ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

真庭市によるJR西日本株式の取得

2024年02月15日 07時00分00秒 | 社会・経済

 2024年に入っても、全国各地における地域公共交通の話題は止まりません。芸備線、函館本線の通称山線の区間、久留里線の久留里駅から上総亀山駅までの区間など、今後の行方が気になる鉄道路線・区間が少なくないのです。

 そうなると、沿線市町村の動きも気になります。勿論、最終的には沿線住民の利用の有無が問われることにはなるでしょうが、市町村の意向も重要です。

 おそらく、こういう自治体がいくつか登場するだろうとは予想していましたが、朝日新聞社のサイトに2024年2月14日18時40分付で掲載された「岡山・真庭市が1億円分のJR株取得へ ローカル線廃止の懸念のなか」(https://digital.asahi.com/articles/ASS2G5TVRS2GPPZB008.html)という記事を読んで「やはり」と思いました。

  真庭市にはJR西日本の鉄道路線、姫新線が通っています。兵庫県姫路市の姫路駅から岡山県新見市の新見駅までを結ぶこの鉄道路線のうち、津山駅から新見駅までの区間内にある美作追分駅、美作落合駅、古見駅、久世駅、中国勝山駅、月田駅および富原駅が真庭市にあります。

 上記朝日新聞社記事を読めばわかるように、あくまでも真庭市長の意向であり、同市の予算(案)の話です。これから市議会で審査・審議されるのですから、最終的にどうなるかはまだわかりません。しかし、市長が2024年度の真庭市予算にJR西日本の株式の取得費用を盛り込んだと発表したのですから、真庭市の執行機関の意向が示されたこととなります。そして、これは真庭市が姫新線に対して危機感を抱いていることを意味しています。

 JR西日本は、2023年9月29日付で「2022年度区間別平均通過人員(輸送密度)について」を公表しています。これを読むと、真庭市がJR西日本の株式を取得して株主に名を連ねようとする理由がわかってきます。

 姫新線は、芸備線ほどではないとしても区間によって平均通過人員(人/日)に極端な格差が見られる路線です。全線、つまり姫路駅から新見駅までの158.1キロメートル(営業キロ)の平均通過人員は、2021年度で1258、2022年度で1351となっているのですが、JR西日本によれば、区間毎の平均通過人員は次の通りとなります。

 ・姫路駅〜播磨新宮駅(22.1キロメートル):2021年度で6109、2022年度で6686。

 ・播磨新宮駅〜上月駅(28.8キロメートル):2021年度で774、2022年度で822。

 ・上月駅〜津山駅(35.4キロメートル):2021年度で358、2022年度で386。

 ・津山駅〜中国勝山駅(37.5キロメートル):2021年度で649、2022年度で640。

 ・中国勝山駅〜新見駅(34.3キロメートル):2021年度で136、2022年度で132。

 見比べていただければおわかりのように、真庭市内の各駅は津山駅〜中国勝山駅〜新見駅の区間にあります。新見駅は伯備線の駅であるとともに芸備線列車の始発駅でもあることを付け加えておきましょう(芸備線の起点は伯備線の備中神代駅ですが、列車は新見駅まで乗り入れます)。

 姫新線は、姫路市およびたつの市においては通勤通学路線としてそれなりの存在意義を示しているのですが、播磨新宮駅〜新見駅は典型的なローカル線であり、通学はともあれ、通勤路線としての需要があまりないことを、平均通過人員の数値が示しています。この現れ方が芸備線とよく似ているのです。

 また、2021年度はCOVID-19の影響がかなり大きかった時であり、2022年度はその影響が多少とも和らいだ時です。姫路駅〜播磨新宮駅〜上月駅〜津山駅の区間では2022年度の数値のほうが大きくなっていることからもわかると言えます。しかし、津山駅〜中国勝山駅〜新見駅の区間では逆に2022年度の数値のほうが小さくなっています。しかも、前述のように、再構築協議会の設置が決定された芸備線の起点は備中神代駅であるものの、列車は新見駅を始発駅としています。真庭市が危機感を募らせたことは想像に難くありません。中国勝山駅〜新見駅の132(2022年度)という数字は、芸備線の備中神代駅〜東城駅(2022年度で89)、東城駅〜備後落合駅(2022年度で20)および備後落合駅〜備後庄原駅(2022年度で75)の各区間ほどではないものの、相当に低いと言わざるをえないのです。

 真庭市長は、JR西日本の株式を市が取得して資本参加をすることにより、JR西日本に意見を述べると語っています。上記朝日新聞社記事にも「『もの言う株主宣言』をした市長」という中身出しが付けられています。実は、市長が株式取得の意思を表明したのは今回が初めてではなく、2023年11月に行っていたことでした。他の市町村がどのように反応したのかは不明ですが、まずは真庭市が動こうということなのでしょう。

 同市の2024年度予算に取得費として盛り込んだのは1億円で、2023年度決算の剰余金から充てるとのことです。また、取得時期などについては今後「証券会社などの意見を聞いて検討するとし、議会との調整次第では増額もあり得るとの見解を示した」とも書かれています。

 上記朝日新聞社記事には「なるほど、たしかに」と思うことも書かれていました。これは真庭市長の発言を捉えたものなのですが、「真庭市内の駅などではJR西の交通系ICカード『ICOCA(イコカ)』は利用できず、太田氏は予算案発表の会見で『赤字路線であっても基本的サービスは同じにするのが会社の責務』と訴えた。姫新線について『こんなに揺れる鉄道に乗っていると(都市部と)差別されているように感じる』とも述べた」とあります。読んだ瞬間に阪急電鉄の小林一三のエピソードを思い出したのは私だけでしょうか。また、私のようにPASMOを使いまくっている者からすれば、ICカード(さらに言えばスマートフォンアプリ)を利用することができる区間とそうでない区間とに分かれるのは大変に不便ですし、利用できないというのはサービスとしてあまり良くないことは否定できません。私は真庭市に行ったことがないのでよくわかりませんが、例えば同市内にあるコンビニエンスストアでICOCAやSUICAなどを使用できるとするならば、JR西日本の路線である姫新線で利用できないというのはおかしな話であるとも言えます(ちなみに、姫新線でICOCAを利用できるのは姫路駅〜播磨新宮駅の区間です。また、伯備線は、一部の駅で利用できないものの、全線が利用可能エリアに含まれています)。

