日々ふさおまき

走って跳んで歩いてます。

2012年12月30日 京都旅行といいながら奈良に出かけた2日目

2012-12-30 22:57:21 | 旅行記

せっかく京都に来たので、朝の新聞は京都新聞です。

記事も広告も東京ではお目にかかれないものを扱っていて楽しめます。

突然ですが、12月30日の京都新聞で目を引いた記事と広告ベスト3。

ジャジャン。

第3位は・・・・

蛸薬師さんの年末年始行事と、蛸薬師の謂れがかいてあります。

簡単に言えば、お坊様が母の病気を直そうと、禁じられた殺生を破って

好物の蛸を買ってしまいました。しかし町人に見られて、破戒坊主と責められかけたところで

お坊様は薬師如来様に、快癒を願って買ったものですからどうかこの難をお救いくださいと

祈ったところ、蛸は薬師如来に姿を変えて光を発し、母の病が治ったということなのです。

物語のお寺です。

 

続いて第2位。

さすが京滋をカバーする地元紙、大津の話題も取り上げています。

かつて姉の結婚式に来ていく礼服を買ったり、ウェッジウッドのフロレンティーン・ターコイズを

他の磁器を売っているわけではないのにそれだけ3割引で陳列していた、大津駅前の大型総合商業施設がまもなく閉店して新しくマンションとなり、そこには食料品スーパーだけが入るという生活に根付いた記事です。

そしてついに第一位。

イノシシ肉の卸がこれだけ大きな広告になりますか。

さすが丹波笹山あたりが近いだけのことがあります。

冬は牡丹鍋をご家庭で、という人がそれなりにいるということでしょう。

 

そんな記事にゆっくり目を通していたのは、外が雨だから。

なかなかさあ出かけるぞ!という気分になりません。

当初は法隆寺のつもりだったのですが、やはり2時間かけて行くには足元が悪すぎます。

では水族館に行こうか、買い物にしようかなどとも迷いますが、

彼女が鶴に変わって、上空に声を上げました。

「東大寺ミュージアム行くよ!」

ぴゅーん。

10時28分にホテルを出て、10時32分の地下鉄東西線乗車、

御池からは近鉄線に乗り入れる奈良行き急行に乗って、11時30分には

到着しました。

まだ新しいこの博物館に並んでいるのは、修理中の法華堂から

持ち込んだ仏様。

国宝・不空絹索観音立像です。

博物館ならではなのが、すぐ近くで見られることと、明かりが綺麗に当たっていること。

ガラス越しではありますが、しっかりご対面できます。

とくに頭上の冠だけは外して、下の展示箱に入れてあるので、

実際の寺院では見られるはずのない、冠に彫られたいくつもの仏様が添えてあったりすることを

発見しました。

 

もちおろん大仏様ともお目にかかりたいとおもいました。

外の回廊から見上げた大仏様

大仏殿に入って、左下からご尊顔を拝したとき。

この桁違いの大きさは、見るだけでも十分に現世を離れ

浮世を哂うことができます。

大きいことでしか説得できない心があるのです。

 

次に向かったのは、晴れた夕方なら夕日が空を向こうに染めるという

家並みの間をいくつか曲がったところにある新薬師寺です。

このお寺ははっきりした歴史の物語が記されています。

天平の世、聖武天皇の病気が治ることを願った、御后の光明皇后が創建されたそうです。

ただ同時に天下太平万民快楽を祈る法要も行ったそうです。

曰く、悪いことが起きるのは、欲と怒りと愚かさの「三毒」によって生じる罪業が

汚れとなって人々の心に尽蓄積されるからで、身を清め薬師如来の午前で罪を懺悔する

ことによって、心の穢れを取り除いて悪いものを祓い、福を招こうとされたそうです。

個々の幸せがなかなか得られなかった世の中だったのでしょうか。

そんな教えを学びつつ、十二神将が十二支を一つ一つ担うことも知りました。

実は新薬師寺の如来像を守って、十二神将がぐるりと配置されていたのです。

剣を持つもの、斧を持つもの、矢をもつもの、

有名なバサラ像のように、怒髪天をつくものや、大きく腕を上げるものなど

塑像には豊かな動きが表現されていました。

もう、足が雨でびしょびしょになりながら、身と心を清める旅をした私たちです。

気持ち悪くて、靴下を脱ごうとする彼女の図。

 

