を診し、またそれを去ることができる。

2)外感の寒熱を去るには熱府・寒府を使用

熱府=風門、寒府=陽関(足)、この運用で外から侵入してきた寒気を去ることができる。

①熱府

第2胸椎棘突起下外方1.5寸に風門をとる。甲乙經に風門熱府とある。熱府とは熱の集まる処という意味である。門は出入り口で、入口をふさぐことが風邪の予防になり、出口を開けることが風邪の治療になる。いかに高熱があるものでも、風門に鍼するのは差し支えない(灸は控える)。
 風邪の抜けぬ者では20~30壮すえると早く治る。
司天(≒臍より上)の寒気は風門でとれる。つまり熱府は、寒邪にも熱邪の治療にも用いる。

※背中がゾクゾクした、というような瞬間、古人は風邪(ふうじゃ)が身体内に入ったと認識し、風邪の侵入する部分が風門と考えた。ぞくぞくする状態を悪寒とよぶ。悪寒は本来は視床下部の温度設定を、これから上昇させるサインであり、これから熱が上がる予兆である。代田文彦先生は、銭湯などで熱い湯船に入る準備として、背中に何杯も熱い湯をかけている人を見て、中枢の温度の感受性を一時的に狂わせることで熱い湯船に入れるようになるのだと考えたという。 


②寒府

陽陵泉の上3寸。膝外側、陽陵泉上3寸、大腿骨外側上顆上方凹陥処に足の陽関をとる。
素問では足の陽関を寒府といっており、「寒府は膝の下の解営にあり」とある。下から上がってくるような寒さは、まず膝に寒邪が集まる。そこで膝や膝蓋骨が非常に寒くなる。在泉(≒膝より下)の寒邪を去るには寒府を用いる。

※足陽関は腸脛靱帯あたりにある。一般に靱帯部は筋肉部に比べて血流が乏しい。皮膚温が低いも当然である。 


八髎穴の選択と刺激方法の選択

2012-11-22 | 経穴の意味

1.序

最近行われた「現代鍼灸科学研究会」の席上、中髎穴への刺針が話題になった。ある先生は、1㎝刺せば十分だと話し、別の先生は、深刺して響かせなと効果がないと発言した。どちらが正しいといえるのだろうか。この辺りの知識を調べてみることにした。


2.仙骨神経の走行


仙骨神経は左右5対(S1~S5)ある。脊髄を出た後、仙骨神経は後枝と前枝に分かれる。仙骨背面には、左右4つずつの後仙骨孔(第1~第4後仙骨孔)があり、この後仙骨孔ら、S1~S4神経経後枝が出てくる。この中で、とくに S1-S3後枝外側枝は中殿皮神経と称され、仙骨部を中心とした皮膚知覚を支配する。

一方S1~S3の前枝は、前仙骨孔から出てきて、L4・L5神経枝とともに仙骨神経叢をつくる。


3.後仙骨孔からの刺針

仙骨の後仙骨孔(第1~第4後仙骨孔)対応して八髎穴がある。すなわち上から順に、上髎・次髎・中髎・下髎である。第1後仙骨孔(上髎)への刺針が最も深く、足方向に向て斜刺60度程度となる。第4仙骨孔(下髎)への刺針は比較的浅くほぼ直刺になる。

針灸治療において、これら4穴の中では、次髎と中髎が使用頻度が高いので、ここでは中髎を例にとって刺針を検討する。

1)中髎直刺深刺

中髎穴を刺入点として、第3後仙骨孔孔中に刺入すると、まず第3仙骨神経後枝を刺激できる。第3後仙骨孔を貫通した後、針は仙骨管(仙骨管中には硬膜があり、硬膜にまれた馬尾神経がある)に入り、ときに仙骨神経前枝も刺激し、第3前仙骨孔中に入っ本孔を貫通し、骨盤内に入る。

その後、仙骨神経叢中に入り、仙骨神経叢から発する神枝である坐骨神経や陰部神経を刺激し、それら支配領域に針響を与えたり、筋収縮反応生ぜしめたりする。すなわち坐骨神経を刺激すれば下腿までの針響が生じ、陰部神経を激した場合、肛門や生殖器に針響が至ることになる。


これらの仙骨神経叢を刺激するためには、針は6㎝程度の深度が必要なので、2寸以上長さの針を使用することになる(ただし第3前仙骨孔入口から第3後仙骨孔出口までの骨の厚みは約3㎝)。

 

 2)中髎斜刺深刺

第3後仙骨孔上の皮膚を刺入点として、頭頸部方向に斜刺して仙骨後面に鍼を沿わせる方法。第3前仙骨孔中はもちろん、第3後仙骨孔中には刺入しない。本法は、北小路博司先生が泌尿器疾患の治療で行う方法である。これには2寸8番針を使用し、50㎜皮下に刺入する。仙骨孔中に深刺しなくてもこのような方法で骨盤神経(S2~S3)に影響を与えていることが知れる。

 

 

 

4.八髎穴の中で、どの穴を使うか? 刺激深度・方向はどうするか?

1)坐骨神経症状、陰部神経症状をつかさどる仙骨神経叢は、L4~S4前枝で構成されいる。

この仙骨孔から出る部を1カ所刺激するとすれば、ほぼ中央になるS2仙骨孔、すなわ次髎が妥当であろう。しかしながら、坐骨神経を刺激するのであれば、殿部ほぼ中央にる坐骨神経ブロック点から刺針する方が容易である。陰部神経を刺激するのであれば、部神経刺をする方が容易である。すなわち坐骨神経痛や陰部神経症状に対し、あえて次から深刺(6㎝程度)する意義は乏しいであろう。 

2)泌尿生殖器臓器の副交感神経機能をつかさどる骨盤神経は、S2~S4なので、S3骨孔である中髎刺激が妥当である。中髎からの刺激は、骨盤神経を刺激するのに適切だが、後第3仙骨孔に入れるほど深刺をしなくても、泌尿生殖器疾患の治療に効果のある場合が多い。表面刺激である施灸刺激でも差し支えないのかもしれない。

3)上記見解により、仙骨を貫通するほどの次髎や中髎からの深刺は不必要であると考えた。この目的では坐骨神経ブロック点刺針や陰部神経刺針の方が容易である。ただし太い針で仙骨骨面に沿わせるなどの針や、大きな艾炷で壮数を増やすなどの強刺激は必要かと考えた。


 


和田清吉の頭髪際針法-山元式新頭針との比較

2012-05-25 | 経穴の意味

山元敏勝氏の新頭針(YNSA)の関連資料を調べていると和田清吉著「新しい針灸臨床入門 」S52.3.1(自費出版)の中に、「頭髪際針法」を発見した。この本は私が30年以上前に購入した本で、いずれ読むだろうと考えてたものであった。山元式も創生期の基本点誕生期の頃は、頭髪際針と呼ばれたこともあるくらいで、両者間に共通点が見いだされる。
両氏の共通点は、始めに焦氏「頭針法」を追試することがらスタートしたが、満足すべき効果が出ないことが、独自の頭皮チャートを生み出す原点となったことである。焦氏の頭針法は、ブロードマンの脳地図を頭皮に投影させたものを理論的根拠としているが、鍼灸治療としては、この刺激ポイントでは不完全であることを示唆している。

