写真:男はつらいよ公式サイトより、第34作 寅次郎真実一路 (1984年公開)
D(三女の夫、フィリピン人)は多趣味です。
1年前に日本に来てから、いろいろな趣味を開拓しました。地元のチェスクラブに入ったり、中古のエレキギターを買って練習したり、ジムに登録してボディービルディングに励んだり…。
もう一つの趣味が日曜大工。板を買ってきて机とか、踏み台とか、ワインラックを作りました。
「この竹、切ってもいいですか?」
「だめだよ、他人の竹やぶなんだから」
数日後、たまたまその竹やぶの持ち主が竹を切っているときに通りがかって、1本、もらってきました。
「何作るの?」
「タコです」
「タコ?」
「kiteです」
「ああ、凧ね」
竹を細く割いて枠を作り、ゴミ出し用のポリ袋を貼り合わせて、器用に凧を作りました。
さっそく娘をつれて凧あげにいきましたが、風のない穏やかな日が続いたので、なかなかうまく上がらない。
先週の日曜日、風がけっこう強い日がありました。絶好の凧あげ日和です。Dは勇んで公園に出かけていきました。
しばらくして、SNSに動画がアップされました。
公園で走り回る娘の頭上高く、凧が上がっていました。
「アー!」
悲鳴とともに動画は中断。後で聞くと、糸が切れて、凧はそのまま風に流されて遠くへ飛んで行ってしまったそうです。時間にして、わずか2分。
凧につけていた糸は、家にあった、ありあわせの編み物の糸。強風に耐えられなかったようです。
「やっぱり、凧は凧糸を使わなくちゃ」
「はい、また作ります。竹、残っていますから」
この程度のことではめげないのがDのいいところ。次の週末、さっそく百円ショップで凧糸を買ってきました。
ところで、「糸の切れた凧のよう」という表現がありますね。
三省堂国語辞典に載っていました。
糸の切れたたこ(凧):一か所に落ち着かないこと。この先どう行動するかわかないことなどのたとえ。「糸の切れたたこのように何日も帰ってこない」
「男はつらいよ」のフーテンの寅さんにぴったりです。おっちゃんやタコ(蛸)社長のセリフにあったかもしれません。
家を出て行って、音信不通の息子に対する家族の悪口専用の表現ですが、少数ながら、「束縛のない自由気ままな生活」といった、肯定的な意味で使う人もいるようです。
でもその場合は、「(釣り)糸の切れた蛸のよう」というほうがぴったりきます。
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