日々ふさおまき

走って跳んで歩いてます。

2012年12月29日 京都旅行1日目② 桜田さんの記

2012-12-30 01:04:14 | 旅行記

京都旅行は聖と俗の両方を目一杯楽しみます。

俗、というのは言葉の綾、ようは日々なす食べるという行為を

特別においしいものにいたしましょう、ということです。

 

11月に予約しておいたのが、三条烏丸からほど近い日本料理「桜田」さん。

暖簾の向こうは別世界。

招福楼出身というご主人の料理が毎年私たちを魅了してくれるのです。

 

別世界では写真を撮りません。

撮れませんというほうが正しいでしょう。

8席あるカウンターの真ん中あたりに並んで座り、

すぐ奥の厨房から供される料理を、すぐにいただいて行きます。

熱いものは熱く、色も香りも歯ざわりも、ベストに仕上げてある料理に

間を置いていただくのはことのほか勿体無いからです。

だから、記憶力のいい彼女と思い出した品々を書いておきます。

 

・梅こぶ湯と百楽のお酒

・海老と白子と湯葉を大根おろしと柑橘のジュレで

 ミキモトパールが一つ輝く、カットグラスの蓋物が綺麗です

・蕪とカラズミのお椀

 黒塗りの椀は蓋を返すと南天が可愛らしい

・茹でカニと真鯛・イカのお造り

 2段の楽焼きは年代物。紅葉や桜やこうもりの柄が楽しいところ

・柚釜 カニ味噌と海老芋

 一人用の炭コンロで最後の火入れ、こげる柚の香りが鼻をくすぐります

・八寸はマナガツオの幽庵焼き、ヤマゴボウ、青いミニダイコン、イクラしょうゆ漬け

 くわいのチップ、青菜の白和え・柿入り

 大きな素焼きのお皿に、雪囲いと小屋型の焼き物が載っています。

 雪囲いの下にゴボウが並び、小屋の中に白和えが隠れているのがカントリー

・2つ目のお椀は鴨のつみれ、丸ダイコンに九条ねぎ

 今度は朱色の塗り物です。

・銀杏とレンコンが入った炊き立て酢飯に煮アナゴと錦糸玉子としいたけを添えて

 香の物に豆腐の赤だし

 銅の釜で炊き上げられています。熱々つやつやです。蒸し寿司の国ならではのごはん。

・デザートは紅茶のババロアに洋ナシとあまおう

 紺色チューリップのお皿です

・雪もちは長いも餡の皮で包んだ、大納言とゆず

 お抹茶もいただきます

 

たっぷり2時間。

体全体が幸せに包まれます。

口から入り体の中を通る食べ物は、

形を変えて全身をめぐります。

いいものを食べることができて、時間も豊かになりました。

角を曲がるまで見送ってくれる女将さんとご主人に、

今年もありがとうございましたと手を振ります。

 

膨らんだお腹をこなすために、

仏光寺通りから4条どおりに上がり、河原町を越えて

永楽屋で面白絵のハンカチを買った後、

うなぎの寝床の小道を冒険気分で抜けると

祇園の兄さん姉さんとすれ違いながら、明かりの並ぶ知恩院の坂を上がって、

45分かけてホテルへ帰ったのでした。

 

 


2012年12月29日 京都旅行1日目 醍醐寺参拝の記

2012-12-29 23:50:14 | 旅行記

待ちに待った年末の古都旅行です。

10月末にウエスティン都ホテルを予約して以来気分を高めてきただけに、

仕事納めをしたあと、すぐに気持ちは切り替わりました。

変身、したのは洋服だけかもしれませんが、ジャケットは脱いで、

一日中外を歩いていてもいいように、足元はミドルカットのゴアテックス革靴、

上はシャツの上に薄いダウンを入れて、外にマウンテンジャケットを着込みます。

雨も降るというし、防寒防水を万全にしました。

 

家を7時20分に出て、品川発が8時27分ののぞみ。

満席の社内は家族連れもおおく、ややにぎやかですが、私は寝不足もあって

名古屋まで撃沈しました。

そこから京都までは、いつもの東海道新幹線の懐かしい車窓に二人で

思い出話に花を咲かせます。

かつて仕事で越えた鈴鹿山脈には雪帽子、

彼女の家族との思い出”名神高速道路のイヤリングちゃん”

野洲あたりでは二人共通の知人が偉い人になっているのを思い出し・・

と20年以上前の話はとどまるところをしりません。

 

