犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

判決を好意的に伝える韓国メディア

2017-02-02 23:04:48 | 慰安婦問題

 こんな記事を見つけました。メディアウォッチという雑誌(?)です。メディアウォッチがどのような媒体か、よく知らないのですが、メジャーなメディアではなさそうです。

1月31日、メディアウォッチ(リンク

法廷から広場へ…学問の自律性、自治を守った朴裕河無罪判決文に「注目」

裁判所、検察が問題視した『帝国の慰安婦』中の表現35か所、すべて「名誉毀損ではない」

イ・ウフイ記者


 大手メディア、政界、市民団体の容赦ない攻撃にもかかわらず、韓国社会のタブーに触れた一人の学者の信念、そして「学問の自律性」、「学問の自治」を守った裁判所の判決文が注目されている。

 『帝国の慰安婦(プリワイパリ刊)』の著者、朴裕河(60)世宗大教授は、従軍慰安婦についての社会的通念、主流の見方から外れた論旨を披歴したが、国家機関から轡(くつわ)をはめられるという未聞の事態に見舞われた。ソウル東部地検が2015年11月19日、朴裕河教授を起訴したのだ。「虚偽事実摘示による名誉毀損」の疑いであった。

 しかし1月25日、ソウル東部地方裁判所刑事11部(裁判長イ・サンユン)は、朴裕河教授に無罪を言い渡した。裁判所は、「朝鮮人日本軍慰安婦問題は、韓国民が知るべき公共性・社会性を持つもので、公的関心事にあたる」、「被告の見解に対する当否の判断は、学問の場で専門家が、さらに社会的な公論の場で全市民が、互いに自由に意見を交換し、相互に検証、論争しながらなされるべきであり、またそうすることで最もよい判断が得られる」と、無罪判決の理由を述べた。

法廷ではなく広場へ…学問の自律性と自治を尊重すべしという趣旨の判決

 無罪判決は、朴裕河教授に向けられた圧倒的な批判の世論、政界の攻勢などを勘案すれば、異例であった。実際、今回の無罪判決について、ほとんどのメディアは一斉に批判の記事を噴出させた。学問の自律性と自治性を尊重した判決内容を詳しく紹介するよりも、主に国民的な反日感情に便乗する内容の記事だった。

 例えば、
▷「日本の記者が10人以上法廷にやってきて…「完勝だ」(朝鮮日報)、
▷「『帝国の慰安婦』朴裕河一審無罪…ハルモニたち「この国には法もないのか」と反発」(東亜日報)、
▷「『帝国の慰安婦』朴裕河無罪宣告…「こんな法がどこにあるんだ?」」(ノーカットニュース)、
▷「一審『帝国の慰安婦』朴裕河教授無罪…傍聴席のハルモニ、激しく反発」(聯合ニュース)
などが代表的なものだった。

 今回の判決は、このような大手メディアの一方的非難攻勢にもかかわらず、学問の自律性と自治という原則に立脚し、理性的な判断に基づいて下された判決という点で、学界でも大きな注目を集めている。

 裁判所は、四つの理由から、『帝国の慰安婦』において「虚偽事実の摘示による名誉毀損」が成立しないと述べた。裁判所は、検事が起訴した本件書籍の35か所の表現について、まず「30か所の表現は、被告人が主観的な意見を表明したものにすぎず、具体的な事実を摘示したものと見ることはできない」と判断した。

 また、「(朴裕河教授が)3か所の表現において、「朝鮮人女性を強制的に連行し、慰安婦にしたことは、日本もしくは日本軍の公式的な政策ではなかった」という事実を摘示したものと認められるが、これは告訴人たちのような日本軍慰安婦被害者の名誉を毀損する表現と見ることはできない」と指摘した。

