犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

川越の小確幸

2021-12-20 23:28:46 | 食べる
 25年来の友人、Kさんと忘年会をしました。

 新型コロナの影響で、3年ぶりのリアル忘年会です。

 場所は川越。西武新宿線の本川越から徒歩10分ほどの、最近できた韓国居酒屋、マショランド

 店にはポジャンマチャという大きなネオンサインがありました。ポジャンマチャは漢字で布張馬車。幌馬車ですね。本来はビニールシート張りの屋台の飲み屋ですが、店舗型もあり、シッレ(室内)ボジャンマチャと言います。

 店の造りは本場韓国を思わせます。

犬鍋「この前は、いろいろありがとう!」

K「いえいえ」


 実は、娘の夫の入国後の自主隔離先について相談し、ホテル探しなどを手伝ってもらったのです。この日は、そのお礼を兼ねていました。

犬「サムギョプサルはどこにもあるから、ポッサムキムチにしましょう」

 ポッサムキムチとは、煮豚のスライスをキムチとかエビの塩辛とかと一緒にサンチュで包んで食べる料理。

K「この前来たとき、これも気になっていたんですよ」

揚げスンデを指します。スンデは春雨入りの腸詰。韓国の代表的なB級グルメです。

犬「揚げてあるというのは珍しいね」

K「それと、ヤンニョムチキンもおいしかったですよ」


 お酒はもちろんチャミスルです。

犬「facebookにハンジョンサル(トントロ)をアップしてましたね。小確幸っていう題で」

K「あ、はい。小確幸って、村上春樹の造語なんですよ」

犬「そうらしいね。韓国でも使われてる」




 最初に運ばれてきたポッサムをつつきます。

「小確幸」とは、村上春樹がエッセイの中で使ったもので、さいけれども、かな福」を縮めた言葉だそうです。

K「韓国より、台湾でよく使うらしいですよ」

犬「日本では使わないね」

K「なんで日本では使わないんでしょう」

犬「語呂が悪いからじゃない。ショウカッコウって長すぎるよ」

K「韓国語だとソファッケンか」

犬「それに、昔から『ささやかな幸せ』っていう表現があるし、特別新しい概念じゃないと思う」


 あとから運ばれてきた揚げスンデもなかなかイケます。

犬「ちょうど今読んでる韓国人のエッセイにも、小確幸のことが出てくるよ」

 前日にアマゾンで届いて、行きの電車の中で読んでいた本です。ハ・ワン著『今日も言い訳しながら生きてます』(ダイヤモンド社2021年1月刊)

犬「もともとイラストレーターで、これは2冊目のエッセイ。1冊目は日韓で合わせて40万部売れたって」

K「すごい!」

犬「毎日が小確幸の連続みたいな生活してるらしい。途中までしか読んでないけど」

K「なんか翻訳するのにいい本ないですかねえ?」


 Kさんは韓国在住時に、主に語学教材の声優の仕事をやっていました。帰国後は、声優に加えて韓流漫画やアニメの翻訳の仕事が多いらしい。

犬「そういえば、韓国にいた時、部下だった女性が、会社を辞めて作家デビューして、次々に文学賞を取ってるんだけど。李箱(イサン)文学賞とか」

K「へえ!」

犬「会社にいたときは、その人の書いた原稿に容赦なく赤入れしたりしてた。そんなことしてよかったのかな」

K「この人ですね」


 Kさんは、早速スマホで検索して彼女を探し出しました。

犬「そうそう。結婚式にも呼ばれてね。でも不運なことに、その日は2002年日韓ワールドカップの韓国対スペイン戦の日だったんだ」

K「あのとき、韓国すごかったですよね」

犬「本人たちも、まさか韓国があんなに勝ち上がるとは思ってなかったでしょう。で、招待した人はほとんど来なくて、寂しい結婚式だった。親戚も来なかったんじゃないかな」

K「ハハハ」


 残っていたヤンニョムチキンで2本目のチャミスルを空けました。

 酔い覚ましに川越の通りをぶらぶら歩いていると、別の韓国料理屋の向かいに渋いバーがありました。

 そこで二次会。

 Kさんはラフロイグ、私はクレイゲラキ13年という珍しいスコッチを頼み、さらに昔話に花が咲きます。

 旧友とスコッチを酌み交わしながら、思い出話に耽るというのは、まちがいなく小確幸です。

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