ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第七十六節[絶対的な精神について]
§76
Gott ist der absolute Geist(※1), d. h. er ist das reine Wesen(※2), das sich zum Gegenstande macht, aber darin nur sich selbst anschaut; oder in seinem Anderswerden schlechthin in sich selbst zurückkehrt und sich selbst gleich ist.
第七十六節[絶対的な精神について]
神は絶対的な精神である。すなわち、神は純粋な存在である。純粋な存在とは自己を対象とするが、しかし、その中でただ自分自身を直観をするだけであり、あるいは、自身がもっぱら他のものへと変化する中で自分自身へと還り、かつ自分自身と等しくあるものである。
※1
der absolute Geist(絶対的な精神)は、先の第七十二節の、Dies absolute Wesen と同じ。第二教課の「精神現象論」の第四節においては、Das Subjekt ist der Geist.(主観は精神である)として説明されている。
※2
das reine Wesen
reine
「純粋な」というのは、神は自ら以外を含まない存在だからである。また神を精神(der absolute Geist)として捉えていること、この核心を精確に解明することは註解の目的の一つである。
Wesen (存在、本質)
第七十二節の註解※1参照。「時間を超越した本質的な存在」。少しこなれないかもしれないが「質在」という訳語を当ててもいいかもしれない。