 続いて、「残りの二つの表現を通じて、「朝鮮人日本軍慰安婦の中には自発的な意思によって慰安婦になった人がいる」という事実を摘示したものと認められ、これは日本軍慰安婦被害者の名誉を毀損しうる表現に当たる」としながらも、「しかし、被告(朴裕河教授)は、個人を特定せず「朝鮮人日本軍慰安婦」という集団だけを記したので、集団の個別構成員である告訴人らの名誉まで毀損されたと見ることはできない」と結論づけた。

 最後に、裁判所は「たとえ本件書籍のそれぞれの表現により告訴人ら個々人の名誉が毀損されたと見ることができたとしても、故意があったとはいえない」とし、罪が成立しないことを明言した。

 もともと朴裕河教授は、「虚偽事実摘示による名誉毀損」で起訴されたが、結果的に朴教授は虚偽事実を摘示したこともなく、誰の名誉も毀損しなかったという判決を下したのだ。

朴裕河教授の慰安婦問題に対する善意と学問的は正しさも認めた一審判決

 一審判決文の核心は、公的関心事に対する「表現の自由」に関するものだ。裁判所は、「本件書籍で扱われている朝鮮人日本軍慰安婦問題は、韓国民が知るべき公共性・社会性を持つものであって、公的関心事にあたる」、「このような公的関心事に関する表現については、私的領域の事柄に関する表現とは異なり、活発な公開討論と世論形成のために、表現の自由を幅広く保障しなければならない」と強調した。

 裁判所は学問の自律性と自治に関わる事柄に国家権力が介入することに警鐘を鳴らした。裁判所は、「学問研究とは、既存の思想と価値に疑問を提起し批判を加えることで、これを改善したり、新しいもの創出しようとする努力なのであって、その研究の資料が社会で現在受け入れられている既存の思想や価値体系と相反したり、抵触したりするものであっても、容認されなければならない」という最高裁の判例も引用した。

 裁判所は、単に「学問の自由」と「表現の自由」だけを以て『帝国の慰安婦』に無罪判決を下したわけではない。裁判所は、朴裕河教授が『帝国の慰安婦』を執筆した動機が善意から出たものだという点も明示した。裁判所は「本件書籍の全体的な内容から見て、被告の主な執筆動機は、「韓日両国の相互信頼の構築を通じた和解」という公共の利益のための目的から発したものであり、朝鮮人日本軍慰安婦被害者の社会的評価を低下させようという目的があったと見ることはできない」と判示した。

 今回の判決で、朴裕河教授が引用した慰安婦関連の歴史的史料に基本的に問題がないことを、裁判所が公式に認めた点も際立つ。裁判所は、「(一部の史家たちが被告の史料の取捨選択と分析の方法に問題があると指摘しているが)被告が、本件書籍で、既存の史料についての自分なりの評価と解釈に基づいて論争の余地が多い主張を提起する程度を越えて、新しい史料を捏造したり、既存の史料の内容そのものを歪曲したりするやり方で、虚偽の歴史的事実を作り出そうとする意図を持っていたとまで見ることは難しい」と述べた。

 見方を変えれば、裁判所は、朴裕河教授の主張の中で最も激しい論争になった、「「慰安婦」たちを「誘拐」し「強制連行」したのは、少なくとも朝鮮の地においては、そして公的には日本軍ではなかった。つまり、需要を作ったことがただちに強制連行の証拠となるものではない」というような主張を虚偽事実と判断していないといえよう。

 実際、朴教授がそのような主張をするときに引用した歴史学界の合意は、「慰安婦強制連行は、もしかすると抱え主もしくは業者、一般軍人の逸脱によってなされた可能性はあるが、現在までの研究結果では、少なくとも当時の日本政府の公式的な政策として行われたものではない」というものだ。つまり、一方で、今回の判決は、このような歴史学界の合意も、あえて否定しなかったわけである。

「同志的関係」、「売春」…学問的な含みのある表現だったため、告訴人側が誤読

 裁判所は、朴裕河教授の「日本人、朝鮮人、台湾人「慰安婦」の場合、「奴隷」的ではあったが、基本的に兵士と「同志」的な関係を結んでいた」、「「朝鮮人慰安婦」は被害者であったが、植民地人としての協力者でもあった」という記述についても問題にしなかった。

