ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

長電バス、日曜日は当面運休へ

2023年12月19日 15時40分00秒 | 社会・経済

 今朝(2023年12月19日)、Yahoo! Japan Newsに掲載されたニュースを見て知りました。長野放送、信越放送などが報じており、長電バスの公式サイトを見ると、2023年12月18日付で「長野市内路線バスの『日曜日運休』について」という文書が掲載されています。

 この文書によると、北陸信越運輸局長野運輸支局に届出がなされたのは12月15日のことです。2024年1月21日から、長野市内のバス路線について日曜日の便を運休とすると書かれています(詳細は「長電バス『日曜日運休』バス路線一覧」をお読みください)。

 やはり2024年問題が原因でした。それほど長くない文書なので全文引用に近くなってしまい、長電バス関係者の皆様には大変申し訳ないのですが、県庁所在地の公共交通機関の実情がわかるものですので、紹介させていただきます。

 相当に深刻な事態に陥っていることは、次の部分からよくわかります。

 「慢性化する運転士不足の中、生活交通路線バスを維持するため、貸切バスや高速バスの運転士を生活交通路線に充当させ、路線バスの不足分を埋めているのが現状です。こうした状況が続きますと、利益の出る貸切バス・高速バス事業で路線バスの赤字分を補っていた内部補助による生活交通路線バスの維持が成立しなくなります。」

 「運転士確保については、大型バスの運転体験や沿線市町村に対する運転士確保依頼など手を尽くしておりますが、新規採用が予定どおり進まず改善には至っておりません。」

 最近、田園都市線を走る電車でもバス運転士募集の広告を見かけます。東急の電車なら東急バス、東武の電車なら東武バスという訳ですが、とくに東武の広告は派手です。今まで、電車の中でバス運転士募集の広告がなかった訳ではないのですが、ここまで他の広告を圧倒するほど目立つものは見たことがないというほどに派手なものです。余程のことなのだろうと推察されます。

 その東武バスの広告を超えていると思われるのが長電バスの上記文書です。内部補助は、多少とも公共交通に関心を有する者にとっては周知の事実ですが、ここまでストレートに表に出した文書はあまりないでしょう。一般向けというか一般の乗客向けの文書であるから、事情を説明しなければ理解を得ることはできないと考えられたことによるのでしょう。

 内部補助も限界に近づいているということでしょう、「そのような状況下、繁忙期(冬山シーズンやインバウンド輸送)を迎え、さらには積雪・ 凍結による運行時分の遅延も予想される中、運転士の労働時間がこれまで以上にひっ迫す る恐れがあります」とも書かれています。

 人員配置に苦心していることがよくわかります。その上で、次のように述べられています。

 「公共交通を担う弊社は、お客様を安全・安心に輸送することが使命であり、そのためには運転士の良好な労働環境を担保する必要があることから、苦渋の選択として、通学・通勤・通院に比較的影響が少ない日曜日を運休の対象とすることとしました。ご利用の皆様には、多大なご迷惑をお掛け致し、不本意ではありますが、何卒、ご理解を頂きますよう、よろしくお願い致します。」

 気になるのは、いつまで続くかということです。長電バスが示したのは条件付きの将来です。同社が想定する水準まで運転士が増えれば日曜日の運行が再開されます。これに対し、さらに運転士不足が進んだ場合には、日曜日の運行休止に留まらなくなる旨も書かれています。

 ちなみに、2024年1月1日には、長電バスの路線のうち、市街地循環バス「ぐるりん号」、須坂地区の仙仁線および米子線、中野・湯田中地区の上林線、飯山地区の野沢線および木島平村シャトル便のみが運行され、その他の路線は全て運休となります。また、1月1日に運行される路線でも他の日に運休になるとのことです。

 今年に入ってから、路線バスの減便を発表する会社が多くなりました。現在のところ、大阪府の金剛バス以外は事業を全面的に廃止する会社は現れていませんが、動向次第では再編が見られるかもしれません。

 なお、金剛自動車のサイトによると、12月15日の18時30分をもって喜志営業所が閉鎖されたとのことです。同日から12月20日までは富田林営業所に業務が集約され、全面廃止を迎えることとなります。今日は12月19日ですから、明日が金剛バスの最終営業日ということです。

 

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京阪中之島線の行方は

2023年12月18日 07時00分00秒 | 社会・経済

 私は神奈川県川崎市の出身であり、京阪神地区の私鉄についてそれほど事情を詳しく知っている訳ではありません。そのため、これから取り上げる京阪中之島線についても、そもそも利用したことが一度もないため、報道などからしか知りえないことをあらかじめ記しておきます。ちなみに、私は、京阪電気鉄道については交野線、中之島線および鋼索線以外の全路線を利用したことがありますが、今から35年ほど前、学部生時代のことでしかありません(まだ初代3000系が特急として走っていましたし、京津線は京津三条駅から現在のびわ湖浜大津駅までの路線でした)。それから27年後に京阪本線の淀屋橋駅から門真市駅までの区間を利用したこともありますが、その程度でしかないということでもあります。

 朝日新聞社のサイトに、2023年12月17日の7時付で「京阪中之島線の延伸構想、年度中の決定は見送りへ IRの動向に不安」という記事が掲載されています(https://digital.asahi.com/articles/ASRDH5V2QRDHULFA00J.html)。以前から京阪中之島線の不振が伝えられており、実際に、大々的に宣伝されて2008年10月19日の華やかな開業を迎えたはずなのに、翌年冬には早くも減便ダイヤ改正が行われたほどです。一体、京阪は中之島線をどうしたいのかが気になるところで、朝日新聞社記事はその点についての参考になりうるでしょう。

 ここで、京阪中之島線について説明をしておきましょう。同線は、京阪本線の天満橋駅から分岐して中之島駅までの3キロメートルの路線です。正式には起点が中之島駅、終点が天満橋駅であり、京阪電気鉄道は第二種鉄道事業者です(中之島高速鉄道が第三種鉄道事業者です)。

 中之島駅の時刻表を見ると、全ての列車が京阪本線に直通しており、平日の朝夕に区間急行および準急が運行され、土曜日および休日には普通列車のみ運行されています。また、平日の夕方に1本のみ、樟葉行きの快速急行が運転されます。平日の11時台から13時台まで、および土曜日の12時台から15時台までは15分間隔の運転であり、大阪市の北区および中央区を通る路線としては運行本数が少ない路線であるとも言えます。なお、途中駅は、渡辺橋駅、大江橋駅、なにわ橋駅(中之島駅→天満橋駅の方向での順)であり、起点の中之島駅以外の全駅で大阪メトロの路線と乗り換えることができますが、天満橋駅を除けば便利ではないようです。

 さて、上記朝日新聞社記事に戻りましょう。京阪ホールディングスの加藤好文会長へのインタビューが基になった短い記事ですが、行間に京阪の苦悩あるいは苦境を読みとることができるような気もします。

 京阪は、中之島線を大阪メトロ中央線(および阪神なんば線)の九条駅まで2キロメートルほど延伸するという計画を持っているようです。その理由は、2025年に開催が予定されている大阪万博の会場にしてIRの建設予定地でもある夢洲へのアクセスの向上です。大阪メトロ中央線にコスモスクエア駅から夢洲への延長計画があるので、その計画に(あまり良い表現ではないですが)便乗しようというのでしょう。中央線は近鉄けいはんな線と直通運転を行っており、近鉄は奈良線からけいはんな線を経由して中央線までの直通運転を行うという計画を持っているとのことです〔朝日新聞社2023年7月4日7月4日6時30分付「IR会場へ、人の流れは生まれるのか 路線延伸、関西鉄道会社の思惑」(https://digital.asahi.com/articles/ASR7367GZR6ZPLFA004.html)によります〕。京阪が自力で夢洲まで延長することは、中之島線の実績からして無理であると判断されたのかもしません。

 2023年7月3日、京阪ホールディングスは中之島線の延伸計画に関する組織(しかも会長直轄の組織)を設置しました。IRの開業時期を考慮しても遅きに失したと感じたのは私だけでしょうか。ともあれ、延伸の採算性などについて議論がなされており、2023年度中に延伸か否かを決定する方針であったとのことです。しかし、それが難しくなりました。

 その理由は、やはり建設費や人件費の高騰でした。当然、延伸のための事業費も増えてしまいます。中之島線の実績が需要予測を大幅に下回っているだけに、九条駅まで延伸したところで中之島線の業績は向上しないと判断されたのでしょう。さらに、上記朝日新聞社12月17日記事によれば「IRの事業者が事業の実施は困難と判断した場合に、違約金なしで計画を撤回できる『解除権』が、今年9月から26年9月まで3年間延長された」ことも、2023年度中の決定が困難になった理由とされています。京阪としても解除権が行使されたのではたまったものではないでしょう。およそ2キロメートルしかないとは言え、建設費が高額になることは容易に想像できます。