 

1.「頭髪際鍼法」の概要
和田清吉氏が「頭皮鍼法」(=焦氏頭鍼法)を追試する中で、頭髪際縁に沿う、一定部位を触診し、一定の方向に横刺し刺激を与えてやると、それぞれの刺針部位が身体の一定の疾患(とくに痛み、しびれ、麻痺、関節障害、分泌異常、血管痙攣など、急性・慢性の疾患)に効果が多く、また中枢性、末梢性ともに効果があることを認めた。

1)主に前髪際から額角および側頭髪際に刺針する

2)上前部から型・背・上肢区・腰腿区・下肢区と区分ブロードマンの脳地図ではなく、經筋的考え方をする。
3)和針3~5番。上行性に刺針(斜刺15°)雀啄。捻鍼しながら機能訓練を加える。

 

 

 

2.和田と山元式の共通点と相違点

類似点:和田と山元の頭針のチャートを比較すると、細かい部分での違いは多いが、前正中線の前髪際から左右に離れるにつれ、対応する脊椎の高さも低位になり、前髪際中央部は頸項に対応し、耳介前髪は腰腿に対応している。

相違点:山元式の基本点は、前髪際~側頭髪際~耳介前髪際と並んでいて、例外的に眉の内端から上方中央にかて胸椎を対応させている。これに対し、和田は、髪際を内臓反応点とし、額中央の高さの横並び線~前頭髪際に体壁組織(骨、筋など)を対応させている。

和田と山元が個別に調べた結果であるとすれば、類似性は高いというべきだろう。

 

 


山元式新頭針セミナーに参加して ver.2.0

2012-05-18 | 経穴の意味

YNSAとは、Yamamoto New Scalp Acupunctureの略で、山元新頭針法のことをいう。山元敏勝医師が創案した。

山元は1966年頃から針治療に興味を持ち、針の痛覚抑制効果を追究し、針麻酔下で手術も行った。次第に運動障害にも興味を持ち、頭部に置針することで疼痛あるいは運動障害に回復できることに気づいた。

その頃は、中国式の頭針法も我が国に紹介されていたので、その追試を3年間ほど行ったが、思わしい効果が得られず、中国式とは別の山元式の頭針チャートをコツコツと作り上げ、現在に至っている。このYNSAは、日本の医師には余り受け入れられなかったが、先入観の少ない海外の医師にむしろ受け入れられた。その治療効果の高さが評判をよび、逆輸入の形で、わが国でも受講生を増やしているという。

私は、平成24年2月11日、東京で行われるという山元式新頭針講習会に参加することにした。以下は、その概要だが、山元式のマップは多数あることと、図版の版権の問題もあるので、最小限の提示とした。マップ自体はネット検索で入手は容易である。下の写真で、山元俊勝先生(右)、奥様(左)のドイツ人のヘレン先生) 


YNSAにはそれは、Basic Points(基礎点) 、Sensory Points (感覚点) 、Brain Point(脳点)、Ypsilon Points(イプシロンポイント)という4グループがある。  ※インプシロンとは、ギリシャ語の5番目の文字「ε」で、”5つ目の”といった意味がある。側頭部に集中した、「内臓点」である。この稿では、基本点と感覚点を中心に紹介する。

 

1.基本点 Basic Points 
前頭部の基本点を説明する。側頭部、後頭部に基本点は存在するが、前頭部と比べて使用頻度 は低い。基本点とは最初に発見した新頭針のソマトトープ(SOMATOTOPE =体性局在)である。現在、A点からK点まである。常用するのA点からE点まである。

基本点は、痲痺、片痲痺、対痲痺などの運動神経障害に主に用いるが、外傷、手術、炎症による運動器の障害および疼痛に適応がある。
例:五十肩の反応点。従来C点を刺激していたが、現在では、これにA点を加える。

 

 

 

 

 2.感覚点:Sensory Points          
感覚点は、感覚器官の機能障害、疼痛、外傷、術後疼痛、アレルギーの施術に用いる。

          

 

 

3.脳点:Brain Points (図なし)
大脳点と小脳点は、基本A点から頭頂部へと続く線上で、正中線から約1㎝の位置に両側に 存在する。脳幹点か左右の大脳点、小脳点の間の正中線上にある。

大脳点、小脳点、脳幹点

脳点の適応
  3種類の脳点は、多くの神経学的な疾患や障害に用いられる。
  すべての運動神経の障害、片痲痺および対痲痺
  偏頭痛および三叉神経痛、パーキンソン症候群、多発性硬化症
  めまい、視力障害、耳鳴り、失語症
  痴呆症およびアルツハイマー病、てんかん
  不眠症、鬱病および精神障害

4.内臓点(図なし)
内臓点は側頭部に密集している。
内臓点は主として内臓の機能不全や疾患あるいはアンバランスなどに対して用いる。しかし、運動性、運動神経性障害の施術にも用いる。 基本点の施術で好成績が得られなかった場合は、機能不全やアンバランスの原因は根深いものと考えられる。そのような場合に、内臓点を使用する。 例えば、片麻痺患者の患肢の運動機能を改善するためには、基本C点(上肢)および基本D点(下肢)を施術するだけで十分満足できる良い成果が得られる。しかし、効果が満足できるものでなかったり、期待どうりでなかったりすることもある。このような場合に、内臓点を施術する。この受け手に内臓疾患があるのではなく、内蔵にアンバランスをきたしているためであり、内臓点を施術することにより全身のエネルギーバランスを再構築することができ施術効果をもたらすのである。
  心包とは心臓を包んで保護している袋 三焦とは六腑「大腸 小腸 胆 胃 膀胱 三焦」の一つで。 上焦(横隔膜より上部)、中焦(上腹部)、下焦(へそより下部)に分かれ、呼吸・消化・排泄をつかさどるという。 

内臓点の適応
あらゆる内臓器官の機能不全に適応となる。 基本点、感覚点、脳点が用いられるすべての適応症にも有効である。 また、あらゆる運動性、機能性障害、さらに心理的障害も治癒できる。
● 下痢、便秘、消化性潰瘍などの消化管の不調
● 胸痛、呼吸困難、過換気症候群、気管支喘息、気管支炎、狭心症、不整脈、頻脈
● 腎の障害、腎結石、多尿症、前立腺肥大症
● 肝炎、膵炎、糖尿病、胆嚢炎、胆石症
● 頭痛、片頭痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺
● 片麻痺、全身麻痺、脳性麻痺、多発性硬化症
● 種々の運動障害、頸部痛、胸部痛、腰部痛、尾骨痛
※内臓点を、Y点(イプシロンポイント)ともよぶ。イプシロンとは、ギリシャ語で「5番目」  のこと。側頭部にある。種々の内科的組織的な機能障害の治療に用いるという。

