たまたま、gooニュースを見ていたら、読売新聞社が昨日(2019年9月18日)の14時2分付で「JR東、首都圏でも『ワンマン運転』拡大…7両以上も」として報じているのを(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190918-OYT1T50152/)で見ました。
実は、JR以外であれば首都圏でもワンマン運転は珍しくありません。例えば東京メトロでは丸ノ内線、千代田線(綾瀬〜北綾瀬のみ)、有楽町線(和光市〜小竹向原のみ)、南北線および副都心線で実施されており、東京都交通局では荒川線、三田線および大江戸線で実施されています。横浜市営地下鉄のブルーライン(1号線および3号線)とグリーンライン(4号線)もワンマン運転実施路線です。大手私鉄ですと、私にとって最も身近な東急では目黒線、池上線、東急多摩川線およびこどもの国線(正式には横浜高速鉄道の路線)で実施されています(世田谷線はワンマン運転実施路線に見えないのですが、運転士と、車掌資格のない案内係が乗務しますので、実質的にはワンマン運転です)。関東に限らず、大手私鉄でワンマン運転を一切実施していないのは小田急、相鉄、京急および京成のみです。東京都内では多摩都市モノレールもワンマン運転を行っていますし、大手、準大手、中小を問わず、ワンマン運転は広く見られます。さらに、東京都交通局の日暮里舎人ライナーなど、無人運転の路線もあります。
JR東日本に目を転じますと、私がすぐに思い出すのは南武線浜川崎支線(地元では浜川崎線とも言っていました)です。尻手〜浜川崎を2両編成の電車が往復します。他には八高線の非電化区間(高麗川〜倉賀野。列車は高崎駅まで運行)などがあります。首都圏に限らず、同社では2両以下で運行される路線というのがワンマン運転実施の基準になっているようです。上記読売新聞記事では、利用客の乗降、ホームの安全確認という点で2両以下が基準とされているとのことです。
しかし、人手不足による合理化のために、JR東日本はワンマン運転実施路線を拡大する方針を打ち出したようです。東京メトロも合理化などのために丸ノ内線などのワンマン運転化を進めましたが、同じ合理化でも理由が異なるようです。
私が小学生の頃に春日三球・照代の漫才をテレビで見ていたら、当時の国鉄やバスなどの運賃値上げをネタにして、運賃は値上げされるが車掌がいなくなる、次に値上げしたら運転士がいなくなるというようなものをやっていた、と記憶しています。YouTubeでも見られたはずです。それはともあれ、1987年のJRグループ発足以後、採用人員を極力抑えてきたことが原因の一つであるという趣旨が、上記読売新聞記事には書かれています。安全面、保安面などでの技術継承ができなくなったことの原因ともされていますが、人口減少も大きな理由の一つです。
JR東日本では、来年度以降、3両か4両編成でのワンマン運転を実施し、そして徐々に長編成についても実施していくとのことです。但し、「首都圏でも横浜市と川崎市を結ぶ鶴見線や千葉県の内房線、外房線などはワンマン化の可能性がある」という程度のことしか書かれていません。また、ホームドア設置路線でもワンマン運転が実施される可能性が高く、山手線なども対象となる可能性はあります。ちなみに、丸ノ内線、有楽町線、南北線、副都心線、三田線、大江戸線といった地下鉄路線の全駅にはホームドアが設置されており、ATOも導入されており、ワンマン運転が実施されています。
上記読売新聞記事には「ワンマン拡大で懸念されるのが、災害やトラブル時の乗客や運行の安全だ」という記述もあります。たしかに、ワンマン運転化されるということは、運転士と車掌が分担していた仕事が運転士に集中するということを意味するので(勿論、車掌の業務の一部はなくなるでしょうが)、何らかの事件、事故が発生した場合に、対処の時間が長くなり、運転再開までの時間が長くなることは考えられます。
ワンマン運転だけではありません。人手不足による合理化は、駅にも及びます。或る意味ではこちらのほうが大きな問題ともなりえます。
首都圏では、我が川崎市の川崎区および横浜市の鶴見区を走る鶴見線が代表的です。国鉄時代の1971年、鶴見駅を除く全駅が無人化されました。
新聞やブログなどでも大きく取り上げられたのが、大阪府河内長野市にある、南海高野線の美加の台駅です。同駅は、2013年4月から無人駅となり、近隣のニュータウンに居住する利用客などによる大きな反発を招きました。
南海の無人駅化はかなり進んでいるようですが、他に近鉄や名鉄なども無人駅化に積極的です。計算したりしたことはないのですが、大手私鉄での名鉄の無人駅の比率は最も高いのではないでしょうか。何しろ、豊明駅という、無人駅では最大と思われる乗り場数を誇る駅もあるのです。1番線から6番線まであれば、他の私鉄なら有人駅でしょう(もっとも、車庫が近いこともあってか、運転業務担当の従業員はいるそうです。無人駅とされているのは、改札などの駅業務を担当する従業員が配置されていないからでしょう)。
無人駅が増えていることには様々な原因があります。乗客が少ないことによる合理化もあれば、人員不足による合理化もあるでしょう。上記読売新聞記事によると、JRグループの全旅客駅のうち、無人駅は2422あり、およそ54%となります(この無人駅に簡易委託駅が入るか否かは不明です)。JR四国の無人駅は208で、実に80%にのぼります。また、JR北海道の無人駅は306で、75%ほどです。
駅の無人化は完全無人化に限定されません。
今年度、私は中央大学経済学部での講義のために武蔵溝ノ口駅から稲田堤駅まで、または立川駅まで南武線を利用しています。その稲田堤駅の改札口付近には乗車駅証明書発行機が置かれています。無人駅ではないのですが、早朝の時間帯には駅員がいません。南武線では、他にも乗車駅証明書発行機が設置されている駅があるようです(降りてまで確認していませんが)。
都内でも、信濃町、千駄ヶ谷、三河島、南千住および尾久の各駅では、稲田堤駅と同じく、早朝の時間帯には駅員がいないようです。東京駅や池袋駅でも一部の改札では同様であるとのことです。利用客数の少ない時間帯を中心に、今後、一部の時間帯については駅員がいないという駅が増えてくることでしょう。自動券売機や自動改札機でトラブルが発生した場合には、管理駅(稲田堤駅の場合は登戸駅が管理駅)に連絡し、遠隔操作などをしてもらうしかない訳です。
また、有人駅でも、直営駅、業務委託駅の区別があります。例えば、武蔵溝ノ口駅は直営駅ですが、隣の津田山駅または武蔵新城駅は業務委託駅であるとのことです。つまり、駅員としての業務がJRグループの会社に委託されている訳です。JR九州などでも当たり前のように見られましたが、驚くのは秋葉原駅もそうだとのことです。上記読売新聞記事では「さらに秋葉原など19駅では駅業務をグループ会社に完全委託しており、駅長ら管理職も含め、JR東日本の社員は1人もいない」としか書かれていませんので、具体的にどこであるのか、どの程度の規模の19駅なのかは明確にされていません。このような業務委託は、何時からとは明瞭に書けませんが、この10年、20年という単位で進められてきたのでしょう。このところ、みどりの窓口が廃止される例が少なくありませんが、業務委託とも無関係ではないでしょう。
ワンマン運転の拡大。駅の、時間帯限定を含む無人化の進展。全国的にも長期的に進められてきたのですが、首都圏では急速に進みそうです。