 九条駅まで延長するのはIRが建設され、予定通りに開業することが前提です。しかも、大阪メトロ中央線は第三軌条方式、京阪中之島線は架線集電方式ですから、そのままでは直通運転ができません(近鉄についても同様ですが、架線集電方式と第三軌条方式の双方に対応する車両を製造するつもりなのでしょう)。阪神なんば線に接続するのであれば直通運転も可能になるでしょうが、阪神電気鉄道がその意向を持っているかどうかはわかりません。夢洲でのIR建設計画が進まないのであれば、九条駅まで延長する必要はなくなるのです。

 そもそも、京阪中之島線は京阪本線の混雑緩和(あまりの混雑ぶりのために5扉車の5000系が登場したのは有名な話です)、鉄道ファンなどの間では有名な計画線である「なにわ筋線」への接続を目的として計画され、建設されたそうです。しかし、「なにわ筋線」の建設がなかなか具体的なものとならなかったこともあって、中之島線の方向性は定まらなかったようです。どう考えても、中之島駅を起点にして現在の姿のままでおしまいというのではいかにも中途半端です。地図を眺めてみると、確かに九条駅までの延伸は自然な形ですが、JR大阪環状線および阪神なんば線の西九条駅までの延伸も可能であると考えられますし、実際にそのような計画もあったようです。ただ、様々な要因があるとは言え、京阪中之島線については不確定要素が多く残されたままで建設され、開業したような印象を受けます。「門外漢が何を言うか!」というお叱りを受けることを覚悟の上で記すならば、少なくとも大手私鉄で京阪中之島線ほどの迷走ぶりを見せてくれる路線もあまりないでしょう。それだけに、行方が気になるのです。

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日本最後のトロリーバスが廃止されることに

2023年12月12日 07時00分00秒 | 社会・経済

 現在、日本でトロリーバスが運行されているのは、立山黒部アルペンルートの一角をなす立山黒部貫光の室堂と大観峰との間を結ぶ路線です。

 そのトロリーバスの廃止が表明されたのは今年(2023年)5月のことで、このブログでも「日本からトロリーバスが完全に消えるようです」として取り上げました。それから半年ほど経過して、12月11日に立山黒部貫光が廃止を正式に発表しました。朝日新聞社が2023年12月11日20時30分付で「国内唯一のトロリーバス廃止へ 立山黒部アルペンルート」として報じています(https://www.asahi.com/articles/ASRDC6HXFRDCPISC00R.html)。

 トロリーバスの廃止といっても、路線が廃止される訳ではなく、電気バスに置き換えられるということです。理由は、やはり「修理のための部品を調達できなくな」ったことによるものです。日本でここしか走っていないというのは、たしかに稀少価値と言えますが、それだけコストもかかるということです。

 たとえば、トロリーバスの集電装置はトロリーポールという旧式のものであり、現在では、立山黒部貫光のトロリーバス以外であれば、愛知県犬山市にある明治村で動態保存されている京都市電の車両くらいしか見られないでしょう。とかく欠点が多い集電装置で、路面電車でもビューゲル(これもあまり見かけなくなりました)やパンタグラフに置き換えられており、私が小学生時代に本で見たのは京福電気鉄道の叡山本線および鞍馬線(いずれも現在は叡山電鉄が運行)くらいのものでした。さすがに1978年にはパンタグラフに変えられています。このように、時代に取り残されたような部品をいつまでも製造する会社がどれだけあるでしょうか。需要が少ないのですから費用もかかるはずです。

 それに、電気自動車の製造技術もかなり高いものになってきています。技術伝承のための保存という志があれば別ですが、敢えてトロリーバスを維持して観光のために走らせる意味も少ないと言えるでしょう。立山黒部貫光のトロリーバス路線はほとんど立山トンネル(3.7キロメートルであるそうです)のみを通るようなものですから。

 もう一つ、運転免許の関係があるかもしれません。トロリーバスは鉄道に分類されるので、自動車の運転免許を持っていても法律上は運転が許されません。名古屋市で名古屋ガイドウェイバスが運行されていますが、ここの運転士の場合には自動車の大型二種免許とトロリーバスの免許(動力車操縦者運転免許)が必要です。しかも、自動車運転免許と鉄道車両の運転免許とを比較すれば、どちらのほうが容易に取得できるかなど一目瞭然です。立山黒部貫光がトロリーバスをやめて電気バスに変える理由に免許は入っていないかもしれませんが、何処かでぶつかる問題にはなりうるでしょう。2024年問題を控えている訳ですから。おそらく、電気バスであれば鉄道車両の運転免許は不要であるはずです。元々、室堂から大観峰までの区間ではディーゼルエンジンのバスが走っていたくらいなので、時代の変遷に従えばトロリーバスにこだわる必要もありません。

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小湊鉄道線の行く末は

2023年12月02日 00時00分00秒 | 社会・経済

 私は神奈川県川崎市の出身です。そのためであるかどうかはわかりませんが、千葉県の鉄道を利用する機会があまりなく、房総半島を通る鉄道ではJR東日本の外房線の千葉駅から茂原駅までの区間しか利用したことがありません。

 ただ、関心がない訳ではなく、今回取り上げる小湊鉄道線を利用してみたいと思ったことは何度もあります。市原市にあるJR内房線の五井駅に行けばよいのです。

 この五井駅から房総半島の内陸部を走り、いすみ鉄道との接続駅で大多喜町にある上総中野駅までの非電化単線路線が小湊鉄道線です。終点の上総中野駅を除く全ての駅が市原市にあるので、市原市の住民の足となっているはずですが、実際には利用客が少なく、そのためもあって末端の養老渓谷駅から上総中野駅までの区間は平日でも7往復、休日は6往復しかありません。ここから推察できるように、小湊鉄道線は赤字に苦しんでいます。上総中野駅で接続するいすみ鉄道いすみ線も、かつては国鉄木原線でしたが第一次特定地方交通線として廃止の対象になり、第三セクターであるいすみ鉄道に引き継がれたという歴史があります(余談ですが、関東地方の国鉄線で第一次特定地方交通線に指定されたのは木原線のみです。また、木原線は1968年の赤字83線にも含まれていました)。さらに、房総半島と言えば木更津駅から上総亀山駅までの久留里線があり、この路線も久留里駅から上総亀山駅までの区間の平均通過人員が極端に低く、存廃論議が行われています。

 久留里線の影に隠れてしまっていますが、小湊鉄道線も存続か廃止かという問題の渦中にいます。朝日新聞社が2023年11月30日の11時0分付で「小湊鉄道、支援要望のさなかの大雨被災 運行を継続できるかの岐路に」(https://digital.asahi.com/articles/ASRCT6TZJRCNUDCB00G.html)として報じており、色々と考えさせられました。

 2023年9月8日、台風13号による大雨が房総半島を襲いました。小湊鉄道線も、月崎駅から上総中野駅までの区間が不通となりました。11月23日に仮復旧を終えて、全線で運行再開とはなりましたが、小湊鉄道による「お知らせ」によれば完全復旧とは言えません。次のように書かれているからです。

 11月23日から26日まで、および12月の土休日:五井駅から上総中野駅までの全線で運行される。

 11月27日から12月8日までの平日:五井駅から養老渓谷駅までは列車が運行されるが、養老渓谷駅から上総中野駅までは代行バスが運行される。

 12月11日から12月26日までの平日:五井駅から月崎駅までは列車が運行されるが、月崎駅から上総中野駅までは代行バスが運行される。

 小湊鉄道のホームページには被害状況を示す写真も掲載されています。土砂の流入で線路が埋まってしまう、あるいは法面が崩れる、というような被害を目にすることができます。相当な手間と費用がかかるだろうと思われますが、上記朝日新聞社記事には「土砂の撤去や枕木交換といった復旧にかかる費用の総額は当初、4千万円程度と見込まれていた。だが、人件費や物価高の影響で1億円近くに膨らみそうだという」、「平日の全線運行が実現するのは来年3月ごろになる予定だ」と書かれています。

 しかも、小湊鉄道線は度々被災しています。上記朝日新聞社記事にあげられているのは直近とも言える2019年10月の台風15号、2021年7月の集中豪雨で「それぞれ全線再開まで3カ月以上かかった」のですが、それだけではありません。2006年、2013年、2015年にも被災し、一部の区間が運行不能となりました。

 今年の被災に関して、千葉県が小湊鉄道を支援することになりそうです。千葉県は、12月定例議会に補正予算を提出しており、その中に小湊鉄道の復旧費用920万円が計上されています。920万円とは随分少ないと思われるかもしれません。これは、上の引用にあるように「復旧にかかる費用の総額は、当初、4千万円程度と見込まれていた」ことにより、市原市と大多喜町も復旧費用を賄うこととなっているようです。千葉県、市原市および大多喜町の支出を合計すると復旧費用の半分程度になるとか。