5.診療の方法
どこが悪いのかを診断する。そのために、以前は腹診をしていた。(腹診の図も従来のものとは異なる)しかし腹診には時間がかかるので、首診を発明し、現在では愁訴の聴取→頸診→頭部反応点の触診→刺針という流れになっている。
YNSA独自の腹診、頸診とも、そのように定めた根拠がはっきりしていない。

実際には、頸診察の前に肘部周囲の筋緊張を調べる(これも一つの診察法らしい)ことも多い。

刺針ポイントを決定するには、上述した種々のチャートを組み合わせ、試行錯誤する。刺針して効果不足の場合、そのすぐ横に刺針するか、もしくは別のチャートにのっとって該当部位を探る。
反応点は、指先もしくは爪先で押圧して痛がるところで、骨の凹みがあるという。
施術は必ず両側性に行うが、基本点および感覚点は通常は、患側を最初に施術する。片痲痺の場合は健側を最初に施術する。

 針は、セイリン製、ステンレスディスポ針、寸3#5を使用。頭皮や筋内に刺入するが、頭蓋骨までは刺激しない。
置針の皮内鍼の要領で、フランス製のASP(auricular semi-parmanent Needle=耳介半永久針)という鍼を使用することがある。ASPは本来、耳鍼用に開発されたもので2日~4週間程度置針しておく。特殊な挿入器具を用い、押し込むようにして刺針する。非常に小さな置き罵詈で、鍼の尖端は皮下に入るが、鍼の頭は皮膚から出る。数日後に自然に排出されるという。患者はほとんど痛がらない。


6.模擬患者の治療
セミナー当日は、午後から実際に症状のある受講者が患者役となり、模擬治療を行った。模擬患者は、ちょうど20名だった。主だった実際の治療を報告する。ただし聞き漏らした部分が非常に多く、不正確である。
1)N.M女 主訴:腰痛
  ①左右の合谷の圧痛を比較、②頸診→左斜角筋圧痛より「腎」の問題、③基本穴の左D点刺
  ④左斜角筋基部刺、⑤症状軽快
2)S.T男 主訴:右背痛、右肩関節後部痛
  ①基本穴右A点刺、②斜角筋の圧痛チェック、③基本穴D点刺、④基本穴右E点刺 
  ⑤症状軽快
3)Y.N女 主訴:首・肩の痛み、目のかすみ
  ①基本穴右頸椎刺 ②基本穴右C点刺 
4)S.N男 主訴:右突発性難聴に伴う聴力低下
  ①前額部耳鳴点、②右額角髪際部の耳鳴点、③効果なし
5)M.H男 主訴:手足の冷え 
  ①頸診、②基本穴A点刺、③基本穴C点刺、④効果良好
  ※本症例は難しい症例だが、治療効果が出たのには驚いた、
6)A.T男 主訴:首の左側屈で出現する左耳鳴
  ①頸診 ②耳垂部からの頸椎刺 ③基礎点D刺 ③左胸鎖乳突筋起始部手技針
7)A.S男 主訴:ムチウチ(首から背部にかけての痛み)
  ①肘部の手三里付近の圧痛点刺針、②頸診、③左基礎点A点、右A点刺、④症状軽減
8)S.T男 主訴:右股関節開脚痛
  ①頸診にて左腰椎に反応、②脳神経の膀胱点刺、③左基礎点E点刺、④症状軽減
9)Y.I男 主訴:胸椎の上部と周囲の痛み 
  ①頸診 ②基礎A点刺 ③肘部診察 ④角孫付近2本 ⑤頸診 ⑥上星付近刺 ⑦症状軽減 10)M.T女 主訴:頸椎捻挫、腰痛(交通事故後遺症)
  ①頸診→左胸鎖乳突筋起圧痛足、②右側頭刺 ③症状軽減
11)S.K男 主訴:アレルギー?に伴う咳、鼻水、痰
  ①鼻症状に→額中央刺、 ②咽・咳に→前頸部診察 ③肺点針(コメカミあたり)  
12)Y.A女 主訴:右膝痛(40年前、右半月板損傷)
  ①右肘チェックで腕橈骨筋圧痛+ ②左基礎C点刺針 ③前頂刺 ④症状軽減
 
7.講習会に参加しての率直な印象

平成24年2月11日、午前10時~12時30分を解説、午後1時30分~4時30分を実際の治療ということで実施した。受講者は計55名で、満席となったので数名は受講を断ったという。受講生の内訳は、7割が鍼灸師、3割は医師という印象。ANSAは日本の医師にはほとんど評価されず、一方山元先生は英語、ドイツ語とも堪能なので、海外からの受講生の方が多いといわれている。今回は、東京で開催されることと、鍼灸師でも受講可ということで、講習費4万円(早期割引で3万5千円)と高額にもかかわらず、多数の先生方が集まったという。(ドクターのみ受講とすれば、これほど集まらないだろうと某医師は話していた。
 
私は、3年ほど前、通販で山元先生の著書を取り寄せ、一読した。その華麗な経歴とは裏腹に、論理性の乏しさに驚いたことがあった。今回初めてセミナーに参加するにあたって、本では書けなかった論理を期待したのだが、これは期待外れに終わった。結局、山元先生が発見したという頸部を中心とした圧痛点の所在を診ることで、該当の頭皮ポイントを刺激せよということにつきる。最初から最後まで仮説で診断し、仮説で治療することになる。
 
山元式頭針法は、国内のドクターからの熱心なファンは少ないというが、人気の乏しさは、論理的でないことにあると考える。海外のドクターが多い理由は、外国語で講義が受けられることと、その治効性が評判になっていることの2点であろう。十二經絡を使った治療ではなく、現代鍼灸の理論も皆無であることから、針灸師にとっても、とっつきにくいという印象を受けた。
 
一方、20名の実際の治療を見学し、おおむね治療効果は良好だったが、難聴や耳鳴は、やはり治療困難なことが多いことが分かった。一方、手足の冷えに対しても速効があったことは驚きであった。
有効率は、7~8割程度であろう。この数字は、鍼というものを知らない者からみれば、素晴らしい数字かもしれないが、これまで十年、二十年と針治療を行ってきた者からすれば、現在自分が行っている針と比べ、特段に効果的というわけではないだろう。もっとも、当日セミナーでの治療は模擬的であり、セミナー受講者を患者に見立てたものなので、難治性疾患の治療に関しては、YNSAの方が効果的である可能性もある。

 