 ただ、乗客数と旅客収入、設備投資のための費用などを考えると、JR西日本の全線・全駅でICOCAを利用することができるようにすることは非常に困難でしょう(他のJR各社についても同様です)。自動改札機や簡易改札機を設置する(場合によってはバスと同じように電車や気動車の中に読み取り機を設置する)ことは勿論、維持するにも費用がかかります。JR西日本に限らず、多くの鉄道会社は将来の人口減少に伴う乗客の減少を見込んでいるはずですから、設備投資にも慎重にならざるをえないでしょう。そうであるならば、ICOCAの利用エリアの拡大についても気前よく行うことはできないはずです。

 また、真庭市がJR西日本の株式を取得するとして、どの程度の発言権を確保できるかという問題もあります。株主総会における議決権は所持する株式の数に応じるものであるからです。

 我々国民・住民が選挙権を行使する場合には一人一票ですが、株主総会での議決権行使は一人一票ではなく、一株一票です(正確には単元株式数で考えるべきですが、ここでは単純化のために一株一票と記しておきます。また、議決権制限株式などを考えないこととします。まさか、真庭市が議決権制限株式を取得するはずはないでしょう)。発言権は保有株式数に左右されると考えてよいのです。もとより、例えば真庭市が株主として議案を提出することはできますが、株主総会の議題にかかる際には取締役会の意見が付されるはずです。株主提案に対して取締役会が反対意見を付している場合、株主総会では株主提案が否決されることが多いようですから、どこまで「もの言う株主」として振る舞えるのかについて疑問も残ります。

 1億円でJR西日本の株式をどのくらい取得できるかを少しばかり調べてみると、2024年2月14日の終値は6185円(121円安)でしたので、証券会社に支払う手数料などを考慮に入れなければ16168株を取得できることとなります(単元株式数は100となっていることにも注意を要します)。JR西日本の発行済み株式総数は2億4400万1600株ですから、真庭市が1億円でJR西日本の株式を取得してもごく僅かな率にしかなりません。

 さらに記すならば、株価は日々変動しているものですから、地方公共団体が予算を投じて株式を取得することの妥当性が問われるかもしれません。法制度上は特に問題はない訳ですが(地方自治法などに株式の保有を禁止する条項はありません。それに、株式の保有が禁止されるのであれば第三セクターを設置することもできません。地方公共団体が株主に名を連ねる株式会社はいくらでもあります)、保有の目的の妥当性などが問題とされる可能性はある、と考えられます。

 しかし、真庭市がJR西日本の株式を取得しようとしているという事実は、決して小さいものでもないと言えるでしょう。他の市町村、さらに都道府県が追随するかどうかはわかりませんが、公共交通機関の維持のための手段として考慮しておくべきものでしょう。

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鉄道会社の運転士不足

2024年02月04日 00時00分00秒 | 社会・経済

 2023年から急にクローズアップされ、むしろ前倒しされた感すらある2024年問題は、既に各地方の公共交通機関に深刻な影響を与えています。

 これまで、このブログでも運転士不足問題を取り上げてきました。最も極端な形で現れたのが、金剛自動車の路線バス事業撤退でした。近鉄バスや南海バスが引き継いだものの、減便や路線廃止を免れることはできなかったのです。

 運転士不足による減便は、鉄道でも行われています。その一部については、やはりこのブログでも取り上げました。実のところどうなのであろうかと思うのですが、国土交通省が2023年の10月に調査をしていたようです。朝日新聞社のサイトに、2024年2月2日15時30分付で「全国地方鉄道の半数が『運転士不足』、低賃金など背景に 国交省調査」(https://www.asahi.com/articles/ASS2252KZS22UTIL00Z.html)という記事が掲載されています。

 国土交通省が調査の対象としたのは172の鉄道事業者です。この記事の書き方がおかしいと言うべきか、少々わかりにくいと言うべきか、「大手を含む全国172の鉄道事業者」、「地方鉄道140事業者」と書かれています。大手というのはJRグループ7社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、貨物)、大手私鉄16社(東急、東京メトロ、東武、西武、京成、京王、小田急、京浜急行、相鉄、名鉄、近鉄、阪急、阪神、京阪、南海、西鉄)のことでしょうか。

 「JRなど大手を含む32事業者では、『不足あり』と答えたのは7事業者(22%)に留まった」と書かれています。この32事業者の範囲がわからないのですが、JRグループと大手私鉄を足しても23しかないので、公営鉄道(東京都交通局、京都市交通局などが運営する鉄道)を含むのでしょうか。

 一方、「地方鉄道140事業者」は中小私鉄、準大手私鉄、第三セクター鉄道を指すものと思われますが、これもよくわかりません。その上で続けるならば、調査の結果、半数の70事業者で不足があり、27事業者では過不足がなく、43事業者では余裕があるとのことでした。私が思っていたよりも良い結果とは思います。過不足がない、あるいは余裕がある事業者はどういう会社であるかを知りたいものです。少なくとも、地方別で。

 ただ、半数の事業者で運転士不足が問題となっていることは見逃せないと判断されたのでしょう。これらの全てかどうかわかりませんが、鉄道でも現在ではワンマン運転が当たり前となりつつあります。大手私鉄でもそうです。私が通勤などに利用している東急田園都市線および東急大井町線では車掌も乗務しますが、東急東横線でも2023年からワンマン運転となっているくらいです。東京メトロでは丸ノ内線、有楽町線、副都心線、南北線などで行われています。

 既に、国土交通省は鉄道運転士の免許を取得することができる年齢の引き下げ(20歳→18歳)を方針としています。これは一つの方法ではありますが、それだけでは問題が解消しないでしょう。給与水準、労働時間などの面を検討し、改善することも求められてきます。勿論、このようになれば運賃の見直しなども必要になってきますから、消費者(つまり鉄道の利用者)にとっては困ったことになるかもしれません。