 小湊鉄道は第三セクターではなく、京成グループの民間企業です。上記朝日新聞社記事にある千葉県交通計画課のコメント(「沿線の足や観光資源として営業されていることも考慮し、特例的に補助することにした」)を読み、千葉県の内部では支援について議論があったかもしれないと考えました。

 ただ、国の補助は受けられません。小湊鉄道は、社名こそ鉄道会社ですが実際はバス事業のほうがメインとなっており(少なからぬ地方鉄道の実態とも言えます。大手私鉄であれば西鉄が好例です)、鉄道事業が赤字であっても他の事業が黒字であれば、事業者の決算は黒字になる可能性があります。そうなると、国からの補助を受けられない場合があるのです。

 鉄道軌道整備法第3条は、次のように定めています(原文には振り仮名がありますが、省略します)。

 第1項:「この法律の規定に基く助成の対象とする鉄道は、第一号若しくは第三号に該当するものとして国土交通大臣の認定を受けたもの、第二号に該当するもので当該改良計画につき国土交通大臣の承認を受けたもの又は第四号に該当するものとする。

 一 天然資源の開発その他産業の振興上特に重要な新線

 二 産業の維持振興上特に重要な鉄道であつて、運輸の確保又は災害の防止のため大規模な改良を必要とするもの

 三 設備の維持が困難なため老朽化した鉄道であつて、その運輸が継続されなければ国民生活に著しい障害を生ずる虞のあるもの

 四 洪水、地震その他の異常な天然現象により大規模の災害を受けた鉄道であつて、すみやかに災害復旧事業を施行してその運輸を確保しなければ国民生活に著しい障害を生ずる虞のあるもの」

 第2項:「前項の規定により承認を受けた改良計画を変更しようとするときは、国土交通大臣の承認を受けなければならない。」

 おそらく、第1項第4号に該当するものと思われます。

 次に、鉄道軌道整備法第8条は、次のように定めています。

 第1項:「政府は、第三条第一項第一号に該当するものとして同条の規定により認定を受けた鉄道の運輸が開始されたときは、当該鉄道事業者に対し、毎年、予算の範囲内で、当該鉄道の事業用固定資産の価額の六分に相当する金額を限度として補助することができる。」

 第2項:「政府は、第三条の規定により改良計画の承認を受けた鉄道の当該改良が完了したときは、当該鉄道事業者に対し、毎年、予算の範囲内で、当該改良によつて増加した事業用固定資産の価額の六分に相当する金額を限度として補助することができる。」

 第3項:「政府は、第三条第一項第三号に該当するものとして同条の規定により認定を受けた鉄道につき適切な経営努力がなされたにかかわらず欠損を生じたときは、当該鉄道事業者に対し、毎年、予算の範囲内で、当該鉄道事業の欠損金の額に相当する金額を限度として補助することができる。

 第4項:「政府は、第三条第一項第四号に該当する鉄道の鉄道事業者がその資力のみによつては当該災害復旧事業を施行することが著しく困難であると認めるときは、予算の範囲内で、当該災害復旧事業に要する費用の一部を補助することができる。」

 第5項:「政府は、前項に定めるもののほか、第三条第一項第四号に該当する鉄道に係る災害復旧事業が、次の各号のいずれにも該当するときは、予算の範囲内で、当該災害復旧事業に要する費用の一部を補助することができる。

 一 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)第二条第一項に規定する激甚災害その他これに準ずる特に大規模の災害として国土交通省令で定めるものに係るものであること。

 二 当該災害復旧事業の施行が、民生の安定上必要であること。

 三 当該災害復旧事業に要する費用の額が、当該災害復旧事業に係る災害を受けた日の属する事業年度(次号において「基準事業年度」という。)の前事業年度末から遡り一年間における当該鉄道の運輸収入に政令で定める数を乗じて得た額以上であること。

 四 基準事業年度の前事業年度末から遡り三年間(基準事業年度の前事業年度末において当該鉄道がその運輸開始後三年を経過していない場合にあつては、当該運輸開始後基準事業年度の前事業年度末までの期間)における各年度に欠損を生じている鉄道に係るものであること。」

 第6項:「前二条の規定は、前二項の規定により補助を受けた鉄道事業者(当該補助に係る災害復旧事業を完了した者及び第十四条の規定により当該補助金の全部を返還した者を除く。)について、準用する。」

 第7項:「災害復旧事業の範囲、補助率その他の第四項及び第五項の規定による補助に関し必要な事項は、政令で定める。」

 第8項:「政府は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成十四年法律第百八十号)の定めるところにより、第一項から第五項までの規定による補助金の交付を独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じて行うことができる。」

 第9項:「前項の規定により同項に規定する補助金の交付が独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じて行われる場合には、次条及び第十条中『国土交通大臣』とあるのは、『独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じて国土交通大臣』とする。」

 小湊鉄道が第5項第4号に該当するのであれば、国からの補助が得られるでしょう。たしかに、鉄道事業は赤字が続いており、2021年度における営業損失は9000万円を超えました。しかし、前述のように、小湊鉄道のメインはバス事業です。鉄道事業の売上高はバス事業の1割程度しかないことからも、会社の主力がバスに置かれていることは明らかです。

 また、小湊鉄道線の沿線人口は減少しています。上記朝日新聞社記事によれば「1995年に5万8千人いた沿線人口は、2022年には約7割に縮小。同年の輸送密度(1キロあたりの1日平均利用者数)は、五井―上総牛久では95年の3割まで減って1563人。今回被災した養老渓谷―上総中野では、半分以下の61人だ」とのことですから、通勤通学客が増える見込みはないということになります。また、房総半島でもモータリゼイションが進んでおり、小湊鉄道線以外の鉄道路線においても乗客は減少していますから、小湊鉄道線だけの問題ではなく、千葉県全体の公共交通機関の問題と捉えるべきでしょう。

 ここまでは、今年9月の台風13号による被災からの復旧の話でした。しかし、ここで話は終わりません。

 上記朝日新聞社記事によると、小湊鉄道は今年の4月に、市原市に対して財政支援を求める要望書を提出していました。今後10年間で約60億円が必要であるという内容が書かれていたとのことです。線路や車両の維持や修繕に60億円で足りるのかどうか、疑問もあるのですが、最低限ということでしょうか。小湊鉄道線を走る気動車はキハ200形とキハ40系で、キハ200形は1961年から1977年までの間に製造されており、キハ40系は元国鉄の気動車で1977年から1982年までの間に製造されたものです。キハ200形の最も古いものであれば60年を超えており、最も新しいものでも46年となっています。キハ40系も40年を超えています。老朽化は避けられないだけに、車両の置き換えをどう進めるかが課題でしょう。

 また、現在においては驚きに値することですが、小湊鉄道線ではワンマン運転が行われていません。キハ200形の改造に費用がかかるからでしょうか。他に理由があるのかもしれません。

 小湊鉄道からの要望書には、上総牛久駅から上総中野駅までの区間については廃線を含めて検討が必要であるとも書かれていたようです。時刻表を見ると、五井駅から上総牛久駅までの区間については運行本数が多いので、需要はそこそこあるのでしょう。

 今後の動向に注意が必要ですが、実態を見に行く必要があるかもしれません。

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金剛自動車の代替バスが決まる

2023年11月17日 00時00分00秒 | 社会・経済

 このブログでは何度か金剛自動車のバス路線の話題を取り上げています。金剛自動車が路線バス事業を完全にやめてしまう訳ですので、全廃ということになりますが(会社も解散ということになるのでしょう)、その代替交通手段をどうするのかという問題があり、10月に入ってから富田林市、太子町、河南町および千早赤阪村による地域公共交通活性化協議会が開かれてきました。11月16日、河南町で協議会が開かれ、代替交通手段が決定されました。朝日新聞社が、2023年11月16日19時56分付で「金剛自動車の路線バス廃止後の代替決まる 3分の2の路線で運行継続」(https://www.asahi.com/articles/ASRCJ5WRTRCJOXIE027.html)として報じています。

 金剛自動車のバス路線は15あります。仕方のないことではありますが、全路線が残る訳ではなく、現在休止中である富田林循環線の他、白木加納循環線、聖和台循環線および太子線は廃止されることになります。白木加納循環線は富田林駅(近鉄長野線)発着の路線ですが、聖和台循環線および太子線は上ノ太子駅(近鉄南大阪線)発着の路線です。

 また、上記4市町村の財政負担は多額にのぼります。これについては後に記します。

 上記朝日新聞社記事には、金剛自動車のバス路線のうち、優先的に残すとされた5路線についての対応が書かれています。次のようになっています。

 1.千早線

 (1)富田林駅〜千早赤阪村立中学校前

 南海バスが6時台から20時台までに12便、千早赤阪村が6時台から8時台までと16時台から22時台までに合計7便を運行することとなっています。

 (2)千早赤阪村立中学校前〜金剛登山口

 千早赤阪村が5時台から20時台までに12便を運行することとなっています。

 (3)その他

 記事には書かれていないので廃止されるのでしょう。

 2.さくら坂循環線

 近鉄バスが6時台から19時台までに11循環、河南町が6時台と17時台から21時台までに合計3循環を運行することとなっています。

 3,東條線

 (1)富田林駅〜府立こんごう福祉センター(循環)

