コメンテイターの方から、「韓国では日本のように漢字とかなの併用をせず、どうしてハングルのみになったのか」という質問をいただきました。
韓国における国語教育や文字政策の歴史については、森田芳夫さんの『韓国における国語・国史教育―朝鮮王朝期・日本統治期・解放後』という大著を見るのがよいのですが、あいにく韓国に置いてきてしまったので、今参照することができません。
ネットで利用できる「韓国民族文化大百科事典」の「語文政策」という項目から、光復(解放)後の韓国の言語政策を簡単に紹介します。
光復後、国語の回復運動が各地で展開され、ハングル専用と国漢文混用法が数十回も入れ替わる歴史が始まった。
1945年「漢字廃止発起準備委員会」が発足、米軍政庁は、ハングル専用を指示。
1946年「朝鮮語姓名復旧令」が出され、「学術用語制定委員会」が設置される。
1947年「国語浄化委員会」発足。
1948年「ハングル専用法」公布。
1949年、国会で「漢字使用建議案」が可決。
1950年、文教部(現教育部)は、国民学校の漢字教育を決定し、常用漢字1,200字、教育漢字1000字を選定。
1951年、文教部は固有語と漢字語に使われる語彙頻度実態調査に着手。
1952年、小学校4年生以上の国語の教科書に、教育漢字1000字を括弧つきで併用。
1954年、大統領(李承晩)がハングル専用を指示。
1955年、「ハングル専用法」を改めて発表。その一方で中学校の漢字教育を決定し、1956年、国民学校(小学校)の教科書の漢字が併用となる。
1957年、常用漢字1,300字を発表する一方、「ハングル専用実施要綱」を改めて発表。
1958年、文教部は、各種文書、看板、官庁の印章などのハングル専用を指示。
1961年、革命政府(朴正煕)は、ハングル専用を改めて指示。
1962年、《ハングル案》第1集を発表。
1964年、小中高校の常用漢字教育が再度決定される。
1967年、大統領は、ハングル専用を再び指示。
1968年、政府は「ハングル専用5カ年計画案」を発表し、常用漢字の廃止とともに、教科書の漢字を全廃。ハングル専用法6号の但し書き規定が削除され、「ハングル専用研究委員会」を設置。
1970年、大統領令として「ハングル専用法」公布。各級の教科書は、ハングル専用に改編された。
1971年、複数の学術団体が漢字教育の復活を訴える建議文を当局に提出。
1972年、文教部は再び中学校漢字教育を決定し、漢字教育用基礎漢字1800文字を確定し、公告した後、中学校の漢文科目を独立させて漢字教育を復活させた。
1974年、文教部は高等学校の教科書に漢字併用を決定。
こうしてみると、ハングル専用への道のりは決して平坦ではなかったようです。
私が韓国に関わり始めた1990年代、主な新聞、雑誌はまだ縦書き、国漢混用でした。わずかに1987年創刊のハンギョレ新聞がオールハングルを売り物にしていたぐらい。その後中央日報が横書き、ハングル専用となりました。
教科書のほうは、国民学校(現在の初等学校)がハングルのみ、中学校の教科書(国定)がかっこ書きで漢字を併用でした。中学、高校には必修で「漢文」という科目がありましたが、入試に出題される漢字の問題はごく限られているので、漢文の時間に主要科目の学習が行われていた学校もあったとか。
ですから、当時の学生はまがりなりにも漢字を学習していました。
上の歴史にあるように、漢字教育が完全になかった時期は、1970年代前半に限られていました。そして学校で漢字をまったく習わなかった世代(ハングル世代)は、そのことにコンプレックスをもち、自分たちが子供をもつようになると、子供には漢字を学習させようとして、90年代後半には漢字学習ブームが訪れます。
現在、韓国の小学校では、学校や先生の裁量によって、朝の時間などに漢字を教えているのが大部分であると聞きます。
一方、最新の教育課程(指導要領)では、中学・高校の漢文が必修から選択科目に格下げされたとのこと。これが、漢字教育熱に冷水を浴びせることになるのかどうか…。
巷の漢字学習は盛んとはいえ、出版物の漢字比率は低下する一方。小説の類は昔からハングル専用でした。新聞、雑誌も、朝鮮日報、東亜日報などといった保守的な新聞さえ今ではすっかりハングル専用になりました。漢字が読めない人が増えたので、漢字混じりは難しいといって敬遠されちゃうからですね。
事典の記述によれば、
「光復以後、政府の言語政策は主に「ハングル専用」の是非と日本語の締め出しに集中されてきたが、今日なお未解決のまま論争が続いている。しかしハングル専用運動は、民族の主体性確立、国語意識の高揚、横書き拡大、公文書・看板・書籍などのハングル化、文盲退治などの功労が少なくなかったと評価されている」
ということで、全体として、ハングル専用の方向性は誤っていなかったというのが韓国の立場のようです。
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ほかのソフトでは、熟語単位や文節単位で変換できるものもあるかもしれません。
韓国語から日本語への翻訳をする韓国人は、日本版のワードを使っている人が多かったようです。
背景は多分に政治的な匂いがあるようですね。
日本語排除は当然のこととして、漢字は朝鮮文化とは不可分のものと思えるのですが。
あつかましく重ねてお尋ねするのですが、韓国
のパソコンは漢字変換はできるのでしょうか?