遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

能楽資料38 世阿弥元清原作『善知鳥』 メレディス・ウェザビー・ブルース・ロジャース英訳、棟方志功装幀

2021年07月19日 | 能楽ー資料

今回は、かなり変わった本の紹介です。世阿弥作の能『善知鳥(うとう)』を英訳し、棟方志功の版画を組み合わせた本です。

 14.3x20.7㎝、全95頁、昭和22年、旺文社。

反対向けると、英語版になります。

 

棟方志功の装丁です。日本語部分は、約30頁。和紙に印刷されていて、和綴り本です(写真は洋紙)。

 

目次

 

観世流の謡本を元に、人物の所作が書かれているので、能の進行具合がよくわります。

 

続いて、棟方志功の善知鳥版画、30図が載っています。

棟方志功の代表作の一つです。載っているのはもちろん印刷物です(^^;

棟方は、善知鳥神社の近くで生まれ育ったので、能『善知鳥』には、特別の思い入れがあったのでしょう。

北国の海浜に棲む鳥、善知鳥の肉は美味で、猟の対象になりました。伝説では、善知鳥が「うとう」と鳴くと、隠しておいたひな鳥が「やすかた」と答えると言われています。これを使って、ひな鳥を捕まえた猟師が、地獄へ落ち、善知鳥から過酷な責めを受けるという物語が能『善知鳥』です。

英語版では、

日本語版を、

忠実に英訳しています。

こんな図が手元にあれば、外国人を能楽堂に連れて行っても、説明ができそうです(^^;

なお、英訳者、メレディス・ウェザビーは、ウエザーヒル出版社の共同創業者で、三島由紀夫を海外へ紹介した人としても知られています。タイトルの"BIRDS OF SORROW"は名訳だと思います。

 

この本はかなり画期的なものです。発行元は旺文社、戦前から、受験雑誌などで知られた出版社です。受験生には、「赤尾の豆単」でおなじみです。その旺文社が、どうしてこのような本を出したかわかりません。ただ、敗戦から数年たち、世の中の混乱が少しずつおさまり、新しい可能性を求める雰囲気が出てきた中にこの出版があったことは確かでしょう。

コメント (2)
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