犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

慰安婦問題30年

2021-09-10 23:13:02 | 慰安婦問題
 慰安婦問題が勃発して、今年で30年なんだそうです。

 そもそもの「火付け役」だった朝日新聞が、社説で取り上げています。

2021年9月8日付朝日新聞社説(リンク

「慰安婦」30年 被害者の救済が原点だ

 韓国人女性の金学順(キムハクスン)さんが、日本軍の慰安婦だったと名乗り出たのは、30年前の夏だった。重い証言を機に、日本政府の調査や市民らの支援活動、日韓双方での研究が活発化した。


 1991年8月、金学順さんが元日本軍慰安婦だったとして名乗り出ました。これをスクープした朝日新聞は、その後、猛然と日本政府批判のキャンペーンを張ります。

 そして、朝日の報道を通して、韓国には「強制連行された20万人の朝鮮半島出身少女」というイメージが定着することになります。

 そのときの朝日新聞の記事には誤りが多く、研究者や他のメディアから指摘を受けても長年放置。20年以上経った2014年8月、一部の記事の取り消しと謝罪を行いました(リンク)。

 その後、同年12月には第三者委員会の報告書を踏まえ、あらためて「おわびと訂正」を行いました。その記事は、朝日新聞のホームページで読めます(リンク)。

 しかし、この「訂正」はあまりにも遅く、また韓国はこんな訂正記事に注目もしませんでしたから、韓国の誤った「慰安婦イメージ」を正すことはできませんでした。

 しかし、今なおこの問題は政府間の懸案であり続け、両国間の一部で極端な言説も飛び交う対立点になっている。

 朝日新聞は、自社の報道がここまで大きな政治的影響を及ぼし、日韓関係を悪化させるとは思っていなかったでしょう。

 日本政府は1993年の「河野談話」で、旧日本軍の関与の下、慰安婦だった女性らの名誉と尊厳を深く傷つけたとして、反省と謝罪を表明した。政府は今も談話を堅持している。

 その後に設けられた「アジア女性基金」では日本から民間の寄付などが被害者に送られた。だが韓国では、日本政府の責任逃れだとの反発が起き、成功とは言い難い結果に終わった。


 慰安婦キャンペーンにより、1992年1月に訪韓した宮沢首相に謝罪させ、93年に「河野談話」で「強制性」を認めさせ、「アジア女性基金」でお金を支払わせた。これでじゅうぶん政府をとっちめることができた。朝日新聞は、このあたりで幕引きをしたかったのだと思います。

 ところが、ことはそれでは収まらなかった。「河野談話」は日韓間の政治的取引の産物でした。「証拠はないが、「強制性」を一部認めることで、これ以上問題を拡げない」という約束で談話がまとめられました。問題の個所は以下です。

「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」

 ところが韓国は、上の太字部分の「こともあった」を削除し、

「官憲等が直接これに加担したことが明らかになった」

としたうえで、「日本政府が慰安婦強制連行を認めた」として、鬼の首を取ったように喜びました(リンク)。そしてその後、韓国は「法的責任と賠償」を要求するようになります。左派の人士も含め、官民一体となって作り上げた「アジア女性基金」も、挺対協をはじめとする慰安婦支援団体の強い反対にあって頓挫。慰安婦問題は「日韓間の最大の問題」であり続けました。

 そして6年前。日韓は慰安婦問題での政府間合意を発表した。日本政府の予算により、心の傷を癒やす措置も盛り込んだが、後任の文在寅(ムンジェイン)政権は、この合意を骨抜きにした。

 2015年末、朴槿恵政権下の日韓外相会談で、日本と韓国は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決」に合意しました。このとき、朝日新聞は、合意を歓迎する社説を載せました(リンク)。

慰安婦問題の合意 歴史を越え日韓の前進を
 節目の年にふさわしい歴史的な日韓関係の進展である。両政府がわだかまりを越え、負の歴史を克服するための賢明な一歩を刻んだことを歓迎したい。…両外相ともメディアを通じて両国民に固く誓ったのだ。合意をしっかり履行してほしい。…日本政府は誠実に合意を履行し、韓国側は真剣に国内での対話を強める以外に道はない。…大切なのは、日韓共同の新基金事業を着実に軌道に乗せるとともに、韓国が将来、再び問題を蒸し返さないようにすることだ。…韓国政府が合意を真剣に履行するつもりなら、まず、合意に反対を唱える国内勢力を説得できるかどうかが問われる。少女像の撤去も重要な試金石となろう。」


