犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

本音と建て前①

2022-07-18 01:22:01 | 言葉
イラスト:KuKuKeKe(ミナミカズヒロ)

「お父さん、本音と建て前って何ですか?」

 食事中に、D(娘の夫、フィリピン人)に聞かれました。

「本音は自分のほんとうの気持ち。建て前は、人の目を気にして言う言葉、かな」

「それじゃわからないよ。具体的な例を挙げないと」

 そばで聞いていた娘が口をはさみました。

私「例か。うーん」

娘「たとえば、自分のボスから飲みに行こうって誘われたとき、本当は嫌だけど、「はい、喜んで」って答えるとか」

私「ああ、いいね、それ」

娘「いや、「あなたが嫌いだから行きません」(本音)とは言わずに、「ちょっと体調が悪いので」(建て前)と言って断る場合かな」

私「なるほど」


 娘は日本語教師になるための勉強をしています。日本語教師に必要なスキルは、的確な例をさっと出せることかもしれません。

 食事の後に辞書を引いてみました。

本音:本心から出たことば。「本音をはく」
建て前:表向きの主義・方針。「本音と建て前は別だ」
(三省堂国語辞典)


 これを見ると、さきほどの例はちょっと違うような。

「はい、喜んで」と応じるのは、「上司の言うことに逆らわない」という主義?

「体調が悪い」と言って断るのは、主義・方針と言えるかな。相手を傷つけない配慮をした嘘で、「本音と建て前」というより「嘘も方便」と言ったほうがいいかもしれません。

 むしろ、上司と飲んで会計のときに、割り勘という表向きの主義・方針にしたがって、「半分出します」と言うのが建て前で、(当然出してくれるよな、全部じゃなくても多めに出すよな)というのが本音、というのはどうでしょう。

 フィリピンに「割り勘」という習慣があるかどうかわかりませんが。

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