1.結髪制限・結帯制限の運動分析
結髪制限とは、肩関節の屈曲+外転+外旋の複合動作であり、結帯制限とは、伸展+外転+内旋の複合動作でありともに肩関節障害での代表的なADL制限である。
凍結肩を別とすれば、肩関節障害は、結髪・結帯制限複数の関節運動の主動作筋とくに肩腱板の障害によって起こるとしてよいだろう。下表×印は緊張状態にある筋という意味で、これを引き伸ばそうとする動作で痛みと運動制限を生ずる。結髪・結帯を構成する3方向の運動うち、障害動作に関わるのは、外旋・内旋制限の関与が最も強いとみなすことにして、分析を先行させてみた。
なお外転制限×は、棘上筋腱に続く肩腱板部、および三角筋停止部の筋腱付着部症によるものであり、結髪・結帯動作制限の原因である過収縮筋の過緊張とは病態が異なる。なお外転制限についても触れているが外転制限については、下のブログで説明した。
肩関節外転制限の針灸治療法 ver.2.0
2.結髪・結帯制限にかかわる筋
上表では、結髪制限に強く関与するのは内旋筋である大円筋と肩甲下筋であり、結帯制限に強く関与するのは外旋筋である小円筋と棘下筋であることを示している。これを断面図として表現すれば次の図と表を得ることができる。
外旋内旋の各2筋(計4筋)は、どの筋も起始を肩甲骨に、停止を上腕骨頭としている。
内旋筋は結髪制限に関与する筋で、大円筋(肩貞)と肩甲下筋(膏肓で肩甲骨-肋骨間に水平刺)になる。外旋筋は結帯制限に関与する筋で、小円筋(臑兪)と棘下筋(天宗)を結んでいる。
結帯・結髪制限では( )内で示した治療穴を使うのだが、これをどのように刺激するかは技術の問題になるので、稿を改めてブログにて記すことにする。
3.いろいろな運動制限
1)結髪・結帯制限の合併ケース
これまで結髪制限・結帯制限を個別にみてきた。その病態生理は「過収縮している筋を結髪や結帯動作で伸張させる際の痛みと可動域制限」と単純化して考察してきたが、伸張痛ばかりでなく、過収縮時痛もあるだろう。もし過収縮時痛であれば、結髪動作制限時に使用することになる肩貞や膏肓水平刺は、結帯動作制限での治療穴になる。実際の病態は、過収縮時痛と伸張痛が混在することが多いと考えるので、上述した肩貞・膏肓水平刺・臑兪・天宗の4穴を同時に使用して運動針(運動制限のある動作を行わせる)のが実用となるだろう。
2)外転制限の治療
結髪動作(屈曲+外転+外旋)と結帯動作(伸展+外転+内旋)には、どちらも外転動 作が含まれているから、外旋と内旋治療とは別に、外転制限に対する治療を併用した方が 効果的かもしれない。
筆者は以前のブログ(肩関節外転制限の針灸治療法 ver.2.0)で外転制限には、座位で腰に手をあてた肢位させ、肩髃から3㎝以上水平刺(床と平行に)するとよいことを説明した(他に3寸針を使って肩井から上腕骨頭大結節方向に深刺斜刺しても効果的だが難易度が高い)。
したがって、どのような腱腱板症状に対しても、前述した貞・膏肓水平刺・臑兪・天宗の4穴に、肩髃を加えて常用5穴とすることが実戦的な治療になると思われた。
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