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やはりそうなる 首都圏への転入超過

2024年01月31日 00時00分00秒 | 社会・経済

 共同通信社のサイトを見ていたら「やっぱりね」と思うような記事が掲載されていました。2024年1月30日17時20分付の「都の転入超過、23年は80%増 6万8千人、人口流出40道府県」(https://www.47news.jp/10461602.html)です。

 これは、総務省が公表した2023年の人口移動報告を扱った記事です。80%増という言葉が目に入ったのですが、2022年に38,023人の増、2023年に68,285人の増ということです。

 もう少し詳しく見ると、2023年に東京都に転入した人は454,133人、東京都から転出した人は385,848人です。前年比で転入がおよそ14,000人増えており、転出はおよそ16,000人減っています。

 COVID-19により、東京都への転入超過は鈍化していた訳ですが、一時的なものであったようです。或る意味でCOVID-19が東京一極集中を和らげ、むしろ東京都からの転出超過が見込まれていた節もあり、それを期待するような声もあったのですが、実際には神奈川県などへの転出に留まったようです。

 東京都の他に転入超過となったのは、上記記事に書かれているところによれば埼玉県、千葉県、神奈川県であるようです。逆に、転出超過となったのは40道府県です。首都圏を東京都、神奈川県、埼玉県および千葉県と定義すると、首都圏への転入超過は126,515人で27%増です。

 上記共同新聞社記事には、総務省担当者の分析として「コロナ禍が明け経済活動が活発化したほか、就職や進学に伴う若年層の東京への移動が増えた」と書かれているのですが、それだけでしょうか。昨年であったか、首都圏への転入超過が止まらない理由として、女性の就職機会が首都圏以外では少ないこと、また、女性の生活しやすさ(生きやすさという感じの言葉であったかもしれません)が首都圏以外の場所で低いことなどが書かれた記事があったと記憶しています。また、別の観点ですが、村社会あるいは村意識が強い地域があまりに多く、他所者を排除するような意識が強いためにせっかくの転入者も追い出されてしまうような所もあるそうで、これでは道府県や市町村がいくらUターンだのIターンだのと宣伝しても意味がなく、せいぜいふるさと納税を強化するしかない訳です。

 世間では、そして学者でも、私のようにふるさと納税を批判する人は少ないようで、私のような人間は叩かれるのが落ちなのでしょうが、それではふるさと納税を強化している道府県や市町村の人口がどうなっているのか、と問いたくなります。総務省はわかっているはずですね。

 また、ふるさと納税で集まった寄附金は、一体どのような支出に向けられているのでしょうか。この辺りのことが全くわからないという地方自治体は少なくないはずです。

 脱線したので元に戻りますと、一極集中の理由は一つや二つではなく、多数が複雑に層を重ねているはずです。一つ言えると思われることは、モータリゼイションが進んだ地域では転出超過になりやすいであろうということです。身近にも、モータリゼイションが進んだ地域から首都圏にやってきて、自家用車を運転しなくなった人がいます。理由を聞くと、ちょっとした買い物なら徒歩か自転車で行けるし、少し離れた場所なら電車やバスで行けて便利であるから、ということでした。

 ※※※※※※※※※※

 実は今回、共同通信社のサイトに2024年1月30日の13時17分付で掲載された「八つの赤字区間検証、3年先送り JR北海道、コロナ禍の影響で」(https://www.47news.jp/10461202.html)という記事を取り上げようかとも考えたのですが、首都圏への転入超過のほうを選びました。

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指宿枕崎線について協議が行われるようです

2024年01月26日 06時00分00秒 | 社会・経済

 1999年8月、私は鹿児島市に行きました。当時の西鹿児島駅、現在の鹿児島中央駅から徒歩圏内にあった東急イン鹿児島(その後、鹿児島東急REIホテルとなり、2021年秋に閉業)に宿泊し、鹿児島市電に乗って鹿児島市内を回りましたが、8月13日に指宿枕崎線のディーゼルカーにも乗りました。

 初めて乗ったキハ200系は、とにかくうるさかった。こんなことを覚えています。

 同線は鹿児島中央駅から枕崎駅までの路線ですが、指宿駅または山川駅で系統が分割されており、鹿児島中央駅から枕崎駅まで直通する列車は非常に少なく、指宿駅か山川駅までしか走らない列車ばかりであったので、山川駅で折り返しました。結局、開聞岳付近や枕崎市へは車で行くことになったのです。

 さて、その指宿枕崎線ですが、JR九州が公表した「線区別ご利用状況」によれば、同線の平均通過人員は次のようになっています。

 鹿児島中央駅〜喜入駅:1987年度は8253(人/日)、2022年度は7168(人/日)。

 喜入駅〜指宿駅:1987年度は8253(人/日)、2022年度は1862(人/日)。

 指宿駅〜枕崎駅:1987年度は942(人/日)、2022年度は220(人/日)。

 末端区間というには42.1kmもある指宿駅から枕崎駅までの区間がとにかく閑散ぶりの目立つ路線であり、赤字であることが容易に推察されます〔ちなみに、JR九州の路線・区間のうち、最も平均通過人員(2022年度)が少ないのは豊肥本線の宮地駅から豊後竹田駅までの区間で171(人/日)です〕。同一路線でありながら、鹿児島中央駅から喜入駅までの26.6kmの区間との落差が激しく、JR西日本の芸備線に似ているとも言えます。

 このような状況のため、鹿児島市、指宿市、南九州市および枕崎市は「指宿枕崎線輸送強化促進期成会」を組織しており、枕崎市は2023年7月25日に「JR指宿枕崎線(指宿~枕崎)活用に関する検討会」の第1回検討会の資料を公表しています。そして、JR九州は、指宿枕崎線の指宿駅から枕崎駅までの区間について沿線自治体に対して協議を申し入れました。2024年1月18日、鹿児島市においてJR九州、鹿児島県、指宿市、南九州市および枕崎市の実務担当者が初会合を開いたとのことです。

