韓国便り～再開発

　昔から，韓国の再開発の強引さは目を瞠るものがありました。旧市街のごみごみした街角で突然整地が始まり，またたく間に高層ビル街に変貌する。それまでそこで営業していた零細商店は問答無用で立ち退かされる。

　建設会社社長出身の大統領が誕生して以来，再開発のペースが早まったのでしょうか。その過程で竜山の悲劇が起きたのはご存じの通り。

　私のひいきにしていた汚いながらもおいしいお店が相次いで再開発のために潰れていきます。ほかでもなく，このブログでも紹介したソマクチャンの店です。今回の出張でも夕食の候補の一つだったのですが，あの一帯が再開発の対象になり，閉店したことを会社の韓国人職員から聞き，断念しました。

　すぐそばには「韓一館」という老舗があって，こちらもすでに閉店しているとのこと（→リンク）。ここは，私が１２年前に韓国に駐在するようになって，初期のころに行ったカルビの店だったので思い出があります。

　立派な建物で，いかにも伝統を感じさせる店構え。古めかしいスタイルのアジュンマたちが，肉きり鋏をもって忙しく立ち働く様子を珍しく眺めていたものです。味が特別によかったという印象はなかったのですが，店を出るときのアジュンマたちのおしゃべりが記憶に残っています。

「あれ，チップくれないよ」

「日本人だからわからないのね」

（…）

　当時の私の聴き取り能力でもはっきりと聞き取れました。

　それ以来，韓一館には二度と足を踏み入れることはありませんでした。そのかわり，韓一館の脇の路地のつきあたりにあったソマクチャンの店に足しげく通っていました。はやっていた店なので，どこかに移転して営業を続けてくれるでしょう。こんど移転先を調べようと思います。