犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

倒れて3年

2021-09-06 23:15:46 | 介護生活
 早いもので、妻がくも膜下出血で倒れて3年になります。手術をしてもらった大学病院で受けていた3か月に1回の定期健診も、最近は、半年に1回になりました。

 この日は、いつものMRI検査ではなく、X線の検査でした。

「MRIは血管の状態を診る検査で、X線はコイルの状態を診ます」

 カテーテル手術で、破裂した血管に金属のコイルを詰めて傷口を塞いだのですが、そのコイルに異常がないかどうかを見るんだそうです。

 執刀してくれた先生が、モニター画面に1年前の画像と並べて見せてくれます。

「まったく変化ないですね。血流などの影響で、コイルがほどけたりすることがあるんですけれど、大丈夫です」

 私も妻もほっとしました。

「運動はしてますか」

 前回の診察のとき、テニスを再開したことを報告していました。

「はい、週2回」

「後遺症はありますか」

 妻は手術のあと、高次脳機能障害が残り、同時に複数のことに注意を払うのが苦手になりました。

「今、家に孫がいるんですけれど、孫をあやしているときに犬が庭に出たがったりすると、パニックになったりすることがあるんです」

「運転のほうは?」

「いえ、本人はしたがっているんですけれど、家族がみんな反対で…」

「大丈夫だと思いますけどね…」

 その日の夜、2年ほど前に起きた池袋暴走事故の特集番組がありました。88歳の高齢ドライバーが、アクセルとブレーキを踏み間違えて暴走、母子が死亡した事故です。被告は過失を認めず、「車の不具合」を主張して裁判になっていました。判決は、禁固5年の実刑判決。

 番組は、この事故のあと、免許証を自主返納する高齢ドライバーが増えたことを伝えていました。

 ある高齢者が、一つの作業をやりながら簡単な計算問題を解き、間違えてしまう場面を映しました。

「これ、リハビリ病院でしていた訓練と同じだね」

 テレビに出ていた高齢者は、自分が運転し続けることの危険を理解し、免許証を返納することに。

「一度事故を起こしちゃったら、取り返しがつかないからね」

 この番組を見て、妻ももう「運転したい」とは言わないんじゃないかと思います。
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