暑さ寒さも彼岸までの「春分」を過ぎても外では冷たい風が舞い、今年は本格的な春の訪れが遅れているようだ。そんな中でコブシやモクレンの白い花が咲き、数が少なくなったという小低木のクサボケの橙色の花も咲いた。よく見ると土手の陽溜まりにはアマナという小さな野草がひっそりと花を開いている。この時期に小鳥たちは営巣の準備を始めるという。緑道でツッピーツッピーと鳴いているのはシジュウカラだ。コゲラが太い枯れ枝を嘴でつついて巣穴を掘り始めている場面に出会った。この木の下に来れば、昨年に続きコゲラの餌やりと巣立ちを目撃することができる。
いまだに一部の食料品は店頭で品薄の状態が続いている。この震災を機会に新たな買い物をできるだけ控え、家にあるものを消費しようと考えた。生鮮食料品をのぞいた冷蔵庫の冷凍食品、床下収納庫の乾物などがその対象となる。その中には半額セールに乗せられて買い込んだ物も多い。在庫の食料が無くなるまで補給はしないぞと籠城の気分である。貯め込んである物を一度でいいから空っぽにすることが出来たらどんなに清々することだろう。
阪神淡路大震災の直後に作った非常持ち出し用のリュックがあった。その中から缶詰類が出てきた。シーチキン1個とサンマの蒲焼2個と乾パン2個だった。それらの賞味期限を調べるとシーチキンとサンマの蒲焼は4年前、乾パンは7年前に期限切れになっている。ともかくリュックから取り出し、どう処分すべきかを考えた。そしてこれらの缶詰を捨てないことにした。まず抵抗なく口に出来たのは乾パンである。近頃手に入れにくい食パンの代用として、2個ともすでに食べ終えた。風味が落ちたなどというような不都合は全くない。
さすがにサンマの蒲焼きの缶を開ける前に私はネットで検索した。ある味覚実験によると6年前に期限が切れた「いわし味付け」は実験参加者の5人全員が捨てない、10年前の「ツナ缶」でも5人中4人は捨てないと答えたという記事に出会う。私が得た結論は賞味期限切れの物を食するかしないかは、自分の視覚、味覚、臭覚で判断すべきだということだった。今日の昼食に問題のサンマの蒲焼の缶を開けた。そして安全であると私は判断して食した。味はいつも通りの味というしかない。つぎはシーチキンであるがこれはサンマの蒲焼より安心して食することができるだろう。それにしても今回の大震災を目の当たりにすると、用意すべきであると言われている非常持ち出し用の袋がいかほどの値打ちがあるのか考えてしまう。