ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

交通空白地の解消に向けた新たな取り組みが設けられるか

2024年09月07日 00時00分00秒 | 社会・経済

 朝日新聞2024年9月5日付朝刊9面13版Sに「『交通空白地』解消へ 官民マッチング 国交省が枠組み新設 配車効率化」という記事が掲載されていました。興味深い内容なので、取り上げておきます。

 このブログでも「2024年問題」を取り上げてきました。実際には2023年から、運転士あるいは乗務員の不足などのために、多くのバスや鉄道で減便が行われています(その最も極端な形が金剛バスの全廃でした)。さらに記すならば、公共交通機関の衰退はこの数年に限られた話でもなければCOVID-19によって引き起こされた事柄でもなく、長期的に続く現象なのです。

 そうなれば「交通空白地」が増えてくるのも当然のことです。「交通空白地」をどのように解消するのかが問題となりうる訳ですが、国土交通省が本格的に取り組もうとしているのです。

 上記朝日新聞社記事には書かれていないのですが、実は2024年7月16日に国土交通省が「『交通空白』解消本部」を設置しています(同日付の「国土交通省『交通空白』解消本部の設置に関する訓令」(国土交通省訓令第72号)を参照してください)。第1回の会合が7月17日に開かれており、第2回の会合が9月4日に開かれました。議事録がまだ公開されていませんので詳しいことはわかりませんが、資料などは国土交通省のサイトに掲載されていますので、御覧いただきたいと存じます。

 ここで「交通空白地」は、国土交通省によると「国交省は半径1キロ以内にバス停や駅がなく、タクシーを呼んでも配車に30分以上かかるような地域」です。この地域に「タクシーやライドシェアが不足する自治体と配車の効率化に取り組む企業をマッチングさせるなどして、地域交通の拡充を図る」ために「交通空白解消・官民連携プラットフォーム」(仮称)という枠組みを作り、2024年内に立ち上げることにしているようです。この枠組みには、国、地方公共団体、交通事業者、さらに配車アプリ事業者などの参加が見込まれているようです。そして、2025年度予算の概算要求にはおよそ331億円が盛り込まれています(関連費用も含まれています)。

 「『交通空白』解消本部」の第2回会合における資料「『地域の足』『観光の足』対策の取組状況等」(公共交通政策部門、物流・自動車局、観光庁)によると、現在、324の自治体においてライドシェアなどの普及が進んでいないとのことです。そこで、今後、タクシー会社管理型の「日本版ライドシェア」が全都道府県で運行されるようにすることなどが目指されており、国土交通大臣が同趣旨を指示しています(既に22都道府県で導入されているとのことです)。

 ただ、ライドシェアがどこまで普及するのかは、正直なところよくわかりません。また、最近の傾向なのか何なのか「日本版」という冠がついていますが、タクシー会社管理型では需要を満たせない地域が多くなるのではないかという懸念があると考えられます。

※※※※※※※※※※

〔東急5000系5105F。田園都市線青葉台駅(DT20)にて撮影。〕

〔同じく東急5000系5105F。田園都市線(大井町線)溝の口駅(DT10、OM16)にて撮影。〕

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安芸高田市が芸備線再構築協議会に参加する意向

2024年08月29日 00時00分00秒 | 社会・経済

 市長が代わると政策が変わるということはあります。赤字ローカル線についても同様なのでしょう。安芸高田市が、芸備線再構築協議会に参加する意向を示しました。朝日新聞社が、今日(2024年8月27日)の10時15分付で「芸備線の再構築協議会、不参加だった安芸高田市が参加の意向」(https://www.asahi.com/articles/ASS8V4TFJS8VPITB009M.html?iref=pc_preftop_hiroshima)として報じています。

 このブログに、2024年1月13日0時0分0秒付で掲載した「芸備線について再構築協議会の設置が決定された」において記しましたが、芸備線についての再構築協議会には、存廃議論の対象になっていない区間も含めた全区間の沿線自治体が参加しています。具体的に記せば三次市と広島市です。しかし、芸備線の路線を基準とすると三次市と広島市との間にある安芸高田市は参加していないのです。三次駅から下深川駅までの区間にある甲立駅、吉田口駅および向原駅が安芸高田市に所在するのですが、この区間の平均通過人員は2022年度で988、2023年度で998であり、決して高くありません。何故に再構築協議会不参加という判断がなされたのかはわかりませんが、今年の3月には広島市、三次市および安芸高田市が再構築協議会とは別の任意協議会を設置することが報じられているだけに〔NHKのサイトに2024年3月14日8時24分付で掲載されている「JR芸備線沿線の広島市・三次市・安芸高田市が新たな協議会」(https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20240314/4000025325.html)によります〕、再構築協議会への不参加の理由が知りたいところです。

 さて、上記朝日新聞社記事の内容に戻りましょう。安芸高田市長は、8月26日の定例記者会見において再構築協議会への参加について「前向きに考えたい」と述べました。この「前向きに……」というフレーズは曲者の公務員用語であると言われることもありますが、定例記者会見における「前向きに考えたい」は素直に解釈してよいもののようです。市長は、情報収集の観点からしても協議会への参加が同市にとってプラスである旨を語ったようです。最終的には、再構築協議会での協議において決定されるようですが、安芸高田市の参加を拒否する積極的な理由が見当たらないと思われるので、今年中に同市の参加が認められるものと考えられます。

 2023年の地方公共交通活性化再生法改正によって法定協議会としての位置づけが与えられた再構築協議会ですが、現在のところ、設置されたのはまだJR芸備線のみについてであり、今後、他に設置されるかどうかはわかりませんが、芸備線について様子を見てから、ということなのかもしれません。

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日本最東端の鉄道駅が廃止される?