代田文彦先生のツボのイメージ改訂版

2012-01-15 | 経穴の意味

代田文彦先生は、多忙な臨床の傍ら、精力的に原稿執筆された。それは本や雑誌となり、印刷された形として発行され、一部は著者ということで手元にも郵送されてくる。
玉川病院鍼灸スタッフは、こうした印刷物を見て、初めて代田先生の考え方を知ることも多かった。
 1979年11月~1980年8月に、3回シリーズで季刊誌「理療」という雑誌に、「迷いながらの鍼灸」というタイトルで書かれた記事がある。2011年1月11日付の本ブログで一度その内容を紹介したこが、手持ちの資料不足で紹介できない部分が相当あった。しかし2012年1月、玉川同期の百合草正博先生が、「その資料なら持っている」というので郵送してくれた。その結果を受け、今回は、代田文彦先生のツボのイメージの全部を掲載することができた。


1)三陰交‥‥婦人科一切
・下腹部とりわけ子宮との関係を強く感ずる。
・子宮頸部に特に関係があり、三陰交の刺激は子宮頸部を緩ませる。
・従って妊娠初期しは刺激しない方がよい。
・子宮頸部の収縮が強いために径血の排出がスムースにいかないことにより月経痛の人は、これをゆるませるために三陰交を使う。
・肝の亢ぶりによる自律神経の調整作用。

2)陰陵泉‥‥婦人科一切
・下腹部領域のイメージ。それも何となく後腹膜という感じ。

3)足三里‥‥上部消化器の病、健脚
・臍からみぞおちにかけての領域で、とりわけ胃の働きを活発化する。
・鼻から咽にかけての作用もある。
・胃の噴門から上部の中空の管と関係するようで、これはゲップ感覚に似ている。
・古来は長旅をする際には、必ずここに灸したものである。

4)照海‥‥足冷・咽痛
・咽喉部と足首以下の血流障害との関連。
・咽との関連から、腎機能低下しているために派生してきていると思われる浮腫・頭痛等々に何となく取りたくなる穴

5)委中‥‥項頸部次いで腰部 
・腰が痛い人が来ると、委中に血絡があるかどうかが気になる。
・項頸部の血絡あるいは紅斑を目にする時、項の局所から瀉血がしたくなると同時に、委中に血絡をみつけて瀉血してみたいと思うほどに、この二点間の対応関係は密である。

6)承山‥‥肛門付近、痔
7)懸鍾‥‥項頸部
寝違いの治療は、局所をさけてここだけで奏功することが多い。

8)陽陵泉‥‥身体の側面
・側頭部痛にはじまり、肩関節痛、片痲痺に結びついている。
・胃酸過多では、足三里の代行
・膝の要
・胆嚢穴との関連から胆・肝との関連も除外できない。

9)中封‥‥脳とりわけ視床下部付近

10)内関‥‥上咽頭から胃の噴門の下付近
・上咽頭から胃の噴門の下付近まで
・それに左胸痛の心臓の領域に属するあたりが含まれる
・横隔膜
・食道とか胃の上部も漿膜の水っぽいというか、浮腫のきた状態
・針を用いて灸は用いたくない

11)尺沢、少商‥‥咽
・尺沢は咽の領域。高さは口蓋垂の基底部から喉頭軟骨くらい
・どちらかというと正中に近い範囲が有効
・深さ的には、口腔、咽頭、喉頭の粘膜表面から頸筋、頸椎の領域まで及ぶ
・尺沢が咽の正中に近い領域なのに対し、少商は外側。
・咽は咽でも扁桃領域。アデノイドの付近まで及ぶ。

12)少海‥‥頸の側面~耳
・頸の側面、それも中心よりやや後の領域から耳にかけての領域、顔面外側の副鼻腔付近
・後頭部から後頸部にかけての、コリ、痛み、つれ、あるいは耳閉塞感、耳鳴などに使って効果の現れることが多い。

13)合谷‥‥針麻酔
合谷は、針麻酔の時に使う。抜歯、副鼻腔炎の手術の時に多用した。
合谷は重要穴とされるが、小生は針麻酔の時以外は、あまり使う機会がない。
その理由は、灸の痕を虎口に残すことに抵抗があるからである。
顔面に効かせるというニュアンスは、合谷よりも手三里に印象が強い。
顔面で顎とか歯とのかかわりが強いのは、手では温溜、列缺付近である。
上顎よりも下顎に強く作用する。
列缺は、顎よりも、もっと奥の咽から期間の領域とも関連が深い。


14)曲池、和髎、天柱‥‥目 
曲池は目の領域である。目といても表面の結膜とか角膜の領域。目の表面と関わるように、
皮膚の比較的表層とは、全身にわたって何らかの影響力をもっていると考えたい。従って皮膚がかゆいときとか、皮膚病のときに取穴したくなるし、ごく表層の病変ということで、風邪のときにも取穴したくなる。
和髎・目窓は、少し奥に入った虹彩付近と関わり合いが深い。
天柱・上天柱あたりは、網膜から視神経と関わり合いが深い。

 


小野寺殿点について

2011-11-22 | 経穴の意味

 小野寺直助の小野寺殿点は、針灸学校教育では簡単に触れるに過ぎない。中川嘉志馬著『触診と圧診』金原出版(絶版)をみると、次のような記載がある。側臥位で診ることと、相当強い力で押圧することを知っておくべきだろう。

1.小野寺寺殿点の基礎知識  
1)小野寺殿点の位置と押圧方法
側臥位で股関節と膝関節を軽く曲げさせておき、腸骨陵に沿って3~4㎝下のところを指頭で腸骨面に向け、垂直に力強く、指を捻じ込むような気持ちで圧迫する。
2)判定と解釈
①弱陽性(+):圧痛が局所のみにあるもの
②中度陽性(++):顔をしかめ、または逃避する程度の痛みがあるもの。または痛みが 膝関節まで放散するもの。
③強陽性(+++):痛みが踵骨から足尖に及ぶもの。

消化器(食道、胃、十二指腸、小腸、上行結腸)の粘膜および筋層に病変があると陽性になる。病変が粘膜にのみある時は、局所の痛みはあっても放散しない。しかし深く筋層が侵されると(++)や(+++)のように放散するという。

2.小野寺殿点とは何を診ているのか?
1)小野寺殿点と上殿神経との関係
『触診と圧診』には下記のような図も載っており、 「臀部圧診点は、仙骨神経叢(L4~S3)が異常感受性を得たときに生ずる」とある。
※この図は「松永による」としている。「エアポケット現象」で有名な松永藤雄のことだろうか?

