「山家集」私的註釈864
こころざすことありて、扇を仏にまゐらせけるに、院より賜はりけるに、女房受けたまはりて、包紙に書きつけられける
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ありがたき 法にあふぎの 風ならば
心の塵を 払へとぞ思ふ
仏道修行を思い立って、扇を仏様に献上しようとした折に、崇徳院から扇を賜りましたが、女房がそれをお受け取りになって、包紙に歌をお書きつけになられました
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ありがたい仏法に出会うためにいただいた扇であおいだ風であるならば
積もり積もった心の埃をお払いになったらよろしいかと思います
西行の和歌は単に花や雪、月などの自然の叙景や、死や別離、恋や孤独などを歌ったものばかりとは限らない。西行はまた真言僧でもあって、仏教の教えに関連する和歌も多く詠んでいる。と言うよりも正確には、西行にとって和歌を詠唱することそれ自体が、仏教の教えを実行する宗教的行為であったということができる。