 以上は、2024年1月24日の20時13分付で共同通信社のサイトに掲載された「指宿枕崎線で協議申し入れ JR九州、鹿児島の沿線自治体に」(https://www.47news.jp/10435748.html)という記事によります。短い記事なので、この協議申し入れが地域公共交通活性化再生法に定められた再構築協議会に係るものなのかどうかがわかりませんが、「設置する会議体や議論の進め方を今後詰める」ということなので、直ちに再構築協議会という訳でもないのかもしれません。また、JR九州は「存続や廃止といった前提を設けず、幅広い選択肢を示して話し合いたい考えだ」とのことです。ただ、字面通りであるのかについては疑問が残ります。

 指宿駅から枕崎駅までの区間を見ると、指宿駅は有人駅(業務委託駅)、山川駅と西頴娃駅は簡易委託駅、その他の駅は無人駅であり、列車交換ができる駅も指宿駅、山川駅および西頴娃駅しかありません。山川駅から西頴娃駅まで17.7km、西頴娃駅から枕崎駅まで20.1kmですから、本数を増やしたくても増やせないという状況です。

 山川駅の時刻表を見ると、下りは1日7本であり、そのうちの1本は西頴娃駅までしか走りません。

 また、枕崎駅の時刻表を見ると1日6本、うち3本が鹿児島中央駅まで走るのに対し、2本は指宿駅止まり、1本は山川駅止まりです。しかも、鹿児島中央駅まで走る列車は6時4分発、15時54分発、20時6分発となっています。これでは列車を利用したくともできないということになりかねないでしょう。

 

 これまで、このブログではJRグループの地方交通線の存廃問題を何度も取り上げてきました。三江線、岩泉線など、実際に廃止された路線または区間もあります。

 全てに当てはまる訳ではないとはいえ、21世紀に入ってから存廃が問題となった路線の多くは、大正時代の鉄道敷設法に基づくものです。指宿枕崎線もまさにその例で、鉄道敷設法別表には第127号「鹿児島県鹿児島附近ヨリ指宿、枕崎ヲ経テ加世田二至ル鉄道」としてあげられていました。実際に国鉄の路線として開業したのは西鹿児島駅(鹿児島中央駅)から枕崎駅までの区間ですが、これは1931年に南薩鉄道が加世田駅から枕崎駅までの区間を開業させていたからです。また、南薩鉄道が伊集院駅から加世田駅までの区間を開業させたのは1914年のことです。南薩鉄道は後に鹿児島交通となり、伊集院駅から枕崎駅までの区間が枕崎線となりました。鉄道敷設法別表第127号により、指宿枕崎線と鹿児島交通枕崎線の双方、さらに鹿児島本線を加えることによって薩摩半島を一周するルートができる訳です。

 しかし、実際に鉄道を利用して薩摩半島を一周できる期間は、思いのほか短いものでした。

 薩摩半島の西側を通る鹿児島交通枕崎線は1931年に全通しましたが、指宿枕崎線の鹿児島中央駅から五位野駅までの区間が開業したのが1930年、指宿駅まで延伸開業したのが1934年、山川駅まで延伸開業したのが1936年、西頴娃駅まで延伸開業したのが1960年、そして枕崎駅まで延伸開業したのが1963年でした。こうして指宿枕崎線と鹿児島交通枕崎線がつながり(実際に線路がつながっていたのかどうかまではわかりませんが)、薩摩半島一周ルートが完成しました(余談ですが、鹿児島交通枕崎線には国鉄鹿児島本線に直通する列車がありました)。

 ただ、1960年代は高度経済成長期であると同時に、鉄道の衰退が始まった時期でもあります。南薩鉄道には、枕崎線の支線として万世線および知覧線がありましたが、万世線は1962年に、知覧線は1965年に廃止されています。南薩鉄道の経営状況が悪化していたことがうかがわれます。実際に、南薩鉄道は1964年に三州自動車に吸収合併されます。1970年代には枕崎線の状況も悪化の一途をたどりました。1983年には豪雨による被害を受け、伊集院駅から日置駅までの区間と加世田駅から枕崎駅までの区間が不通のまま、枕崎線は1984年に廃止されてしまうのです。薩摩半島一周ルートは21年くらいしか続かなかったという訳です。

 一方、指宿枕崎線のほうも、1968年に赤字83線に指定されました。全区間ではなく、山川駅から枕崎駅までの区間です。この時、既に指宿駅から、または山川駅から枕崎駅までの区間の存在意義が問われていたことになります。それから55年が経過し、現在に至るまで存続していることが驚異と言えます。また、指宿枕崎線は1980年代の特定地方交通線には指定されていませんが、これはおそらく鹿児島中央駅から喜入駅または指宿駅までの平均通過人員が多かったことによるものと考えられます(当時は路線毎に選定したので、一部区間の平均通過人員が多ければ全区間の平均通過人員も多くなり、特定地方交通線の指定から外されることとなります)。

 実に半世紀以上も問題を内包したまま、指宿枕崎線の営業が続けられてきたことになります。

 このような状況を見て考えることは、地域公共交通活性化再生法がどれだけ役割を果たしうるかということです。このブログで取り上げた、存廃が問題となった路線などを見ると、大正時代の鉄道敷設法にたどり着けることが多いという趣旨は前述しました。そして、その鉄道敷設法が制定されてから40年以上が経過した1960年代に、国鉄は赤字経営になり、悪化の一途をたどります。赤字83線の時に徹底した対策が採られていたのであれば、もしかしたら状況は改善されたかもしれないのですが(歴史に仮定は禁物というルールを破ります)、実際にはいくつかの路線が廃止されたのみであり、むしろローカル線の建設が進んでしまった例もあります。こうして1980年代の国鉄改革および国鉄分割民営化に至りました。それでも鉄道を巡る情勢が大きく変わった訳でもないようです。

 その意味において、公共交通機関の問題と過疎化の問題には共通する低音が流れているのかもしれません。少なくとも、通底する部分は存在します。存廃が問題となる鉄道路線のほとんどは過疎地域と言われる所を通っているからです。

 日本には過疎地域に関する法律が1970年から存在しています。過疎地域対策緊急措置法(昭和45年4月24日法律第31号。廃止法令)、過疎地域振興特別措置法(昭和55年3月31日法律第19号)、過疎地域活性化特別措置法(平成2年3月31日法律第15号)、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年3月31日法律第15号)、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和3年3月31日法律第19号)です。これだけの法律が存在しているにもかかわらず、過疎の問題は、地域毎であれば解決した事例もあるのかもしれませんが、全体として解決していません。

