ポジャンマチャとは、漢字で布張馬車。幌馬車のことです。路上にオレンジ色または透明のビニールシートで覆いをつけた、一杯飲み屋のこと。
漢字を廃止して久しい韓国では、ポジャンの語源があいまいになりつつあります。ポジャンには「布張」以外に「包装」もあり、商品の包装に使うビニールと関係があるんじゃないかと思っている人がいるかと思えば、舗装道路の上でやってる店が多いので「舗装」だと誤解している人もいる。「シッレ(室内)ポジャンマチャ」というのもあって、これは建物の中にあるから、「布張」とは関係がない。これが許されるのも漢字廃止ゆえでしょう。
K「でも、なんでバーをやめちゃったんでしょうね」
犬「さあ。客の入りが悪かったのかな」
K「まさかM資金にひっかかったんじゃ」
犬「うーん、それはちょっと聞けないね」
われわれ三人はタクシーでウルチ路三街まで行き、もう一度電話して店を探します。ありました!ビルの壁面の店舗にビニールを張った、半室内ポジャンマチャでした。
犬「アンニョンハセヨ」
アジュンマ「オソオセヨ!」
バーの時代に通っていた仲間なので、全員アジュンマとは顔見知りです。ちょうど空いていた4人席に座ります。近くにストーブがあるので暖かいですが、人が出入りしてビニールシートがめくれると氷点下の寒風が吹き込みます。これも、韓国の冬の情緒です。
犬「何がいいかな」
K「ソックァはどうですか」
犬「ソックァ?」
K「生牡蠣ですよ」
犬「牡蠣はクルでしょう」
K「殻つきはソックァっていうことが多いですよ。漢字で石花です」
牡蠣を石の花とは風流な。Kさんと一緒だと韓国語の勉強になるなあ。あとはおでんに、クンマンドゥも頼みました。
おでんは日本から入ったものですが、日本みたいにいろんなタネがあるわけではなく、薄いさつまあげ状のもの(魚の練り物)を蛇腹式に串に通して煮込んだもの。薄めのスープに入って出てきます。
クンマンドゥは「焼き餃子」。マンドゥ(饅頭)は餃子のこと、クンはクプタ(焼く)の冠形格。普通、韓国は中国と同じで、餃子は水餃子か蒸し餃子にして食べます。中華料理屋には焼き餃子という名前の料理がありますが、大量の油で揚げたもので、実態は揚げ餃子。いわゆる日本の焼き餃子に近いものは、日本人向けの居酒屋か、屋台、ポジャンマチャにだけある。
石花は、殻つきの小振りな牡蠣が10個ぐらい、それぞれにチョンニャンコチュ(青唐辛子)が一切れずつ載っています。焼き餃子のほうは、すでに包んであるものを仕入れたのだと思われますが、形は、中華饅頭形ではなく葉っぱ形、 日本の餃子とちょっと形が違ううえにだいぶ大きい。
犬「昨日は忙しそうだったね」
ア「チョンシンオプソッソヨ」(てんてこ舞いだったわ)
犬「何時からやってるの」
ア「二時から十二時まで」
犬「昼の二時? そんな時間からお客さんがいるんだ」
ア「ええ。結構来るわ」
以前のバーでの習慣からか、われわれだけではなくどのお客さんにも気さくに話しかけています。つまみの味が特別おいしいわけではありませんが、アジュンマの愛嬌を売り物にすれば、けっこう流行るかもしれません。
アジュンマは、ケーランチム(鶏卵蒸し、韓国式茶碗蒸し)をサービスしてくれました。ここでも焼酎を数本空けたわれわれは、ポジャンマチャアジュンマが人手に渡し、今は別の人がやっているバーに行って、バレンタイン12年750ミリリットルを空け、さらに便宜店(コンビニ)で一人当たり二本のマックス(缶ビール)を買い込んで、私のホテルの部屋で車座で飲み始めたところまでは覚えています。
次の日の朝、私は着替えないままベッドの上に寝ていましたが、部屋がきれいだったところを見ると、KさんとIさんが正気を失わずに、立つ鳥跡を濁さずで、ぜんぶ片づけて行ってくれたようです。
Kさん、Iさん、テーダニカムサハムニダ!
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モンゴルのゴールドラッシュ。その後の話をぜひ聞きたいものです。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120111/tky12011122440010-n1.htm