2024年08月24日 01時00分00秒 | 社会・経済

 時々、日本最▲端の駅は何処か、というようなクイズが出されたりすることがあります。▲には方角を示す漢字一文字が入ります。

 最南端:赤嶺駅(沖縄都市モノレール)

 最西端:那覇空港駅(沖縄都市モノレール)

 最北端:稚内駅(JR北海道の宗谷本線)

 最東端:東根室駅(JR北海道の根室本線)

 今回は東根室駅の話です。私も先程知ったばかりで驚いたのですが、Yahoo! Japan Newsに、2024年8月23日20時30分付で「<独自>日本最東端の北海道・東根室駅、来春の廃止検討 根室駅が新たな最東端に」という記事(https://news.yahoo.co.jp/articles/3926fe1b8ced24a1d3ac7754b87f45216b7f6044)が掲載されています。これは北海道新聞社のサイトに2024年8月23日20時00分付で掲載された「日本最東端の東根室駅、来春の廃止検討 根室駅が新たな最東端に」(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1053915/)からの転載であるようです。また、Yahoo! Japan Newsには、やはり2024年8月23日の22時28分付で「日本最東端の駅、来春ダイヤ改正での廃止検討 根室本線 東根室駅(北海道根室市)」(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f8f7339e08ed30a9573c6b82e9de242105934cac)という、鉄道ライターの清水要さんによる記事が掲載されています。

 北海道新聞社の記事は有料記事であり、会員でないと全部を読めないようですが、Yahoo! Japan Newsに転載された記事を読む限りでは短いものであるようです。経費削減のためにJR北海道が「廃止する方向で検討していることが」判明したという趣旨でした。

 清水さんによる記事には、東根室駅について「ホームだけの無人駅で、駅舎や待合室はない」が「駅周辺には住宅街が広がっており、決して『秘境』などではない」と書かれています。たしかに、地図で見る限りは市の中心街とまでは言えないものの市街地にあるようです(私は根室市を訪れたことがありませんので、詳しいことは知りません)。清水さんは「令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は10.8人と、JRが廃止の目安としている3人を大きく上回っている」と書かれていますが、これはJR北海道が2018年から2022年までの5か年平均による平均乗車人員の数字です(残念ながら、現在ではWayback Machineでしか読めません)。ちなみに、JR北海道のサイトにある「駅別乗車人員」には、2019年から2023年までの5か年平均による各駅の乗車人員が示されており、それによれば東根室駅の一日平均乗車人員は3人超10人以下とされています。また、根室市が公表している「根室市地域公共交通計画現状整理編」18頁に「根室駅の1日当たり乗降客数の推移」という図が掲載されていますが、そこには「根室駅以外は無人駅のため、数値公表なし」と書かれています。

 一日平均乗車人員が10人以下であるというのは、鉄道駅としての存在意義が十分に問われるべき数字であるとも言えます。ただ、北海道の場合は、地理的条件などを念頭に置けば10人超であっても存続の必要性があるとも考えられますから、結局は駅周辺の住民の意向にも留意しなければならないということなのでしょう。2025年3月に廃止される見通しであると報じられた抜海駅(宗谷本線にある、日本最北の無人駅)にしても、存廃についてかなりの議論がなされていたのですから。

 これまで、JR北海道は毎年のようにいくつかの駅を廃止しています。一概には言えないものの、これまで廃止されてきた駅の多くは、一日平均乗車人員が3人未満であるようで、所在地の地方公共団体が管理することによって維持されてきたような駅も存在します。根室本線の末端区間というべき釧路駅から根室駅までの区間には花咲線という通称が用いられていますが、その花咲線にあった駅のうち、糸魚沢駅が2022年3月に、初田牛駅が2019年3月に、そして花咲駅が2016年3月に廃止されています。今後も増える見込みはないでしょうし、除雪、野生動物などのことを考えると、経費削減のために廃止される駅は今後も出てくることでしょう。宗谷本線がその状態であり、近いうちに特急停車駅以外の駅がなくなるのではないかとも言われています(とくに名寄駅から稚内駅までの区間がそうで、既に挙げた抜海駅の他に雄信内駅と南幌延駅が2025年3月のダイヤ改正時に廃止されると報じられていますし、今年の3月には初野駅と恩根内駅が廃止されています)。

 人口が減少することによって地域公共交通の役割が問われています。維持する必要があるという声が時に持続可能性と言い換えられたりして高く叫ばれていますが、むしろ、地域公共交通の存在意義を低めているというのが現実的な見方なのでしょう。少なくとも、これまでの鉄道、バスなどという形態での維持は難しくなる一方ですし、こだわりを捨てる必要があるのかもしれません。

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JR九州の在来線は厳しさを増す

2024年08月21日 19時00分00秒 | 社会・経済

 気付いたのは今日(2021年8月21日)ですが、昨日(2024年8月20日)の夕方にJR九州に関する報道がなされていました。gooに、昨日の19時40分付で「JR九州、利用者減の在来線で赤字55億円 線区別収支を公表」という記事が掲載されており(https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20240820k0000m020249000c.html)、これは毎日新聞のサイトに昨日の19時40分付で掲載された「18区間赤字55億円 JR九州、低輸送密度路線」という記事(https://mainichi.jp/articles/20240821/ddp/041/020/003000c)からの転載です。また、朝日新聞社のサイトには昨日の20時0分付で「JR九州、1日2千人未満18区間で赤字55億円 23年度収支公表」という記事(https://digital.asahi.com/articles/ASS8N3D6FS8NULFA00LM.html)が掲載されています。そして、JR九州が昨日付で「2023年度 線区別ご利用状況等の公表について」(https://www.jrkyushu.co.jp/common/inc/news/newtopics/__icsFiles/afieldfile/2024/08/20/240820_2023_senkubetsu.pdf)という文書を公開しています。