 南海バスが6時台から20時台までに12時循環を運行することとなっています。

 (2)富田林駅〜府立こんごう福祉センター〜甘南備〜富田林駅

 近鉄バスが6時台から8時台までと14時台から16時台までに合計4循環を運行することとなっています。

 4.喜志循環線

 近鉄バスが6時台から20時台までに15循環を運行することとなっています。

 5.阪南線

 近鉄バスが6時台から19時台までに上り15便と下り14便を、河南町が17時台から21時台までに5便を運行することとなっています。

 なお、記事では少々わかりにくいのですが、千早赤阪村および河南町が運行することとなっている区間でも南海バスおよび近鉄バスに運行を委託するようです。元々、南海バスおよび近鉄バスは上記4市町村に対して「『自治体コミュニティーバス』方式を条件に可能な範囲で協力する」と回答していました。また、「朝夕のラッシュ時などに『自家用有償旅客運送』方式などで補完のバスを走らせる」とのことです。

 上記5路線以外で残るのは北大伴線、石川線、河内線、白木線、太子中央循環線および畑・平石線です。このうち、「北大伴線と石川線は一体的に運行を継続」することになっており、河内線、白木線、太子中央循環線および畑・平石線については、一部で経由地の変更もなされるようです。

 現行のダイヤとの比較をしなかったのでわかりにくいもしれませんが、減便となる区間があります。上記朝日新聞社記事によれば「バスの転回スペースなどの問題」があるとのことです。

 また、運賃は、しばらくの間は現在のままであるようですが、改定も今後の検討課題となるようです。それは、上記4市町村の財政負担とも関係があります。協議会にオブザーバーとして参加した市町村長が国や大阪府の財政支援を要望しているのですから。

 運行経費などについての上記4市町村の負担額は、2023年度分でおよそ1億5,000万円です。私としては、むしろ2024年度分のほうが気になるところですが、2023年度とするならば、12月21日から2024年3月31日までということでしょうか。

 およそ1億5,000万円は、バスの営業距離に応じて、次のように分割されることとなります。

 富田林市:およそ6,560万円。

 河南町:およそ5,040万円。

 太子町:およそ2,640万円。

 千早赤阪村:およそ770万円。

 これでは「議会でも財政面などでの持続可能性に懸念の声が出ている」としてもおかしくありません。参考までに、それぞれの市町村における2023年度一般会計予算の歳入歳出予算の総額をみておきます。

 富田林市:43,886,000千円=438億8,600万円(市税収入見込みは134億8,264万8,000円)。

 河南町:6,524,318千円=65億2,431万8,000円(町税収入見込みは14億7,599万8,000円)。

 太子町:6,002,962千円=60億296万2,000円(町税収入見込みは13億8,132万円)。

 千早赤阪村:3,682,950千円=36億8,295万円(村税収入見込みは4億5,031万1,000円)。

 今のところはたいしたことがない、と思われるかもしれません。しかし、歳出予算を概観すれば、様々な領域への支出がありますから、それほどの余裕がないと考えてよいでしょう。

 今後、路線バスについて一般会計予算を充てるのか、特別会計を設けることになるのかどうかは不明ですが、おそらく特別会計を設けることはないであろうという予測を前提とし、さらに今後の人口減少を見込むとすると、利用客数などによっては負担額が大きくなることも考えられます。まして、円安のせいで燃料費が高くなっています。

 ※※※※※※※※※※

 これまで、大阪府のバス路線についてブログで記事を書いてきました。公共交通機関に関する法的考察のために、と考えて記してきた訳ですが、私自身、時折であるとは言え都営バス、東急バス、川崎市バスなどの路線バスを利用することがあり、非常に気になるのです。川崎市の地図とバス路線網とを見比べると、バス空白地帯と言いうる所がありますし、利便性が低いとしか表現しようがない路線も少なくありません。高津区には東急バス高津営業所と川崎市バス井田営業所がありますから、一層気になる訳です。

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京阪バス、京阪京都交通でも路線バスの減便や廃止

2023年11月04日 13時45分00秒 | 社会・経済

 このブログでは取り上げなかったのですが、10月に阪急バスの4路線が廃止されることが報じられていました。2023年10月11日15時付の読売新聞社の報道「阪急バス、空港宝塚線など4路線を来月廃止…運転手不足『地方の話かと』」(https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20231011-OYO1T50038/)には「地方で先行して起きていた路線廃止が都市中心部にも広がり、利用者からは困惑の声が上がっている」と書かれていますが、路線廃止や縮小は、理由などはともあれ、別に「地方で先行して起きていた」訳でもないでしょう。金剛自動車にしても大阪府の企業であり、これまで、首都圏でも時折ですが見られました。その例として「世田谷区でもバスは厳しい 園02系統廃止へ」をお読みください。5年前の話です。

 阪急バスで廃止される路線は、豊中西宮線(阪急石橋北口〜西宮北口および阪急豊中駅〜西宮北口)、阪北線(阪急園田駅〜梅田)、空港宝塚線(宝塚駅〜大阪国際空港)および三宮有馬線(三宮駅前〜有馬温泉)です。どの路線も運行本数が少ないようで、とくに阪急豊中駅〜西宮北口の路線は2019年7月から早朝の1本のみであったとのことです。路線の整理という側面が強いのではないでしょうか。

 〈余談ですが、川崎市にも早朝の1本しかないというような路線があります。私の生活圏に近い所では、東急バス高津営業所が所管する小杉駅前から中原駅前、新城駅前を経由して溝の口駅までのバスです。系統番号はなく、片道だけの路線です。時刻表には小杉駅前6時35分発、溝の口駅6時53分着と書かれています。また、歴史が長いことによって少なくとも関東では有名な路線として、神奈川中央交通の淵24系統、淵野辺駅北口〜登戸があります。時刻表によれば、こちらは土曜日の1往復のみで、行きは淵野辺駅北口7時発、登戸8時着となっており、帰りは登戸8時12分、淵野辺駅北口9時8分着です。〉

 この種のニュースに積極的なのは読売新聞社のようで、今回取り上げる京阪バスおよび京都京阪交通の話題も同社のサイトで知りました。先に報じられたのは京阪京都交通のほうで、2023年10月14日15時付で「『京阪京都交通』路線バスを減便、JR京都駅―亀岡駅など…運転手不足で」(https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20231014-OYO1T50031/)という記事によれば「減便の対象は、平日の午後2~11時台にJR京都駅と亀岡駅、阪急桂駅(京都市西京区)と桂坂ニュータウン(同)などを結ぶ4路線の計22便で、期間は10月23日~12月15日」であり、「利用者が比較的少ない時間帯」について減便するとのことです。理由はやはり運転士不足であり、「運転手のなり手不足が慢性化する中で離職が相次ぎ、運転手の数が社内基準を約15%下回って休日出勤を余儀なくされていた。12月以降に教習を終えた新規採用者が運行に加わり、従来のダイヤに戻すことができる見通しという」のが救いです。

 そして京阪バスです。2023年11月2日9時付で、読売新聞社が「京阪バス7路線を廃止、守口・門真…来春には9路線も・運転手不足」(https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20231102-OYO1T50003/)として報じており、それによると京阪バスが同月1日に「守口市や門真市などを走る7路線を12月16日に廃止すると発表し」ており、「来春には寝屋川市や京都府京田辺市、大津市を走る9路線も廃止する」とのことです。京阪バスも運転士不足であり、現在は定員の1割程度が欠員となっています。また、12月に廃止される7路線は、寝屋川営業所が所管する3路線、門真営業所が所管する3路線、および「ダイレクトエクスプレス直Q京都号」の一部区間であり、いずれの路線についても代替交通手段があるとのことですが、利用者にとっては大打撃でしょう。但し、寝屋川営業所については1路線、門真営業所についてルートの再編や系統の新設も行うということで、全体的には路線の再編の枠内であるのかもしれません。

 読売新聞社は、2023年11月3日18時11分付で「京阪バス路線廃止で利用客困惑『突然なくなると言われても』『年寄りは生きていけない』」(https://www.yomiuri.co.jp/national/20231103-OYT1T50089/)として報じており、その中で「京阪バスは今年8~9月、沿線自治体に、路線バスの一部廃止の方針を伝えていた」と書かれています。地域公共交通活性化再生法の施行を前に交通事業者が動いていることが垣間見られます。また、同記事には門真市地域整備課と守口市都市・計画課のコメントが掲載されています。門真市のほうは「乗り合いタクシーの運行区間を拡大するなど代替交通手段の確保を検討したい」との見解ですが、守口市のほうは、全国的な課題(運転士不足のことです)が背景にあるので守口市独自の対応は予定していないそうです。この辺りのことはそれぞれの市の事情があるでしょうが、無対応を続けるという訳にも行かなくなるのではないでしょうか。

