玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*夢について

2024年03月25日 | 捨て猫の独り言

 散歩の途中に立ち寄った図書館で、週刊誌のように大きくて、絵本のような本が書架からはみ出し、縦を横にして収められていて危うく躓きそうになった。手に取ってみると、吉本ばななの「夢について」というものだった。幻冬舎から1994年に出版されている。最近還暦を迎えた著者が30歳のときに出た本だ。躓きそうになるこの日まで、この本に出会わなかったのがちょっと不思議だった。

 どの左ページにも、十分な余白を保ちつつ、テーマごとに原マスミのシュールなイラストがあり、とても気軽に読める本だ。吉本は「私は昔から、あくまで日常に密着して起こる不思議な出来事、異様なものや、変わったものの中に人間性が感じられるようなものが好きです」という。たしかに夢は不思議なできごとではある。

 予知夢の秘密、探偵夢、死んだ人の夢、熱のある時の夢など24項目の夢にまつわる短い話が展開される。ある男の夢の項で、インドの瞑想指導者・和尚ラジニーシ(1931~1990)を知った。この男にはすこしも胡散臭いところがないと吉本は言う。この瞑想家について機会があればもっと詳しく知りたいと思った。夢に関心を寄せた作家といえば島尾敏雄(1917~1986)がいる。島尾には、「夢の中での日常」という奇妙な題の短編や、その他エッセイを集めた「夢の系列」という本がある。断捨離を免れて本棚に残っていた。(2023年日展作品より)

  

 「夢は無責任なものじゃないかと言われそうな気がしますが、私は必ずしもそうは思えない。夢の中の経験の、あの、でたらめと、冷たさと、そしてその場限りの気品のようなものは、実は、目覚めている時の、秩序と、熱っぽさと、因縁ごとを、批判しているのだと、私には思われて仕方がありません。私は夢を追い出したくないのです」 そして夢といえば夏目漱石の「夢十夜」がある。これは私が漱石の凄さ(才能)を最も強く感じる作品でもある。

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*主権なき平和国家

2024年03月18日 | 沖縄のこと

 どうしても一人でも多くの方に知ってもらいたいと考え、目取真俊のブログ「海鳴りの島」の記事と写真をつぎに取り上げる。

◯2月28日

 「27日の2回目の資材搬入の際、工事用ゲートの内側にいた沖縄防衛局職員の姿である。 不気味としか言いようがない」

 この日は、美謝川切り替え工事と、辺野古弾薬庫、新ゲート建設工事の様子をいつも通りたくさんの写真付きで報告があった。その最後に付け加えられていたのが上の文言だ。この基地の中の沖縄防衛局員は、職務遂行にあたり黒覆面をせずにはいられないらしい。その心情を想像するとき、暗澹たる思いになる。

  

◯3月10日

  

 この日は、陸上自衛隊ミサイル部隊の車両陸揚げ、勝連分屯地への配備に対する阻止行動があった。これらは、その最後にあった文言と写真だ。

「陸上自衛隊勝連分とん地の入り口に掲げられた絵にはあきれかえった。白頭の鷲がミサイルを抱えているが、まさに日本は米国の属国であり、自衛隊は米軍の下部組織でしかないことを示している。ここまであからさまに、米国・米軍への隷属ぶりを示すものか。米国の兵器を爆買いさせられて、庶民の生活苦など顧みずに軍事予算を増大させている日本の愚かさを見せつけている」

  

 

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*上脇博之②

2024年03月12日 | 捨て猫の独り言

 入学したのは法学部だったが法律の勉強は苦手だった。司法試験は断念し研究者の道を選ぶ。2年浪人して神戸大学大学院法学研究科へ進み、同じ敗戦国の西ドイツの憲法を研究する。1994年(36歳)北九州大学法学部専任講師としてスタートする。

 2002年(44歳)は法律の専門家や研究者らと市民団体「政治資金オンブズマン」を、2016年(58歳)には国会議員の政治資金収支報告書をネットで公開する公益財団法人「政治資金センター」を設立した。安倍元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会や「森友学園」の問題などの刑事告発や提訴にも関わる。

