すっかり秋の陽気になりました。
故玩館の階段を上がると、
『故玩館』と書かれた板が掛かっています。
これをどう呼んだら良いか??
「看板」?・・商店ではないし、
「表札」?・・個人の建物ではありますが、一応古民家美術博物館、表札は隣接家に掛かっています。
適当な呼び名はないものか?
調べてみると、建物の名を表す板は「館銘板」と言うのだそうです。
そのままではあまりにずぶずぶなので、新たに「館板」と名付けました(^^;
さて、故玩館をオープンするにあたって、「館板」をどうするか、いろいろ迷いました。
業者に頼むのは味気ない。それに、費用も大分かかるに違いない・・・・・・きょろきょろ見回してみると、ずーーーーっと以前、ガラクタに興味を持ち始めた頃に入手した古板がありました。当時は、古民芸に入れ込み、古びた舟板(寺院の板?)を女主人のすすめるままに、かなりの値段で買いました。まあ、古壷の下に敷いて花をいれたら絵になるだろうとの思いからでした。
大きさ:29.2㎝x78.4㎝、厚 4.4㎝、重 5.1㎏。
大きさの割に重く、ずっしりとしています。
サイズは、故玩館玄関口にピッタリ。
これで行くことに決めました。
字はどうする!?
同じ下手でも、下手ウマなら味がありますが、下手ヘタではシャレにもなりません
===> 姉に書いてもらいました
「故玩館」と書かれた紙を貼り付け、さあ彫るぞ!!!
小学校の図工で、かまぼこ板を彫って木版画を刷ったことを思い出しました。
鼻唄交じりでザクザク彫りすすむはずでした。
ところが、この舟板、とてつもなく硬いのです。
彫刻刀セットでは、1ミリもすすみません。それどころか、力を入れたら、刃が折れました
ならば、ということで、大工道具の中にあった鑿で挑戦!
が、これもあえなく討ち死に。刃がかけました
どうしたものかと思案にくれているうち・・・ヒラメキました。
刀剣製作用の特殊な鑿です。これまたずーーっと以前、福沢諭吉先生と引き換えに入手した物です。どうしてこんな品を買ってしまったのか、今では思い出せません しかも、そうめんの入っていた木箱に、下手な字で「刀剣製作用のみ入れ」と書かれています。
大丈夫か?
おそるおそる蓋を開けると・・
それらしい鑿が11本。
研ぎながら使われていたようです。
特筆すべきはこの2本。
刃が丸い!!!!
曲線も彫れるぞ!!!!
これはいけそう
しかし、舟板は非常に硬く、この鑿をもってしてもほんのわずかずつしか彫れません。凸形の字を彫るのは不可能です。やむなく凹形にしました。それでも3mmの深さがやっと。しかも、鑿を金槌で叩いてしか彫れないので手が痛くなります。一日に彫れるのはほんのわずか。全部を彫り終わるのに1か月かかりました。
凸の部分を島のように残すのは大変難しかったです。上の丸い刃の鑿や極細の鑿が活躍しました。
凹面を濃緑塗料で塗りました。しかし、どうも締まりがない。
そこで、白塗料で字の縁を塗り、輪郭をくっきりさせたところ、なんとか見られるようになりました
何事も、やってみないとわからないものですね
お姉様は良い字を書きますね!
味のある「館板」になりましたね(^_^)
それにしても、この板は堅そうですね。
材質は何なのでしょうか、、、?
刀剣製作用の鑿とありますが、この鑿は刀剣製作の際、どのように使うのか、興味があります、、、(^_^)
本当に刀剣に使うものかどうかもわかりません。鍔用にしては大きめだし、鞘を作るときの道具でしょうか。
板の材質は不明です。以前、木材の専門家が来た時に聞けばよかったです。乾燥がすすんでいるのでよけいに硬いのでしょうね。
こんなに硬い板ですが、玄関の軒下に掛けて10年、虫が食い始めています。木の時代判定は難しいです。
努力と知識と機転(道具立て)と運(板との出会い!)の結晶かと。
ド素人ながら、板の大きさと重さが合わない感じがしました。さぞや良質なのでしょうね。
深い緑が木目と縁取りによく合いますね。
アクセサリーを作っていて配色に迷ったときは、緑を添えるとなぜか落ち着く気がします。個人の好みなのでしょうが、不思議です。
遠くからは年輪に見えますが 溝が硬くて苦労されましたね。
仕上がった館板は重厚で 趣のあるいいものになりました。
このやり方がだめなら 次はこうしてみようという努力が 何をやってもいい結果を産みますね。
先日NHK『すてきにハンドメイド』で素人相手にいちばん簡単なやり方で
金継ぎをしていました。簡単といっても工程がいくつもあり
遅生さまは こうやって一つずつ金継ぎされるのだと番組を観ながら思いました。
漆塗りの盆も硬いですが、これほどではありません。
木、あなどるなかれ、です。
そういえばみことさんは、カラフルなアクセサリーを作っているのですね。
色の使い方次第で、上品にもいやらしくのなるので、センスが要りますね。緑には何か心理的な働きがありそうですね。
それにしても、道具の威力をいやというほど見せつけられました。何をするにも、初心者程良い道具を持て、と言われますが本当ですね。
金継ぎ教室には根強い需要があります。これこそ自分でやるのが一番ですから。どこの家にも、割れたりヒビが入った器で、捨てるのもどうかと迷う物が必ずありますね。漆を使わずに、市販の接着剤でも十分に金継ぎはできますから、一度トライしてみてください。
素晴らしい文字だと思います。お姉様はその道の達人? 少なくともこんなに書けるのは、有段者だとは思いますが、それを彫ってこの状態ですからいい字の活きた「館板」だと思います。
我が紫陽花も、書道の初めの頃は私が教えていましたが、そのうち私をはるかに凌ぐ有段者に。それでも10何年もご無沙汰していると、またまた元の木阿弥状態です。
何事も極めるのは難しいもので、「道」には限りがありませんね。
もう諦めていたのです。それが何かの拍子に、あのみょうな鑿のことを思い出したのです。
窮すれば通ず、ですね。
館板倒れにならないよう、あとひと踏ん張りせねば。
姉の場合、書は全くの我流です。おそらく一度も習ったことはないと思います。
姉弟ですが、エライ違いです。
その差は何処からでてくるのか、今もってわかりません(^^;
刃物をはじくほどの堅い木。そういう木で建てられた建物が存続を維持してきたのでしょうね。
彫りの苦労を微塵も見せない館板にも奥ゆかしさが潜んでいますね。
そして故玩館の文字が素晴らしいですね。台湾カステラ、栗きんとん、そして書道の姉上様。故玩館のDNAが1枚の館板にしっかり閉じ込められていてとても素晴らしいことだと思いました。
近かったらぜひ訪問したい場所です。
あれこれガチャガチャやっているうちに、何となくサマになってきた感じです。
しかし、それもコロナで狂いっぱなし。
世の中、もう元へはもどらないでしょうね。
とにかく、故玩館には、どうしても必要だ、という物は一つもありません。そのかわり、遊べるものはゴマンとあります。不要の用。
一人で遊ぶだけではもったいないので、他の人にも楽しんでいただけるようにしています。