そうです。
不審者とは 何を隠そう、この私でした。
「わたし、理事長ね」
わざと こんな風に話しているのではありません。 黒霧島が身体中を駆け廻っている影響だったのです。
「オートロック交換してるね。 誰かが内側から開けないと入れない。 それで、ここに座って ず~っと焼酎を呑んでるよ。 間違えた。 座っていて、居住者が帰ってきたら、中から開けてやってるね」
姓名。 居室番号。 生年月日。 年齢。 電話番号。 工事の理由。 工事日程。 理事長になったのはいつか。 こんな時間に未だ帰って来る住民が居るのか。 お前は まともに喋れないのか。 理事長が出来るような もう少し普通の人間は住んでいないのか。 何時まで ここに居るのか。
などなど、質問されました。
「これって、『職務質問』 なの?」
こう私が問うたのは、昔 一度だけ職務質問を受けたことがあったからです。 フラッシュバックのように、記憶が甦ったからです。 その話は 次回に。
一方で、私は何となく安心していましたね。
何故って、こうやって通報してくれる住民が居ることは、まだマンションが健全だ、と思ったからです。
56世帯ありますから、まぁ、私の顔を知らない人も居るはずです。 その人にとっては、不審な男が入口で酒を呑んでいる訳ですから、こうして通報して頂けるのことは、マンションの治安上、とっても安心すべきことだと感じたのです。
いや。 それにしても。 皆の為を考えて 深夜までオートロックを解除してあげている 俺が不審者かよぉ!!
「明日の夜もするのですか?」 これが最後の質問。
「ああ、やってるよ。 だけどさ、やりたかぁねえよ」 これは意味無き遠吠え。
二人は引きあげました。 一人になると寂しいね。 また誰かが、「不審者が居る」 と通報してくれないかなあ?
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