調べてみるとあれは昨年の12月15日のことだった。森友学園への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書改竄を苦に自殺した近畿財務局職員赤木俊夫さん(当時54歳)の妻が、国と佐川宣寿元理財局長に損害賠償を求めた訴訟で、国は突然請求を全面的に認める「認諾」の手続きを取った。
政治家の保身による「真相封じ」であることは誰の目にも明らかだった。生前赤木さんは、国民全体の奉仕者として公正に働いているか、自己点検項目が記された国家公務員倫理カードを手帳に挟んで常に携帯していたという。一般に政治家=国会議員は国家公務員法の適用されない「特別職」の国家公務員だという。
赤木さんの妻が、当時の安部首相に「せめて線香をあげに来て欲しい」と間接的に語っても、もとより実現するはずもなかった。そして必死の訴訟に対してネットでは「なんてしつっこいんだ」などという言葉もあったと聞く。突然の「安部元首相を国葬に」というニュースを聞いて真っ先に脳裏に浮かんだのは自死した赤木さんのことだった。
今回の「国葬問題」は政権党である自民党内の政治力学の産物である。政治家の保身によるものであって、そこには何らかの道徳性も存在しない。近畿財務局は組織として赤木敏夫さんを悼むべきだった。7月12日の「朝日川柳」に「赤木さんも安倍さんも同じ一人」というのがあった。同じ思いの人は多いのではないか。