 まず、goo転載記事を取り上げると、同記事には「JR九州は20日、利用者が減少している在来線の2023年度線区別収支を公表した。対象は輸送密度(1キロ当たりの1日平均乗客数)が2000人未満の13路線18区間で、営業赤字は総額約55億円に上った。18区間のうち自治体や鉄道事業者が要請して国が設置する『再構築協議会』の目安とされる輸送密度1000人未満は13区間だった」と書かれています。また、同記事には2023年度に営業赤字額が最も大きかった路線・区間として日南線の田吉駅〜油津駅(7億300万円)、輸送密度が最も低かった路線・区間として同じ日南線の油津駅〜志布志駅(179人)とあげられています。また、goo転載記事には日田彦山線BRTの輸送密度も書かれており、2016年度のそれが131人、2023年度のそれが164人であると書かれています。

 次に、朝日新聞社記事です。この記事には「1キロ当たりの1日平均利用者数(輸送密度)2千人未満を基準に収支を公表したのは12路線の18区間。コロナ禍からの回復もあり、22年度より2区間減った。ただ、収支の厳しさは続いている」と書かれており、「18区間の営業損益は、宮崎空港線田吉―宮崎空港を除く17区間が赤字で、合計では約55億円の赤字だった。前年度と比較可能な17区間の損益は約1.5億円悪化した」と続いています。そして、赤字幅が大きかった路線・区間として日南線の田吉駅〜油津駅、日豊本線の佐伯駅から延岡駅(5億3300万円)、指宿枕崎線指宿駅〜枕崎駅(4億6200万円)が挙げられています。赤字幅が最も大きかったのは日南線田吉―油津の7億300万円。日豊線佐伯―延岡(5億3300万円)、指宿枕崎線指宿―枕崎(4億6200万円)が続いた。また、同記事には輸送密度が低い路線・区間として日南線油津駅〜志布志の他に豊肥本線宮地駅〜豊後竹田駅の193人が書かれています。

 JR九州が公表した文書も見てみましょう。この文書ですが、平均通過人員(とりあえず輸送密度と同じと考えておきましょう)については全路線・全区間のそれが示されています。JR九州発足年度である1987年度と2023年度とが示されているので読んでみると、興味深いことに、1987年度より2023年度のほうが平均通過人員の数値が高くなっている区間があります。次の通りです。

 ①鹿児島本線

 全線(門司港駅〜鹿児島駅):1987年度は25138、2023年度は30838。←1987年度においては、現在の肥薩おれんじ鉄道の営業区間である八代駅〜川内駅も鹿児島本線でした。

 小倉駅〜博多駅:1987年度は68929、2023年度は74753。

 博多駅〜久留米駅:1987年度は46908、2023年度は60889。

 鹿児島中央駅〜鹿児島駅:1987年度は9962、2023年度は10936。

 ②日豊本線

 国分駅〜鹿児島駅:1987年度が9875、2023年度は10250。←これ以外の区間では減少しています。そのため、全線を通じての数値も低くなっています。

 ③篠栗線

 吉塚駅〜桂川駅:1987年度が109875、2023年度は10250。

 吉塚駅〜篠栗駅:1987年度が13712、2023年度は32551。

 篠栗駅〜桂川駅:1987年度が8698、2023年度は13634。

 ④長崎本線←以下の2区間以外は減少しているので、全線を通じての数値も低くなっています。

 鳥栖駅〜佐賀駅:1987年度が24187、2023年度は27881。

 喜々津駅〜浦上駅:1987年度が2640、2023年度は4182。←おそらく、長与駅経由(いわゆる旧線)でしょう。

 ⑤筑肥線

 姪浜駅〜伊万里駅:1987年度が7557、2023年度は9265。←全線を通じての数値が高くなっているのですが、それは次の区間の数値が高くなったためです。

 姪浜駅〜筑前前原駅:1987年度が13593、2023年度は42727。

 ⑥佐世保線

 江北駅〜佐世保駅:1987年度が5651、2023年度は7313。←西九州新幹線の開業が数値を押し上げた可能性が高いでしょう。

 ⑦香椎線

 西戸崎駅〜宇美駅:1987年度が3299、2023年度は6566。

 西戸崎駅〜香椎駅:1987年度が2921、2023年度は5078。

 香椎駅〜宇美駅:1987年度が3690、2023年度は8102。

 ⑧久大本線

 久留米駅〜日田駅:1987年度が3040、2023年度は3931。←これ以外の区間では減少しています。そのため、全線を通じての数値も低くなっています。

 ⑨大村線

 早岐駅〜諫早駅:1987年度が3197、2023年度は4203。

 ⑩豊肥本線

 熊本駅〜大分駅;1987年度が2963、2023年度は3172。←全線を通じての数値が高くなっているのですが、それは次の区間の数値が高くなったためであり、それ以外では激減しています。

 熊本駅〜肥後大津駅:1987年度が4902、2023年度は12889。

 (日南線南宮崎駅〜田吉駅および田吉駅〜油津駅の平均通過人員は2129ですが、この頃には宮﨑空港線が開業していなかったので南宮崎駅〜油津駅の平均通過人員として書かれています。2023年度の南宮崎駅〜田吉駅は3621、田吉駅〜油津駅は948となっています。南宮崎駅〜田吉駅では増えていることになりますが、これは宮﨑空港線のためでしょう。)

