犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

菅氏は妄言製造機?

2020-09-14 23:55:34 | 韓国雑学
 次期首相に当選確実の菅官房長官の人となりについて伝える韓国のネット記事に、こんなのがありました。

 菅官房長官を妄言製造機ときめつけ、妄言の例を列挙しているのです。

9月12日付マネートゥデイ(リンク、韓国語)

「安重根は犯罪者」、「独島は日本領」...「妄言製造機」菅語録

「独島は日本領、慰安婦は強制ではない」、安倍総理と次期総理有力候補の菅は、口は違っても同じことを言う

 日本の次期総理有力候補の菅義偉官房長官の韓日関係に関する発言があらためて注目されている。日本のメディアから「安倍の腹心」と評価されている菅長官は、安倍政権を継承するだろうという観測だ。実際、安倍首相と菅長官の韓国に関する妄言の多くは「瓜二つ」だ。

 「安重根は、犯罪者・テロリスト」
 もっとも人口に膾炙している発言は、安重根義士についての言及だ。
 菅長官は、2014年に中国で安重根記念館が開館された後、「安重根は、わが国の初代総理を殺害し、死刑判決を受けたテロリスト」と言った。
 安倍首相も同じようなことを言っている。菅長官の妄言が、韓国と中国で議論を呼んだあと、安倍首相はこうした発言は日本政府の公式見解なのかと質問され、「安重根は伊藤博文を殺害し、死刑判決を受けた人物と承知している」と答弁した。

強制徴用問題はすでに1965年に解決されたこと
 また、日帝強占期の強制徴用と慰安婦被害者の問題についても妄言を吐いた。菅長官は、二つの問題について、1965年の日韓請求権協定に言及し、「請求権の問題は完全かつ最終的に解決されている」と述べた。
 そもそも徴用問題については、韓国大法院が2018年に徴用被害者賠償判決を下したことが「韓日請求権協定および国際法に反する」とし、「韓国側が主導的に解決策を出すべき」と述べた。
 先月、大法院が被告企業である日本製鉄(旧新日鉄住金)に国内資産の押収命令を出したことに対しては、韓国製品の関税引き上げ、韓国企業への融資や送金の停止など、あらゆる報復措置を検討する」とあからさまな脅しをかけた。

「慰安婦強制動員の証拠はない」
 慰安婦問題にも反省の色を見せていない。河野洋平元官房長官が1993年、慰安婦の強制徴用について謝罪する「河野談話」を発表したことについて、「強制連行を立証する資料がないのに(これを認めたことが)大きな問題だった」と述べたことがある。
 これは、安倍首相が、日本軍慰安婦が軍や官憲によって強制連行された証拠がなく、慰安婦動員は民間の主導下で自発的に行われたものだと主張したことと軌を一にしている。
 安倍首相は2016年の参院予算委員会に出席し、「政府が発見した資料に、軍や官憲による強制連行を直接示した記述は見当たらなかった」とし、「この立場にいささかも変わりはない」と発言したことがある。
 また、「日本軍慰安婦が戦争犯罪に当たると認めたことはない」とし、「慰安婦問題は1965年の日韓協定で法的に解決された」と主張した。

「独島は日本領、東海? 日本海が唯一の呼称」
 安倍首相と菅長官は双子のように独島を日本領と主張している。
 安倍首相が政権についてあと、日本は外交青書で毎年「竹島は歴史的事実に照らしても、国際法上も、日本固有の領土」と主張してきた。
 東海の表記についても、日本海が唯一の呼称と主張している。
 菅長官は、韓国の独島防衛訓練に抗議し「歴史的事実に照らしても、国際法上も、竹島は日本固有の領土だ。極めて遺憾」と独島の領有権を主張している。

安倍首相よりは柔軟、根っからの右派ではないだろう
 ただ、一部では、菅長官は安倍総理よりも柔軟な歴史観を持っているのではないかという評価も出ている。菅長官は2014年、「サンデー毎日」とのインタビューで、「正直に言うと、私には国家観というほどのものは持っていなかった」と述べた。菅長官がこれまで、個人の政治的な信念を表に出すより、韓日関係が行き詰まる中、日本政府のスポークスマンとしての役割を忠実に果たしてきたという分析だ。
 実際、菅長官は、安倍首相の靖国神社参拝を制止してきた。2012年12月に官房長官に就任して以来、菅長官は一度も靖国神社を参拝していない。

 取り上げられているのは、「安重根の位置づけ」、いわゆる「徴用工裁判」、いわゆる「従軍慰安婦問題」、「竹島問題」、「日本海呼称問題」の5つ。

 一つずつ見ていきましょう。

 安重根が、日韓併合の前年である1909年に、満州のハルビン駅で伊藤博文首相を射殺、裁判で死刑判決を受けて刑を執行されたのは歴史的事実です。

 結果的に、韓国併合に必ずしも賛成していなかった伊藤が死亡し、韓国併合を早めたとも言われていますが、韓国において安重根は英雄とされ、「義士」と呼ばれています。

 日本にとって、首相を殺害した人物が、「犯罪者・テロリスト」とされるのは、当然のことですね。

 次は、いわゆる「徴用工裁判」。

 これは、韓国の元徴用工が強制労働させられたと言って、日本の企業を相手に謝罪と賠償を要求した裁判です。そもそも原告は時期的に見て日本の募集に応募して自発的に働きに来た人々です(途中で徴用に切り替えられました)。

 徴用問題については、「日韓請求権協定で解決済み」というのが日本の一貫した立場。韓国の大法院が、「併合そのものが不当なんだから、その期間に韓国人が受けた苦痛に対しては、すべからく賠償を求めることができる」というとんでもない判決を下したことに問題があるわけです。

 一方、慰安婦問題はやや複雑です。1993年の「河野談話」について、以前、私は誤訳の問題を繰り返し提起したことがあります(リンク)。

 再掲すると、

〈日本語原文〉
「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」

〈韓国語訳〉
「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したことが明らかになった」

 仮に誤訳がなかったとしても、河野談話の「官憲等が直接これに加担したこともあった」という部分は、証拠がないのに認めてしまっていることが大きな問題でした。

 安倍首相は、第一次政権下の2007年に「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」という内容を閣議決定したのですね。韓国の記事にある「2016年の参院予算委員会の答弁」は、それを再確認したものです。

 これに対し韓国は、「いったん認めたのに、あとから否定するのは怪しからん」という立場。

 どうしても意見がかみ合わないので、これを打開するために、安倍首相と朴槿恵大統領の間でまとめた苦心の作が、2014年末の「日韓慰安婦合意」でした。この「最終的かつ不可逆的な合意」を文在寅大統領が反故にしたのは、広く知られている通り。

 そして竹島問題ですが、竹島(韓国名独島)が日本領というのは、別に安倍首相が主張し始めたものではなく、韓国が一方的に李承晩ラインを設定して竹島を不法占拠して以来の、日本政府の一貫した主張です。

 また、日本海を東海と呼ぶべきだというのは、1992年に韓国が突然主張し始めたこと。

 こうしてみると、マネー・トゥデイが安倍&菅の「妄言」として挙げているのは、どれも「妄言」なんかではなく、日本の正当な主張であることがわかります。

 「妄言製造機」というのは、もともと、数々の問題発言、失言、漢字の読み間違えを乱発した麻生元首相につけられたニックネームです。

 まあ、今のところ菅官房長官を「妄言製造機」などと呼んでいるのはマネー・トゥデイだけ。韓国の主要新聞の記事は検索にひっかかりません。

 あまり気にすることはないのかもしれません。
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