京都駅に着いたのは10時20分、八条口をでて少し歩いた駅ビル内に

ウェスティン都ホテルのコンシュルジュスペースがあって、荷物をホテルまで

届けておいてくれます。

すぐにお寺めぐりをしたい身にはいつも重宝するサービスです。身軽になって

さて昼ごはんをどうしようかと考え、彼女の提案は2つ。

駅ビル内のハマムラ、北口から本願寺方面に数分歩いた、2年前にいって

はんなりした麺の具合が気に入ったうどん屋さん。

でもねえ、まだ11時だし、今から行くのは醍醐寺。

目的地に行ってから考えませんか?といったら、ちゃんとそちらでの有力店も

見つけているのが彼女のリサーチ力です。

地下鉄を乗りついで、京都市街から北東へかなり離れた醍醐駅。

私にとっては中学生以来の訪問です。

行ったことがあるだけでも珍しい、関西でもそれほどメジャーな観光地では

ないと思われるのですが・・・

駅前は、醍醐の山が近くに迫り、麓まで伸びる道の周囲は

マンションが立ち並ぶ、不思議な風景です。

若いころなら、ちょっと反感を持ったかもしれないこの街の構成が、

今はひどく羨ましい。そこに山があればいつでも緑に染まることができます。

川の流れを見ながら、気持ちをほぐすこともできます。

そんなことを思いながら、10分ほどでそのお店が見えました。

手打ちそばの下村さん。

古い木造家屋は二階に欄干があったりしますから、

前は料亭だったのかもしれないと思わせる作りです。

扉を横に開くと、土間に5つほどのテーブルがあり、都合よく窓際の

2人席が一つだけあいていました。

メニューを見ると、暖かいそばと冷たいそばが数品あるだけ。

きっとご主人一人で、そばに専心したいという思い出作った店なのでしょう。

私はおろしそば、彼女はにしんそばを頼んで、しばらく待ちます。

10分ほど待つと、土の色に焼き色がうまくのった、なかなか見目のいい器に

入ったそばが運ばれてきました。

早速まづは何もつけずにすすると、なかなか風味が豊かに広がります。

腰というよりは張りという感じの麺の具合は、細いそばとしては良い具合の

口当たりになって、するすると喉へ通すことができました。

大根も、曲線のある辛味が効いて、うまくそばの甘みを立たせてくれます。

彼女のほうのにしんそばも、出しの味が7、醤油が3といった香りが

西に帰ったという記憶回復をダイレクトに惹起させてくれるので大満足。

山へ登る腹ごしらえは十分です。

 

さあ、醍醐寺へ入ります。

広い参道は、29日の市が開かれていて、地元の野菜や衣料品やらと、

いわゆるぼろ市的な雰囲気です。お店の人も、みんjなゆったり構えて本を読んだりしていて、

商売がもたらす邪気が無いので助かります。

 

いよいよ仁王像が見下ろす西大門をくぐると、山の気配が強まります。

空気が締まった感じがするのです。

ゆるい坂になった道、最初に見えた金堂は、醍醐天皇の御願で926年に創建され、

2度の消失を経た後、豊臣秀吉によって再建された桃山時代の国宝だ、と

かいてあります。

さすが世界文化遺産。

その後も38メートルの塔と13メートルの相輪を見上げる五重塔が国宝、

弘法大師・空海と寺の開祖・理源太師の像などを見せていただくうちに、

400年を越す時を経てそこにある宝の存在に、わが身の一時を慈しむ感情が

涌いてきたりいたします。

このあたりが、下醍醐というそうで、

さらに450メートルの山を登った先には、上醍醐という寺域があります

登りに1時間、上醍醐を拝観して戻ってくるまでに、2時間30分ほどかかるでしょうと

お寺の方に説明を受け、もちろん私たちは足を進めます。

ほとんど山に登らなかった今年を締めくくるには、とてもよいお参りです。

よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ・・・あれ、よいしょが止まらない。

修行のためでしょうか、ほとんど容赦なくまっすぐ上ります。

角度がきついのです。

よいしょ、うんしょ、こらしょ、寒い京都を想定した、ダウンと山ジャケットの厚着が災いします。

もう汗がだらだら。途中からはジャケットを手に持って歩いたほどです。

上醍醐には予定通り1時間かかりました。

こちらもまた、時代をいくつも通り抜け、守られてきた建造物が次々に現れます。

薬師堂(国宝)、如意輪堂(重要文化財)、開山堂(重要文化財)、

いやいや、京都は奥が深い。

山頂でほてった体を冷やしながら、ありがたい思いとともに手を合わせました。

 

こうして2時間30分後、4時近くに下醍醐に戻りました。

残念ながら、さらに多くの寺宝を収めた霊宝館は閉まってしまったのが心残りですが、

29日の市で店を出していた、「そま」というアウトドアコーヒー屋さんでいただいた

ネルドリップの一杯に、ホッと息を深くついて、険しい山道に疲れた脚を休め、

有難い思いの余韻に浸ったのでした。