ミレーの名画「落穂拾い」には、働く力のない人、働く場に恵まれない人が、畑に残されている穀類を拾い集めている姿が見られます。
収穫時に、落穂をあえて掻き集めずに残しておく習慣、思いやりがにじみ出ているという見方もできます。
ばら撒いて拾わせるのではなく、あげます~いただきますでもなく、落ちているものを無駄にすまいと拾う人にも引け目を感じさせない、素知らぬ顔の穏やかさが、画面のどこかから伝わってきます。
門田隆将著「新聞という病」という本には、地道な積極取材をせずに、記者会見で失言を拾い集めて記事にする新聞界の症状が挙げられています。
拾い集めて糧にするところは似ていても、思いやりの落穂拾いと、愚だもの失言探しには、大きな違いがあるようです。