 

小野寺殿点として押圧している筋は、中殿筋であることは間違いなく、中殿筋は上殿神経支配である。上殿神経は仙骨神経叢から出る枝で運動を支配している。そして上殿筋の過敏性が一定以上になれば、その興奮は坐骨神経にも伝わり、坐骨神経痛様の痛みを生ずるのだろう。

そこまではいいとしても、上部消化器病変の反応が、なぜ上殿神経興奮という形になるのかは示されていない。
小野寺殿点のある上殿部の皮膚は、上殿皮神経が知覚支配している。上殿皮神経は腰神経叢から起こるが、胃十二指腸疾患で、腰神経叢が興奮するとも考えにくいのである。

3.小野寺殿点の圧痛の所在の違いによる推定罹患臓器
小野寺殿点の反応点と病巣部位の関係は興味深い。前部は食道、噴門部の病変に、中部は胃全体、後部は幽門部および十二指腸の病変で現れるとして、次のような図も載せられている。紺色(筆者が彩色)で描かれた線は。上方から斜め外方へと伸びているが何を意味するのだろうか。一見すると、上殿皮神経の走行に似ているが、上殿皮神経はL1~L3後枝の別名であり、この紺色線は上殿皮神経よりもさらに上方から下っているので上殿皮神経の走行とは異なる。また明らかにデルマトームとも異なる。 

4.小野寺殿点と撮診との関係(独善的解釈) 
実は、この紺色の線に興味を持ったのは、筆者が撮痛を調べるラインと酷似しているからであった。上図では、紺色線は椎体の途中から描かれているにすぎないが、線の起点は椎体直側になっていると考えている。要するに、小野寺殿点の圧痛部位を認識したら、紺色線に沿うように、撮診でその内上方を調べ、最終的にはその延長上にある椎体棘突起の直側に刺針するという技法を30年前に筆者は考案し、無数の症例に対して実効性のある治療成績をあげることができたと自負している。
 撮痛帯は、当初は脊髄神経の皮神経走行と一致すると考えていたが、体幹部の皮神経は、デルマトームと同じで、輪切りのような模様になるが、とそれとは異なる。椎体棘突起を起点として「斜め45度外下方(殿部は斜め60度外下方)を診る」という治療原則にのっとり、棘突起直側に刺針する。なぜ斜め45度となるのかを理論的に説明するのは困難であるが、実際に撮診すると、撮痛がそうした方向に延びていることを指先で感じとれる(患者は痛がる)からであり、延長上の棘突起直側に刺針するというのも、実際に治療効果があることから、この考え方の妥当性を否定できないのである。

上図の紺色線を斜め60度の外外方に下った線だと仮定すれば、次のような作図ができ、胃(全体)の撮痛帯はTh9棘突起あたりまで延びるので、内臓体壁反射的に胃の反応として妥当なものとなる。つまり、小野寺殿点で圧痛反応がみられた場合、それが胃十二指腸疾患に由来するものであれば、同部の撮診も陽性となる公算が強いといえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


築賓穴あれこれ

2011-10-03 | 経穴の意味

1.築賓の語源 
築賓穴の「賓」には、主人と並ぶ重要な客人という意味がある。主人と客人という関係で考えられるのは、相並ぶ2筋であるヒラメ筋と内側腓腹筋、もしくは内側腓腹筋と同筋のアキレス腱である。築賓の位置は、これらスジの間といった意味となると思われる。
地機穴が、地面(骨)を支えとした縦に引っ張った糸(ヒラメ筋)と考えうることを、本ブログで発表済だが、これに対して築賓は筋と筋、あるいは筋と腱の間といった捉え方である。

2.築賓の位置
教科書でいう築賓の位置は、足内果の高さと膝窩横紋端を13寸とした場合、足内果側から上5寸である。下腿内側を三等分した時、だいたい足内果側から上1/3の高さで、腓腹筋内側頭がアキレス腱に移行する部に相当し、かつ内側腓腹筋の内縁といった場所になるだろう。

  

 3.築賓の効能
沢田流には、下毒穴(解毒穴ではない)という概念があり、築賓もその一つである。築賓がなぜ下毒穴かとの説明はない。築賓は腎経に所属することから、腎において有害物を尿にとして排泄する作用を強化すると考えたのだろうか。下毒穴として有名なものは、他に肩髃がある。肩髃は大腸経に属するので、有害物を大便または汗(肺や大腸は皮膚を主るので)によって排泄する力の強化を考えたのかも知れない。

適応症としては、蕁麻疹があげられている。ただし私の臨床経験からは、築賓にせよ肩髃にせよ、下毒作用が確かにみられたとする例はお目にかかっていない。成書には、築賓が蕁麻疹の特効穴だとする記載がある。これが事実であれば、「下毒」する訳だから、対症療法に過ぎない抗ヒスタミン剤にとって代わるものとなる。これが本当の話ならば、その治療だけで食っていける針灸院になるだろう。針灸にはこの手の話が多くて困る。

築賓が内側腓腹筋とアキレス腱の境にあるとするが、地機がヒラメ筋の緊張の治療に用いるのに対し、築賓は内側腓腹筋の緊張の治療に用いる。築賓が内側-副筋とアキレス腱の筋腱接合部ということであれば、トリガーポイントが好発しやすい構造といえる。同様の意義をもつものに承山や飛陽がある。代表疾患には腓腹筋痙攣や腓腹筋の肉離れがある。

4.築賓施術の肢位
ヒラメ筋と腓腹筋を比較すると、ヒラメ筋の断面の方が太く発達しており、腓腹筋はヒラメ筋の上に載っている薄い筋にすぎない。日常的に働いているのはヒラメ筋で、腓腹筋は瞬発力を必要とする際、一時的に強い力を発揮するが、すぐに疲労してしまう。一般的に筋緊張を緩めるには、該当筋を緊張させた状態で刺針するか、刺針した後に筋を緊張させる必要がある。
具体的には膝伸展位にしての仰臥位で築賓に刺針した状態で、足関節の伸展運動の自動運動を行わせることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


特効穴の効き具合の印象(2)-下上半身

2011-05-09 | 経穴の意味

01 △梁丘:胃痙攣、腹痛→動物実験で、大腿神経を刺激すると、胃腸の蠕動運動に影響を与えることができた。なお胃は痙攣痛を起こすことはなく、現代では胆石痛のことだとされる。 
02 △足三里:自然治癒力を高める、食欲不振→動物実験で、深腓骨神経を刺激すると、胃腸の蠕動運動に影響を与えることができた。自然治癒力を高めるとの印象はない。 
03 △裏内庭の施灸:食あたり→私は牡蠣による食中毒となったことがある。裏内庭に灸するも、二壮目から熱く感じた。三壮やったが腹痛変わらず。しかし雑誌(鍼灸OSAKA)の自験例では、確かに効果あったことが報告されている。 


