犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ラムザイヤー教授のビデオレター

2022-03-16 16:33:14 | 慰安婦問題
 一年ほど前、「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」(International Review of Law and Economics)という学術誌に、「太平洋戦争における性契約」という論文を発表して、韓国で激しい批判を巻き起こしたJ. マーク・ラムザイヤー教授が、韓国のメディア・ウォッチにビデオ・レターを送り、支援者に感謝の言葉を伝えました。

 拙訳で紹介します(リンク)。



学問・言論・表現の自由を守るために闘う韓国人のために
(For Koreans Fighting to Protect Academic Freedom and Free Speech)

 こんにちは。J. マーク・ラムザイヤーです。

 私はハーバード・ロースクールで教えています。こうして韓国の方々に私の気持ちを伝える機会を提供してくれた、メディアウォッチのファン・ウィウォン代表理事に、感謝申し上げます。

 私は研究の合間に、日本に関する文章を定期的に書いています。私の研究の大部分は、現代日本の法律と法的手続きに関するものですが、ここ数年、慰安婦問題についても研究してきました。ただ、慰安婦研究に関して言えば、私は米国の大学の研究者の相当数が、この問題について過度に偏狭な見方をしているという事実を知り、つらい思いをしました。そして正直、驚きました。

 米国では、人々の間の意見の相違は、ほとんどの問題において尊重されます。激しい論争になることもありますが、自分と異なる見解を持った人も、いったんはその主張を述べる機会が与えられなければならない、という共通認識が確立されているのです。つまり、ほとんどの問題において、米国の学者たちは、通説と異なる主張であっても、まずはそれを発表する機会が与えられ、それを学術誌に掲載する機会が保障されているのです。

 それにもかかわらず、慰安婦に関する問題では、私は、多くの米国の学者たちが自分と意見が違う人とも相互尊重をする伝統を共有していないことを知りました。実は、一部の米国の教授たちは、この慰安婦問題に関しては、自分たちと意見が違う人には、その見解を出版することも許してはならないと信じてさえいる状況です。これは、実際に私が個人的に経験したことです。私は、多くの米国の学者たちが慰安婦の歴史についての私の研究結果を絶対に出版してはならないと思っている、ということを確認しました。

 こうした「不寛容(intolerance)」は、さまざまな形で表れました。私は2020年の年末に慰安婦(かつての日本人慰安婦と朝鮮人慰安婦の両方)についての雇用契約書に関連し、その経済的論理についてのごく短い論文を発表しました。この論文についての記事が出るや否や、学者を含む多くの人々が、私の論文を撤回させろと言って、学術誌の編集陣に圧力をかけました。彼らは私の論文を撤回させることを要求する嘆願書の署名まで集めました。韓国と日本の歴史についてまったく知らない学者たちも、これに同調しました。この騒動は何か月も続きました。

 私の論文に怒った人々の一部は、マスコミに報道されたものとは別の私の論文を探し始めました。それらの論文は慰安婦問題とは関係がありませんでした。それにもかかわらず、彼らは学術誌の編集陣に論文を撤回させろと要求しました。彼らは、私が慰安婦について行った研究を理由に、私を処罰しようと考えたのです。

 ハーバード大学に私を解任しろと言って嘆願書を送った人々もいました。このうちの一つには、3万人が署名したそうです。ただ、私はその3万人の中に実際に私の論文を読んだ人はほとんどないと確信しています。

 そして、私が今年の冬に、これまで慰安婦問題で私を批判した人々に反駁する論文をハーバード大学のウェブサイトに載せるや否や、何人かの教授たちが私の反駁論文を削除するよう、ウェブサイト管理者に要求しました。はっきりいえば、彼らは、私が批判者に対して書いた反駁論文すら、誰も読めないようにすることを望んだのです。

 このような不寛容は、あきらかにまともな大学の姿ではありません。学者が通説と異なる見解を持ったからといって沈黙しなければならない状況では、大学での仕事を続けることは不可能です。基本的に言えば、このような不寛容的な状況は、私たちの多くが暮らしたい自由民主主義の社会とは、まったく両立できません。

 私たちは、これに対して立ち向かわなければなりません。異なる考えを持った人々に沈黙を強いる者たちを相手に、闘わなければなりません。言論の自由、そして異なる見方に対する寛容こそが、自由民主主義の核心であるからこそ、私たち全員がそれぞれの場所でこれを守るために闘うべきでしょう。

 幸い、私は研究中に聡明で勇気ある韓国の学者たちに出会い、慰めの言葉をかけてもらいました。韓国にそのような学者たちがたくさん存在するということを、私は日本の西岡力教授を通じて知りました。西岡教授は、戦争中の日本について研究している著名な歴史学者の一人であり、私の研究にも多くのアドバイスをくださいました。