 次に2023年度の平均通過人員が2000人を下回る路線・区間をあげていきます。参考までに、カッコ内に1987年度の数値も示しておきます。

 ①日豊本線

 佐伯駅〜延岡駅:907(←3428)。

 都城駅〜国分駅:1368(←2029)。

 ②長崎本線

 江北駅〜諫早駅:908(←9108)。西九州新幹線の開業に伴うものであることは明白でしょう。

 ③筑肥線

 唐津駅〜伊万里駅:224(←728)。

 ④宮﨑空港線

 田吉駅〜宮﨑空港駅:1792(宮﨑空港線は1996年度に開業しました)。

 ⑤筑豊本線

 桂川駅〜原田駅:384(←2981)。

 ⑥後藤寺線

 新飯塚駅〜田川後藤寺駅:1319(←1728)。

 ⑦唐津線

 久保田駅〜西唐津駅:1808(←3528)。

 久保田駅〜唐津駅:1861(←3649)。

 唐津駅〜西唐津駅:833(←1315)。

 ⑧豊肥本線

 肥後大津駅〜宮地駅:935(←2711)。

 宮地駅〜豊後竹田駅:193(←1028)。

 豊後竹田駅〜三重町駅:863(←2384)。

 ⑨肥薩線

 八代駅〜隼人駅:479(←1400)。

 八代駅〜人吉駅:2023年度は被災のために運休中(←2171)。

 人吉駅〜吉松駅:2023年度は被災のために運休中(←569)。

 吉松駅〜隼人駅:479(←1109)。

 ⑩三角線

 宇土駅〜三角駅:859(←2415)。

 ⑪吉都線

 都城駅〜吉松駅:402(←1518)。

 ⑫指宿枕崎線

 喜入駅〜指宿駅:1988(←3687)。

 指宿駅〜枕崎駅:222(←942)。

 ⑬日南線

 南宮崎駅〜志布志駅:637(←1423)。

 田吉駅〜油津駅:948(前述のように、1987年度は南宮崎駅〜油津駅として2129となっています)。

 油津駅〜志布志駅:179(←669)。

 〔日田彦山線については、煩雑になるので省略しました。〕

 そして、JR九州の文書には、平均通過人員が2000人/日未満の線区に限定しての線区別収支が掲載されています。宮﨑空港線のみ、営業曽根機が2300万円の黒字であり、他は赤字です。

 ①日豊本線

 佐伯駅〜延岡駅;▲5330万円。

 都城駅〜国分駅:▲3500万円。

 ②筑肥線

 唐津駅〜伊万里駅:▲1570万円。

 ③筑豊本線

 桂川駅〜原田駅:▲1000万円。

 ④後藤寺線

 新飯塚駅〜田川後藤寺駅:▲2030万円。

 ⑤唐津線

 久保田駅〜唐津駅:▲3940万円。

 唐津駅〜西唐津駅:▲2380万円。

 ⑥豊肥本線

 肥後大津駅〜宮地駅:▲2170万円。

 宮地駅〜豊後竹田駅・▲3320万円。

 豊後竹田駅〜三重町駅:▲1500万円。

 ⑦肥薩線

 八代駅〜人吉駅および人吉駅〜吉松駅は長期運休中。

 吉松駅〜隼人駅:▲3720万円。

 ⑧三角線

 宇土駅〜三角駅:▲3050万円。

 ⑨吉都線

 都城駅〜吉松駅:▲4280万円

 ⑩指宿枕崎線

 喜入駅〜指宿駅:▲2320万円。

 指宿駅〜枕崎駅:▲4620万円。

 ⑪日南線

 田吉駅〜油津駅:▲7030万円。

 油津駅〜志布志駅:▲4180万円。

 こうして、平均通過人員が2000人/日未満の路線・区間についてのみ線区別収支を公表したのは、多くの方も推察されるとは思いますが、今後の存続に関する議論のためでしょう。現に、指宿枕崎線については、2024年8月19日に「指宿枕崎線の将来のあり方に関する検討会議」の初会合が開かれています〔朝日新聞社のサイトに2024年8月20日10時0分付で掲載された「指宿枕崎線の検討会議始まる 独自の将来像模索」(https://www.asahi.com/articles/ASS8M4HLHS8MTLTB003M.html?iref=pc_ss_date_article)によります〕。この検討会議は地域公共交通活性化再生法による法定協議会ではないのですが、何らかの方向性が示されることになるのではないかと思われます。

 指宿枕崎線の指宿駅〜枕崎駅よりも平均通過人員の数値が低い路線・区間が2つありますが、このうち問題となりうるのは日南線のほうでしょう。豊肥本線の宮地駅〜豊後竹田駅も低いのですが、この区間が存廃論議の対象になるとは思えない部分があるからです。御存知の方も多いと思われますが、かつて志布志駅には日南線の他に志布志線および大隅線が通っていました。また、日南線の北郷駅〜志布志駅も本来は志布志線の一部でした。志布志駅に発着していた3路線はいずれも国鉄の赤字ローカル線であり、要件の適用の厳格性を高めたりするならば日南線が廃止されてもおかしくなかったのです。また、志布志線および大隅線が廃止されてから、日南線はかなり長い盲腸線となっていますし、沿線人口の減少の度合いなどを考慮しても、存続のほうが難しい路線であるとも考えられます。

 JR九州は、現在、むしろ不動産事業などに力を入れています。そうすることによって企業の存続を図る訳ですが、鉄道事業があまりに低調になってしまうと、不動産事業にも負の影響が出てしまうことでしょう。一企業として、切り捨てられるものは切り捨てようとしているのも理解できます。

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平成筑豊鉄道への追加支援は?