 ほとんどの告発のきっかけは、新聞や週刊誌の報道で問題を知り、公開情報や資料を調べ直し告発状を書く。今回の事件の発端は2022年11月の「しんぶん赤旗日曜版」のスクープだった。自民党の5派閥の政治資金報告書を一つ一つ見ながら、お金の出入りをチェックするので膨大な作業になる。調査は煩雑で、昨年は正月休みを返上して告発状を書いた。

  

 「検察が本気で自民党とやり合うかどうか注目していたがトカゲのシッポ切りで終わらせた印象です。裏金づくりは会計責任者の独断ではできない。安倍派の裏金プールとキックバックはこれから。大勢の議員を順次これから告発していきます。ぼくも年を取った。3年前から大腸を患い、緊急入院を繰り返した。左目も病気で視力が低下し資料を読むのもきつい。仲間も引退しています」家族は同い年の妻、こどもは1男。

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*上脇博之①

2024年03月11日 | 捨て猫の独り言

 興味深い新聞連載がある。朝日の土曜の別刷りにある「フロントランナー」だ。2月24日の回は神戸学院大学教授の上脇博之(ひろし65歳)だった。政治とカネの問題を追及する第一人者だ。これまで100件以上は告発してきたと話す。

 大学キャンパスで撮影された大写しのポートレートが印象的だ。長い廊下を背景にちょこんと椅子に座っている。まるで中学生の卒業写真のように、両手をきちんと膝に乗せ、トレードマークのバンダナの下にある眼鏡の奥の眼は三日月のように細い。かすかな微笑にはどこか少年の日の面影を宿している。

 鹿児島県姶良郡隼人町の生まれ。電力会社の父は転勤族で引っ越しを重ねる。中学校から途中転校を避け、母方の祖母と2人暮らしをする。加治木高校を卒業し、3浪して入った関西大学では、勉強そっちのけで酒を飲みマージャンを打った。ここまでは私と重なることの多い生い立ちだが、そのあと私と異なり彼の持続する志は大きな実りを生み出す。

 

  バンダナを愛用する人には、芸術家や蕎麦打ち名人や数学者の秋山仁など、個性的な人物が多い。上脇氏のバンダナは大学浪人の頃からで、法廷でも外さなかった。大河ドラマ「西郷どん」に「なこかいとぼかい なこよかひっとべ」とある。困難にあった時はあれこれ考えず、とにかく行動しろという意味だ。上脇氏は40代でひっ飛んだ。

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*のらぼう菜

2024年03月04日 | 捨て猫の独り言

 近くの家庭菜園で収穫した土のついたままの野菜を、我が家に届けてくさる方がいる。小学生と中学生の母親でもある。この菜園ではプロがまず土作りをする。そのあとアドバイスを受けながら育てると狭い区画ながら驚くほど収穫があるという。たとえばナスは1株で100個近く採れる。どれどれと現場を見に行ったことがある。何はともあれ土壌が肝要だと感じた。

 近くに住むこの若き友人は、焼いたパンやケーキを届けてくださることもある。昨年のクリスマスの頃にはシュトレン(ドイツの菓子パン)が届いた。例年だと初冬の何もない我が家の畑にシュンギクとチンゲンサイの種を蒔いていた。変化を求めてこの友人に相談してみた。するとしばらくして、ほうれん草、スナップえんどう、のらぼう菜の種が届いた。のらぼう菜のことは初めて知った。

 のらぼう菜の栽培分布は、東京都西多摩地域のあきる野市や青梅市などの山麓地帯と埼玉県飯能市付近が中心の、いわゆる江戸東京野菜の一つ。収穫後はしおれ易くて長距離輸送や大量出荷に不向きで、生産地付近でのみ消費される地方野菜として受け継がれてきたという。

 

 スナップえんどうは3株育ちつつある。ほうれん草はようやく葉を広げる気配を見せている。いちばん青々と繁っているのが、のらぼう菜だ。さっそくヒヨドリがついばみにきた。これまで我が家では何度も収穫して食した。苦みや癖がない味わいだ。のらぼう菜は耐寒性に優れ、天明の大飢饉と天保の大飢饉の際に人々を飢餓から救ったという記録が残っているという。

 《お知らせ》今月から当面、ブログの投稿を週に一度にします。

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