04 ◯三陰交:生殖器疾患→①三陰交がS2デルマトーム上にあることで八髎穴と同様の用途があるが、患者自身で灸できる部位である。
②子宮頸部平滑筋の緊張を緩める。ただし最近の研究では、針による月経痛鎮静 作用は、子宮収縮程度を弱めるのではなく、関連痛の鎮痛によるものだとしている。すなわち脊髄神経の興奮緩和が針の治効理由である。
③三陰交の皮神経支配は伏在神経(知覚性)である。伏在神経は大腿神経の枝で、大腿神経は腰神経叢(L1~L3)からの枝である。腰神経叢からは腸骨下腹神 経や腸骨鼡径神経が出て、鼡径部や下腹部を知覚支配しているので、これらの痛みにも有効なことが予想できる。
④妊娠初期に三陰交刺激は禁忌となっている。これは、子宮頸部を緩めることで、堕胎につながるのではないだろうか。 
05 △至陰:逆子→施灸すると数時間、子宮体部の緊張が緩む。この間に自然に逆子矯正できる余地が生まれる。このチャンスを生かせないと効かない。 

 

06 △裏内庭:食あたり→直腸~下部大腸あたりの平滑筋の緊張を緩める効果。八髎穴と同様の効果だが、患者自身でできる部位である。
07 ×照海・復溜:足冷→足冷者の、冷えている足部へ刺針施灸しても効果がない。健常 者であれば軸索反射が起こり血流改善にもなるが、その機構が働かないのが、そもそも の足冷の原因である。 
08 ×築賓:下毒→下毒穴として、沢田流では肩髃や築賓が知られているも実効は乏しい。
09 ×地機:糖尿病→地機に針灸するだけで糖尿病が改善できれば、誰も苦労しない。 
10 △血海:不妊症、生理痛、子宮内膜炎→大腿神経刺激なので、結局は腰神経叢刺激になる。治療効果としては仙骨神経叢刺激である三陰交の方が勝る。


11 ◯委中刺絡:腰痛→膝窩静脈の血流改善により、二次的に腰椎周囲の血流を改善する。
12 ×光明:眼精疲労→下肢にある光明穴が、なぜ目に効くのかは、名前からの連想であろう。
13 ◯足臨泣・太衝:頭痛→上衝タイプ(のぼせて赤ら顔)の非拍動性の強い頭痛には、太衝や足臨泣などの足指間穴への置針(実際には足指間の最大圧痛部を刺激)は効果がある。弱い頭痛では効果がない。 
14 △条口:五十肩→条口から承山方向への深刺。肩甲骨内旋筋の筋緊張を緩めることで、肩甲骨上方回旋の可動性を改善するのであって、肩甲上腕関節の可動域制限には、あまり効果ない。 
 


   


   

 


特効穴の効き具合の印象(1)-上半身

2011-05-04 | 経穴の意味

 針灸治療には特定症状に有効であるとする特効が伝承されている。特効穴を実際の針灸臨床に使ってみると、効くことも効かないこともある。臨床経験が長くなるにつれ、効きそうもないツボは、初めから使わなくなってくる。
 ところが成書では、何も進歩しないまま、百年一日のごとく特効穴が羅列されている。針灸臨床の初心者は各人が、一つ一つ自分で確かめて一喜一憂せざるを得ないわけで、いつまでも知識の蓄積ができない。大いなる時間の無駄である。
そこで上半身と下半身の2回に分け、代表的な特効穴について私なりに、 ◯=効く △=効くことがある
×=まず効かないのランクづけをすることにした。ただし私見であることをお断りしておく。
特効穴が症状部近隣にあるもの、体幹部にあるものは省略した。

01 ×尺沢:咽頭痛  
02 ×孔最:肛門疾患 
03 ×温溜:歯痛 
04 ×曲池:糖尿病、皮膚病。沢田流では下毒穴として、曲池・臂臑・肩グウ・築賓などが 知られているが、 その根拠は伝わっていない。皮膚の痒みに対して、下毒穴への施灸は、自分の経験では効果があった試しがない。
05 △人迎の置針:血圧低下→反射的kに血圧降下の程度起こるが、せいぜい10~20mHg
程度であり、その効果も持続しない。安くて安全な降圧剤が入手できる以前の昔には有用 だったかもしれない。むしろ人迎は、咽痛に効果ある。

06 ×少海:耳鳴 目の充血  
07 ×陰ゲキ:狭心症 心悸亢進症 
08 ×神門:狭心症、ヒステリー、神経衰弱、便秘→心経の原穴である神門は、「神」が 出入りする重要な門という意味がある。古代中国人の考えた「心」とは、 私は現代でいう大脳辺縁系のことで、情動本能を 主る機能があると考えている。(大脳新皮質の思考力や想像力は肝、運動機能中枢と伝導路は脳)。このような点から、ステリーや神経 症が主治となるようだが、実際の効力には乏しい。気が滅入る(気欝)になると腸管の気の通りも悪くなり便秘もするが、この便秘に対しても神門の灸は、実際にはほとんど効果ない。

追伸:平成23年5月15日に行った勉強会の席上、参加者2名の先生から、便秘に澤田流神門の灸(3~5壮)が効く確率は5割程度あるという意見があった。施灸直後に排便はないが、1週間後の再診時に聞くと、あの晩に排便があったと報告するという。ただし治療作用は、1回の排便のみだとのことで、根本的な便秘症が治るわけではない。

09  △少衝:人事不省 狭心症→指先強刺激であれば覚醒作用もあるだろう。狭心症に対 しては、手のどの井穴からもよいが、本来針灸不適応である。 
10 ゲキ門:肋膜炎 喀血 心臓病 

11   ◯内関:乗物酔い→海上自衛隊では、乗り物酔い防止として内関あたりに磁気を貼るという。横隔膜の緊張を緩める作用があるので、心疾患・吐きけ止め・シャックリに適応がある。 
12 ×中渚:頭痛、耳鳴→中渚への置針は、耳鳴りに効果あるという者もいるが、効いた  試しがない。
13 ×左陽池:自然治癒力を高める→「三焦は原気の別便」(難經)とされ、陽池は三焦 の原穴ということで、澤田腱は三焦主治の最重要穴として重視した。また人身の右を陰 となし左を陽となすとする素霊の説から、左陽池に灸した。しかし沢田健に師事してい た代田文誌先生も、装飾的だとしてやがては使わなくなった。     
14  ◯
和リョウ:眼科疾患→側頭筋緊張を緩めるので眼精疲労に有効
15  △耳門:耳鳴→耳鳴りには無効。しかし顎関節部に位置し、顎関節症や顎関節症に随 伴した耳鳴には有効なこともある。