 西岡教授やほかの方々の研究を通して、私は韓国に献身的な学者がたくさんいることを知りました。彼らは高潔な研究に専念しており、過激な反対勢力、また深刻な個人的危険にもかかわらず、自分たちの見解を進んで発言し、出版しています。

 まず、韓国およびアジア地域の財産法問題に関する著名な経済学者である李宇衍(イ・ウヨン)イ・ウヨン前落星垈経済研究所研究員は、先日、ハーバード大学に招聘学者としていらっしゃったこともある方です。

次に、金柄憲(キム・ビョンホン)韓国国史教科書研究所所長は、1930年代、40年代に実際に起きたことを知らせるのに、相当な寄与をした方です。

 私はこの二人の学者が学術活動とメディア活動だけでなく、さまざまな方法で韓国の学問的自由と言論の自由を守る運動にも献身してきたということを知りました。

 私たちは皆、これらの方々にお世話になっていますが、特に私はそうです。昨年、私が米国人の教授たちから攻撃されていたとき、韓国の驚くほど寛容で勇気ある学者たちとリーダーたちが、相当な個人的リスクを冒して私を助けたいと提案してくれました。これらの方々にこのように感謝の言葉を伝える機会を与えてくれた、メディアウォッチのファン・ウィウォン代表理事に感謝申し上げます。

 まず、韓国の学者の方々から、

 李栄薫(イ・ヨンフン)李承晩学堂校長(教授)。私が日本語に翻訳されたイ・ヨンフン教授の素晴らしい、画期的な研究を読むことができたのは、幸運と言わなければなりません。

 柳錫春(リュ・ソクチュン)元延世大学教授。私の大学時代にも、柳教授のように正直でインスピレーションを与える社会学教授がいてくれたらどんなによかっただろうと思います。反対勢力の不当な批判にもかかわらず、自分の立場を曲げずに、結局慰安婦問題についての見解のために不公正な刑事裁判の対象となった柳錫春教授に敬意を表します。

 朱益鍾(チュ・イクジョン)李承晩学堂教授。朱教授は私が批判者への回答を準備していたとき、寛大にもご自身の研究内容を共有してくださいました。

 鄭安基(チョン・アンギ)前高麗大学教授、
 ジョセフ・イ(Joseph Yi)漢陽大学教授、
 ジョー・フィリップス(Joe Phillips)延世大学教授、

 これらの方々は過激な反対扇動にもかかわらず、学問の自由を強力に支持するという立場を明らかにしてくださいました。

 私は法曹人(正確には引退した法曹人)です。どうあれ私もやはり法曹人として、次の方々にご助力いただき、感謝の言葉を伝えます。

 自由と統一に向けた弁護士連帯所属のキム・ギス弁護士。
そして韓半島の人権と統一のための弁護士の集い所属(当時)のキム・ソヨン弁護士。

 加えて、私に多大なご助力をくださった方々です。

ビョン・ヒジェ メディアウォッチ代表顧問。
キム・サンジン キム・サンジンテレビ代表。
チョン・ヒイル チョン・ヒイルテレビ代表。
クァク・ウンギョン クァク・ウンギョンテレビ代表。
ジュ・オクスン母親部隊代表。
キム・ヨンサム ペン&マイク記者。
パク・スンジョン ペン&マイク記者。
チョン・クァンジェ韓国近現代史研究会顧問。
ソン・ジホ韓国近現代史研究会代表。
ソン・ヘジョン悪い教育に怒った保護者連合代表。
イ・ギョンジャ全国保護者連合代表。
ナ・スヨル韓国人権ニュース記者。
パク・セウォン国史教科書研究所幹事。
コ・ヒョンヒョン青年スピリット代表。
イ・ドンジン国民啓蒙運動本部代表。

 最後に、もう一度、こうして韓国の方々に感謝の言葉を伝える機会をくださったこと、そして昨年私を支持してくれた方々に挨拶する機会をくださったことについて、メディアウォッチのファン・ウィウォン代表理事に感謝します。勇気があり、原則のある歴史の議論の道を開いてくれたことに感謝します。

 正直さ(honesty)と率直さ(candor)こそが、大学の根本です。同時に、それはまた自由民主主義の根本であるだけでなく、私たち全員が暮らしたい社会の姿です。

 正直さと率直さによって具現される世の中のために努力するのは、苦しいことかもしれません。しかし、私が今日、名前を挙げて感謝の言葉を伝えた方々は、そうした世の中に向かって勇気ある一歩を踏み出され、とてつもない個人的リスクを甘受していらっしゃいます。

 私は個人的にこれらの方々にとてつもない恩をこうむっています。さらに広げて言えば、自由な世の中に暮らすことを夢見る私たちすべてが恩をこうむっています。

 心より感謝申し上げます。


〈参考〉
ラムザイヤー論文とアトランタ銃撃事件

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 愛犬家、尹錫悦 | トップ | 新型コロナ感染者62万人はK-... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

慰安婦問題」カテゴリの最新記事