 裁判所は、「(朴裕河教授がそのような記述をした趣旨は)「朝鮮人日本軍慰安婦は国家の勢力拡張の過程で、社会の最低階層である貧しい女性たちが国家によって動員されたものであり、そのような側面から見て、過去の日本人慰安婦や、今日の貧しい女性たちが売春業に従事するようになるのと同じ側面がある」、「朝鮮人日本軍慰安婦は、当時植民支配下で日本帝国の一員として扱われていたため、敵国の女性とは異なり、日本の帝国主義戦争遂行のための役割を国家によって付与され、動員された存在であり、その意味で日本軍の敵ではなく同志のような関係であった」などの抽象的、構造的次元の分析と評価を提示しているものと見られる」と判断した。学問的な含みのある叙述なので、学問の自律性、自治の範囲にある表現とみなしたのだ。

 裁判所は、朴裕河教授が『帝国の慰安婦』のあちらこちらに書いた「売春」という表現を、「被告は、慰安所の状況を、軍の管理下で抱え主たちが慰安婦に強制的に性労働をさせ、その対価は抱え主が搾取するという「強要された売春」として認識し、その形態(「枠組み」)が売春、すなわち性売買施設だったと指摘しているものと理解される」と述べた。告訴人らが主張するように「自発的売春婦」という意味で書いたものではないだろうというのだ。

 もちろん裁判所は『帝国の慰安婦』に、一部「朝鮮人日本軍慰安婦の中には自発的な意思によって慰安婦になった人がいる」という事実が摘示されている個所がある点は認めた。しかし、朴教授がこのような事実を摘示して言及した慰安婦とは、「歴史的に存在していた朝鮮人日本軍慰安婦全体」を指示しているのであって、その中の一部の下位集団もしくは特定の人を指し示したものではなく、歴史的に存在していた朝鮮人日本軍慰安婦集団の構成員の数は少なくとも万の単位を越えてあまりにも多い上に、「朝鮮人日本軍慰安婦」という集団の性格が均質的またはその境界が明確だと見ることも難しいので、必ずしも告訴人らの名誉を直接的に毀損したと見ることはできないと、裁判所は判断した。

 裁判所は、朝鮮人日本軍慰安婦の中に、実際に自発的な意思によって慰安婦になった人がいたのかいなかったのかは問わなかった。ただ、裁判所は、朴裕河教授が朝鮮人慰安婦のすべてが自発的だったと言ったわけではないこと、また朝鮮人慰安婦の一般的な特質を自発的と述べてもいないこと、また必ずしも告訴人たちを指して「自発的な意思によって慰安婦になった人」と言ったわけでもないということに注目した。

 検察は、今回の一審判決に対し、ただちに控訴した。ナヌムの家も抗議声明を発表した。しかし、韓国の代表的な慰安婦支援団体である韓国挺身隊問題対策協議会は、現在も一審判決に対して、いかなる立場表明も行っていない状況である。

 記事の最後の部分が興味深い。

 『帝国の慰安婦』の中で公然と批判されている「挺対協」は、一連の裁判の中で、なぜか奇妙な沈黙を守っています。裁判を起こしたのは被害者ハルモニであって、うちは関係ないとでも言うように。

 これは、『帝国の慰安婦』に書かれていることが図星で反論できないのか、それとも何か反論しにくい事情があるのか(陰で裁判の糸を引いているのがバレるから、など)。

 ナヌムの家も、挺対協も、予想外の判決が出て、対応に困っているところでしょう。


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2 コメント

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>根拠のない憶測 (犬鍋)
2017-02-06 21:29:32
事実の摘示ではなく、意見の表明ですので、名誉毀損罪は成立しません(笑
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>ナヌムの家も、挺対協も、予想外の判決が出て、対応に困っているところでしょう (サトぽん)
2017-02-02 23:18:58
根拠のない憶測はいけませんですよん(*^^*)
返信する

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