大阪府の泉佐野市と言えば、市の命名権売却の検討など、興味深い話題を提供してくれる自治体として知られています。命名権については、2012年3月25日付で「果たしてどうなのだろう? 大阪府泉佐野市の試み」(http://blog.goo.ne.jp/derkleineplatz8595/d/20120325)として記しましたが、今年に入ってから犬税の導入に向けた検討会を3回開いています(検討会の設置要綱は昨年の12月5日から施行されています)。果たしてどうなっているのかと思ったら、毎日新聞社が今日の12時15分付で「犬税:導入断念…泉佐野市『頭数把握難しい』」(http://mainichi.jp/select/news/20140723k0000e040232000c.html)として報じていました。朝日新聞社も、今日の12時35分付で「飼い主に課す『犬税』、導入を断念 大阪・泉佐野」(http://www.asahi.com/articles/ASG7R3V9HG7RPPTB004.html)として報じています。
今日の10時から、泉佐野市役所で第3回の犬税検討会が行われました。報道によると、今日が最終となり、犬税の導入は難しいとする答申書がまとめられた、とのことです。泉佐野市は、この検討会の議事録を公表していますので、第3回の議事録、および答申書も公表されることでしょう。
犬税と言えば、最も有名なのはドイツですが、日本にもありました。1980年代の前半まで、市町村税として存在しており、最盛期(?)には2000以上もの市が課税していたのです。これが法定外普通税であったとのことですから、少々の驚きを感じます。もっとも、最後まで課していた市町村は非常に少なかったようで、1982年3月31日まで、長野県四賀村が課していたのが日本における最後の例となります。
往時の犬税がいかなる地方税で、何のために存在したのかという問題は別の機会に触れることとします。泉佐野市が犬税の復活と言ってもよい導入を検討したのは、犬の糞の放置という問題に対処するためでした。公開されている議事録を読むと、法定外目的税として導入することが検討されていたようです。
当初の案は、犬1頭について2000円を税として徴収するというものでした。泉佐野市内には飼い犬が5000頭いると想定すると、税収は1000万円となります。
ところが、泉佐野市が飼い主を対象にしてアンケートを実施したところ、犬税の導入には困難な問題があることが判明しました。議事録にも某委員の意見(または質問)として登場するのですが、犬税を徴収するためには、泉佐野市内の飼い犬の頭数を正確に把握しなければなりません。そう簡単な話でないことは察しがつきますが、狂犬病予防法に基づく飼い犬の登録数は、実際の飼い犬の頭数とはかなりの差があるということです。泉佐野市が実際の頭数をどの程度と推定したのかについてはよくわかりませんが、上記毎日新聞社の報道によると「課税に必要なシステム構築費や人件費が税収を1600万円上回ることも」わかったといいます。これではコストばかりかかることになります。
犬税導入の断念という事実は、法定外目的税の難しさを象徴するものであると思われます。法定外普通税・法定外目的税のいずれも、地方自治体の税収について僅かばかりの部分を占めるにすぎず、3パーセントを超えるようなものを創設するのは不可能に近いでしょう。1パーセントでも難しいはずです。法定外目的税の場合は、税収の使いみちが特定の事務・目的に限定されておりますので、税収に占める割合を喧伝する必要はないのですが、事務・目的のための費用と比較して予定される収入額があまりに少ないのであれば、導入する意味が失われかねません。