犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国による華僑差別(1)

2006-04-22 11:46:47 | 近現代史
 鄭大均『日韓のパラレリズム』(1992、三交社)より

「華僑には、1970年に制定された外国人土地法によって、一世帯あたりの住宅用土地200坪以下、店舗50坪以下というような制約があり、土地を買い入れる場合には内務部長官の承認(店舗用)や届け出(住居用)が必要であり、田畑の所有は一切認められていない。
 1950年代まで、在韓中国人の主産業の一つは野菜農業であり、ソウル郊外には多数の中国人農民がいたが、外国人土地法によって突然財産権が奪われる悲劇が生じた」

そのほかの差別として、同書は

「外国人名義での貿易商の登録禁止、合弁事業において株式保有が49%以下に規制、高梁酒への過度に高い税率、中華料理店への高額所得税、2世、3世が大学を出ても大企業や公務員への就職の門戸が閉ざされている」

などを挙げ、その結果、台湾やアメリカへの大量流出が生じたとしています(70年代初頭12万が、現在2万)。
 現在、わずかに残った華僑の大半は、中華料理店、雑貨店、漢方薬店のような零細自営業に従事しています。

「在韓中国人には、王貞治に匹敵するヒーローも、邱永漢、陳舜臣に匹敵するような文化人もいないのであり、在日韓国・朝鮮人のように、自分名義で新聞、雑誌を発行し、出版社をもち、また信用組合を設立することもできない。外国人が定期刊行物を発行することは法律で禁じられており、金融機関も外国人名義では設立できない。このような状況では、様々な制度的差別に対する異議申立ての運動を起こすことも容易ではないだろう」

 日本における在日コリアン、華僑より、はるかに厳しい差別でしょう。そして、多くの韓国人がこの事実を知らない。

「どのような社会でも社会でも社会革新の原動力になるのは往々にしてマイノリティの異議申立てであり、韓国においても労働者や女性の運動によって、搾取や差別が弱まり、労働者や女性の新しい才能が産業や芸術や学問分野まで反映しはじめている。

 だが、この国にはエスニック・マイノリティの運動はないのであり、このことが意味するのは、平等化や機会均等が「韓民族」の内側には保障されても外側には適応されないということであり、また、新しい創造性やアイデアが育ちにくいということである。

 私の見るところ、この弊害がもっとも大きいのは学問や芸術といった創作の分野で、異質なものとの交流を避け、「近親相姦的」な営みから生まれる作品群には、外部の者を納得させ、感動させるに足るものがきわめて少ない。労働運動や女性運動の過程で新しく生まれた創作には、確かにエネルギッシュで斬新なものもあるが、それは往々にして、ショーヴィニスティックで普遍性には欠けているのである」

 著者鄭大均は48年日本生まれの在日コリアン。UCLAでのアジア系アメリカ人研究で修士。専攻はエスニック。

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