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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

読売新聞兵庫版の記事(臨時教員の退職手当)

2012年10月03日 22時05分21秒 | 社会・経済

 大分大学時代から、朝日と読売のサイトは欠かさずチェックしています。今日は、読売新聞社のほうの兵庫版で見つけた「県臨時教員『退職手当は非課税』」(http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hyogo/news/20121001-OYT8T01678.htm)という、昨日付けの記事を取り上げます。

 県採用の臨時教員がどのような待遇を受けているのかということについて、私は多少なりとも知ってはいます。私のゼミにいた卒業生の中にも、臨時教員となった者が何人かいるからです。任期は最大でも1年で、非常に不安定な立場にあります。更新される場合もあれば、そうでない場合もあるからです。そもそも、教諭と異なる待遇ですから、期末手当も出ないか、出たとしても大した額ではありません。その意味で、僅かであっても退職手当くらいは出すのが筋というものでしょう。ちなみに、一人について平均で15万円程度であったそうです。

 この退職手当について、兵庫県内の姫路税務署、豊岡税務署などが、退職所得ではなく、給与所得とみなして課税する旨を兵庫県教育委員会に通知したそうです。対象は2007年度から2010年度までの、延べ人数で1530人分です。退職所得の場合でも源泉徴収ですが、税務署側は給与所得として源泉所得税や不納付加算税など、合わせて1570万円を兵庫県教育委員会に支払うように請求しました。この請求が通知という手段で行われた訳で、しかも通知は処分、行政法で言うところの行政行為です。今年6月の話でした。

 兵庫県教育委員会は、以上の通知につき、8月に税務署長に異議を申し立てていました。10月1日、税務署長は通知を取り消したとのことです。

 公務員法の理屈から言えば、税務署の通知処分はおかしいのですが、臨時教員の任期が満了して、数日間空けてから再任用という場合が多いそうで、ここに税務署が目をつけたということなのです。兵庫県の再任用率が高かったのでしょうか。税務署は、再任用が実質的に継続雇用であるとみなしたのでした。こうなると、退職手当は文字通りの退職手当ではなく、期末手当に近いものということになるのでしょう。税法の講義で扱う5年退職金事件を想起させます。

 たしかに、再任用に継続雇用の面があることは否定できません。しかし、公務員の場合、雇用契約が取り交わされる訳ではなく、任用権者である行政機関の長による行政行為という一方的な手段に委ねられています。しかも、誰を任用するかは行政側の裁量に委ねられています。再任用についても同様です。そもそも、再任用という表現自体が法律上のものではなく(と記すと行き過ぎかもしれませんが)、希望者には事実上の期待しかなく、その希望が法的に保護される訳でもないのです。このようなことは、やはり期限付任用が非常に多い国家公務員であれば、容易に理解できるはずなのですが、税務署には期限付任用の例が乏しいのでしょうか。

 この記事を読んでいて、改めて期限付雇用の問題を考えざるをえません。先日、日本評論社から出版された『非正規公務員』という本は、公務員問題に取り組む際の必読の書と言えるでしょう。

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