2024年08月07日 00時00分00秒 | 社会・経済

 平成筑豊鉄道が法定協議会の設置を打診したのは6月28日のことでした。どのようになったのかと気になって、過去の記事を検索していたら、朝日新聞社が2024年8月1日10時30分付で「平成筑豊鉄道、2.5億円の追加支援打診 沿線9市町村が対応協議」(https://www.asahi.com/articles/ASS704V6FS70TIPE00DM.html?iref=pc_area_fukuoka_list_n)として報じているのがわかりました。

 記事によると、平成筑豊鉄道の沿線自治体である9市町村は、2024年度において既に3億4000億円を経営安定化助成金として平成筑豊鉄道に交付しています。しかし、平成筑豊鉄道は、追加で2億5000万円の支援を打診したとのことです。7月31日、田川市役所において9市町村の担当課長会議が行われた際に、平成筑豊鉄道は資金不足額などを説明したそうで、その折に「材料費の高騰など」を理由としてあげました。つまり、車両の修繕コストなどが増えたということです。

 既に「平成筑豊鉄道が法定協議会の設置を要請した」(2024年7月4日10時0分0秒付)において記したように、平成筑豊鉄道について、今後は年間で約10億円の赤字が継続的に発生すると見込まれており、助成金も同程度が必要であるということになるようです。それで「今後30年鉄道を存続する」ことができるのかどうかはわかりませんが、1年間に10億円程度の助成というのは市町村にとって軽い負担と言えないでしょう。

 それだけに、9市町村は今後対応を協議した上で意見の集約を図ることにしました。鉄道の必要性については意見が一致しているものの、資金繰りについては意見がまとまらなかったようです。当然のことと言えるでしょう。

 ただ、気になるのは、9市町村が平成筑豊鉄道を一体として考えているのか、それとも線区別に考えているのかということです。乗客の利用実態がわかりませんが、伊田線、田川線、糸田線をひとまとめにして残すか残さないかを議論するのは非現実的ではないでしょうか。むしろ、線区別に存廃を考えるほうがよいものと思われます。また、現在は全線複線となっている伊田線の単線化などを検討する必要があるでしょう。

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美祢線 鉄道での復旧か、他の交通手段に切り替えるのか

2024年08月01日 00時00分00秒 | 社会・経済

 JR西日本の美祢線が全線不通となったのは2023年6月のことです。それから1年以上が経過していますが、2021年度の平均通過人員は366、2022年度のそれは377と、JR西日本が積極的に鉄道での復旧に乗り出すとは思えないレヴェルに留まっています。実際に、「美祢線の復旧はいかにあるべきか」において記したように、今年(2024年)5月に開かれた美祢線利用促進協議会の総会においてJR西日本は単独での復旧や運行が困難であると表明しました。

 さて、美祢線利用促進協議会の臨時総会が7月30日に山陽小野田市で開かれました。朝日新聞社が、2024年7月31日の10時30分付で「美祢線復旧と他の交通手段、両方を検討する部会設置へ JRや沿線市」(https://www.asahi.com/articles/ASS7Z4TW2S7ZTZNB001M.html)として報じていますので、この記事を引用または参照しつつ、記していきます。

 今回の臨時総会ですが、これは5月の総会においてJR西日本が「持続可能性などを議論する部会の設置を提案」したことを受けたものです。もっとも、臨時総会で決定されたのは「鉄道の復旧と、鉄道以外の交通手段の両方を検討する部会の設置」、つまり「復旧検討部会」の設置に留まります。これが全会一致で決まったのは、やはり1年以上も美祢線が運休していることによります。

 選択肢は、JR西日本の鉄道としての復旧、上下分離方式による鉄道としての復旧、日田彦山線の添田駅から夜明駅までの区間において採用されたBRT、完全な路線バス(つまり代替バス)、というところでしょうか。勿論、その他もありえますが、ここでは鉄道、BRT、路線バスを候補としておきましょう。部会において利便性、復旧費、運行費などを調査の上で検討することになるとのことです。当然、過去の実例も調査検討の対象になるでしょう。

 おそらく、JR西日本は既に結論を用意していることでしょう。一応は「部会で鉄道の復旧費や運行費を提示する考え」であり、「部会では、ふさわしい交通手段を一つに絞らず、検討結果を総会に報告するという」のですが、「前提を置かない」ことになっている点には注意を要します。

 また、臨時総会では「利用ニーズを把握するための住民アンケートの実施や、代行バスの運行本数を増便したうえで、停留所の拡充や快速便の導入などの実証をすることも決めた」とのことです。以前に記したことに関連しますが、この住民アンケートは安易な方向に流れやすいように思われます。仮に「普段は利用しない」と「鉄道路線として残したい」という回答数がともに多い場合には、「普段は利用しない」を優先して判断すべきです。「利用しないが、鉄道路線として残したい」という意見ほど無責任なものはないからであり仮にこのような意見が多いようであったら即座に美祢線の廃止を決定すべきですし、このような意見を沿線自治体が支持するのであれば、その自治体は無責任極まりないものであり、公共交通を語る資格はありません

 ただ、鉄道、BRT、路線バスのどれを選ぶにしても、難題であることは否定できません。

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楽観論はやはり目を曇らせる

2024年07月18日 11時00分00秒 | 社会・経済

 2024年7月17日付の朝日新聞朝刊7面13版に「消費増税1カ月 楽観に染まる日銀」という記事が掲載されています。

 読んでいて「何だかなあ」という気分になりました。

 日本銀行は、金融政策決定会合の議事録を公開しています。こう書きましたが、10年が経過してからのことです。検証の必要性という観点からすれば、もう少し早くできないものかと思うのですが、それは脇に置いておくこととしましょう。今回は、消費税・地方消費税の税率が引き上げられた2014年の1月〜6月の議事録が公開されたという話です。

