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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

井笠鉄道が事業を廃止、そして会社清算へ

2012年10月15日 01時50分58秒 | 社会・経済

 今月13日に読売新聞の岡山版の記事「井笠鉄道  事業廃止へ」(http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okayama/news/20121012-OYT8T01477.htm?from=popin)、および同広島版の「井笠鉄道  事業廃止へ  福山の市民にも影響」(http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hiroshima/news/20121012-OYT8T01642.htm)で報じられていた話ですが、公共交通機関の問題を考えるに際して、これは非常に深刻な状況ではないかと思われます。

 井笠鉄道という会社があります。名称の通り、元々は鉄道路線(しかも軽便鉄道)を運営していましたが、1971年に鉄道路線を全廃して以来、バス会社として存続しました。しかし、帝国データバンクのサイト(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3674.html)によれば、同社は「10月12日に債務整理を森倫洋弁護士(港区赤坂1-12-32、電話03-5562-8500)に一任し、10月31日に事業を停止することを記者会見にて発表した」とのことです。この旨は、10月12日に中国運輸局岡山運輸支局にも届け出られています。

 帝国データバンクの上記サイトには次のように記されています。「マイカー通勤の増加や路線地域の過疎化などが進むなか、運行地域での鉄道開通などもあって乗客数は大幅に減少していた。このため、赤字路線の統廃合や遊休資産売却、経営多角化などの対応をとってきたが、中小業者の参入が相次いで低運賃化による競争が激化、収入高の減少に歯止めがかからず、2012年3月期の年収入高は約9億円に落ち込み、燃料価格の高騰もあって大幅な赤字を計上していた。その後も不採算路線の廃止などリストラを進めたものの、借入金負担が資金繰りを圧迫する状況が続き、乗客数が増える見通しも立たないことから、事業の継続を断念した。10月31日に71路線の運行を停止することを決定し、うち主要路線を11月1日より同業他社に引き継ぐことを検討し、近日中に決定する見通しとしている」。そして、負債額は「2012年3月期末で約32億3600円」が見込まれているとのことです。

 岡山県の西部にある笠岡市に本社を置き、広島県の福山市にもバス路線網(かつては鉄道路線網も)を広げていた同社の事業廃止および会社清算は、公共交通機関の衰退という長らくの問題に更なる側面を付加したこととなるでしょう。現在、井笠鉄道は5の高速バスと76の路線バスの路線網を持っていますが、高速バスについては福山市の中国バスが受け継ぎ、路線バスの一部については中国バスと、矢掛町の北振バスが受け継ぐとのことですが、上記読売新聞岡山版および広島版の記事によればあくまでも「主要路線の一部」とのことなので、中国バスおよび北振バスの判断によっては引き継がれないままに廃止される路線も少なからず発生するおそれがあります。

 発表が突然なされたという憾みは否めません。しかも、定期券や回数券、そして同社専用のバスカードが使えなくなる上に払い戻しもなされないという危険性があるというのは、利用客にとって非常に困る話です。この辺りの手当てが十分になされないというのでは、たまったものではないでしょう。読売新聞の記事によると、10年ほど前から慢性的な赤字が続いていたというのですから、中国バス、大分バスなどのように整理回収機構による私的再生手続の途も選択肢として存在していたのではないでしょうか。あるいは、その選択もできないような状態であったのかもしれませんが、もう少し、準備期間のような時間をとることができなかったのか、という疑問は残されるでしょう。

 鉄道事業をやめてからも会社名に鉄道の名を残す会社は意外に多く、千葉県の九十九里鉄道、新潟県の蒲原鉄道、広島県の鞆鉄道、山口県の船木鉄道を例としてあげることができます。また、岡山県の中鉄バスも、名称が示しているように、元は中国鉄道という会社でしたし、山口県のサンデン交通も、元は山陽電気軌道という名称でした。

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