今回の品は、三島象嵌大徳利です。
最大径 17.2㎝、口径 7.5㎝、底径 8.5㎝、高 29.2㎝。李朝時代?
様式からすると李朝時代の品ですが、正確な時代は不明です。
口縁は補修されています。
口縁内部にも、細かな模様が刻まれています。
口縁外側には模様がありません。
全体に少し濁った釉薬が掛けられていて、もはや青磁とは言い難いです。赤味をおびた地肌が現れています。
細かな三島模様の中にいくつかピンホールがあり、ぼやっとしたシミが現れて、景色を添えています。
高台の外側は、白泥を刷毛で塗っています。そこをにぐるッと陰刻圏線をめぐらし、アクセントをつけています。
この品の見どころは、もちろん、細かな白いドットで表された縄目模様です。簡略化された三島(^^;
この様な象嵌模様をどうやって作るのでしょうか。
飛鉋の技法で表面を削るなら、もっとリズミカルな模様になるはずです。
印花のように、小さな凸型を押していく場合は、小紋のように同じ小模様が連続することになります。
今回の品は、いずれの技法も当てはまらないようです。
ということは、一個一個穴を開けていった?・・・それほどの手間をかけたとはとても考えられません。
胴の模様を眺めてみると、白いドットは横へ広がっていることがわかります。おそらく、小凸がたくさんついた器具を横へ転がして、あるいはシートを押し当てて、小穴を開けたのではないかと思われます。
もう一度、胴を詳細に点検してみると、明治印判皿のように、模様が不連続な部分(ズレ)が見られます(上の写真のまん中から下部へかけて、縦のズレ)。ピッタリと合わせるのは非常に難しいのですね(^^;
さらに拡大してみると、
白い象嵌模様はぼやっとしています。先回の象嵌青磁縄目紋(三島)小皿のような白泥と地の間のシャープな線は全く見られません。模様の輪郭がはっきりしていないのです。
象嵌青磁では、削った部分へ白泥を入れた後、表面全体を削ってから釉薬をかけるので、境目がクリアーになります。それに対し、今回の品は、器表に多数の穴を開けた後、白泥を刷毛で塗り、表面をざっと拭きとった後、上釉を掛けて焼成したものと思われます。
時代が下がると、手抜きが増えるのは、どこでも一緒ですね(^.^)
あまり見かけない李朝ですね。
普通の象嵌の方法と違うので、そのように見えるんですね。
ここでも、新しい拡大器具が活躍してくれていますね(^-^*)
いずれ紹介しますが、お土産品は削らずに、それらしい模様を描いているのでツルツルです(^.^)