新聞連載の「未来への歴史」の今回のテーマは「デモクラシーと戦争」である。暮れから年始にかけての6日間に1面と2面にかけて大々的に掲載された。民主政治は持続可能なのか。戦争は制御できるのか。両者の関係を戦後80年の節目に考えるとある。読み通すにはちょっとした根気のいる作業だった。毎回の【筆頭見出し】と、私が傍線つけた部分を記すことにする。
12/30【政党政治は希望か落とし穴か】社会は移民問題などをめぐり分断し、経済はロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰などで停滞する。問題を解決できない既成政党への失望。それが政治的暴力が続く背景にある。歴史学者は「現代では、不安を抱えた既成勢力が中道で身を寄せ合った時、左右の極にあるポピュリズムが輝いて見える」と語る。
12/31【膨らむ借金 許した先は】借金が雪だるま式に膨らむのを抑えようと、歳出カットと増税を唱える財務省は、経済低迷の責任を問われ、批判の矢面に立たされている。戦前の大蔵省批判を振り返ると、その論理と財政の状況は今と酷似している。今の積極財政の中身は、主に国民への現金給付や半導体への補助金などで、軍事予算が中心だった戦前とは違う。自衛官が暴走し、政治を支配しているわけでもない。ただ、財政規律が崩壊するなかで、たがが外れて防衛予算が膨張する恐れがある。
1/3【開戦「勢い」に流されて】昭和天皇は終戦後、側近に「戦争を止めようと思ってもどうしても勢に引きづられて了った」との発言を繰り返した。政治学者の丸山真男は「つぎつぎになりゆくいきほひ」というのは「日本の歴史意識の古層をなし、しかもその後の歴史の展開を通じて執拗な持続低音としてひびき続けてきた思惟様式」と説いた。 〈次回へ〉