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金剛自動車のバス路線のうち、10路線の運行は継続へ/奈良県生駒市でもバスの減便

2023年10月27日 00時00分00秒 | 社会・経済

 再び大阪の金剛自動車の話です。昨日(2023年10月26日)に協議会が開かれました。昨日の18時45分付で毎日放送が「運行終える『金剛バス』自治体が費用負担して『主要路線以外の一部路線』も存続が決定」(https://www.mbs.jp/news/kansainews/20231026/GE00053264.shtml)として、19時57分付で、産経新聞社が「全路線廃止の金剛バス、10路線は継続運行へ 南海、近鉄や関係自治体が継承」(https://www.iza.ne.jp/article/20231026-JD5G25ZDLBPWHJVB6Z3GRHUQ34/)として報じています。

 これらの記事によると、金剛自動車のバス路線のうち、10路線については他の事業者が継承する方向で合意がなされたということです。上記毎日放送記事には書かれていないのですが、上記産経新聞社記事のほうには「今後、関係者間の負担金などを協議し国土交通省に申請をする」とのことであり、「比較的利用の多い主要5路線は近鉄バス(東大阪市)と南海バス(堺市)のほか関係自治体が、過疎地域などで認められる『自家用有償旅客運送制度』を利用し、大型バスを運行する。全体の便数は現在より3~4割減少する見込み」であるとのことです。一方、残りの10路線はそのまま残る訳でなく、5路線のみを残すようです。詳細はわかりませんが、統廃合を行うということであり、地方自治体(おそらく、富田林市、太子町、河南町および千早赤阪村を指すのでしょう)が運行主体になるというのでしょう。上記毎日放送記事は「主要路線以外の路線について協議が続いていましたが、沿線の自治体などでつくる協議会は10月26日、一部については自治体が費用を負担して運行を続けることを決めました」と記しており、「住民の生活を守るという視点では一定の支出はやむを得ない」という松田貴仁氏(公共交通活性化協議会会長)の言葉も載せています。

 いずれの路線についても、程度の差はあれ減便が避けられません。上記毎日放送記事によれば、残りの10路線については「車両は金剛バスの路線バスを引き継ぐことなどを検討していて、運賃は変わらず、これまでの6割~7割程度の便数を補える見通しだということです」が、運賃水準をいつまで維持できるかという点も気になるところでしょう。

 ※※※※※※※※※※

 路線バスの減便は全国的な問題ですが、とくに近畿地方で目立つように思われます。これが単に私の目に付くことが多いのが近畿地方のニュースであるだけなのか、近畿地方のマスコミが積極的に報じているからなのかはわかりませんが、毎日放送のサイトには2023年10月25日19時20分付で「『バスあるから住んだのに』奈良で人口3番目の市で路線バス再編案…存続求め住民訴え」(https://www.mbs.jp/news/kansainews/20231025/GE00053228.shtml)という記事も掲載されています。

 これは、人口10万人超を抱える生駒市における路線バスの再編協議の問題についての記事です。生駒市といえば、近鉄奈良線、近鉄けいはんな線などが通り、大阪市の難波、森ノ宮などに直接行ける、さらに兵庫県尼崎市、西宮市、神戸市にも直接行ける場所ですから、路線バスの需要もありそうなものです。しかし、同市内の4路線、しかも主要駅などを連絡するバス路線を減便や廃止にするという再編案が奈良交通から提案されています。

 理由はいくつもあるのでしょうが、まずは少子高齢化でしょう。これにより、利用者はピーク時(これがいつなのかは不明です)の半分まで減ったといいます。次に、やはりCOVID-19の影響が大きかったようです。問題の4路線の赤字額は2021年度で1億200万円ほどであるそうなので、再編は避けられないということでしょう。記事には4路線について具体的なことが書かれていませんが、「あすか野団地口」というバス停が例としてあげられていることから、ニュータウンあるいは新興住宅地ではないかと考えられます。このような場所は少子高齢化の影響をまともに受けやすいのです。上記毎日放送記事によると、このバス停を通る便は平日で107とのことですが「再編されるとバス停が廃止になる可能性があります」。おそらく複数の運行系統が「あすか野団地口」を通るであろうとは言え、107便というのはかなり多いように思われますので、バス停が廃止されたら通勤通学など住民生活に少なからぬ影響が出ることでしょう。

 一方、上記毎日放送記事には、生駒市役所建設部事業計画課課長の話も載せられています。同課長は、複数の市町村に跨がるバス路線については国や県の支援があるのに対し、生駒市の場合には同市内で完結してしまう路線が非常に多く、こうした路線は国や県の支援の対象にならないという趣旨を語っていました。生駒市の財政状況にもよりますが、全路線の赤字を税収で補塡することはできないということでしょう。こうした状況であれば、滋賀県で検討された交通税の導入なども検討されなければならないかもしれません(私自身は慎重に検討すべきであるという立場をとります。仮にかつての道路特定財源のようなものであるとするならば、法律による税収の使途の限定によって財政の硬直化を招くおそれがありますし〔拙稿「地方目的税の法的課題」日税研論集46号『地方税の法的課題』(2001年、日本税務研究センター)284頁を参照してください〕、逆に一般財源とするならば交通税による収入のどの程度の割合が公共交通機関の維持・発展のために支出されるのかがわかりにくくなります。これについては消費税を想起してください。消費税法第1条第2項は「消費税の収入については、地方交付税法(昭和25年法律第211号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と定めていますが、消費税そのものは特定財源でも目的税でもないとされるため、実際に消費税の収入のうち、どの程度の割合が「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充て」られているのか、明確にされていません。

 今回は大阪府と奈良県の話題を取り上げましたが、首都圏、とくに京浜地区でもバス路線の減便が多く取り上げられることになるであろうと容易に想像できるため、何度でも扱うこととしています。

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JR西日本の城端線と氷見線があいの風とやま鉄道に移管される さらに七尾線についても

2023年10月25日 14時30分00秒 | 社会・経済

 今回は(も?)、落語にたとえるならば枕が長くなります。

 1990年代、現在の北陸新幹線の高崎駅から長野駅までの区間が開業したことを機に、並行在来線をJRから分離する(但し、分離するか否かについてはJRグループ各社に選択権がある)という方針が政治的に決まりました。私は、これを耳にした当時から「在来線のネットワークをズタズタにしてどうするのか?」、「第三セクター鉄道に引き受けさせるとは最悪の選択ではないか?」、「一体どこまで地方公共団体に負担を押しつけようとするつもりか?」などと考えており、今も変わりません。というより、その思いは強くなっています。北陸新幹線の開業で信越本線は高崎駅から横川駅までの区間、篠ノ井駅から長野駅までの区間、直江津駅から新潟駅までの区間に分断されましたし(おまけに横川駅から軽井沢駅までの区間は廃止されました)、その関係でしなの鉄道も軽井沢駅から篠ノ井駅までの区間と長野駅から妙高高原駅までの区間とに分断されています。例えば屋代駅から北長野駅まで鉄道を利用するとなれば、しなの鉄道の屋代駅から篠ノ井駅までの運賃、JR東日本の篠ノ井駅から長野駅までの運賃、しなの鉄道の長野駅から北長野駅までの運賃が合算されることになってしまいます(実際には割引運賃の適用などもあるかもしれないなど、単純に合算される訳ではないかもしれませんが)。

 そればかりではありません。北陸新幹線の開業により、北陸本線、さらには北陸地方のJR西日本の在来線もズタズタにされ、不合理な路線網となりました。まず、北陸本線については、金沢駅から倶利伽羅駅までがIRいしかわ鉄道、倶利伽羅駅から市振駅までがあいの風とやま鉄道、市振駅から直江津駅までがえちごトキメキ鉄道日本海ひすいラインに分割されました。つまり、基本的には都道府県ごとに分割された訳です。それにもかかわらず、大糸線の南小谷駅から糸魚川駅までの区間、髙山本線の猪谷駅から富山駅までの区間、城端線の全線(高岡駅から城端駅まで)、氷見線の全線(高岡駅から氷見駅まで)、七尾線の全線(津幡駅から和倉温泉駅まで、と記しておきますが、ややこしいので後に取り上げます)はJR西日本の路線のままです。さらに、北陸新幹線の金沢駅から敦賀駅までが開業すると、北陸本線の金沢駅から大聖寺駅までの区間はIRいしかわ鉄道に、大聖寺駅から敦賀駅までの区間はハピラインふくいに移管されます。これによって北陸本線は米原駅から敦賀駅までの45.9kmという、およそ本線という名には似つかわしくない路線になってしまいますし、福井県にある越美北線(越前花堂駅から九頭竜湖駅まで)はJR西日本に残されたままとなります。