お参りが終わると還俗します。

奈良町にある、CAFEのはしり、カナカナさん。

南米の味わいがある町家というミスマッチが、新しさと古さを両立させて

魅力的な空間を作ります。

昼ごはんを食べていなかった私たち、すでに15時を過ぎていましたので、

今からランチをすると夕飯がお腹に入りません。

エネルギー補給にスイーツタイムといたしました。

もちろん彼女はこの店のお勧めを調べていました。

黄味の強い白のチーズケーキ。クリーミーな甘さが、硬くはならず

といってゼリーのようなプリンプリンにもならない、

という否定形の狭間に感想が求められる、今まで味わったことの無い出来具合でした。

もうひとつは、こちらも黄味たっぷり、だけどこちらは引力が強い

下に向かって根を生やしたようなしっかり物のプリンです。

カラメルの苦味もこのむっちりした肌がしっかり受け止めます。

バニラビーンズの効き方といいなかなかのおいしさ。

すきっ腹が丁度平衡を保ってくれました。

 

15時30分過ぎにカナカナさんを後にすると、

いくつかの小物屋さんや和菓子屋さんを覗いたあと、

京都に戻りました。

竹田で地下鉄に乗り換え、烏丸御池で降りると、

夕飯前に行っておきたいところがありました。

遊形さん、名旅館・俵屋さんのグッズをメインに扱っているお店です。

毎年ここで12個入りの石鹸を買うことにしています。

匂ひ袋を固めたような、はんなり甘い香りが好きで、

今年も数日前に丁度使い切ったところでした。

 

さて、次の話題。

夕飯のことは、稿を改めましょう。

 

 

 


2012年12月29日 京都旅行1日目② 桜田さんの記

2012-12-30 01:04:14 | 旅行記

京都旅行は聖と俗の両方を目一杯楽しみます。

俗、というのは言葉の綾、ようは日々なす食べるという行為を

特別においしいものにいたしましょう、ということです。

 

11月に予約しておいたのが、三条烏丸からほど近い日本料理「桜田」さん。

暖簾の向こうは別世界。

招福楼出身というご主人の料理が毎年私たちを魅了してくれるのです。

 

別世界では写真を撮りません。

撮れませんというほうが正しいでしょう。

8席あるカウンターの真ん中あたりに並んで座り、

すぐ奥の厨房から供される料理を、すぐにいただいて行きます。

熱いものは熱く、色も香りも歯ざわりも、ベストに仕上げてある料理に

間を置いていただくのはことのほか勿体無いからです。

だから、記憶力のいい彼女と思い出した品々を書いておきます。

 

・梅こぶ湯と百楽のお酒

・海老と白子と湯葉を大根おろしと柑橘のジュレで

 ミキモトパールが一つ輝く、カットグラスの蓋物が綺麗です

・蕪とカラズミのお椀

 黒塗りの椀は蓋を返すと南天が可愛らしい

・茹でカニと真鯛・イカのお造り

 2段の楽焼きは年代物。紅葉や桜やこうもりの柄が楽しいところ

・柚釜 カニ味噌と海老芋

 一人用の炭コンロで最後の火入れ、こげる柚の香りが鼻をくすぐります

・八寸はマナガツオの幽庵焼き、ヤマゴボウ、青いミニダイコン、イクラしょうゆ漬け

 くわいのチップ、青菜の白和え・柿入り

 大きな素焼きのお皿に、雪囲いと小屋型の焼き物が載っています。

 雪囲いの下にゴボウが並び、小屋の中に白和えが隠れているのがカントリー

・2つ目のお椀は鴨のつみれ、丸ダイコンに九条ねぎ

 今度は朱色の塗り物です。

・銀杏とレンコンが入った炊き立て酢飯に煮アナゴと錦糸玉子としいたけを添えて

 香の物に豆腐の赤だし

 銅の釜で炊き上げられています。熱々つやつやです。蒸し寿司の国ならではのごはん。

・デザートは紅茶のババロアに洋ナシとあまおう

 紺色チューリップのお皿です

・雪もちは長いも餡の皮で包んだ、大納言とゆず

 お抹茶もいただきます

 

たっぷり2時間。

体全体が幸せに包まれます。

口から入り体の中を通る食べ物は、

形を変えて全身をめぐります。

いいものを食べることができて、時間も豊かになりました。

角を曲がるまで見送ってくれる女将さんとご主人に、

今年もありがとうございましたと手を振ります。

 

膨らんだお腹をこなすために、

仏光寺通りから4条どおりに上がり、河原町を越えて

永楽屋で面白絵のハンカチを買った後、

うなぎの寝床の小道を冒険気分で抜けると

祇園の兄さん姉さんとすれ違いながら、明かりの並ぶ知恩院の坂を上がって、

45分かけてホテルへ帰ったのでした。