 上記記事には「『2年で物価上昇率2%』の実現を目指す『異次元』の金融緩和が始まって1年が経ち、物価は1%台半ばまで伸びていた。14年4月の消費税率8%への引き上げの影響についても、日銀内では強気な意見が大勢だった。その後、物価も個人消費も落ち込み、緩和は長期化していく」と書かれています。強気な意見が支配的であったというのは、当時の雰囲気などからして理解できますが、こういう場合には反対意見のほうが往々にして正しいという事実の実例にもなったようです。

 問題は税率引き上げが経済に与える影響、さらに日本経済の先行きです。以下、職名などは当時のものです。

 まず、2014年1月の金融政策決定会合です。白井さゆり審議委員は、税率引き上げによって「所得や雇用の改善が遅れる懸念がある」ことを「当面の金融政策のリスク要因」に入れるように求めました。今となっては白井審議委員の発言が(完全にとまでは言えないとしても)正しかったと評価できるでしょう。しかし、中曽宏副総裁が「消費税を念頭に置いているとすると、それ自体があらぬリスク感覚」を引き起こすと発言するなど、白井審議委員に反対する意見が続出しました。

 次に、2014年4月30日に開かれた金融政策決定会合です。中曽副総裁は、日本銀行が想定したと思われる反動が生じていないとした上で「影響はさほど長引かないとの見方が多いと思う。家計支出は早晩、底堅い動きへ戻ると考えてよい」と発言したようです。また、岩田規久男副総裁は「(物価上昇率が)2%に達する可能性は、導入当時に私が考えていたよりも、確実性は高まっている」という趣旨の発言をしました。いくら何でも評価が早過ぎると言わざるをえませんが、それなりの裏づけはあったようです。上記記事には、次のように書かれています。

 「円安株高の流れが進み、14年3月末の日経平均株価は1万4800円台をつけ、1年前より約2割上がった。マイナスだった消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は14年1~3月に1.3%、4月は消費増税の影響を除いて1.4%まで伸びた。増税後の景気減速を抑えるため、政府は13年度補正予算に5.5兆円計上するなどして備えていた。こうした状況を背景に、日銀内は強気な見通しが目立った。」

 この見通しは、少なくとも6月までは続いていたようです。岩田副総裁は「金融緩和と財政による消費増税の反動減緩和に支えられ、7月以降は再び堅調に推移する」、黒田東彦総裁は「駆け込み需要の反動を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方で一致していたのではないか」という趣旨の発言をしていました。

 しかし、こうした楽観論は夏に吹き飛んでしまいます。そもそも、足下を見ていれば、回復などすぐにできないことくらいわかったのではないかと疑いたくもなりますが「経済は生もの」あるいは「経済は水物」ということでもあるでしょう。それだからこそ、楽観論は禁物であるはずです。上記記事には「米国のシェールオイルの生産拡大などで原油価格が急落。増税の影響で国内の消費回復も遅れた。物価上昇率は14年8月に1.1%、9月に0.9%と鈍化し始めた」と書かれています。これらの事態を想定することは難しいでしょうが、抽象的であるとしても何らかのリスクを考えておくべきで、もしや日本銀行の幹部はそうしたリスクを全く想定していなかったのかとも首を傾げるでしょう。楽観論に支配されたので目が曇ったのでしょう。あるいは「夢よもう一度」なのでしょうか。そうであるとすれば、このブログで何度も記しているように「成功は失敗のもと」なのです。

 その後、日本銀行は、2014年10月末に国債やETFの購入を増やすという追加緩和策を決定します。当時も批判的な意見をよく目にしていましたが、こうした意見が正しかったことが証明されてしまったと言えるでしょう。2014年11月18日、安倍晋三内閣総理大臣は消費税および地方消費税の税率引き上げを1年半先送りすることを表明しました。その3日後に衆議院が解散され、12月に衆議院議員総選挙が行われました。とりもなおさず、政府は日本銀行の金融政策が失敗であり、消費税および地方消費税の税率引き上げについての見通しが誤っていたことを認めたのでした。しかも、2014年11月19日23時29分22秒付の「先送り解散?」で記したように、衆議院解散によって景気や財政、社会保障の問題が先送りされたのでした。

 全てが日本銀行の楽観論に起因する訳でもありませんが、2015年になってからも物価上昇率は0%台が続きます。そればかりか、同年7月にはマイナスになります。もう迷宮に入ったというべきでしょうか、2016年2月にはマイナス金利政策が採られるようになり、同年9月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に進んでいきます。

 10年も異次元緩和という名の異常事態が続きましたが、何ら目ぼしい成果はなく、むしろ円安が進んで日本はもはや先進国と言えないような国になりつつあるのでした。自国の通貨が弱いことを理想とするのは、一体どういう神経なのでしょうか。

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平成筑豊鉄道が法定協議会の設置を要請した

2024年07月04日 10時00分00秒 | 社会・経済

 仕事の都合もあって気付くのが遅かったのですが、朝日新聞社が2024年6月29日の10時30分付で「平成筑豊鉄道『今後を考える場を』 沿線自治体に法定協要請」(https://www.asahi.com/articles/ASS6X51YVS6XTIPE002M.html?iref=pc_area_fukuoka_list_n)として報じていました。

 やはり、という印象も否めないのですが、とりあえず、この記事に沿いつつ、見ていくこととします。

 平成筑豊鉄道は、福岡県の福智町に本社を置く第三セクターの鉄道会社です。国鉄の路線であった伊田線(直方〜田川伊田)、田川線(行橋〜田川伊田)および糸田線(金田〜田川後藤寺)が特定地方交通線に指定されたことにより、福岡県、田川市、直方市などが出資して、1989年に会社が設立され、3路線を引き受けたのでした。また、北九州市が第三種鉄道事業者である門司港レトロ観光線の第二種鉄道事業者として、同線を運行しています。