 このように見ると、大糸線はJR東日本の部分と、髙山本線はJR東海の部分と接続するものの、在来線のネットワークは分断されていることがわかります。しかも、七尾線は他のJR路線と接続しないために完全に孤立しています。同様の例としてはJR東日本の大湊線がありますが、現在のところはこの2例だけですし、2024年3月のダイヤ改正時からは越美北線も完全孤立路線に加わり、3例となります。もっとも、七尾線の列車は金沢駅から七尾駅または和倉温泉駅まで運行されますし、越美北線の列車は福井駅から九頭竜湖駅まで運行されますから、北陸新幹線に接続することにはなります。ただ、運賃はおそらく第三セクター鉄道とJR西日本の合算になるでしょうからかなり高くなるでしょう。また、七尾線と越美北線が完全孤立路線となることは、JR西日本の経営にとってもかなり非効率なものになるのではないでしょうか。

 ここから本題です。高岡駅を起点とする城端線と氷見線は、完全に孤立している訳ではないものの、他に接続するJR西日本の在来線がないことから、分断された状態にはなっています。北陸新幹線には新高岡駅があり、城端線と乗り換えることはできますが、氷見線を利用するには城端線に乗り、高岡駅に出て乗り換えなければなりません。高岡地区のこの2線がJR西日本の路線のまま残るというのも非効率であると考えるのは自然なことで、このままJR西日本の路線として残るのではなく、あいの風とやま鉄道に移管されるのではないかという話は、以前からありました(これについても後に取り上げます)。実際に、JR西日本も富山県もその方向で動いており、10月23日に、城端線および氷見線をJR西日本からあいの風とやま鉄道に移管することが(事実上)決定されました。朝日新聞社が、2023年10月24日の17時30分付で「富山のJR西2線、3セク移管へ 沿線自治体が受け入れた『条件』」(https://digital.asahi.com/articles/ASRBR7473RBRPISC00H.html)として報じています。

 富山県は、2023年7月に城端線および氷見線について再構築検討会を組織しており、この検討会には富山県知事、高岡市長、氷見市長、砺波市長、南砺市長、JR西日本金沢支社長およびあいの風とやま鉄道社長が出席していました。10月23日に第3回の再構築検討会が開かれており、移管について合意がなされました。移管の具体的な時期はこれから検討されるとのことですが、城端線と氷見線の直通化も検討課題であり、「国の『地域公共交通再構築事業』の補助を受けるため、実施計画を作る」とのことです。

 既に私は城端線および氷見線がJR西日本の路線のまま残るのが非効率であるという趣旨を書きましたが、上記朝日新聞社記事にも2020年1月に「JR西日本が、城端線・氷見線の次世代型路面電車(LRT)化などを検討するように富山県と沿線4市に提案」したと書かれています。富山ライトレールを経て富山地方鉄道の路線になった富山港線と同じような話になっています(実は、富山港線は国有化されるまで富山地方鉄道の路線でした)。JR西日本が両線についてサービス向上は難しいと判断したのも当然のことであったと思います。

 ただ、LRT化するのであれば高岡市と射水市に路線網を持つ第三セクター鉄道の万葉線に移管するという手も考えられなくはないはずである。このようにお考えの方もおられるかもしれません。しかし、現実的には無理な話です。

 第一に、城端線および氷見線は非電化路線であり、かつ、LRTなり路面電車なりが直通運転できるような構造になっていません。かつて札幌市交通局がディーゼルエンジンの車両を軌道線に走らせたことがありますから、万葉線にディーゼルカーを走らせること自体は可能でしょう。しかし、城端線および氷見線をLRT化するとなれば、両線に設けられている各駅の構造を大幅に改めなければならなくなり、莫大な費用がかかってしまいます。また、既存の駅の他に駅なり停留所なりを設けるかどうかも検討しなければならないでしょう。需要を考えると新駅や新停留所を設置する意味はないかもしれません。

 第二に、高岡駅は地上駅であって(駅舎は橋上駅であるとはいえ)高架化されていないので万葉線と城端線および氷見線との直通運転をするとなると駅を大改造しなければならなくなります。さりとて、現在の構造のままでは同じ会社なのに乗り場が違うということになって不便になります。

 第三に、万葉線の経営状態なども考慮しなければなりません。万葉線のサイトには損益に関する記事がなく、令和5年度版の鉄道要覧にもないのですが、2022年6月5日19時55分付の日本経済新聞「万葉線の22年3月期、営業赤字拡大 車両検査費増加」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC027XS0S2A600C2000000/)によると2022年3月期の単独決算で営業損益が2億1400万円の赤字、最終損益が54万円の赤字でした。2021年3月期の営業損益は1億1800万円の赤字、最終損益は466万円の赤字でしたから、補助金のおかげで最終損益は減ったものの、営業損益が拡大している点は気になります。これでは城端線および氷見線をLRT化したところで万葉線が引き受けられるとも思えませんし(出資者でもある高岡市および射水市が納得しないでしょう)、富山県全体の公共交通ネットワークという観点から見ても改善にはならないでしょう。

 第四に、万葉線の運転士などの数です。同社のサイトによれば、運行管理者が4人、運転士が19人、保守要員が8人、事業所要員が6人となっています。万葉線の全路線にとって十分な数であるかどうかは不明ですが、城端線および氷見線を引き受けるとすると増員が必要になります。電車と気動車では運転免許が異なりますし、城端線および氷見線を電化するならばそれなりに多額の費用がかかります。人と資金が十分でなければ話の意味がなくなります。

 第五に、これは小さな問題かもしれませんが、現在の万葉線の高岡軌道線と氷見線は競合しています。両線を万葉線に統合する場合には並存させる手もありますが、その場合には運行系統をどうするのかという問題も生じます。ちなみに、氷見線があいの風とやま鉄道に移管される場合でも、競合状態は続きます。

 その他に考えられうる点も合わせて、あいの風とやま鉄道に移管するということになったのでしょう。

 城端線と氷見線のLRT化については、2020年6月に富山県が「城端線・氷見線LRT化検討会」を設置しています。しかし、2023年6月、LRT化を断念するという結論が下されました。同時に「新型鉄道車両の導入方針を決定」したというのですが、これは新型の非電化路線用車両を導入するということのようです。ディーゼルエンジン車、ハイブリッド車、蓄電池電車などが考えられますが、どれになるのでしょうか。

 再構築検討会では、城端線および氷見線をJR西日本からあいの風とやま鉄道に「移管すれば、乗り換え客の料金面が改善することや、一体運営で合理的なダイヤを組め、県西部の交通ネットワークが向上するなどの意見がこれまで出ていた」とのことです。確かにその通りであるとは思います。しかし、私は、両線の直通運転よりも旧北陸本線の部分と城端線および氷見線との直通運転を行うほうが望ましいと考えています。例えば、富山駅から城端駅までの列車を運行する、あるいは富山駅から氷見駅までの列車を運行するほうが、あいの風とやま鉄道の利用者にとっても利便性が高まると思われるのです。北陸新幹線の富山駅には「かがやき」、「はくたか」および「つるぎ」の全列車が停車しますが、新高岡駅に停車する「かがやき」は非常に少ないので、とくに氷見線については富山駅からの直通列車が運行されるほうが沿線自治体の住民にとっても望ましいはずですし、能登半島東部の観光にも貢献することでしょう。

 JR西日本が移管に積極的であったのは当然として、あいの風とやま鉄道も移管には前向きであったようです。ただ、あいの風とやま鉄道は5つの前提条件を掲げていました。上記朝日新聞社記事を引用させていただきますと「①同社の現路線との経理を分離」、「②運転士や技術系要員を確保するため、JR社員の一定期間出向」、「③移管前にレールやまくら木、分岐器などの再整備」、「④券売機の整備のための財源確保」、「⑤両線を直通化するなら、JRの全面的な支援」です。①については「赤字も見込まれる城端線・氷見線の移管では、経理を別にしたうえで赤字補塡の保証を求めた」とのことですが、両線の直通運転のみにこだわっているとすれば疑問が残るところではあります。先に記したように、富山駅からの直通運転を行うほうがよいと考えるからです。今は需要がないと言われるかもしれませんが、需要は作るものでもあります。首都圏の総合直通運転の拡大をみれば明らかでしょう。富山市の軌道線の例もあります。ともあれ、再構築検討会において「大枠が了承され、ハードルを越えた」とのことです。なお、あいの風とやま鉄道は「2022年度決算で1100万円の黒字を純利益で計上しているが、営業損益は2億3200万円の赤字」で「県の経営安定基金や燃料高騰対策の補助で最終黒字を確保した形」であるとのことであり、「さらに現路線には経営安定基金があるが、移管後も安定するように、行政がどう関わるかなども課題だ」とされています。

