大阪転勤にともない、1年5か月の間、週5日寝泊まりしていた生家を離れることになりました。同居していた91歳の伯母の面倒は、兄夫婦が見てくれることになり、私はお役御免になります。
土曜日の午前中、身の回りのものをダンボール詰めし、庭に面したベランダに出て一服し、ふとベランダの隅に目をやりました。
ベランダに設置してあるエアコンの室外機の陰に、鼠獲りがおいてあったのですが、なんとそこに鼠が一匹かかっているではありませんか。
この鼠獲り、金属の籠の中に餌をしかけ、餌をひっぱると入り口の扉がバチンと閉まるという、古典的なタイプ。昨年の秋に天井裏に鼠が出たとき、天井裏にしかけたけれども収穫なし、結局、粘着テープのほうで鼠を捕獲したことがあります。
その後、冬の寒い間は鼠も息をひそめたので、しかけたというより、邪魔にならないところに片づけたつもりで放置してあったものです。餌としてしかけてあったチーズはかちかちに干からびていました。
春になり、鼠が活動を開始して、通り道であったエアコンダクトの登り口付近にあった鼠捕りにひっかかったのを、たまたま、私が発見したのです。
「おばちゃん、鼠が捕れたよ」
「あら嫌だ、はやく殺して!」
「殺すって、どうやって?」
鼠を捕り慣れていないので、要領がわかりません。
「水に沈めて、溺れ死にさせるのよ」
鼠は、扉が閉まったときに長い尻尾がはさまれたようで、それを強引に引き抜いたのか、尻尾の皮がすっぽりと抜け、籠の中は血だらけの、凄惨な状況を呈していました。
ただ、命に別状はなく、傷を負いながらも、籠の中で活発に動き回っています。
(かわいそうだけど、逃がすわけにもいかないし…)
かなり大きい籠を沈めるのに適当な容器がなく、結局、納屋から大型ポリバケツを引っ張りだして、水を張りました。
鼠が苦しむ姿を見たくなかったので、水の中にネズミを籠に入ったまま放り込み、目を背けていったん家の中に入りました。
10分ぐらいして、もう死んだだろうと思って、ベランダから庭におりました。
ポリバケツの中を覗き込もうとした、そのときです。ポリバケツの後ろから、ぬっと黒い物体が現れたのは…。
「ひぇー!」
私は文字通り悲鳴をあげ、その場から1メートルぐらい後ろにすっとんで、地面に尻餅をつきました。
その黒い物体の正体は、猫でした。
真っ黒で、ずんぐりと肥り、毛はペルシャ猫風にふさふさしています。きっと、鼠の血の匂いにひかれて、ポリバケツの中を覗き込もうとしていたのだと思われます。
猫はふてぶてしいというか、私があわてふためいている様子を静かに観察していましたが、正気を取り戻した私が、悔し紛れに威嚇すると、ゆっくりと踵を返して立ち去りました。
驚きのあまり、ひっくり返るという経験は、53歳にして初めての経験でした。
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私はもはや遠い昔の記憶なので、どんなに大変だったか、覚えていません。
大変だったのは、一方的に妻のほうだったからかもしれません。
最近はイヤイヤ期の育児で、家と公園と町内のスーパー、薬局の往復くらいで
しかめつらが多かったせいか、一服の笑いに救われた感が…。また来ます。
良い大阪生活となりますよう、影ながら応援しています!