AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

肩部の特徴ある訴えと針灸治療2題

2010-10-27 | 肩関節痛

1.就寝時の側臥位時の肩部痛に下部頸椎一行の針 自験例(56才 男性)

1)私は眠ろうとする場合、ベッド上で側臥位になる習慣があった。半年ほど前から、左右どちらとも側臥位になると、下になった側の肩先に痛みを覚えるようになった。やむを得ず仰臥位にるが、寝つくのに苦労する状態になった。

2)おそらく、体重で肩がベッドに押しつけられるのだろうと思い、厚みのあるマクラ換えて、肩に加わる圧力の減少を試みた。すると確かに肩痛みが減ったが、仰臥位に寝返りする時は、マクラが高過ぎる感じすぎて満足できなかった。

3)いずれにしても、側臥位で寝る習慣は以前からあり、その時は特に問題がなかった。肩関節のROM正常。頸ROM正常。上肢症状(-)。肩鎖関節の問題かと思ったが、同部位に圧痛はない。肩関節周囲の撮痛もない。棘上筋や棘下筋にも圧痛は触知できない。

4)どうにかならないものかと、思っていたが、発症数ヶ月経た最近になり、側臥位にて頸椎を探ってみると、下になった側のC5~C6の一行に強い圧痛のあることを発見した。

5)その翌日、側臥位で肩部痛を出現させた状態をした状態で、助手の先生にこの部に寸6#2で2㎝直刺してもらった。すると瞬時に肩先の痛み消失した。次に反対の側臥位になり、同様の施術を受けると、やはり瞬時に肩先の痛みが消失した。要するに、肩先の痛みは、下部頸椎の高さの、項筋の関連痛だったのだろう。

6)通常、側臥位での針灸治療は、上になった側に施術をするが、今回は下側の施術となった。側臥位で下側施術をするのは、自分の手中では仙腸関節運動針のみだったが、今回新しい方法を発見したことになる。





2.「手の置き場がない」という訴えと天鼎刺針パルス  (49際 女性)          

1)以前から、ごくたまに患者が「手の置き場がない」との訴えを聴くことはあったが、どのように病態把握していいか分からなかった。しかし最近、 嫁(49歳女性)が「手の置き場がない」と言い出した。嫁は以前から肩頸コリがあり、頸神経叢刺激点として天窓や頸椎一行を使って、その都度改善していたのだが、今回はそれとは別者だという。

2)よく聴くと、以前からの僧帽筋に加え、上腕二頭筋が凝るようだ。上腕二頭筋上の経穴である天府や侠白、尺沢、曲沢らの圧痛も強い。上腕二頭筋停止部の上腕二頭筋は上腕筋、烏口筋とともに筋皮神経支配であり、筋皮神経は腕神経叢の枝である。要するに、筋皮神経の興奮が「手の置き場がない」という訴えにつながるらしい。

3)通常の患者と異なり、嫁なので実験的な治療ができる。そこで従来の施術に加え、寸6#2で仰臥位(または側臥位)で腕神経叢刺激点である天鼎刺針パルス通電10分間を追加してみると、上肢全体がリズミカルに動くのを観察。施術後には症状の改善をみた。筋肉のコリによる腕神経叢圧迫と、上記症状の関連をうかがわせた。