 こうした例を考慮に入れるならば、地域公共交通活性化再生法は対処療法あるいは止血方法として或る程度役立つかもしれませんが、根本的な解決のための道具になりうるかどうか、疑問が残るところです。

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機関車が減っていく

2024年01月23日 00時00分00秒 | 社会・経済

 日本にいて、日本の状況だけを見ているとわからない、あるいは気付かないことですが、実のところ、日本の鉄道は世界的に見るとかなり特殊です。その一つが、機関車が牽引する客車列車が非常に少なく、しかもますます少なくなっていることです(他に、JRでターミナル方式の駅が少ないこと、乗り越し精算ができることなどもあります)。

 たとえば、ヨーロッパに行くと、長距離列車の多くは機関車が牽引する客車列車です。私も、ミュンヘン中央駅などで何度も見かけました。また、ドイツのICEのうち、初期のものが典型的ですが、先頭と末尾に機関車を配置し、中間に客車を連結するプッシュプル方式が採用されることも多いのです。あるいは、ペンテルツークという、最後尾の客車に運転席を設けて機関車を遠隔操作するという方法も採られます(日本では嵯峨野観光鉄道や大井川鉄道井川線で見られますが、他に例があるのかどうかは知りません)。勿論、ヨーロッパ諸国などでも日本と同様の電車は多く走っていますし、地下鉄や路面電車で機関車が牽引する客車列車というのはほとんど存在していません。それにしても、日本の客車列車の少なさが目立つのです。

 こんなことを記すのは、昨日(2023年1月22日)付の朝日新聞夕刊7面4版に「機関車『鉄路の主役』降りる時 複雑な操縦・整備ネック 世代交代」という記事が掲載されており、それを読んだからです。

 私が小学生であった1970年代の後半、当時は国鉄の路線であった南武線には石灰石輸送や石油輸送の貨物列車がよく走っていました。当時で既に古豪であった電気機関車、ED16が貨車を牽引し、最後尾には車掌車が連結されていました。1980年代のいつからか、電気機関車はEF64に変わり、車掌車は省略されましたが、貨物列車がよく通っていたのです。ちなみに、川崎市には武蔵野線も通っており、宮前区には梶ヶ谷貨物ターミナルがあります。同線の鶴見駅から府中本町駅までの区間は貨物輸送専用といってよいところです。

 しかし、客車列車は非効率です。プッシュプル方式を採用するのでなければ、終点に到着して進行方向を変える際に機関車を付け替えなければなりません。尾久車両センターから上野駅までの推進運転という有名な例外もありますが、これは上野駅に機回し線がないからで、通常の列車よりもだいぶ速度を落として運転していたそうです。東京駅には機回し線があり、私も小学生時代に寝台特急の機関車付け替えを何度か見ていましたが、相当に時間と手間のかかる作業であるということはよくわかりました。

 上記朝日新聞社記事は、「寝台特急『ブルートレイン(ブルトレ)』をはじめ、かつて多くの客車を引っ張って全国を駆け回った機関車が次々と姿を消している。最多両数を抱えるJR東日本も、操縦や整備方法が電車と変わらない新型車両への世代交代を急いでいる」という文章で始まります。

 この記事に登場する電気機関車、EF65、EF81のいずれも、国鉄時代に登場したものであり、製造から相当の年月が経っています。どちらも寝台特急の客車を牽引しましたが、現在は貨物列車か入れ替え作業のための機関車となっています。しかし、貨物運送用であれば、既にEF210、EH200などの電気機関車、DF200などのディーゼル機関車が登場しています(そのほとんどはJR貨物が保有しているはずです)。

 国鉄の分割民営化に伴い、電気機関車やディーゼル機関車はJRグループ各社に引き継がれました。やはり上記記事に書かれているところを引用すると、「鉄道博物館(さいたま市)によると、JR旅客6社は国鉄から電気440両、ディーゼル703両、蒸気(SL)6両の計1149両の機関車を引き継いだ。だが、電車や気動車への置き換えが進み、機関車が客車を牽引する定期列車は2016年にJR線から消滅。根強い人気を持つSLを除き、今や残るのは計約120両で、JR東海は10年に、JR四国は昨年9月に全廃に踏みきった」とのことです。

 その大きな理由が、運転方法の違いです。電気機関車、ディーゼル機関車のいずれも、基本的にブレーキが2つあります。機関車単独のブレーキと、牽引する客車または貨車を含めた編成全体のブレーキです。また、主幹制御器(マスターコントローラー、略してマスコン)とブレーキ弁が別々になっているものが圧倒的に多く、最近の電車や気動車で多く採用されているワンハンドルマスコンは、電気機関車やディーゼル機関車ではほとんど採用されていないはずです。

 〔なお、「動力車操縦者運転免許に関する省令」(昭和31年運輸省令第43号)第4条第1項および別表第一には運転免許の種類と操縦できる動力車の種類が定められており、それを見る限りでは「甲種電気車運転免許」を保持していれば「鉄道事業(新幹線鉄道及び磁気誘導式鉄道を除く。)及び軌道事業(軌道運転規則第3条第1項の規定の適用を受けるものに限る。)の用に供する電気車」を操縦できることとなっており、同第2条によれば「電気車」は「電気機関車、電車、蓄電池機関車及び蓄電池電車をいう。」とされています(ディーゼル機関車や気動車は「内燃車」のために全く別の免許になります。ちなみに、新幹線も全く別の免許です)。省令だけを見ると電気機関車も電車も同じ免許の保持で操縦できることになります。しかし、実際には操縦方法が違いますし、機関車の場合には何両もの客車や貨車を牽引する訳ですから、加減速の操作方法などが異なるはずです。〕