 さて、平成筑豊鉄道が法定協議会の設置を要請したという話ですが、これは6月28日に株主総会が開かれた際に、社長から9市町村の首長に対してなされたことです。記事からでは詳しいことがよくわからないところもあるのですが、平成筑豊鉄道の輸送人員は1990年代前半がピークで342万人ほどであったのですが、それからは減少傾向が続いているようです。また、2023年度決算によると、同年度の輸送人員は2022年度より36000人ほど増加、旅客運賃収入も2022年度より1200万円ほど増加したとのことで、しかも2期連続の増加ですが、それでもCOVID-19より前の水準には達しておらず、ようやく8割程度であるとのことです。むしろ懸念すべきは赤字で、2023年度の営業損益は5億1890万円の赤字でした。営業赤字としては27年連続ということです。また、同年度の純損益は前年度よりも5459万円も悪化しており、5807万円の赤字となりました。国、福岡県、沿線市町村から経営安定化助成金や補助金として合計で5億8700万円の支援を受けたそうですが、それでも状況は悪くなっているという訳です。

 赤字が増えている理由は、輸送人員の減少や修繕費の増加ということのようです。修繕費については、記事に「枕木の老朽化など」と書かれています。さらに、記事には次のように書かれています。

 「株主総会後に記者会見した同社の河合賢一社長は、現状分析と今後の収支シミュレーションの結果、無線やレールなどの設備更新などで年間約10億円の赤字が継続的に発生する見込みとなったこと、26年以降は沿線市町村に現在の3倍以上の助成金をお願いすることが必要となる見通しを明らかにした。

 また、人口減少や、災害の頻発もあって、経営を巡る厳しさは『質的にも一段と変わってきた』と述べ、法定協設置への協力を呼びかけた。」

 読んだ瞬間に「そういう部分はあるだろう」と感じました。というのは、伊田線が全線複線であるからです。旧国鉄路線で第三セクターに転換されたものとしては唯一の例であり、往時の石炭輸送を思い知らされます。ただ、現在においては過剰設備ではないかと思えます。伊田線直方駅の時刻表を見ると、最も多い時間帯である午前7時台でも3本ですから(1990年代にはもっと本数が多かったかもしれませんので、今回はこれ以上のことを記しません)。

 平成筑豊鉄道は、JR九州より伊田線、田川線および糸田線を引き受けてから、新駅を設置するなど、積極的な乗客増加策をとりました。そのために沿線を走っていた西鉄バスが減便や路線廃止に追い込まれた程でしたが、その勢いも長くは続かなかったようです。同鉄道の営業エリアは筑豊地域および京築地域で、伊田線、田川線、糸田線のいずれも石炭輸送のための路線であったと言ってよいだけに、炭鉱が次々に閉山となって沿線の人口も貨物輸送も減少していました。産業構造の問題が人口の増減に関わるだけに、平成筑豊鉄道の輸送人員が減少していったのも自然の流れであったとも言えます。1970年代および1980年代、主として筑豊地域において、あの宮脇俊三が最後まで覚えられなかったという程に複雑な国鉄の路線網が解体・縮小されており、特定地方交通線に指定された路線の上山田線、添田線、宮田線、室木線、勝田線、香月線は完全に廃止されています(漏れがあるかもしれません)。後藤寺線がJR九州の路線として残っていますが、私が利用した時に思ったのは「よくぞ残った」ということでした。本数も少なく、乗客も少なく、沿線の人口も多くなさそうでした。一方、伊田線、田川線および糸田線は平成筑豊鉄道の路線となった訳ですが、貨物輸送もない現在、どの程度まで通勤通学運輸を担えているのかが気になります。

 上記記事には、株主総会に出席した行橋市長のコメントが掲載されています。「現状、今後の見通しを考えた場合、この地域全体で鉄道のあり方を検討していくことは避けては通れない」というものです。法定協議会の設置および参加の意向と考えられます。ただ、行橋市民が田川線の存在意義をどのように考えているのかが気になります。よく見られるように「乗らないけど必要」というのは論外で、そのようなことは口にすべきではありません。素直に「乗らないから不要」と表現すべきです。私は、内心で「乗らないから不要」と考えている人が多いのではないかと邪推しているのですが、いかがでしょうか。

 私は、大分大学に勤務していた時に田川線および伊田線を利用したことがありますし、大東文化大学に移ってからは西南学院大学での集中講義の機会を利用して糸田線および門司港レトロ観光線を利用しました。門司港レトロ観光線は名称通りの観光路線という性格なので別の話となりますが、残りの路線は典型的なローカル線以外の何物でもないという印象でした。とくに田川線は山間を走る抜けるようなコースをとっており、石炭輸送も遙か昔の物語ということがよく理解できました。一方、伊田線と糸田線は比較的平坦な場所を通りますが、伊田線は前述の通り全線複線で存在感にあふれるものの、石炭輸送で活気があった頃の名残という感じでしかありません。何しろ、1両編成か2両編成の気動車でワンマン運転、本数もそれほど多くありません。かつて富士重工が製造していたLE-DCというレールバス、現在は新潟トランシスが製造するNDCが運行されていますから、乗客数も推察できます。また、糸田線はと言えば、私が乗った時に私以外の乗客がどれほどいたか覚えていませんし、何度か田川後藤寺駅で見たものの、糸田線の乗り場はとくに閑散としていましたので、3路線の中で最も利用客が少ないであろうと思われます(そもそも距離が短いのです)。

