早いもので、妻がくも膜下出血で倒れて3年になります。手術をしてもらった大学病院で受けていた3か月に1回の定期健診も、最近は、半年に1回になりました。
この日は、いつものMRI検査ではなく、X線の検査でした。
「MRIは血管の状態を診る検査で、X線はコイルの状態を診ます」
カテーテル手術で、破裂した血管に金属のコイルを詰めて傷口を塞いだのですが、そのコイルに異常がないかどうかを見るんだそうです。
執刀してくれた先生が、モニター画面に1年前の画像と並べて見せてくれます。
「まったく変化ないですね。血流などの影響で、コイルがほどけたりすることがあるんですけれど、大丈夫です」
私も妻もほっとしました。
「運動はしてますか」
前回の診察のとき、テニスを再開したことを報告していました。
「はい、週2回」
「後遺症はありますか」
妻は手術のあと、高次脳機能障害が残り、同時に複数のことに注意を払うのが苦手になりました。
「今、家に孫がいるんですけれど、孫をあやしているときに犬が庭に出たがったりすると、パニックになったりすることがあるんです」
「運転のほうは?」
「いえ、本人はしたがっているんですけれど、家族がみんな反対で…」
「大丈夫だと思いますけどね…」
その日の夜、2年ほど前に起きた池袋暴走事故の特集番組がありました。88歳の高齢ドライバーが、アクセルとブレーキを踏み間違えて暴走、母子が死亡した事故です。被告は過失を認めず、「車の不具合」を主張して裁判になっていました。判決は、禁固5年の実刑判決。
番組は、この事故のあと、免許証を自主返納する高齢ドライバーが増えたことを伝えていました。
ある高齢者が、一つの作業をやりながら簡単な計算問題を解き、間違えてしまう場面を映しました。
「これ、リハビリ病院でしていた訓練と同じだね」
テレビに出ていた高齢者は、自分が運転し続けることの危険を理解し、免許証を返納することに。
「一度事故を起こしちゃったら、取り返しがつかないからね」
この番組を見て、妻ももう「運転したい」とは言わないんじゃないかと思います。
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