16  ◯腰腿点:腰痛→治効機序は不明だが、効くことが多い。効果持続時間は短い。
17  ◯身柱:疳の虫→身柱の灸は、ちりげ(散り気)の灸という別名がある。疳の虫とは、不機嫌で心身落ち着かない状態(=小児神経症)で、とくに顔面部の興奮状態をいう。気が頭顔面部に集まった状態で、これを散らす役割が、ちりげの灸である。頸部交感神 経緊張状態を緩める効果であろう。
18  ×ア門:脳溢血で舌に障害のある言語障害(施灸) →中国文献では有効だというが病   院針灸以外、行う機会がない。構音障害の治療は、現代医学では非常に困難である。 
19  △百会:不眠症、肛門疾患、蓄膿症、肥厚性鼻炎→百会は鎮静作用、前頂は興奮作用 がある。百会に灸すると開眼していてもリラクセーションを意味するアルファ波が出る(筑波 大報告)。鼻炎の針灸は、鼻粘膜を支配する三叉神経第1枝を興奮させることが根拠と なっているので、前頂よりも上星やシン会の方が効果がある。   
   


陰部神経刺針の適応について

2011-04-05 | 経穴の意味

陰部神経刺針は、「シモ」の穴の症状に用いられるが、内科・泌尿器科・婦人科・整形外科などの縦割り科目分類では、全体像を把握しづらい面があるので整理を試みた。

 

陰部神経(S2~S4)は、体性神経で運動成分と知覚成分に分けられる。運動成分については排尿排便運動になるが、骨盤神経(副交感)や下腹神経(交感)の要素がからみ、また重篤な器質的疾患の結果として排便排尿の障害が生じている場合が多いので、一般に針灸で改善させることは難しい。しかし痛みに関しては、針灸にはさまざまな適応があると思われる。

1.陰部神経の運動作用  
骨盤神経は排便・排尿に促進的に働く。下腹神経は排便・排尿に抑制的に働く。
陰部神経は、肛門挙筋と外肛門括約筋の運動を支配している。陰部神経は、畜便・畜尿時に漏れを防ぐ役割と、排便・排尿時に意志により、大小便排出を我慢する役割がある。陰部神経の運動作用はなくとも生存には困らないが、社会生活を営めなくなる。

1)畜尿・畜便運動
①畜尿時、無意識的に外尿道括約筋を閉じることで、尿失禁を防ぐ。
②畜便時:無意識的に外肛門括約筋を閉じることで、便失禁を防ぐ。
 ※排尿排便の我慢は、外尿道括約筋や外肛門括約筋の強度収縮により可能となる。

2)排尿・排便運動
①意志により外尿道括約筋を緩めることで、排尿できる状態になる。
※陰部神経が異常興奮すると外尿道括約筋が過緊張し排尿障害になる。逆に陰部神経が出産などの際に障害を受けると、筋の収縮性が低下して尿失禁を生ずる。
②意志により外肛門括約筋を緩めることで、排便できる状態になる。
③肛門挙筋は、便を排出するとき、肛門が下方に押し出されるのを制止する役割がある。

2.陰部神経の知覚興奮と針灸治療

※陰部神経刺針の方法については、筆者の過去ブログの腰下肢症状のカテゴリー中の<馬尾性脊柱管狭窄症に対する陰部神経ブロック刺針>で記述済み。

1)膀胱炎・尿道炎での痛み
陰茎背神経の興奮による。
※前立腺、直腸の知覚は、副交感性である骨盤神経支配。慢性前立腺炎(肛門奥の不快感)に針灸を試みたが無効だった経験がある。
※陰部神経は、肛門の知覚や運動を支配する会陰神経が分かれるので、中極や関元からの刺針は、肛門に針響を与えることも原理的にはできるはずだが、実際にはペニスに響いてしまうことが多い。下腹部に刺針して肛門に響かせることが、便秘治療の秘訣だと記している文献が多いのであるが・・・。

2)ED
陰茎背神経は、ペニス全体を知覚支配している。中極・大赫:陰部神経の終枝である陰茎背神経を刺激できる部位であり、ペニス先端まで響かせる方法がよいとされる。 

3)痔痛
肛門裂創での痛みや外痔核での痛みの直接原因は、陰部神経の分枝である会陰神経の興奮による。
肛門裂創や外痔核に対しては陰部神経刺針が効果ある場合が多い。内痔核に対しては陰部神経刺針を行うことで外肛門括約筋の血流をよくすることで静脈鬱血状態を改善するのではないだろうか。筆者の痔の針灸治療は、2.5寸#8相当中国針を使い、会陽穴から直刺深刺を行うことが多い。
これは陰部神経直接刺激ではいが、肛門部諸筋の緊張緩和および血行改善作用だろう。患者は刺針中、肛門の温感と緩む感じを実感する者が多い。

4)肛門挙筋由来の痛み
立ち座りの時、尾骨~骨盤底に感じる強い痛み。肛門挙筋の過剰収縮、肥厚によるという。尾骨外縁に圧痛が出現する。筆者は、その圧痛点に2寸#4程度の鍼で深刺すると良好になった治験を数例もっている。

5)分娩第2期の痛み
分娩第2期(娩出期)は、膣道や会陰が、胎児により伸展されて痛む。これは体性神経である陰部神経の興奮による。昔、筆者は家内の初分娩に立ち合い、出産直前の陣痛緩和目的で、家内の痛いという場所(仙骨部)を強く指圧すると、いくらか痛みは軽減した。陣痛とは周期的に訪れる激痛であるが、波のピークには同じような場所が再び痛むというので、そのたびに押圧を繰り返した。これは対症療法として一定の効果があったと思っている。
※分娩第1期(開口期)は、子宮上部の平滑筋の強い収縮による痛みであり、交感神経性の下腹神経(Th10~L1)が痛みを伝達する。子宮口が開口する時、陰部神経を受けるので、陰部神経の興奮の要素もある。
※下腹神経:Th10~L1レベルから出て骨盤内臓器を支配する交感神経。

6)馬尾性間欠性跛行症的症状 
坐骨神経は梨状筋下孔から骨盤外に現れる。梨状筋下孔からは陰部神経も出るが、小坐骨孔から再び骨盤内に戻るように走行している。

陰部神経障害が膀胱直腸障害をもたらすことがあるのは上述の通りである。陰部神経障害をもたらす原因として脊柱管狭窄症が知られているが、梨状筋の緊張が陰部神経絞扼状態を惹起していることが考えられる。

間欠性跛行といえば馬尾性脊柱管狭窄症と下肢閉塞性動脈硬化症が2大疾患となるが、梨状筋緊張による陰部神経絞扼でも間欠性跛行は生じるのではなかろうか。脊柱管狭窄症という器質的疾患が針灸で改善するとは思えないのである。

しかし間欠性跛行症状を訴えて針灸に来院する者のうち、陰部神経刺針を行うことで、5割程度は効果があるという印象がある。そして針灸が効果ある者は、比較的軽症の間欠性跛行が多い。梨状筋緊張性による間欠性跛行(そして膀胱直腸障害)であれば、梨状筋 刺針や梨状筋起始部刺針(≒陰部神経刺針点)が有効となるのではかろうか。

