ケニアから初乗船してきた一人に、農業ジャーナリストの大野和興氏がいた。農業、食料問題を専門とし、日本やアジアの村々を歩き現場から発信する事を信条としていると。市民運動にも深くコミットし、経済のグローバリゼーションに対抗する「脱WTO草の根キャンペーン」や、[アジア農民交流センター」の世話人もしているという。
「農業は命を引き出す人営み」と考えるようになったのは、韓国で自然農法を取材している時、「作物や家畜を育てる主体は自然であって人は手伝いをしているに過ぎない」と教わったのがキッカケだったという。
戦後史の中で、大量生産、大量消費の時代を迎え、より効率化を優先した農業は食の不安と環境問題を引き起こし、農業の企業化と農村国や村を衰退の方へと向かわせた。「命を引き出す営み」どころか、更には食物の種子、医薬品など「命そのものを商品化」する迄になってしまった。又病虫害を殺す遺伝子組み換え食物は農薬を使わなくてすむ環境保全型と主張する科学技術者達。命は人間が都合よく操作できるほど簡単なものか?と警告を発していた。
私達の回りには輸入食物が氾濫し、国産物を選んで求めているのが実情だ。3回に亘る講義を聴くほどに暗澹たる気分になった。最後の4回目は「もう一つの農業は可能だ」だった。企業化した農業では見栄え、生産性重視の為、品種の改良や、農薬の多投が増え消費者の健康、環境の破壊に繋がった。 「人と自然との共生」を求め生産者、消費者、環境が一体となって農を育むことが必要ではないかと主張し、現に取り組んでいる幾多の事例報告があった。選挙民が政治家を育てる様に、消費者が生産者を育てるのと同じだろう。遠~い道のりではあるけれど。写真2以下は全てキューバの有機農場での作業を含む農業体験。