 平成筑豊鉄道の伊田線の起点が直方駅ということで、もう一つ、私が気になっている鉄道路線があります。筑豊電気鉄道です。黒崎駅前から筑豊直方まで、鉄道路線でありながら路面電車タイプの連接車が運行されるところですが、最近は乗客減が続いているようで、そのためもあって減便が続いています。西鉄の子会社であるため、今のところは大丈夫ということなのでしょうか。

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丸広百貨店東松山店が閉店する

2024年06月26日 00時00分00秒 | 社会・経済

 今週の月曜日、つまり6月24日の夕方に知りました。

 東松山市の中心街にある丸広百貨店東松山店が、8月18日をもって営業を終了するとのことです。公式サイトでも案内されています(https://www.maruhiro.co.jp/events/view/12737/3)。

 仕事の関係で東松山駅周辺に行くことがあり、何度か百貨店の前を通りましたし、中に入ったこともあります。今の場所で営業を始めたのは1970年とのことで、築50年以上が経過しているようです。いつのことかは覚えていないのですが、5階にある丸善を見てみようと思って入ってみました。天井が低く、入った日が平日の昼間であったからか、丸善を除いてほとんどお客がいません。店員もあまりおらず、気のせいかもしれませんが店の中で薄暗い場所もあったように記憶しています。

 正直なところ、駅前商店街はあまり人通りもないですし、商店もあまりありません。シャッター街というほどではないのですが、商店街というには閑散としているという印象があります。

 その一方、東松山駅から少し南のほう(都幾川のほう)に歩くと、ビバモール東松山があります。典型的な郊外型ショッピングモールですが、こちらのほうはお客が多いようです。また、高坂駅東口から少し離れた所にもピオニウォーク東松山があり、こちらも郊外型ショッピングモールでお客が多いようです。どちらも大型駐車場があり、停まっている車の数で或る程度は様子がわかるというものです。他にも郊外型の店舗が点在しており、自動車社会というべき市町村となっています。百貨店を営むには厳しい環境であると評価すべきでしょう。

 ※※※※※※※※※※

 それにしても、日産のサクラという車のCMでアクセントがおかしいのは気になります。桜の意味であれば、頭の「さ」を強く読むのではないはずです。標準語であれば「さ」を低く、「くら」を高く読むでしょう。それとも、車の名前は人名を基にしたのでしょうか。少なくとも、CM製作者であれば日本語のアクセントにもっと関心なり注意なりを向けてほしいものです。

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美祢線の復旧はいかにあるべきか

2024年06月13日 08時00分00秒 | 社会・経済

 このブログで美祢線を取り上げたのは、2023年7月1日23時59分40秒付の「JR西日本の美祢線が気になる」でした。それから1年弱が経過しています。

 JR西日本は、美祢線について単独での復旧などが困難であると表明しています。今年の5月に、JR西日本広島支社長が美祢線利用促進協議会総会で発言しており、少なくともJR西日本単独での復旧が難しいとのことです。これに対し、山口県知事がJR西日本の姿勢に反発を示したようです。美祢線が山口県内で完結する鉄道路線であるためでしょう。朝日新聞社が、2024年6月12日10時30分付で「『被災地が割を食うのは本来でない』山口県知事、美祢線の復旧主張」(https://www.asahi.com/articles/ASS6C455CS6CTZNB004M.html)として報じています。

 6月11日に開かれた記者会見で、山口県知事は、あくまでも美祢線の復旧を求める姿勢を示しました。復旧は鉄道事業者が速やかに行うのが原則であるとした上で、上記朝日新聞社記事の表現を借りるならば「たまたま被災したところが割を食うというか、非常に不利な状況の中で、JRの見直しの中に引きずり込まれていくのは本来の在り方ではない」と述べたようです。また、JR西日本が美祢線利用促進協議会総会において「美祢線の持続可能性を議論する部会を協議会に設置し、おおむね1年以内に方針を決めるよう要請した」ことについても、JR西日本がそもそも復旧費用などを全く示していないと語っています。たしかに、これでは山口県知事が反発するのも理解できます。JR西日本が、表現はともあれ内心では美祢線の廃線を望んでいることが透けて見えるからです。

 しかし、現実的にはJR西日本単独による復旧は難しいと思われます。その理由は「JR西日本の美祢線が気になる」において記しましたが、この路線が幹線と位置づけられたのは石灰石輸送などの貨物運輸が活発であったためでして、旅客輸送のみを取り出せば地方交通線のレヴェルです。1987年度の平均通過人員は1741でしたので、貨物輸送がなければ第2次特定地方交通線に指定されたほどの水準です。このブログで何度か登場している「2022 年度区間別平均通過人員(輸送密度)について」(JR西日本)によると、美祢線の2021年度の平均通過人員は366、2022年度のそれは377でした。同じ山口県内の路線である小野田線より僅かに高い程度です。莫大な費用をかけて復旧するだけの価値があるのかどうか、答えは明らかであると言えるのではないでしょうか。

 仮に鉄道路線として復旧するということであれば、美祢線の終点で接続する山陰本線と合わせて、山口県が上下分離方式の「下」の部分を担うくらいの覚悟が必要になる可能性は高いでしょう。今後、大都市を含めて、長期的に鉄道の利用客が増加することを想定し難いことを念頭に置くと、鉄道会社の内部補助の構造を維持することの困難性が高くなるのは自明です。また、都道府県は、これまで鉄道よりも高速道路あるいは自動車専用道路の建設を優先してきたことを、決して忘れてはなりません。仮に忘れているのであれば、鉄道を語る資格はないと厳しく指摘しておく必要があります。

 それにしても、国土強靱化とは一体どういう政策なのでしょうか。

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