 機関車を減らしている以上、機関車と同じ役割を電車や気動車に担わせようとするのは自然な流れです。また、操縦方法などが異なるというのは、メンテナンスなどの面においても合理的・効率的であるとは言えません。そこで、ということなのでしょう。事業用車という、営業用でない車両がクローズアップされてきます。事業用車自体は国鉄時代からありますが、上記朝日新聞社記事に取り上げられているのがE493系です。2021年に登場しており、入れ替え作業用として、また配給列車として使用されることとなっているようです。おそらく、JR東日本の多くの電車と同じタイプのワンハンドルマスコンが採用されているようなので、合理化・効率化は進むでしょう。上記朝日新聞記事には「JR東は国鉄から計467両の電気、ディーゼル機関車を引き継いだが、現在残るのは電気25両、ディーゼル26両のみ。これらもE493系などへの置き換えが進められ、同社は『機関車でなければできない作業は、もう存在しない』と話す」と書かれています。

 勿論、JR貨物が多くの電気機関車やディーゼル機関車を保有しており、今後もこうした機関車が残り、更新されていくことでしょう。ただ、JR貨物にもM250系という貨物電車があります(電車と言ってもプッシュプル方式の電気機関車+貨車のような編成らしいのですが)。この電車は直流区間のみを走行できるものなので、交流区間には入れませんし、勿論非電化区間にも入れません。しかし、貨物の内容にもよりますが列車のスピードアップには貢献するでしょうから、場合によっては貨物電車や貨物気動車が増えるかもしれません。

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芸備線について再構築協議会の設置が決定された

2024年01月13日 00時00分00秒 | 社会・経済

 JR西日本が芸備線について再構築協議会の設置を要請したのは、2023年10月3日のことでした。それから3か月ほど経過して、一昨日(2024年1月12日)、国土交通省中国運輸局が再構築協議会の設置を正式に決定しました。時事通信社が、昨日(2024年1月13日)の15時39分付で「芸備線存廃で協議会設置決定 今年度中に初会合―国交省」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024011200887&g=eco)として報じています。

 2023年に地域公共交通活性化再生法が改正され、再構築協議会についての規定が追加されました。今回の芸備線についての設置が最初の例となります。

 再構築協議会が設定されるならば、3月末までに初会合が開かれるとのことです。

 既に、2023年11月に岡山県、広島県、新見市、庄原市が参加の意向を示しています。また、広島市および三次市も参加するようです。これに対し、安芸高田市は参加の意向を示していません。

 記事は短く、あまり詳しく書かれていないのですが、芸備線全体について再構築協議会を設置するということのようです。そうでないと、広島市の参加の意味がわかりません。

 同線の下深川駅から広島駅までの区間は広島市内にあり、2022年度における平均通過人員は、「データで見るJR西日本2022」によれば8529ですので、再構築協議会の設置の必要がない数字となっています。しかし、三次駅から下深川駅までの区間にも広島市内の部分があるものの、2022年度における平均通過人員は988しかありません(この区間に、安芸高田市に所在する駅が3つあります)。その他の区間を見ても1000未満ばかりですし、備中神代駅から広島駅までの全区間でも1170しかありません。備中神代駅から東城駅までの区間(89)、東城駅から備後落合駅までの区間(20)、備後落合駅から備後庄原駅までの区間(75)に目がいきがちなのですが、これらの区間の平均通過人員が2桁と低すぎるからであって、他の区間を見ても存廃協議レベルであることは明らかです。また、下深川駅から広島駅までの区間のみが存続するとしても、それでは芸備線が盲腸線になってしまい、平均通過人員が低下する可能性もあるでしょう(同様の例が名鉄にあります)。活性化や再編は、やはり全線について考えるべきである、という結論に達したのでしょう。

 こうしてみると、芸備線の沿線にある地方公共団体のうち、安芸高田市のみが再構築協議会に参加しない可能性もあるということになります。あるいは今後何らかの意思表示がなされるかもしれません。

 いずれにせよ、再構築協議会の動向に目を向け続けていかなければなりません。

 〈追記〉

 朝日新聞社のサイトに、2024年1月13日10時15分付で「JR芸備線の再構築協、設置決定に地元は 広島・岡山」(https://digital.asahi.com/articles/ASS1D7606S1DPITB00B.html)という記事が掲載されています。これによると、「協議の対象区間は備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)間の68.5キロだが、地元の意向を踏まえて、区間外を含めた全線について広域的な見地から議論する」とのことです。

 また、同記事には、次のように書かれています。

 「広島県と庄原市は昨年11月、国に協議会参加の意向を示した際に広域的な議論を要請。国が沿線にある広島市、三次市、同県安芸高田市の3市に意向を尋ねたところ、安芸高田市だけが『結末がバラ色になると思っている人は一人もいないはずだ』(石丸伸二市長)などとして、不参加意向を伝えていた。」

 やはり、安芸高田市は当初から再構築協議会に参加しない意向であったようです。ただ、その姿勢が、今後の再構築協議会にどのような影響を及ぼすことになるか、少々の懸念もあります。

 なお、上記朝日新聞社記事には「国土交通省の資料から」として「芸備線再構築協議会の構成員」が示されています。次の通りです。

 ①国

 国土交通省中国陸運局(議長)、中国地方整備局

 ②地方公共団体

 岡山県、広島県、新見市(岡山県)、庄原市(広島県)、三次市(広島県)、広島市

 ③鉄道事業者

 JR西日本岡山支社、同広島支社

 ④公共交通事業者

 岡山県バス協会、広島県バス協会

 ⑤公安委員会

 岡山県警察本部、広島県警察本部

 ⑥学識経験者

 神田佑亮教授(呉工業高等専門学校環境都市工学分野)

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神奈川県でもバス減便

2024年01月10日 11時00分00秒 | 社会・経済

 このブログで何度か「2024年問題」を取り上げました。或る意味ではむしろ「2023年問題」と言ってもよい状況でしたが、何処の地方でも生じうる話ですし、日本全国で対処すべき問題となっています。

 神奈川県でも同様です。たまたま、神奈川新聞社のサイトに、2024年1月9日18時50分付で「葉山町、重要課題は『路線バス減便』 町長が新年度から具体策へ」(https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1047964.html)という記事が掲載されているのを見つけました。ただ、有料記事であり、会員登録をしていないので、途中までしか読めません。わかる範囲で参照しました。