 JR西日本が発表している「区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2022年度)」によると、城端線の平均通過人員は2,481、同線の旅客運輸収入は2億4,800万円です。また、氷見線の平均通過人員は2,157で、同線の旅客運輸収入は1億4,000万円です。これだけでは営業係数などがわかりませんが、平均通過人員はいずれの路線で1987年度に比して半減というところです。あいの風とやま鉄道に移管されて平均通過人員および旅客運輸収入が増加するかどうかはわかりませんが、先に私が記したように、富山駅への直通運転を行うことによって改善の可能性は高くなるのではないでしょうか。城端線と氷見線との直通運転で話を終わらせるのではなく、旧北陸本線の部分との直通運転という形であいの風とやま鉄道の路線網全体を見渡してのダイヤ編成を行うことこそが、公共交通機関の維持・発展にむけて努力していると評価される(富山ライトレールの事例をみると公共交通機関の維持・発展について自己評価をしている)富山県らしい動きであると考えられます。

 但し、城端線および氷見線があいの風とやま鉄道の路線となれば、富山県でJR西日本の在来線は髙山本線のみとなります。富山駅で北陸新幹線と接続し、猪谷駅でJR東海が管轄する髙山本線と接続するとはいえ、JR西日本の在来線としては孤立します。いっそう、髙山本線を全てJR東海の路線とするほうがスッキリすると思うのですが、いかがでしょうか。

 さて、先程から保留状態になっている七尾線に話を移しましょう。実は、上記朝日新聞社記事を読んですぐに頭に浮かんだのが、城端線でも氷見線でもなく、現在のJR西日本の路線網で完全に孤立している七尾線であったのです。

 「隣同士の県なのに、こうも違うのか!」と思われされることは多々あります。公共交通機関に絞るならば、富山県と石川県はまさにその代表的な例でしょう。1989年、学部生であった私は富山県と石川県の双方を訪れましたが、公共交通機関による移動という点で富山県のほうが便利であると実感しました。とくに金沢市の場合、観光資源には恵まれているのに公共交通機関が貧弱で、金沢駅周辺以外は不便であることに驚かされました。金沢市の中心街である香林坊にはバスで行けますが、地元の人間であればともあれ、土地勘もないような者に複雑な路線バス網は厳しいものです。路面電車を使えば多くの観光地をまわることができる長崎市のような場所であれば、金沢市の観光地としての価値はさらに上昇していたことでしょう。

 富山県は、城端線と氷見線についての動きの他、現在は富山地方鉄道の路線となっている富山港線という好例が示すように、公共交通機関の維持に積極的です。先に記したように、富山港線は富山地方鉄道の路線であったものが国有化され、国鉄の路線となっていました。国鉄分割民営化によってJR西日本の路線となりましたが、赤字を抱え、運行本数も減らされていました。同線のLRT化は、実のところ、岡山県の吉備線とともにJR西日本が提案した話であるそうですが、富山港線については廃止の可能性も高く、それならば富山市が中心となって第三セクター鉄道として引き受けようということになり、富山ライトレールが誕生した訳です。富山市または当時の富山市長が自己評価するように成功であったのかどうかはわかりませんが、沿線の利便性が高まったことは事実でしょう。そして、2020年に富山ライトレールが富山地方鉄道に吸収合併されてから、富山港線は既存の富山地方鉄道富山軌道線と直通運転を行うようになり、利便性はさらに向上しています。富山地方鉄道も決して経営が楽な状態ではないと思うのですが、笹津線、射水線などを廃止したとはいえ、本線、立山線などの路線を維持しています。

 これに対し、隣の石川県は、公共交通機関の維持についてどのような姿勢を見せているのでしょうか。

 正直なところ、よくわかりません。富山市には現在も路面電車が走っており、富山港線との直通運転も行っているほどなのですが、金沢市には路面電車がありません。正確に記せば、北陸鉄道金沢市内線が1967年に全廃されてから、路面電車がないのです。それだけでなく、石川県のあちらこちらにあった北陸鉄道の鉄道路線は次々に廃止されており、現在では石川線と浅野川線しかありません。両線は接続していませんし、中心街を通りません。こうした状況において、石川県が公共交通機関の維持についてどのように取り組もうとしているのか、わからない部分もあるのです。

 城端線および氷見線がJR西日本からあいの風とやま鉄道に移管されるとなれば、北陸新幹線の敦賀延伸後には唯一のJR西日本の路線となる七尾線がどうなるのかは、非常に気になるところです。

 七尾線は、様々な意味において特徴がある路線でもあり、或る意味で厄介な路線でもあります(沿線の皆様にはお詫びを申し上げます)。

 第一に、七尾線は、北陸地方にあるJR西日本の在来線では唯一の直流電化路線です(かつては富山港線もそうでしたが)。直通先のIRいしかわ鉄道の路線は交流電化されていますし、起点の津幡駅の構内も交流電化されていますので、電車は交直流電車です。

 第二に、七尾線は、元々、津幡駅から輪島駅までの区間の路線でしたが、1991年に津幡駅から和倉温泉駅までの区間が直流電化された際に同区間がJR西日本の路線として残り、和倉温泉駅から輪島駅までの区間はのと鉄道七尾線になりました(2001年に穴水駅から輪島駅までの区間が廃止されました)。但し、のと鉄道七尾線の起点は七尾駅であるため、七尾駅から和倉温泉駅までの区間はJR西日本とのと鉄道との共同運行区間ということになります。鉄道事業法による事業者の区別によると、次の通りとなります。

 津幡駅〜七尾駅:JR西日本が第一種鉄道事業者。

 七尾駅〜和倉温泉駅:JR西日本が第一種鉄道事業者、のと鉄道が第二種鉄道事業者。

 第三に、のと鉄道七尾線の線路などの施設もJR西日本が保有しています。のと鉄道七尾線は、現在、七尾駅から穴水駅までの路線ですが、七尾駅〜和倉温泉駅については既に記した通りであり、残りの和倉温泉駅〜穴水駅についてはJR西日本が第三種鉄道事業者、のと鉄道が第二種鉄道事業者であるということになります。つまり、JR西日本が施設を保有しているという点で見るならば七尾線は津幡駅から穴水駅までの区間の路線であり、のと鉄道はJR西日本から線路施設を借りるような形で列車を走らせていることとなります。ちなみに、2005年に廃止された能登線についてはのと鉄道が第一種鉄道事業者でした。

 2022年度における七尾線の平均通過人員は3,428であり、城端線および氷見線よりは高い値を示しています(とはいえ、1987年度と比べれば低い数字です)。それでも、1980年代の国鉄改革で打ち出された基準に照らせば第3次特定地方交通線の水準であり、今後も平均通過人員の低下は続くと予想されます。

 現在のところ、JR西日本は七尾線について何の言及も行っていないようです。北陸新幹線の敦賀延伸によって七尾線が石川県で唯一のJR西日本の路線となるとしても、IRいしかわ鉄道の金沢駅からの直通運転は続けられると考えられますし、それが石川県の意思でもあるのであろうと推測できます。それで上手くいくのであれば、私が何かを書くべきことでもありません。

 ただ、今後、七尾線の平均通過人員が低下し続け、JR西日本からIRいしかわ鉄道、のと鉄道のいずれかに移管することも、考えておかなければならない未来でしょう。のと鉄道七尾線の線路施設などもJR西日本が保有していることからすれば、城端線および氷見線とは比較にならないほど複雑な問題ですが、JR西日本の経営効率を考えるならば、七尾線の将来は今から検討しておくべき課題であると言えます。

 北陸新幹線の敦賀延伸によってもう一つの孤立路線になる越美北線についても、JR西日本がどのような姿勢を見せるのかが注目されるところですが、現在のところはよくわかりません。ただ、越美北線の平均通過人員は2022年度で318と低く、ハピラインふくいへの移管どころか廃止の可能性すらあります。この路線の1987年度の平均通過人員は772でしたので、1980年代に特定地方交通線に指定されてもおかしくなかったのです。実際、1968年9月には赤字83線の一つともなっています。国鉄改革の際には第二次特定地方交通線に指定される可能性もあったのですが、代替輸送道路が冬期の積雪で1年につき10日以上も通行不能となることから存続となったという経緯があります。福井県、福井市および大野市が越美北線についてどのような姿勢を見せるのかが気になるところです。

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金剛自動車のバス路線、引き継がれるも大幅減便か

2023年10月20日 00時50分00秒 | 社会・経済

 このブログで金剛自動車のバス路線を取り上げています。「金剛自動車が全路線を年内に廃止」(2023年9月11日22時10分00秒付)に始まり、「金剛自動車のバス路線を近鉄バスと南海バスが引き継ぐか」(2023年9月13日15時40分00秒付)および「金剛自動車のバス路線の存続に向けて」(2023年10月11日10時40分00秒付)と続きました。今回が4回目となります。

 「金剛自動車のバス路線の存続に向けて」において、富田林市、太子町、河南町および千早赤阪村が5つの優先的維持希望路線を出し、近鉄バスおよび南海バスと協議する旨を決定したことを記しました。確認のため、5つの優先的維持希望路線をあげておきます。

 喜志循環線(近鉄長野線喜志駅から太子四つ辻、磯長小学校前、推古天皇陵前を経由して喜志駅に戻る路線。)

