長さ50㎝、直径3㎝の円筒形の郵便物が届いた。ポストに入らないので門まで呼び出されて受け取る。友人から今年もまた鹿児島銀行が作成した1枚(通年)カレンダーが送られてきた。2023年は種子島の「千座(チクラ)の岩屋」だった。さて今回はと心躍らせ開封すると甑島にある「甑大橋」だった。鹿児島県は全国でも有数の離島県であることをあらためて思った。
甑島は串木野の西約30㎞の東シナ海に浮ぶ3つの島だ。「甑」とは中国を発祥とする底に穴の開いた取っ手付きの食物を蒸すための土器だ。地名の由来は海岸にある「甑形の岩」をご神体に甑大明神として祭ったからという。甑島の玄関口は上甑の里港で、里の町は砂州の上にできている。函館、串本、里を日本三大トンボロ(砂州)と呼ぶ。私は2014年8月に里に一泊したことがあるが、そのとき中甑と下甑まで足をのばすことはなかった。
上甑と中甑を結ぶのが「甑大明神橋」と「鹿の子大橋」である。甑島はカノコユリの日本唯一の自生地で、中甑には群生地がある。甑島をかかえる薩摩川内市の「市の花」はカノコユリだ。そして中甑と下甑を結ぶのがカレンダーにある「甑大橋」だ。これは2020年8月に完成し、県内では一番長い1533mだという。これで3つの島がすべて陸路でつながることになった。
朝日新聞紙面ビューアーで「かごしま」の記事を読むことがある。12月19日の記事に心が和んだ。それは「出張除夜の鐘」という。コロナ禍で寺に大勢が集まることができない。「それならこちらから出向こう」と鹿児島市の妙行寺の住職とその長男の副住職が中心になって2020年に無料で始めた。小型の鐘を収める社(やしろ)の高さは120㎝ほど。出張は鐘の運搬、僧侶の法話、鐘のつき方の指導がセット。鐘は3基に増えた。今年の出張は今月1日に始まり30日まで。ある福祉施設では「鐘を見ただけで、認知症のお年寄りの表情が変わり、鐘の音を聞くと思い出がよみがえったかのように目を輝かせた」という。