 三浦半島の北部、逗子市と横須賀市に隣接する葉山町には、鉄道路線がありません。京浜急行逗子線の終点は逗子・葉山駅ですが、JR横須賀線の逗子駅の近くにあり、葉山町から少し離れています。そのため、葉山町の公共交通機関といえばまず路線バスということになります。

 町内を走るのは京浜急行バスのみです。その京浜急行バスの路線のうち、海岸回りのバス(記事に具体的なことは書かれていないようです)は2023年秋に減便されています。夜間が中心であるとのことですが、他の時間帯も減便されているのではないかと思われます。さらに、京浜急行バスは、山回りのバス(これについても記事に具体的なことは書かれていないようです)も2024年、つまり今年の春に減便する方向で検討しているとのことです。

 京浜急行バスが葉山町に報告を行ったようで、葉山町長が年頭記者会見で「路線バスの減便対策を差し迫った重要課題に挙げた」上で「タクシー会社やスーパーに協力を求めながら、2024年度から具体的な方策を取る考えを示した」とのことです。

 減便の理由としてあげられているのが、運転士不足とCOVID-19です。たしかに、COVID-19によって乗客が減少したでしょう。しかし、それだけではないものと思われます。葉山町のサイトには地域公共交通会議の議事録が掲載されており、さらに2023年8月29日に開催された令和5年度第1回葉山町地域公共交通会議全体資料(葉山町政策財政部政策課)も掲載されています。その全体資料には、次のように書かれています。

 「2.葉山町地域公共交通計画の内容検討

 ②計画の目標(課題整理)

 1. 地域住民の交通

 ●鉄道駅までの交通手段

 1位 バス(48.3%)  2位 自家用車(28.1%)  3位 徒歩(7.4%)

 ●買い物に行く際の交通手段

 1位 自家用車(49.6%)  2位 徒歩(24.5%)  3位 バス(13.3%)

 ●通院する際の交通手段

 1位 自家用車(44.1%)  2位 バス(21.1%)  3位 徒歩(16.9%)

 ⇒鉄道駅までの交通手段とそれ以外では、割合が逆転している。

 バスの経路やダイヤが鉄道駅を中心に作られており、町内への移動は課題がある可能性がある。」

 「2.葉山町地域公共交通計画の内容検討

 ②計画の目標(課題整理)

 2. 観光客の交通

 ●鉄道がなく、自家用車かバス、タクシーによる移動に限定。

 ⇒渋滞の影響で予定通りに行動できない場合もある。

 ●オンシーズンはバス、タクシーに乗れない場合がある。

 ⇒他の交通手段は選択肢が少ない。

 ●観光の中心となる目的地はなく、街歩きのような観光が主。

 ⇒小回りが利く交通手段のニーズは高いと考えられる。

 ⇒使いやすい、使ってくれる公共交通の確保が必要。」

 「2.葉山町地域公共交通計画の内容検討

 ②計画の目標(課題整理)

 3.高齢者、学生等の交通

 ●町内に中学校は2校、バス通学を要する生徒もいる。

 ⇒通学費の負担発生、保護者の送迎による渋滞が頻発。

 ●高校通学の場合は町外に出る必要がある。

 ⇒通学費のさらなる負担増、送迎による渋滞の増加。

 ●自宅~バス停間に坂道がある人の割合:48.5%

 ●自動車運転免許証の不所持率

 60代:10.6%  70代:38.7%  80代以上:80.8%

 ⇒外出機会の減少による身体機能・認知機能低下のおそれ

 ⇒自家用車を使えない人への支援策を検討する必要がある。」

 或る程度は考えたとおりでした。この全体資料には自家用車普及率が示されていませんが、鉄道路線がないこと、東京はもとより横浜市の中心部からも離れていることから、自家用車普及率は高いものと考えられます(鉄道駅が三浦海岸駅と三崎口駅しかなく、いずれも中心部から離れている三浦市も同様ではないでしょうか)。これでは道路の渋滞も避けられないでしょうし、その一方で高齢化率が上昇しているのではないかと思われます。町内に高校がないのは致命的である、とまでは言えませんが、進学率を念頭に置けば子育てなどには向かないと判断されても仕方のないところです。

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こんなこと、或る意味で当たり前のことではないのか?

2024年01月08日 00時45分00秒 | 社会・経済

 たまたまgooニュースで見たもので、2024年1月7日9時26分付でした。元は日刊ゲンダイDIGITALに掲載された記事のようです。

 「アフターコロナでワガママな人が増えたのか? 職場を悩ます『設定温度』『混雑嫌い』問題

 一読して「或る意味で当たり前のことばかりだろ!」と感じました。「混雑嫌い」に至っては「今更、半世紀以上も前からの話なんか取り上げるのか?」と言いたくなります。

 それ以外のことについても我が儘でも何でもないことばかりで、「文句を言う奴は馬鹿じゃないのか?」とすら思えてきます。

 むしろ、「手前のことを見直してみろ!」と書いておきます。他人様のことに文句を付ける奴ほど、自分のことをわかっていないし、他人を傷つける才能に長けています。こういうことを、気が弱い私は身近なところで半世紀以上も感じています。

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長津田厚生総合病院が閉院へ

2023年12月22日 01時45分00秒 | 社会・経済

 最初に。横浜市は緑区の長津田は「ながつた」と読みます。「ながつだ」ではないので御注意を。横浜市の北部では、他に高田(たかた)、山田(やまた)の例があります。

 本題に移ります。

 昨日(2023年12月21日)の夜、TVK(テレビ神奈川)や神奈川新聞で報道されていたのが目に付きました。

 東急田園都市線・JR東日本横浜線・横浜高速鉄道こどもの国線の長津田駅から北のほうに歩くと、長津田厚生総合病院があります。こどもの国線に乗ると、長津田駅を発車してすぐに右にカーブし、恩田川の手前、右側に長津田厚生総合病院が見えます。私は、祖母の見舞いのためにこの病院に行ったことがあります。