3.仙骨神経障害症候群(高野正博)
1)高野正博医師は、直腸肛門痛、括約不全、排便障害、腹部症状は互いに合併しやすいことを指摘し、これら四症状と仙骨神経障害をもととする症候群を、仙骨神経障害症候群と名づけた。この症候群の患者では、仙骨の左右で陰部神経に沿って圧痛を伴う硬結があることがわかった。陰部神経ブロックを行ってみると、65%の患者で疼痛消失をみた。この結果、上記症状は陰部神経由来の疼痛であることが推測できたとしている。

2)便失禁患者においても、陰部神経に沿って圧痛を伴う硬結を触れることが多く、逆に陰部神経痛患者に肛門括約筋不全を伴うことが多かった。  

3)過敏性腸症候群(IBS)
IBSの精神ストレスが結腸運動に悪影響をもたらした結果であるとされる。しかし陰部神経痛患者が訴えるIBSは、中枢のストレスではなく仙骨神経障害症候群としての直腸性排便障害があるため、口側の結腸が便を出そうとして痙攣状態になりIBS様症状を呈している例がある。この例も陰部神経に沿って圧痛を伴う硬結を触れ、骨盤痛を伴うことが多い。
文献:高野正博:会陰痛を主訴とする仙骨神経障害の病態の解明に向けて-仙骨神経障害症候群-;日本腰痛学会雑誌、第11巻・第1号


膻中穴圧痛の古典的意味と現代医学的意味 ver.1.2

2011-01-09 | 経穴の意味

.だん中の位置と解剖
 だん中穴は、ほぼ両乳頭間にある胸骨上の穴で、ほぼ第4肋間に位置する。皮膚の直下は皮下脂肪を介して胸骨がある。

2.だん中圧痛の現代医学的意味と針灸治療法

1)津田胃・十二指腸潰瘍点

だん中穴は、津田氏点でもあって、胃・十二指腸潰瘍時に圧痛が出現しやすい部だとされる。内臓体壁反射で有名な石川太刀雄は、その理由として横隔神経や肋間神経(第4肋間神経の前皮枝の前枝)の反応だと推測している。

胃十二指腸の交感神経性デルマトームは、Th5~Th9である。しかし胃は横隔膜に隣接しているので、胃の病的反応は横隔膜に伝達され、横隔膜は胃より鋭敏な組織であるため、むしろ横隔膜の異常反応として体壁に出現しやすい。横隔膜は中心部がC3C4脊髄神経支配、辺縁部は肋間神経支配である。

また肋間神経が深層から浅層に出てくる部の一つに胸骨点がある。胸骨点は胸骨外縁部の肋間で、肋間神経前皮枝が表層に出てくる。前皮枝は、胸骨側に行く前枝と外方に行く後枝があり、前枝は胸骨上にまで枝を伸ばす。すなわち胸骨上の圧痛をもたらす直接原因は、第4肋間神経の興奮による。

 

2)心疾患の反応点
では第4肋間神経の興奮をもたらす疾患にはどういうものがあるだろうか。心疾患の交感神経性デルマトームはTh1~Th5なので、心疾患が該当するが、この場合には左前胸部の反応(自発痛と圧痛)が強く出現することが多いが、右心房や大動脈基部の反応としてはだん中に特異的圧痛点になることが報告されている。


3)肋間神経痛

第4肋間神経を自発痛が出ない圧痛点程度の反応にするには、Th4あたりの椎体間の椎間関節症や肋横突関節症に求めるべきだろう。とすれば治療点もTh4椎体を中心とした背部一行に求めると考えるのが自然である。


それを裏付けるものとして、だん中に圧痛がある場合、胸骨外縁(=肋間神経前胸点)や前腋窩線上(=肋間神経外側点)の、第4~第6肋間にも圧痛が出現しやすいという現象があった。
まただん中に圧痛ある者の多くは、だん中だけでなく、だん中から巨闕(第8肋間神経支配)にかけての前正中にも圧痛のあることが多く、これは肋間神経痛は第5~第9肋間に好発するという結果とも一致する。

するとだん中の圧痛をとる方法は、第4~第5肋間神経痛の治療と同一であり、私の場合、同レベルの肋椎関節への深刺ということになる。この方法を実際の臨床に用いてみると、非常に効果的だった。

3.古典的意味
だん中穴の圧痛の古典的意味は、心臓疾患もあるが、常見的には精神疾患時の反応点とみなすのが一般的である。だん中穴は古典では心の募穴とされているからである。なお古典の「心」は心臓と精神を併せた概念を意味する。

※私は、古典でいう心は心拍数を変化させる要因である情動に、心包は心ポンプ作用を営むものと理解している

2.だん中穴反応の古典的意味
だん中穴圧痛の古典的意味は、心臓疾患もあるが、常見疾患としては精神疾患時の反応点とみなすのが一般的である。だん中穴は古典では心の募穴とされているからである。なお古典の「心」は心臓と精神を併せた概念を意味する。

(私は、古典でいう心は心拍数を変化させる要因である情動に、心包は心ポンプ作用を営むものと解釈している。

それにしても、なぜだん中を精神疾患と結びつけたのだろうか。「悲しみに胸が塞がる思い」などとの連想がまず思い浮かぶ。精神的苦痛→頭を下に垂れる→胸腔臓器や横隔膜を圧迫→ だん中の圧痛という関連、あるいは胸椎前湾を助長させ、肋間神経に悪影響を与えた結果だろうか。

 


章門、京門および跗陽の取穴

2011-01-05 | 経穴の意味

1.章門と京門の取穴
 章門(脾の募穴)は第11肋骨尖端下端にとり、京門(腎の募穴)は第12肋骨尖端下端にとる。それは分かってはいても、実際に第11肋骨尖端や第12肋骨尖端を触知するのは意外と難しい。しかし簡単に取穴できる方法を発見した。
 側臥位になった被験者の、上になった上肢の上腕を、被験者自身の頬に接触させるほど外転させる。すると脇下の結合織が引き伸ばされ、結合織下の肋骨下が触知しやすくなる。
 経穴の知識をもった者が被験者であれば、被験者自らの指で肋骨下を探ることで、容易に第11肋骨端や第12肋骨端が触知しうる。(下の写真:モデルは初登場、助手の戸川純君)

 

2.跗陽の取穴方法
 跗陽は、崑崙(アキレス腱と外果の中点)の上方3寸に取穴する。現代針灸派にとってはほとんど注目されないが、陽蹻脈の郄穴なので、奇経治療家にとって診断点であり治療点でもある。
 跗陽の反応を診るには、被験者を仰臥位にし、患肢の踵骨後方に、検者の手掌を入れ、手掌は、踵とベッドにはさまれた状態にする。すると患肢はベッドから少し持ち上がった形になる。その状態のまま、検者のもう片方の指で、アキレス腱部を撮上あるいは撮下するようにする。すると跗陽穴あたりで隆起を感じ取ることができる(隆起が見つからなければ、反応していない)。この隆起中央に跗陽と取るようにする。