 歴代の日本政府が謝罪を重ね、償いを試みたにもかかわらず、問題が前進しないのはなぜか。日韓双方はいま一度、冷静に考える必要がある。
 文政権は、合意が「被害者中心になっていない」と疑義を投げかけたが、具体的な改善策などは示していない。


 問題が前進しない原因がもっぱら韓国側にあることは明らかです。

 日本側でも誠意を疑わせる言動があった。安倍前首相は、被害者に手紙を送ることについて「毛頭考えていない」と国会で答弁し、韓国側を刺激した。

 この答弁は、2016年10月に行われました。15年12月に「最終的かつ不可逆的な解決」に合意したにもかかわらず、韓国が、「首相からの謝罪の手紙」という、合意に含まれない「追加的措置」を要請して、日本側を刺激したためです。

 そんななかでも専門家らの研究は続いており、慰安婦の実態は多様だったことがわかってきた。当時の経緯は、資料や証言に基づいてしっかり解明され、継承されるべきものだ。

 たとえば、『日本軍慰安所管理人の日記』(2013年、韓国で刊行)とか、朝日新聞社刊『帝国の慰安婦』(朴裕河、2014年)でしょうか。後者は、元慰安婦(実際はナヌムの家)から名誉棄損で訴えられ、今も係争中です。ただ、最近の研究に新資料の発見は少なく、主張の根拠になっているのは挺対協が初期に編んだ証言集です。証言集をきちんと読めば、慰安婦が強制連行でも性奴隷でもなく、多くが人身売買と就職詐欺であったことがわかります。

 金学順さんの証言が明らかにされた際は、韓国の市民団体が大きな役割を果たした。その後も、女性の人権問題を普遍化させ、活動の幅を広げた。

 ただ、近年の政府間対話が停滞した要因には、これら市民団体の抵抗があった。日本の法的な責任追及にこだわるあまり、償いの受け入れを拒むよう女性らに働きかけることもあった。


 ここでいう市民団体は、具体的には挺対協(現正義連)のことです。挺対協が「慰安婦問題解決」に反対するのは、解決すると、政府からの補助金や民間からの募金をもらえなくなるから、「慰安婦ビジネス」が続けられなくなるからです。

 また、挺対協は北朝鮮とつながっているとも言われます。文大統領も挺対協の主張に同調しますが、文大統領は、北朝鮮への宥和政策を進め、いつか「統一コリア」ができることを夢見ています。その暁には、日本からあらためて北朝鮮の分の「賠償金」をとろうと目論んでいるわけです。そのためには、植民地支配が「不法」であり、韓国は「戦勝国」であり、「賠償金」をもらう権利がある、ということを明確化する必要があるのですね。

 実際に、文政権下の徴用工裁判、慰安婦裁判では、「植民地支配の不法性」を前提にした判決が相次ぎました。

 被害者の傷を癒やす事業への向きあい方は、当事者の意思にゆだねられるべきなのは言うまでもない。救済を最優先にする原点を、日韓両政府とも見失ってはなるまい。
 慰安婦合意はいまも破棄されていない。双方が重視する事項は、当時の両外相の発表に明記されている。負の歴史を乗り越える意思を交わした意義を、改めて認識すべきではないか。
 掘り起こされる歴史の事実を謙虚に双方で共有しつつ、和解と前進の努力を高めていく。そんな姿勢が求められている。


「掘り起こされる歴史の事実を謙虚に双方で共有する」ことは不可能です。韓国は白黒論理の国ですから、「官憲等が直接これに加担したこともあった」は「官憲が強制連行した」と解釈します。また、研究者が、「(慰安婦はいたが)『従軍慰安婦』などというものはなかった」と言えば「慰安婦の存在を否定している」と非難し、「慰安婦の中には職業的売春婦もいた」と言えば「慰安婦がすべて売春婦だと言っている」と糾弾します。

 このテーマに関しては、論理的・理性的な対話が不可能なのです。

  韓国に、「常識をもち、話しの通じる」大統領が出てくることを期待しますが、与党候補の中には今のところ見当たらないので、見通しは暗いです。

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