犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国便り~バニー

2019-08-11 23:25:12 | 韓国便り(帰任以後)
「このあたり、ちょっと懐かしいんで、少し散歩してから帰ります」

 武橋洞で駐在員と別れました。時間は夜の11時。

 私が帰任したあと、ソウルの漢江以北は急速に再開発が進みました。しかし、武橋洞は小さい店が多くて権利関係が複雑だからでしょうか、昔ながらの一画が残っています。

 南浦麺屋(冷麺)、五六島(焼肉)…。古くからの老舗です。


(バニー?)

 雑居ビルの2階にあるカフェ(中年女性のいるバー)です。2000年頃に、当時のもう一人の駐在員と一緒によく行きました。アコーディオンを持った流しの弾き語りが来て、「長崎は今日も雨だった」とか日本語の曲を演奏しては、チップを要求されたことを思い出しました。


(もう代替わりしてるんだろうな。でも、ちょっと覗いてみるか)

 ドアを開くと、客はおらず、テーブル席でアジュンマが一人でビールを飲んでいました。

「ヌグセヨ?(どなた?)」


(もしかして…)


「犬鍋ラゴハヌンデヨ」


「ああ、犬鍋さん! アイゴー!」


 なんと、あのときのママさんが今もやっていました。

 しばし、懐かしんだあと

「Hさんは、どうしてますか?」

 Hさんは、20年前に一緒に駐在していた日本人で、帰任後もときどき韓国に遊びに来ては、この店に寄っていたのです。

「いや、ぼくは連絡をとっていないので、消息は知りません」

「最近、連絡がなくて。心配しているの」


「ときどき来ていたんですよね?」


「最初の頃は、年に2回ぐらい来ていたけれど、だんだん少なくなって。でも、毎年、必ず電話はくれていたんですよ。最後の電話は、そうね、3年前かしら」


 ビールの小瓶を頼み、乾杯しました。

 乾きものは、カボチャの種(懐かしい!)。

「犬鍋さん、たしかお子さんが多かったでしょう?」

「ええ、娘ばかり4人です。長女が今年出産して、僕もハラボジ(おじいさん)になっちゃいましたよ」


「おめでとう。私も孫がいますよ。息子はまだ結婚してないけど、娘のほうは子供が二人」


「あの頃は、いろんな仕事、掛け持ちしてましたよね。馬券売りとか」

 週末の昼は、カチョン(果川)にある公営競馬場の馬券売り場で、馬券を売っていたと聞いています。

「そうね。子どもも独立したし、もう仕事やめてもいいんだけど、趣味みたいなものよ」

「でも、続けてくれていたからこそ、今日、こうして会えたんですよね」


「そうね。Hさんに会ったらぜひよろしく伝えてください」


 「アルゲッソヨ(わかりました)」


 結局、この日は払わなくてよいと言われ、ママさんにおごってもらう形になりました。
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