 閉院の理由が、実に情けないものでした。

 2014年10月から3年間、診療報酬の不正請求があったのでした。実に6605件、1億8000万円です。私は医療関係に詳しくも何ともないので、業界事情や背景などを知る由もありませんが、複数の匿名による情報提供があり、厚生労働省関東信越厚生局による監査の結果、看護師の人数の水増しなどがあったことがわかったそうです。今から9年前より続けられてきた訳で、行政のほうで見破れなかったのかとは思いました。

 ともあれ、不正請求が発覚したため、関東信越厚生局は長津田厚生総合病院に対する保険医療機関(TVKのサイトではTVKのサイトでは「保健医療機関」と書かれていますが、誤字です)の指定を2024年3月1日付で「取り消す」、行政法学者としての表現を使えば撤回することとなりました。

 長津田厚生総合病院のサイトには、2023年12月21日付で「長津田厚生総合病院 閉院のお知らせ」という記事が掲載されています。「一般社団法人日本厚生団 長津田厚生総合病院」の院長名によるものですが、一読して違和感を覚えました。

 まず、この記事には「一般社団法人日本厚生団 長津田厚生総合病院は、関東信越厚生局による監査の結果、平成26年10月から平成29年6月の間に診療報酬の基本診療料(一般病棟入院基本料10対1)に不正な請求が行われていたこと等が判明し、令和6年3月1日に保険医療機関の取消処分を受けることとなったため、令和6年2月29日をもって保険診療が停止となり、令和6年3月31日に閉院することとなりました」と書かれています。

 当事者のはずですが、第三者的な視点で書かれています。どこか他人事という感じがします。

 保険診療が行われるのは2024年2月29日までであり、2024年3月1日から同月31日までは「健康保険を使った診療ができませんので休診といたします。他院への紹介状は作成いたしますのでお問い合わせ下さい」。閉院にも準備が必要でしょうから、この点はよいとします。

 私が最も違和感を覚えたのは「不正請求の要因としては、病院のコンプライアンス及びガバナンスの問題と思われます」という文です。この一文だけで一段落が構成されています。「当事者だろ!」という突っ込みが入ってもおかしくありません。ここで長々と詳細を書く必要もありません。また、2014年から2017年までの間の出来事なので、院長など人事に変化があったことは理解できます。それでも「病院のコンプライアンス及びガバナンスの問題と思われます」で終わらせるのはどうなのでしょうか。

 ちなみに、記事には「平成29年7月以降は、法令を順守し運営しておりました」と書かれています。そうであるならば、2017年6月までの出来事などについて内部での検証は行われたのでしょうか。

 閉院となれば、最も影響を受けるのは入院患者でしょう。長津田厚生総合病院は「令和6年4月1日以降の診療につきましては、新たな医療機関にて現在の場所で診療を継続できるようお願いしております。診療科目は、内科外来・眼科外来・泌尿器科外来・人工透析・健診センターです。入院診療は行いません」と表明しているので、入院患者は別の病院に転院しなければならないということになります。

 入院患者ほどではないとしても、通院患者も大きな影響を受けます。「新たな医療機関」による診療科目は、現在の長津田厚生総合病院における診療科目よりも少なくなるようですし、長津田厚生総合病院から「新たな医療機関」に移行するとなれば、医師や看護師といったスタッフの異動もありえます。

 「叩けば埃が出る」ではないですが、診療報酬の不正請求は、実のところ少なからぬ医療施設で行われている可能性が低くないでしょう。それだけに、結局は患者が不利益を被ることになる訳でして、もう少し早くわからなかったのかという疑問は拭えません。

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忘年会離れと言いますが

2023年12月21日 00時00分00秒 | 社会・経済

 月曜日の朝、電車に乗って仕事へ行く際にiPhoneで忘年会離れの記事を読みました。私は、若い頃から飲み会のようなものをあまり好まなかったため、「そうだよね」などと共感しながら読んでいました。紙面記事として朝日新聞2023年12月18日付朝刊15面東京四域14版△に「コロナ5類移行 街はにぎわい それでも進む 忘年会離れ」がありますが、私は2023年12月17日20時付の「進む『会社の忘年会』離れ 『ニーズ高くない』コロナ後やめた企業も」(https://digital.asahi.com/articles/ASRDK5KGPRDHOXIE01P.html)に目を通していました。書かれている内容に違いがありますが、私は神奈川県人ですのでインターネットの記事のほうを参照します。

 今年、東京の地下鉄に乗る度に「COVID-19の前より混んでいるんじゃないか?」と思えるほどに乗客が増えたことを実感します。2020年春の状況などを身をもって体験した者として、あまりの違い戸惑いを覚えたほどです。

 しかし、飲み屋さんなどの場合は違うようです。

 上記インターネット記事に東京商工リサーチによるアンケート調査(10月実施)のことが書かれています。何社を対象にしたのかはわかりませんが、回答は4747社から得られたようです。

 この年末年始に忘年会や新年会を予定していると回答した企業は54.4%、予定していないと回答した企業は21.8%でした。

 まだまだ多いと言えますし、忘年会離れという表現が妥当なのかなと疑いたくなるかもしれませんが、2019年以前よりは減少しているのでしょう。

 予定していないという回答の理由が気になるところでしょう。私も気になったので目を通すと、開催ニーズが高くないという答えが最も多くて53.8%、続いて「参加に抵抗感を示す従業員が増えたため」という答えが42.2%とのことです。この両方の答えには共通する部分が多いと思われますが、別の回答としておきましょう。一方、中小企業については費用の問題をあげるところが多かったようです。

 一方、実施予定の企業では、従業員の親睦を図るという回答が最も多くて87.0%、続いて従業員の士気向上を図るという回答が53.2%であったとのことです(明らかに複数回答です。一つだけを選択するというのは趣旨に合わないからでしょう)。ただ、親睦なり士気向上なりにつながるかどうかは個別事情に左右されるのではないでしょうか。

 労働者はどう考えるのか。これも千差万別でしょう。記事にも賛成派と反対派の双方の意見が書かれていました。かなりの部分は企業の事情に左右されるような気もしますが、「上司にお酌させられるんじゃないかと心配」という意見は多くの企業に共通するでしょうか。今でもこういう上司はたくさんいるのでしょうか。私のように、お酌も何もいらないから自分で加減を合わせて飲んだりしたいと思う人は少ないのでしょう。

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