 阪南線(喜志駅から太子四つ辻、阪南一須賀を経由して近つ飛鳥博物館前までの路線。)

 さくら坂循環線(近鉄長野線富田林駅から河南町役場前、さくら坂一丁目を経由して富田林駅に戻る路線。)

 千早線(富田林駅から森屋西口、千早赤阪村役場前を経由して千早ロープウェイ前までの路線/富田林駅から森屋西口、松本橋を経由して楠公誕生地前までの路線/富田林駅から森屋西口、松本橋、水分を経由して水越峠までの路線。この3つのうちのいずれかが残るのかなど、詳細はわかりません。)

 東條線(富田林駅から板持、東条小学校、蒲、甘南備を経由して吉年またはサバーファームまでの路線。途中の蒲から福祉センターまでは蒲中央を経由する便もあります。)

 さて、昨日(2023年10月19日)、河南町で第2回の協議会が開かれました。産経新聞社が、昨日の21時32分付で「金剛バス廃止後 維持5路線の便数半減へ」(https://www.iza.ne.jp/article/20231019-4L32J5CQAJP5LBO5YVXI7KU7WI/)として報じています。この記事では上記5路線を「維持すると決めた5路線」と表現していますが、残りの路線は捨てたということなのでしょうか。

 協議会においては、上記5路線の引き継ぎ事業者が次のように決定されたとのことです。

 喜志循環線、阪南線、さくら坂循環線:近鉄バス

 千早線、東條線:南海バス

 運賃は、当面の間という条件が付くものの、現在の金剛自動車のバスと同じ水準の維持に落ち着くようです。

 問題は運行便数です。次の通りにするようです(カッコ内は現在の平日ダイヤを極端に簡略化した記述であり、金剛自動車のサイトを参照しています)。

 喜志循環線:午前6時台から午後8時台まで15便程度(現行と同じということでしょう。喜志駅発で1時間に1便ということになります)。

 阪南線:午前6時台から午後7時台まで15便程度(現行は、喜志駅発を基準として午前6時台に3便、午前7時台から午後8時台まで、1時間につき1本か2本。1日の合計で25便です)。 

 さくら坂循環線:午前6時台から午後7時台まで11便程度(現行は、富田林駅発を基準として午前6時台から午後8時台まで、1時間につき1便か2便。1日の合計で17便)。

 千早線:午前6時台から午後8時台まで12便程度(現行は、富田林駅発を基準として午前6時台から午後8時台まで、1時間につき1便か2便。1日の合計で24便)。

 東條線:午前6時台から午後8時台まで12便程度(現行は、富田林駅発を基準として午前6時台から午後8時台まで、1時間につき1便か2便。1日の合計で24便)。

 喜志循環線を除く4路線が減便ということになります。とくに、南海バスに引き継いでもらおうとする千早線および東條線は半数程度に減ることとなるので、大幅減便と表現してよいでしょう。

 記事は短いものであり、協議会への出席者という肝心な点など、よくわからないところもあるのですが、既に近鉄バスおよび南海バスには何らかの形で打診をしているのでしょうか。打診していると考えるのが自然ですが、非公式であるから現段階では明かせないということなのでしょうか(それなら納得はできます)。

 おそらく、協議会で示された筋書きの通りに進むのが最善ということになりますが、近鉄バスおよび南海バスがこれらの路線を引き継がないということも考えられますし、引き継ぐとしても想定よりもさらに減便されることもありうるでしょう。

 ちなみに、金剛自動車は、PL病院送迎バスや大阪芸術大学スクールバスも運行していました。しかし、PL病院送迎バスは2006年度から近鉄バスが運行してます(富田林駅からのバスということでしょう。金剛駅からの送迎バスは南海バスが運行しているそうです)。また、大阪芸術大学のサイトによると、この大学へのアクセスは喜志駅から金剛バスの阪南線に乗り、東山バス停で下車すると書かれていますから、大阪芸術大学スクールバスは金剛自動車が運行することが自然であると思われるのですが、2006年2月からMK観光バスが運行しています。2006年1月までは金剛自動車が運行していたらしいのですが、何らかの理由によって契約を打ち切られたとのことです。これはバス会社にとって大きな損失と言えるのではないでしょうか。この辺りの事情は、金剛自動車の歴史を知ることによって理解できるのではないでしょうか。

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岐阜県が百貨店がない県の4例目に

2023年10月15日 00時00分00秒 | 社会・経済

 たしか一昨日(2023年10月13日)にネットニュースで報じられていましたが、昨日(10月14日)の10時付で朝日新聞社のサイトに「岐阜高島屋が来年7月末で閉店 売上低減、岐阜県の百貨店ゼロに」(https://digital.asahi.com/articles/ASRBF73MVRBFOBJB00B.html)という記事が掲載されていました。

 岐阜県の県庁所在地は岐阜市で、その岐阜市と言えば柳ヶ瀬が思い浮かぶという方も多いでしょう。岐阜県では最も有名な繁華街であったのに、長らく、市街地空洞化の一例として取り上げられることも多かった柳ヶ瀬に、岐阜高島屋があります(厳密に言えば日ノ出町という所にあるのですが、商業エリアということでは柳ヶ瀬に括られる場所です。

 岐阜高島屋は、高島屋の子会社が経営する百貨店で、1977年に開業しています。1991年度に249億円の売上高を記録しましたが、そこがピークであり、1992年度以降は売上高が減る一方で、2022年度は132億円であったとのことです。

 また、施設の老朽化も進んでいました。46年も経てば、ということでしょう。自社物件であれば建替や設備の更新も比較的に容易であったかもしれませんが、賃貸物件であり、家主との交渉が上手くいかなかったとのことです。そこで、岐阜高島屋の閉店が決定したという訳です。なお、同店を経営する法人も2024年⒏月末に解散することが取締役会(10月13日)で決定されています。

 これにより、2024年の8月1日から岐阜県には百貨店(日本百貨店協会に加盟している百貨店)がなくなります。これは全都道府県で4例目です。既に、山形県と徳島県には百貨店がなく、2024年1月に一畑百貨店が閉店することから島根県にも百貨店がなくなることとなります。

 岐阜市と言えば、一度、名鉄名古屋本線の特急で訪れたことがあります。柳ヶ瀬地区はJR岐阜駅よりも名鉄岐阜駅のほうが近く、歩いてみようと思って名鉄岐阜駅の改札口を抜けた瞬間、あまりの人通りの少なさに戸惑いました。駅のすぐそばに岐阜LOFTがあるのですが、日曜日の午後というのにお客がほとんどいません。外から見ただけでもわかるほどに閑散としていました。2005年3月末までは駅前を岐阜市内線の路面電車が走っていましたが、私が訪れたのはその数年後のことです。

 名鉄岐阜駅から北のほうへ歩けば柳ヶ瀬です。どうしようかと思いましたが、結局、各務原線に乗って犬山に出ました。犬山駅東口にあったイトーヨーカドーも今はありません。入ってみたら、やはり空いていました。

 岐阜高島屋の低迷の原因には様々なものが考えられるでしょう。ここでは深く検討することなどをしませんが、岐阜駅からJR東海道本線の普通電車で28分、快速電車で20分で、ジェイアール名古屋タカシマヤがある名古屋駅に着くという点も、岐阜高島屋の地位が低落したことの原因の一つでしょう(名鉄岐阜駅から名鉄名古屋駅までであれば、特急または快速特急で28分です)。ジェイアール名古屋タカシマヤにも一度だけ入ったことがあり、非常に多くのお客がいて混んでいたことを覚えています。

 高島屋と言えば、私のうちから一番近い百貨店が玉川高島屋で、岐阜高島屋よりも8年ほど早い1969年に営業を開始しています。二子玉川駅の改札口から歩いて1分か2分、今では二子玉川ライズのドッグウッドプラザと歩道橋および地下道で結ばれている玉川高島屋には、曜日を問わず多くのお客が訪れます。私も、とくに南館に足を運びます。当初は横浜高島屋の支店でしたが、現在は高島屋の直営店です。

 百貨店は長期低落の途をたどっているという趣旨がよく語られています。全体的にはその通りなのでしょうが、お客が多い百貨店もある訳で、やはり個別的な事情の違いがあるのでしょう。とは言え、一般的には大都市圏とそれ以外との違いに起因するのかもしれません。

 Googleで検索をかけたらFashonsnapというサイトに「国内百貨店の店舗数はこの10年でどう変わった? 47都道府県を調査」という、2022年5月30日付の記事が見つかりました。その記事には、百貨店が一つしかない県は14あると書かれており、茨城、新潟、福島、山梨、岐阜、富山、滋賀、和歌山、福井、島根、香川、高知、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄と並べられています。このうち、島根県は2024年2月に、岐阜県は2024年8月に百貨店ゼロの県になります。今後も百貨店ゼロとなる県が生ずる可能性はあると考えられるでしょう。

コメント (2)
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